2024年03月29日 更新 (2024年03月25日 公開)
夫、双子の男の子、愛犬ベル(イングリッシュコッカースパニエル)と4人+1匹暮らし。休日はDIYをしたり、釣りやキャンプに行ったりとアクティブでアウトドアな家族。
保護犬ベルちゃんがもたらした、子どもたちの成長やくらしの変化とは?
目次
- ソファ以外すべて手作り。なんでも自分たちで作るDIY一家
- “犬用”にこだわらない。人間の気分も上がる、ペット用品選び
- スロープやベンチなど、愛犬との生活に合わせたDIYも
- 「もう犬は絶対飼えない」先代犬で経験した、別れのトラウマ
- 犬を迎える前に、小学校低学年の息子たちと交わした約束
- この子に会いたい! 保護犬カフェで見つけたベルちゃん
- 家族みんなで愛犬が心を開くのを待った、約1ヶ月
- 犬好きな長男だから生まれた、犬をテーマにした自由研究
- みんな同じ大切な命。保護犬=“難しい子”というわけではない
ソファ以外すべて手作り。なんでも自分たちで作るDIY一家
「作れるものは、なんでも作りますよ」
そう話してくれたのは、旦那さんと双子のお子さんたち、そして保護犬のイングリッシュコッカースパニエル・ベルちゃんとくらす智子さん。
智子さんはSNSで、キャンプやDIYなど自身の家族のくらしについて発信しています。
SNSのプロフィールには「リビングにある家具はソファ以外手作り」という言葉が。智子さん一家は、欲しいものをなんでも自分たちの手で作ります。
それは、ベルちゃんの身の回りの物も同様です。ソファーへの登り降りのためにスロープを作ったり、粗相をしても大丈夫なように木のベンチを作ったり、ベルちゃんの過ごしやすさにも配慮しながらお家づくりに日々励んでいるようです。
智子さんご家族の“手作りするくらし”や、ベルちゃんを迎えたことで家族にどんな変化が起きたのか、お話を伺いました。
“犬用”にこだわらない。人間の気分も上がる、ペット用品選び
智子さんの自宅は家具をウッド調で揃え、ベルちゃんがいるリビングの統一感もバッチリ。ベルちゃんのケージも家にとても馴染んでいます。
「あまり市販のペット用品だけでは使わないようにしているんです。特にプラスチック製品は、木製が多い我が家に置くと浮いてまって。家に馴染むことを優先し、人間用のものも選択肢に入れて選んでいます」
リビングで大きく場所をとる、ベルちゃんのケージにも工夫が施されています。
ケージの上には、手作りの木のカバーを被せ、お部屋のテイストに揃えていました。こうすることで、ケージ上の空間を収納場所としても活用できます。さらに、ベルちゃんの毛が飛ばないようケージの側面にアクリル板をつけたりと、お掃除の効率化も考えられています。
また、ベルちゃんのフードには、アメリカンヴィンテージのお皿を使っています。
「値段が少し高かったのもあって割っちゃったらどうしようと不安で、お気に入りの食器なのにあんまり使えていなかったんです。でも、ベルのご飯は毎日のことですから、あげる側もテンションが上がるものがいいなと思って。ベルにとってはどうでもいいことだとは思うんですけど(笑)」
スロープやベンチなど、愛犬との生活に合わせたDIYも
避妊手術後に傷口の痛みで登り降りがしづらくなってしまったベルちゃんのために、旦那さんがベルちゃん用のスロープを手作りしたこともあります。
「避妊手術後、まだ来て数ヶ月しか経っていなかったベルがある日、なぜか食卓テーブルの上に座っていて。『なんで〜!』ってすごくびっくりしました(笑)おそらく、イスの上に乗ったはいいものの傷口の痛みで降りられず、どうしようもないからもっと高い机に乗ってしまったんだと思います。かわいそうだなあと思って夫に相談したら、一瞬で理想のスロープを作ってくれました」
他にも、お風呂が苦手なベルちゃんが入浴後にダイニングのイスに粗相をしてしまうことがあったため、おしっこをされても大丈夫なように木製のベンチも作りました。
ワンちゃんを迎えたからといって、家に馴染まないペット用品で我慢するのではなく、人間用のものも含めて探したり、作れるものは自分たちで作ったりしながら、インテリアを楽しんでいます。
「もう犬は絶対飼えない」先代犬で経験した、別れのトラウマ
そんな、ベルちゃんがやってきたのは、約3年前のこと。
犬好きのお母さんの影響から、物心つく前から動物が好きだった智子さん。一人暮らしで犬猫が飼えない時期には、鳥とくらしていた時期もあります。
それから、結婚・出産まで、約10年以上雑種の「らんまるくん」とともにくらしていたのだそう。
「実家で飼っていた愛犬との別れもすごく辛くて、なかなか立ち直れませんでした。らんまるとの別れも同じくらい悲しくて、メンタルがやられてしまいましたね……お別れの辛さは何度経験しても慣れることはありません。だからこそ、もう犬は絶対飼えないと思っていました」
犬を迎える前に、小学校低学年の息子たちと交わした約束
「もう犬は飼わない」
そう固く決意し、お子さんたちにも伝えていた智子さん。しかし、無類の動物好きに育った長男くんは『学校の帰り道に捨て犬がいたら絶対拾ってくるからね』と毎日のように、犬を飼いたいとアピールするようになったのです。
「私の弟がドッグトレーナーの仕事をしているので、その影響もあってか犬が大好きなんです。私は絶対に飼わないって言っても、長男は飼いたいの一点張りで、ずっと平行線。もう本当にしつこかったんですよ(笑)」
お子さんたちは当時、小学校低学年。
「犬が欲しいとずっと言ってくるけれど、どうせお世話するのは最初だけ。結局どの家もお母さんがすることになるんだから」と、お子さんたちの飼いたい気持ちを、智子さんはなかなか信じることができずにいました。
そこで、小学校3年生のとき、練習の意味も込めてハムスターを飼ってみることに。すると約2年という短い命ではあるものの、お子さんたちは最期までしっかりと面倒を見ることができました。
そんな様子を見て、智子さんの気持ちに変化が起きます。
「ハムスターのお世話をちゃんとやり切った様子を見て、子どもたちの成長を実感しました。どうせお世話なんかできないと決めつけて、子どもたちの気持ちに向き合っていなかったのかもしれません。『犬を飼いたくない』というのは私個人の気持ちであって、それで子どもたちから犬を飼う機会を奪ってしまうのは良くないな、と思い直したんです」
智子さん一家は、「まだ飼うかはわからないけど、とりあえず見にいってみよう」と、弟さんから教わった保護犬カフェへ足を運びました。
これまでお子さんたちはペットショップの子犬しか見たことがなかったため、保護カフェにいるたくさんの成犬や老犬に驚いている様子だったといいます。
「ヨボヨボなワンちゃんもたくさんいましたけど、それでも子どもたちは目を輝かせていてました」
保護犬とはどんな存在なのか、ペットショップの子たちはどう違うのかをお子さんたちに説明してみたところ、『子犬じゃなく、保護犬がいい』とのこと。
「『犬は世話しないと死んじゃうからね』とか『雨が降っても、自分の遊びよりも散歩を優先しないとダメだからね』とか、かなり口酸っぱく言いました。そして、自分が何歳になってもお世話をつづけることを約束して、ワンちゃんを迎えることを決断しました」
この子に会いたい! 保護犬カフェで見つけたベルちゃん
いくつかの保護犬カフェの情報を調べていると、推定1歳のイングリッシュコッカースパニエルの子が新しく掲載されていました。元繁殖犬で「心雑音あり」とだけ情報が載せられたその子が、後のベルちゃんです。
「まだ保護犬カフェにデビューもしていない子だったので、人に慣れているかも犬に慣れているかも分かりませんよと、スタッフの方に言われました。でも、どうしてもこの子に会いたかったんです」
保護犬カフェでは、一度会った子が数日後にはいないこともざらです。そのため、智子さんはベルちゃんの情報を見つけたその日に会いにいき、すぐに引き取ることに決めました。
「全然準備していなかったので、ケージはひとまず弟に借りて、トイレトレーニングのやり方も弟から急いで教えてもらいました。本当にあっという間の出来事でしたね」
家族みんなで愛犬が心を開くのを待った、約1ヶ月
ベルちゃんは家に来てからの数日間、新しい環境に慣れず部屋の隅に隠れていることが多かったとか。また、体をよく観察してみると、肉球はあまりに綺麗で爪も伸びていたため、もしかしたら外での散歩を一度もしたことがない可能性が考えられました。
成犬ではあるもののトイレの仕方も知らないため、粗相をされることもしばしば。
「一体、この子はどんな環境でくらしていたんだろうと考えずにはいられませんでした。最初の頃は、お散歩するにも車や電車の音や通りすがる人を怖がって歩かなくなったり。おやつに対してあまりにもがっつくから、これまでおやつをもらえたことも、なかったのかもしれないなって」
しかし、家に来て約1ヶ月たった頃には、お子さんたちとベルちゃんもすっかり仲良しに。
智子さんたちが心がけたのは、ベルちゃんから近寄ってくるまでそっとしておいてあげること。お子さんたちも触りたい気持ちは抑え、なるべくベルちゃんから心が開くのを待つようにしていたそうです。
犬好きな長男だから生まれた、犬をテーマにした自由研究
お子さんたちが小学校3年生の時に話した「何歳になっても面倒を見ること」という約束事は、小学校6年生になったいまでもちゃんと守られています。
お子さんたちも宿題や習い事など忙しい日々を過ごしているため、散歩は家族みんなで交代しながらではありますが、ごはんやお水の入れ替えはお子さんたちが担当しています。
「水が足りなくなったら、ベルもしっかりアピールしてくるんですよ。だから、すぐに気づけます。子どもたちが学校から帰ってきたらごはんがもらえるので、ベルはいつもそわそわし始めますね(笑)」
犬が大好きな長男くんは、小学校4年生のときの自由研究のテーマに「保護犬」を選択。
もともと何かを調べて文字にまとめることがあまり得意ではない長男くんでしたが、「保護犬」をテーマにした発表は、伝わりやすい文章でしっかりと情報をまとめられていたと、智子さんは振り返ります。
「息子のおかげで、私も保護犬についてたくさんのことを学びました。積極的に保護犬カフェに足を運んで話を聞き、自分の言葉で発信する息子の姿にも感動しました。大人たちはニュースや本だけで済ませてしまいがちですけど、子どもは“犬が好き”という純粋な気持ちで調べてるからこそ、保護犬が置かれている状況がすごくリアルに伝わってくるんです」
発表内容の中には『人間はセラピー犬や盲導犬、警察犬など犬に助けられてることがたくさんあるのになんで人間は犬を助けないんだろう』という言葉が。
「本当にその通りだなあと感心してしまいました」と智子さん。
さらに長男くんは小学6年生になり、今度は「犬の殺処分」をテーマに選びました。本来、6年生は自由研究をやらなくてもいい学年であるにもかかわらず、自分から「やりたい」と伝えてきたそうです。
「保護犬も犬の殺処分についても、ベルがうちに来なければ、私たち家族は全然知ることがありませんでした。ベルは私たちにすごく大切なことを教えてくれた存在です」
みんな同じ大切な命。保護犬=“難しい子”というわけではない
ベルちゃんが家にやってきてから変化したのは、実はお子さんたちだけではありません。
「なんだかんだ、一番変わったのは夫かもしれません。夫が一番ベルに話しかけてますし、私も子どもも忙しくて、構ってくれるのはベルしかいませんからね(笑)ベルを迎えて一番良かったと思っているのは、夫なんじゃないかと思うくらいです」
一方、智子さんにとってベルちゃんは、“家族の末っ子”のような存在。最初こそ、「保護犬を迎えたんだ」という意識があったものの、今では保護犬だからといって特別扱いしなければという意気込みはありません。
「保護犬って、なんだか難しそうなイメージがあると思います。たしかに、人間になかなか慣れない子や病気がちの子がいるのは事実です。でも、だからといってすべての子がそうというわけではないし、ベルのように数ヶ月経てばすっかり慣れてしまうような子たちもたくさんいます。ですから、個人的には、過度にハードルをあげる必要はないのかなと思うんですよね」
智子さんたちは保護カフェからの厳しい審査を受け、『もしも家族全員が死んでしまったらベルちゃんはどうするのか』など、最悪のシチュエーションまで検討した上でお迎えしています。このように慎重に決断することが大切なのは言うまでもありません。
しかし「あまりハードルを上げすぎず、保護犬という選択肢がもっと当たり前のものになってほしい」と智子さんは続けます。
「私たちがベルを飼ったことに影響を受けて、私の周りでも保護犬を迎えた人たちが何人かいます。その時はすごくうれしかったですね」
「ペットショップにいる子たちも保護カフェにいる子たちも、両方とも等しく大切な命です。ベルはもうすっかり家族の一員で、保護犬であることを意識することはもうほとんどありません。でも、私たちの日常を発信することで一匹でも多くの命を救うことにつながってくれるなら、こんなに喜ばしいことはないですね」
智子さん一家に、新しい世界を見せてくれたベルちゃん。これからも、智子さん一家らしいくらしを世に届けてくれることでしょう。