犬の「うれしょん」を直す方法とは?原因と対処法などについて解説【獣医師監修】

犬の「うれしょん」を直す方法とは?原因と対処法などについて解説【獣医師監修】

帰宅したときに、大喜びした犬がおしっこを漏らしてしまう「うれしょん」。喜んでくれるのは可愛いけれど、後始末も大変だし、毎日のことだと困ってしまいますよね。「うれしょん」の根本的な原因とは何でしょうか? 今回は、「うれしょん」の原因や直すためのトレーニング方法などを、動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に解説していただきます。

犬の「うれしょん」とは?

飼い主に飛びつく犬家族が帰宅したときや、家族や好きな人とのふれあいに熱中している最中に、犬がおしっこを漏らしてしまったことがあるかもしれません。これは興奮などによって誘発される「うれしょん」です。「うれしょん」は犬の最上級の興奮と服従を表し、専門的には「興奮性排尿」「服従性排尿」とも呼ばれています。


興奮性排尿の「うれしょん」

興奮性排尿は、帰宅した飼い主に挨拶をしているときや、遊びの最中に立ったり歩いたりしているときなどに起こります。服従の姿勢を示すボディーランゲージがなく、犬自身は、おしっこを漏らしたことに気付かないのが特徴です。


服従性排尿の「うれしょん」

服従性排尿は、人が近づいたり、頭の上に手をかざしたり、罰したり、叱ったり、大きな声を出すなどしたとき、犬が恐怖を感じたことをきっかけに起こります。過去の体罰などトラウマに起因するため、保護犬の「うれしょん」は服従性排尿の可能性が高いです。

服従性排尿は、服従をする姿勢を取ってから自発的に排尿します。服従の姿勢とは、耳を平らにする、アイコンタクトを避ける、頭と首を下げる、身体を小さく伏せる、しっぽを内側に巻き込む、寝転がってお腹を見せるなどさまざまです。

犬が「うれしょん」をしてしまうのはなぜ?

犬の「うれしょん」は興奮や、恐怖からくる服従により引き起こりますが、その他の要因も「うれしょん」の誘発に関わっています。


飼い主の態度や声掛け

飼い主の態度や声掛けにより、服従と興奮のどちらか、または両方の感情が高まって「うれしょん」の原因となっている場合が多く見られます。「うれしょん」をやめさせるために、飼い主がきつく叱ったり罰を与えたりすると、犬は怖がって服従を示します。それが今度は服従性排尿の原因になるという悪循環に陥ります。


膀胱括約筋の筋力低下

膀胱括約筋が弱いと、ちょっとした感情の高まりで尿が漏れてしまいます。


犬種や性別など遺伝的な要因

犬種や性別などの遺伝的な要因も原因になり得ます。後の項目で詳しく解説します。

犬のおもらしは全て「うれしょん」?

飼い主の帰りを待つ犬犬がおしっこを漏らすのは「うれしょん」だけではありません。マーキングや信頼関係不足がおもらしを誘発している可能性があります。飼っている犬の様子をしっかり観察し、専門家への相談も含めて対処方法を検討しましょう。


トイレトレーニングが不十分な可能性も

単純にトイレトレーニングが足りていないケースも考えられます。きちんとトイレで排尿出来るように、トイレの場所を見直し、排泄間隔のチェックを行いましょう。


マーキング行動の可能性も

あまり興奮していない時に足を上げて「うれしょん」をする場合は、マーキング行動である可能性があります。この場合は、飼い主との信頼関係が不足しているのかもしれません。毎日優しく褒める、号令に従ったらおやつをあげるなど、ポジティブなコミュニケーションを増やすことで改善されていきます。


分離不安によるおもらし

「飼い主がいなくなるかも」と予想した段階で不安が高まり、漏らしてしまう場合があります。ペットカメラなどを活用し、飼い主が外出しているときの様子を録画することで、分離不安かどうかを見極めることができます。留守中に不安行動が見られたら、獣医師やドッグトレーナーなどの専門家に相談しましょう。

「うれしょん」をしやすい犬はいる?

子犬はうれしょんをしやすい「うれしょん」は、性別・年齢を問わず見られる行動です。しかし、飼い主との関係性や犬の性格によって、「うれしょん」をしやすい傾向の犬もいます。


子犬

子犬のうちはちょっとしたことで興奮してしまい、「うれしょん」の回数が増えがちです。


小型犬

多くの小型犬は、大型犬に比べて過敏で怖がりです。飼い主との関係次第では、大人になっても「うれしょん」をしやすい傾向があります。


愛着や不安が強い犬

飼い主への服従心から起こる服従性排尿の場合は、飼い主への愛着が強い犬や、飼い主から叱られて不安になりがちな犬に多く見られます。


若いメス犬

解剖学的に、オス犬に比べメス犬はやや尿道が短いために「うれしょん」が起こりやすいと考えられています。

犬の「うれしょん」はやめさせるべき?

犬の「うれしょん」をやめさせるべきなのは、飼い主の反応が理由に挙げられます。というのも、犬がおもらしして喜ぶ飼い主はいないからです。犬が「うれしょん」をしたのに気づいた飼い主は、叱ったり罰を与えたり、あるいは不機嫌になって掃除を始めたりするでしょう。このようなことは、犬にとっては飼い主が豹変したと感じられ、驚かせたり不安がらせたりする要因となります。そして、犬に葛藤や不安を感じさせたり、服従性の排尿をさせたりと、問題が発展してしまう可能性があるのです。

そのため、犬の「うれしょん」はやめさせるほうがいいでしょう。そして、犬が「うれしょん」をしてしまっても、飼い主は決して叱らないことが大事です。

犬の「うれしょん」の対処法は?

犬を落ち着かせる犬の「うれしょん」をやめさせるには、犬の興奮と緊張を減らし、恐怖と不安も減らし、穏やかでリラックスした振る舞いを促すための訓練に焦点を当てるべきです。

 

家族の帰宅時に犬の興奮を鎮める

飼い主や家族が帰宅したときに犬が興奮している場合は、無視をしてゆっくり犬から離れます。犬が落ち着くまで目を合わせることも避けましょう。おもちゃを投げ、飼い主から注意をそらすのも有効です。興奮が収まった段階でコミュニケーションを取り、落ち着いたことを褒めましょう。


来客時に犬を興奮させない

お客さんと犬が挨拶する場合には注意が必要です。人から犬に近づくのではなく、犬のほうから人に寄っていくまで待ってもらいましょう。犬を興奮させないよう、穏やかに振る舞ってもらうことが大切です。犬が近づいてきたら、膝をついて静かに話しかけてもらいます。頭を避けて胸元などを撫で、犬が興奮してきたら1回ストップ。犬の興奮が落ち着いてきたら再開します。犬が好きなおもちゃを与えて気をそらし、興奮を抑えてもいいでしょう。


それでも「うれしょん」をしてしまった場合は?

飼い主は冷静に振る舞い、絶対に叱ってはいけません。犬に恐怖や不安を与えず、興奮と緊張を和らげる必要があります。犬は飼い主をよく観察しているため、飼い主の反応が面白ければ「またやろう」と学習し繰り返しますし、怖いと感じれば服従性排尿につながってしまいます。

犬の「うれしょん」をやめさせるトレーニング方法は?

犬の「うれしょん」をやめさせるトレーニングとは、犬の恐怖感や過度の服従、興奮など、「うれしょん」につながる反応を起こさず、落ち着いていられるように教えることです。「うれしょん」に繋がりがちな反応を、あらかじめ決めた別の行動(「伏せ」や「ハウス」など)に置き換えることができれば、ほぼ解決と言えるでしょう。


【トレーニングの手順】

1.置き換え行動を決める

まず、置き換える行動を決めます。「座って待つ」「伏せをして待つ」「ハウスに入って待つ」などの号令(コマンド)がおすすめです。犬が飼い主に近づく前に、離れた場所で落ち着かせることができます。まだ「待て」の号令ができないのであれば、「お座り」や「伏せ」でもOKです。無理をせず、犬が今できることの中から選ぶのがポイントです。


2.犬が「うれしょん」をする条件を見定める

犬がどのような条件で「うれしょん」をするのか、全て把握しておきます。


3.落ち着くための練習をする

飼い主の帰宅時など、犬が興奮して「うれしょん」をしそうなタイミングで号令をかけ、決めた置き換え行動を取らせます。号令に従ったらおやつをあげて十分に褒めます。トレーニングを繰り返すと、「うれしょん」をする条件がそろっても興奮しなくなります。その時も褒めておやつをあげ、「興奮しない=いいことがある」と学習させます。

犬は吠えることでも興奮がエスカレートするため、吠えそうになったら号令で気をそらすことも大切です。慣れてきたらゆっくりステップアップして、激しい遊びに夢中になっているときでも号令によってパッと気持ちを切り替えられるように練習しましょう。

犬の「うれしょん」の原因が病気の可能性はある?

排尿前に地面を嗅ぐ犬「うれしょん」に見えても、生まれつきや病気が原因の場合があります。生まれつき尿道括約筋や膀胱に異常があると、尿が漏れやすくなります。また、排尿器の病気が原因でおしっこを失敗している可能性もあります。


「うれしょん」と排尿器疾患による失敗の見分け方

おしっこが出る直前の行動を観察します。犬は通常の「うれしょん」の前には、何の準備行動もなかったり、服従の姿勢をとったりしています。一方、排尿器に原因がある場合、犬は尿意を感じているため、「周辺の地面の臭いを嗅ぐ」など、おしっこの準備をするための行動を取ります。


排泄状況の確認を

疾患が原因の場合、排尿の間隔が短くなる、排尿が困難に見えるときが増える、尿に血が混じるなど、変化が見られる場合があります。犬の排泄状況を観察し、異常が見つかれば、すぐに獣医師に相談しましょう。また、普段から排泄の記録をつけておくと、しつけや健康管理に役立ちます。

犬の「うれしょん」が直らない場合は病院で相談した方がいい?

犬が健康で、トレーニングを続けても「うれしょん」が直らなければ、「ホルモン反応性尿失禁」が考えられます。特に避妊手術後のメス犬に多く見られ、血中の性ホルモン濃度が低下することにより、尿道括約筋がゆるみ、無意識でおしっこを漏らしてしまうのです。早めに獣医師に相談し、ホルモン補充の薬を処方してもらうなどの治療を受けましょう。

犬の「うれしょん」がひどい時はオムツなどのグッズを使用した方がいい?

おむつをした犬「うれしょん」が直るまでは、市販されているおむつやマナーベルトなどを活用してもいいでしょう。トレーニング中におむつを使用すると、「うれしょん」に対する飼い主の不安が軽減され、結果的に犬にもいい影響を与えます。

ただし、暑い時期に長時間おむつをしていると、蒸れて皮膚炎を起こす恐れがあります。また、おむつの中でウンチをしてしまったのに放っておくと、お尻周りの毛にくっついて大変なことになります。犬のためにも飼い主のためにも、ポイントを押さえて上手に利用しましょう。


おむつを使うポイント

  • 犬にあったサイズのおむつを選び、正しく装着する。
  • 1日に34回は交換する
  • 犬の皮膚状態を毎日確認する

「うれしょん」対策は、飼い主の振る舞いがポイント

「うれしょん」をやめさせるには、犬を過度に興奮させないことが大切です。犬は賢い動物ですから、トレーニングを重ねることで必ず落ち着いて過ごせるようになります。間違っても犬を叱ったり、閉じ込めたりしてはいけません。

トレーニングではあまり興奮しない状況で取り組み始めて、徐々に興奮しやすい状況へと難易度を上げます。これは「系統的脱感作」と呼ばれる方法で、犬に不安やストレスを与えずに学習させることができます。また、来客があるとわかっている際は、おむつの活用や、事前にトイレをさせるなどの事前対策も有効でしょう。

専門家のコメント:

「うれしょん」には、大喜びしたときの「興奮性排尿」と、恐怖を感じたときの「服従性排尿」があります。それぞれの犬にあった対処法を心がけてください。また、「うれしょん」をやめさせるためには、犬はもちろん、飼い主自身も穏やかでリラックスした振る舞いを心がけることが大切です。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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