2023年11月24日 公開
くりぼうの兄。柴犬くりぼうのお鼻パワーで世界に癒しを提供するインスタコンテンツ作り担当。その他ドキュメンタリーやショートフィルムなど映像作家としても活動中。
動画クリエイターの今治建城さんが愛犬・くりぼうくん(柴犬)と世界に伝えたい「犬想い」とは?
目次
- 動画クリエイターの今治建城さんとお鼻の大きな柴犬くりぼうくん
- 先代犬から続く鼻デカ写真は、愛犬とのコミュニケーション
- ファンの心の支えになる愛犬。アパレルもお守りがわりに
- 「愛犬にいろんな世界を見せたい」怖がりな2人がいく車中泊の旅
- 犬の存在を大きなものにした、先代犬クーちゃんとの思い出
- 犬の命の尊さを知ってほしい。SNSで発信をつづける理由
- 生きることのシンプルさを教えてくれた愛犬とみる、将来の夢
動画クリエイターの今治建城さんとお鼻の大きな柴犬くりぼうくん
真っ黒で大きなお鼻が特徴の柴犬・くりぼうくん。世界中のファンから愛されています。
「カメラを向けると大人しく座って鼻を突き出すようになりました(笑)」
そう話してくれたのは、日々くりぼうくんの写真や動画をSNSにアップしている飼い主の今治建城さん。芸術系の大学を卒業後に勤めた会社を退職し、現在はブライダル動画やドキュメンタリー作品の制作など、フリーランスの動画クリエイターとして活躍しています。
会社を辞めた理由は、くりぼうくんと一緒にたくさんのことに挑戦したいから。
Instagramアカウントに多くのファンがついたことをきっかけに、くりぼうくんをモチーフにしたアパレルブランド『 TEAM Kuribo Shiba™』での衣類の販売もスタートさせました。
そんなクリエイティビティあふれるくりぼうくんと今治さんは、普段どんな生活を送っているのでしょうか。また、くりぼうくんとの作品を通じて世に伝えたい「犬への想い」について聞いてみました。
先代犬から続く鼻デカ写真は、愛犬とのコミュニケーション
くりぼうくんは、好奇心旺盛で犬も人も大好きな男の子です。ドッグランやお散歩中は他のワンちゃんを見つけては、一緒に遊びたくてはしゃぐタイプですが、そんな時でもカメラを向けると大人しく鼻を突き出してくれます。
「直前まではしゃいでいても、カメラを向けると写真用の顔を決めてくれます。『やってやるか』という感じで、めんどくさそうに鼻を向けてくれますね(笑)」
今治家には、くりぼうくんを迎える約1年前に16歳で亡くなったクーちゃんという雑種のワンちゃんがいました。お鼻を突き出した写真は、クーちゃんのといる時からよく撮っていたスタイルなのだとか。
「犬の鼻をアップで撮るのが昔から好きなんですよね。撮っているとつい笑っちゃうんです(笑)」
ファンの心の支えになる愛犬。アパレルもお守りがわりに
今治さんは、くりぼうくんをモチーフにした『TEAM Kuribo Shiba™』というアパレルブランドも立ち上げました。日々くりぼうくんの写真をアップしていくうちに『くりぼうを身につけたい』というファンの方からのメッセージが届いたからです。
アパレルのデザインもすべて今治さん自身で手掛けています。
「くりぼうのアカウントには、国内外さまざまなところに住む人たちからDMが届きます。『いつも癒されています』とコメントをくれる方が結構多いんです」
中には、『精神的に落ち込んでしまい会社に行くのが辛かったけど、今日はくりぼうの投稿を見たからがんばれた』というような声が届くこともあるそうです。
「くりぼうの存在が、その人にとっての心の支えになっているみたいです。『お守りのように、くりぼうをどこかに身につけたいからグッズを作って欲しい』という要望も増えてきて。くりぼうの力って本当にすごいですよね」
「愛犬にいろんな世界を見せたい」怖がりな2人がいく車中泊の旅
今治さんはいま、関東圏を中心に月の半分はお仕事での出張、もう半分はくりぼうくんがいる香川の実家に帰る二拠点生活を送っています。実家にいるときは日々の散歩でくりぼうくんの写真を撮り溜めし、時には一緒に車中泊の旅に出かけることもあります。
「くりぼうに、いろんな世界を見せてあげたい」という想いで始めた車中泊の旅。いつもお家で暮らすくりぼうくんのために、外に連れ出すようになりました。
長い時はバンで3泊4日することもあります。最近では、徳島県の剣山という普通は人が行かないような大自然まで2人で出かけたそうです。
旅中は車の中で簡単な料理をし、食事を済ませます。
でも実は、今治さんアウトドア慣れはしていません。くりぼうくんが来るまでは完全なインドア派。車中泊やアウトドアの経験はほとんどなかったといいます。
「僕は結構怖がりなのですが、それに似てくりぼうも怖がりなんです。なので、車の中に虫が入ってきたりすると、僕も怖いですが、くりぼうも車の隅っこに縮こまってブルブル震えています(笑)」
犬の存在を大きなものにした、先代犬クーちゃんとの思い出
「先代犬のクーとくらして、犬という存在は自分の中ですごく大きなものとなりました」
クーちゃんは、何の前触れもなく突然お父さんが家に連れて帰ってきたワンちゃんでした。
「父が出勤するためによく通る道に、ボロボロのペットショップがあったそうです。そこで外にゲージに置きっぱなしにされていたのが、クーでした。見るに見かねたのか、ある日家族に何の相談もなしに連れて帰ってきたんです」
クーちゃんには脱走癖がありました。勝手に外に出ては気づいたら家に戻ってくる、というのは日常茶飯事。
そんなある日、雷が鳴るような天気の朝にクーちゃんはいつもの如く脱走。「いつものことだし、大丈夫かな」と思いながら今治さんは学校に到着。すると、朝のホームルーム最中に、なんとクーちゃんが廊下を走り去っていたのです。
「クーは一度も学校に来たことがなかったはずなので、本当にびっくりしました。職員室や校長室も通り、校舎を走り回ってみんなでクーを追いかけました。あれはクーと過ごした16年の中で一番強烈な思い出ですね(笑)」
大学生になり、実家を出て東京で生活している頃に、クーちゃんは亡くなりました。
「クーが亡くなったと連絡が来たときは、全然実感がありませんでした。でも、実家に帰ってみて、空になった犬小屋をみると『本当にいないんだな』と初めて実感したんです。めちゃくちゃ涙が溢れてきました。その時のことはすごくよく覚えています。クーは僕に命の重さや意味を教えてくれた存在でした」
犬の命の尊さを知ってほしい。SNSで発信をつづける理由
その後、約1年後に『クーと足の靴下が似てるから』という理由で、再びお父さんが突然ペットショップからワンちゃんを連れてきました。クリクリした瞳が特徴だったため、「くりぼう」と名付けられたのです。
くりぼうくんの写真をInstagramで発信するようになったのは、芸術系の大学に通っていた頃に、課題として犬の殺処分のドキュメンタリーを撮影したことが始まりでした。
『10424』というタイトルのこの作品は、殺処分されるワンちゃんたちが最後に見る景色が犬目線で描かれたものです。
作品を制作したのは、くりぼうくんを迎える前のこと。クーちゃんが亡くなり間もない頃、今治さんはテレビで犬の殺処分についてのニュースを目にします。
「自分はクーが亡くなってこんなに悲しんでいるのに、この殺処分された何千匹、何万匹のワンちゃんたちは、誰にも悲しまれず、存在していたことも知られないまま死んでしまうんだなと思って。同じ『死』なのに、これだけの違いがあることに違和感を覚えたんです」
「亡くなっていったたくさんの命を忘れないために、映像作品として世に伝えていきたい」と思った今治さんは、実際に殺処分の現場へ足を運び、カメラを回しました。
その後、開催した展示会ではインスタレーションとして壁に映像を投影し、殺処分される犬目線の景色をより体感できるような仕掛けを施しました。
「殺処分のドキュメンタリーは、そこで働く職員の方や保護犬団体の方の目線で描かれることが多いかと思うのですが、この作品は犬目線にしています。『こういうふうに死んでしまうんだ。最後に見る景色はこんな感じなんだ』と意識に問いかけるような作品にしたかったんです」
この作品は「東京ドキュメンタリー映画祭 2018」や、映画祭「International Filmmaker Festival of New York」のショートフィルム部門 審査員特別賞などを受賞し、ニューヨークでも上映されました。
展示後は、『自然と涙が出てきた』『この作品を見て自分の子を大切に育てようと思った』など大きな反響がありました。
今治さんは、いまでも時折くりぼうくんのInstagramのアカウントでこの作品のリンクを流すようにしています。言葉なく進むこの作品は海外のファンの方にも届き、感想のDMが送られてくることも。
「殺処分と直接言われると、目を背けたくなってしまうものだと思います。なので、くりぼうのアカウントでは、直接的には殺処分の投稿はしていません。でも、『犬の命の尊さを伝えたい』という気持ちはその頃から変わっていないんです。犬も人間と同じ家族の一員で大切な存在なんだということを、楽しく、親しみやすい形で伝えていきたいと思っています」
生きることのシンプルさを教えてくれた愛犬とみる、将来の夢
今治さんは「これまで何度もくりぼうに支えてもらってきた」と話します。
フリーランスになり仕事がうまくいかないとき、コロナで外出自粛になり誰にも会えなかったとき、ただそばにいてくれるくりぼうくんの存在に助けられたそうです。
「くりぼうが僕の身体に触れるように横に座って、顔を見てくることがあります。仕事やプライベートなどでうまくいかないとき、僕の勝手な想像ですが『なんとかなるよ』と伝えてくれている気がするんです」
人は、仕事や人間関係など社会で生きている限りさまざまな悩みを抱えがちですが、犬は、お腹が空いたら食べ、眠たかったら寝る、と、シンプルです。
そんなくりぼうくんが持つ「生きることのシンプルさ」に触れると、自分の悩みなんて大したことがないと、追い詰められた気持ちが解されていくのかもしれません。
「短い命だけど、その一瞬を一生懸命生きる姿を見ると、言葉で会話はできないけれど、そのぶん心に訴えかけられるものがあります。犬は最初は可愛い存在くらいな気持ちだったとしても、一緒にいる時間が長くなると信頼関係ができて、人と同じように心で繋がることができると思うんです。言葉がないのに繋がれる。それが唯一、人間と犬のパートナーシップが持つ特別な力なのではないかと感じています」
今治さん自身が、くりぼうくんに救われたことがたくさんあるからこそ、他の人たちにも伝えていきたい。それがアカウント名にもなっている『KURIBO DREAM』、つまり今治さんとくりぼうくんの夢の原動力となっているそうです。
「いつかは一緒に海外で車中泊の旅をし、世界中にいるくりぼうのファンに会いに行ったり、くりぼうが登場する映画も作りたいです。夢みがちなので、考えていることは山ほどあります(笑)くりぼうがいるからこそ挑戦できることがたくさんあるので、それを通じて犬という存在の素晴らしさを伝えていきたいですね」