犬のトリミングとは?どんなことをするのか、頻度や費用の目安について解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬のトリミングとは?どんなことをするのか、頻度や費用の目安について解説【獣医師監修】
犬のトリミングとは?どんなことをするのか、頻度や費用の目安について解説【獣医師監修】

目次

  • ・ そもそも犬のトリミングとは?
  • ・ トリミングはすべての犬に必要なの?
  • ・ 犬のトリミングは何歳から始めればいいの?
  • ・ 犬のトリミングを行う際に準備しておくことはあるの?
  • ・ 犬のトリミングにかかる費用の目安は?
  • ・ 犬のトリミングは自分で行ってもいいの?
  • ・ 犬のトリミングを行う最適な頻度は?

犬のお手入れのひとつとして、トリミングがあります。トリミングと聞くと、人間の美容室のように、見た目をおしゃれにするというイメージを抱きがちですが、毛なみを整えることで、衛生面や安全面などにおいて、快適な生活を送らせるという目的もあります。今回は、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に教えてもらった、犬のトリミングに関する基礎的な知識や、初めてトリミングを行う際の注意点などについて解説していきます。

そもそも犬のトリミングとは?

トリミングという言葉を耳にすることは多いと思いますが、実際はどのような行為を指すのでしょうか。基礎的な情報からご紹介します。

トリミングとは犬の毛をカットして整えること

犬のトリミングとは、「毛をカットして整える」ことです。トリミングを行う職業を、トリマーと呼びます。トリマーは、犬の毛をハサミやバリカンといった道具を使い、毛を刈りとっていきます。指やトリミングナイフなどを使用し、毛を抜いたり、整えたりしていきます。

ちなみに、トリミングのほかに、同じく犬のお手入れを表す言葉として、グルーミングと呼ばれるものもあります。グルーミングは、ブラッシングやシャンプーなどのケアがメインです。耳掃除や爪切りといった、犬の体全体のお手入れもグルーミングに分類されます。

犬が快適な生活を送るためにトリミングは必要

犬のトリミングと聞くと、犬の見た目を整える美容的なイメージを抱くかもしれません。しかし、トリミングには、犬の衛生面を整えたり、ケガから守るという側面も持ち合わせています。

トリミングを行うことで、犬の体の衛生を保つことにつながります。例えば、口元の毛が長すぎると、食べカスなどが付きやすく、においも発生しやすくなります。下半身まわりの毛が長い場合は、排泄時に便や尿がついてしまい不衛生です。また、被毛が長いとノミやダニも繁殖しやすくなります。こうした不衛生な状態は、皮膚病や皮膚炎など違ったリスクを引き起こす可能性にもつながります。

他にも毛が長すぎることで、足裏のストッパーが利かずに転倒したり、関節に負担がかかったりする危険性もあります。顔の毛が長すぎると目を毛でふさいでしまい、何かに衝突する可能性も高くなります。被毛が長いと夏場には熱中症も懸念されるでしょう。このような事態を未然に防止するという意味でも、トリミングは大きな役割を果たしています。

トリミングはすべての犬に必要なの?

犬のトリミング

犬には毛の長い犬種と短い犬種が存在します。いくらお手入れを行うためといっても、すべての犬にトリミングを行うべきなのでしょうか。

トリミングが必要な犬種


・プードル
・ヨークシャー・テリア
・マルチーズ
・チワワ
・ダックスフンド
・ポメラニアン
・コーギー


トリミングが必要な犬は、被毛が長く多いことが特徴の犬種が挙げられます。具体的には、プードルやヨークシャー・テリア、マルチーズなどのシングルコートの犬です。シングルコートの犬は、年間を通して少しずつ毛の生えかわりがあります。そのまま放置しておくと、毛が絡まってしまうためトリミングが必要になります。

チワワやダックスフンド、ポメラニアンやコーギーといったダブルコートの犬種でもトリミングは必要です。ダブルコートの場合は、冬場に保温性を高めるためにアンダーコートと呼ばれる毛が生えてきます。アンダーコートは夏場になると、通気性をよくさせるために抜けおちていきますが、トリミングによるカットで手入れを行う必要があります。

トリミングが不要な犬種


・フレンチ・ブルドッグ
・パグ
・スムースコートチワワ
・ミニチュア・ダックスフンド


毛質の特徴上、毛足が短い犬種はトリミングをする必要はありません。例えば、フレンチ・ブルドッグやパグなどです。このような犬種は、トリミングでカットをするほど被毛が長くなりません。そのためわざわざサロンに行く必要はありません。

スムースコートと呼ばれる被毛の短いタイプの犬種もトリミングは不要です。同じ犬種でも、被毛が長いタイプと短いタイプの犬が存在し、前述のチワワやダックスの中でも、スムースコートチワワやミニチュア・ダックスフンドなどは短い毛のタイプになります。被毛が短いタイプの犬については、毛が長くなりすぎることはないので、トリミングは不要と言えます。

ただし、注意したいのはあくまでトリミングが不要であって、グルーミングは全ての犬に必要です。定期的にシャンプーや耳や爪のお手入れを行い、清潔な体を保つように心がけましょう。

犬のトリミングは何歳から始めればいいの?

犬のトリミング

子犬の状態から飼っている場合は、年齢的にどのタイミングからトリミングを行えばいいのか迷うかもしれません。ここでは、犬のトリミングと年齢の関わりについてご説明します。

年齢よりワクチン接種に気をつけよう

トリミングを行う際は、特に犬の年齢を気にする必要はありません。一般的にトリミングを行うサロンでは、生後3ヶ月以上を目安としているところが多いです。連れて行こうとしているトリミングサロンに事前に確認しておきましょう。

しかし、注意しなくてはならないのは、ワクチンの接種です。トリミングを行う場合は、全てのワクチン接種を終えて1週間ほどたった段階から可能になります。トリミングサロンには、様々な犬がいます。そのため、他の犬から感染症をもらってしまう可能性があります。1匹がきっかけとなり、さらに他の犬へ感染を拡大させてしまうかもしれません。特に、子犬の場合は成犬と比べて体力がありません。そのため病気が原因で健康を害すリスクもあるので、かならずワクチンの接種と経過を待ってから行いましょう。

犬のトリミングを行う際に準備しておくことはあるの?

トリミングを行う場合、事前に準備しておくと、スムーズに行えることがあります。また必ず準備すべきものもあるので、しっかりと確認しておきましょう。

ワクチン接種の証明書

犬のトリミングをサロンで行う場合、必ず準備しておきたいのは、ワクチン接種の証明書です。サロンによっては、狂犬病の予防接種済票が求められる場合もあります。特に初めてサロンに足を運ぶ場合は、初回時のみ必要となるものがある場合もあります。そのため予約時や訪問前に確認し、準備漏れがないか注意しましょう。

ご褒美のおやつ

準備しておくと便利なのは、ご褒美のおやつです。犬にとって、トリミングの時間は普段とは異なる環境に身を置かれることになります。じっとしておかなければならない時間もあるため、お手入れが終わったらしっかりと褒めてあげましょう。

体調面もチェックしておこう

サロンでは、犬のトリミングだけではなくグルーミングもセットで行うところもあります。そのため、水を浴びることになるので、事前に水に慣れさせておくことが大切です。また、全ての犬ではないですが、便意や尿意を催しやすい犬の場合は、トリミング前の食事を控えることが求められる場合もあります。

環境面以外では、体調管理も意識しましょう。子犬の場合は体調の変化が激しい場合があります。ストレスなどで体調を崩している様子が見られる場合は、無理せずその日は控えるようにしましょう。

犬のトリミングにかかる費用の目安は?

サロンで犬のトリミングを行う際に、どうしても気になるのは費用です。トリミングにかかる費用は、サロンのメニューや犬の犬種、また地域などにより異なります。

事前の確認が必要

犬のトリミングの費用は、犬種や大きさによっても変わります。トリミング単体ではなく、シャンプーや爪切りなどのグルーミングもセットになっている場合もあります。東京都内のサロンの平均価格として、このようなセットの場合、小型犬では6,000円前後となります。また中型犬では約7,500円、大型犬は約16,000円が平均価格となっています。

価格は同じ大きさの犬でも、毛の長さや犬種によって前後します。サロンで予約を行う前に、必ずメニューの内容と同時に価格を比較しておくといいでしょう。

別料金が発生する可能性も?

犬に毛玉が多い場合は、バリカンやハサミを破損させてしまう場合があります。そのためスムーズにトリミングすることができないほか、犬自身にもケガをさせてしまうリスクもあります。そのため、サロンによっては通常料金に加え、毛玉対応料金というものが加算される場合があります。費用を少しでも抑えたいという場合は、日頃のブラッシングで毛玉を作らないよう心がけましょう。

犬のトリミングは自分で行ってもいいの?

犬のトリミング

定期的なトリミングは犬にとって必要です。しかし、毎月サロンに連れて行くことは、経済的にも負担となる場合もあるでしょう。ここでは自分でトリミングを行う際の注意点などをご紹介します。

犬のトリミングを行うなら正しい方法で

自宅で犬のトリミングを行っても大丈夫です。しかし、適当にトリミングすることは、犬にとってもリスクがあるので、事前に勉強しておくことが大切です。例えば、シャンプーを行う場合は、ブラッシングをしっかり行った後に、体を濡らしてあげてください。また、犬が動いてしまう時は、落ち着いてからカットします。その際は、小さいハサミの使用を心がけましょう。

誤ったカットや適当なカットは、犬の皮膚を傷つけてしまうほか、目や耳にハサミの刃が入ってしまう場合があります。どうしても嫌がっている場合は、無理矢理行わず、毛並みを整える程度にとどめましょう。

こまかなケアはプロの手で

自宅でのトリミングは、コストを抑えるという面ではメリットがある方法です。しかし、どうしても、細かなケアが行き届かないところもあります。日頃行き届かない場所をケアするには、トリミングサロンでのトリマーの対応が一番です。どうしても費用を抑えたい場合は、シャンプーは自宅で行い、カットや爪切りなどをサロンで行うという方法も手段のひとつです。

犬のトリミングを行う最適な頻度は?

犬のトリミング

初めてのトリミングが終わって、さっぱりした犬を見るとうれしくなるものです。また、良いサロンに巡り合った場合も、「次はいつ連れて行こう」と考えるかもしれません。頻繁に連れて行く必要はありませんが、適切なタイミングでトリミングを行うことは大切です。

犬種や毛の長さを考えて

トリミングの頻度は概ね月1回程度が目安となりますが、犬の毛の長さや犬種、季節によっても異なります。毛の伸び加減などを考慮して、様子を見ながらトリミングを考えましょう。ちなみに、3ヶ月以上放置してしまうと毛玉が広範囲に広がりやすくなり、希望したスタイルに仕上がりにくくなってしまいます。

また、トリミング中に、毛玉が引っ張られることによって犬が痛い思いをしてしまうかもしれません。そのため、定期的なメンテナンスを行う意味でも、サロンを利用するようにしましょう。

老犬(シニア犬)の場合は注意が必要

老犬(シニア犬)の場合の場合は、トリミングやグルーミングを行う際に、体に多くの負担がかかってしまいます。そのため、なるべくサロンでトリミングを行う場合は、時間を短くしてもらうようお願いしてみましょう。サロンでスムーズにケアを行うには、自宅での日々のお手入れも欠かせません。

老犬(シニア犬)に限った事ではありませんが、こまめなブラッシングなどが大切です。自宅でのケアを入念に行うことで、少しでもトリミングにかかる負担を軽減してあげましょう。



第2稿:2021年9月16日更新
初稿:2020年10月12日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家の コメント:

私たちが体をメンテナンスするのと同様に、犬も定期的に体をメンテナンスすることが大切です。見た目を整えるという意味でももちろんですが、健康を維持するという面でも、定期的なトリミングを心がけましょう。


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