犬のマウンティングとは?問題な理由と対処法、やめさせる方法について解説【獣医師監修】

犬のマウンティングとは?問題な理由と対処法、やめさせる方法について解説【獣医師監修】

犬がマウンティングをするのにはさまざまな意味があります。ストレス解消だったり、単に遊んでいるだけだったり……相手やシーンによって変わる意味を知ることができたら、もっと愛犬の気持ちに近づけるようになれるかもしれません。今回は犬がマウンティングする理由やマウンティングで起きるトラブル、マウンティングさせないための方法などについて獣医師の茂木千恵先生からお話を伺いました。

犬のマウンティングとは?

前肢を相手の背部に乗せて腰を振ったり、腹部を抱えようとする仕草のことを「マウンティング」と呼びます。本来は生殖行為において行われる動作です。哺乳類のように体内受精をする動物であれば、雄が精子を雌の生殖道内に送り込むための交尾行動・性行動として身についています。

ただ今回解説するのは、主に性行動以外の「マウンティング」についてです。このマウンティングは去勢避妊をしている雄や雌にも、また思春期前の子犬にも見られるものです。散歩中に他の犬にマウンティングしようとしたり、飼い主さんにマウンティングしたり、クッションやぬいぐるみなどの物にマウンティングしていたなど心当たりのある飼い主さんも多いかもしれません。

犬がマウンティングを始める時期は?

早い子では3~4週齢からマウンティングを始め、性成熟に伴って活発にマウンティングしている姿を見られるようになります。これはメスでも同じです。発情の徴候があるメスの前ではオスもマウンティングしようとしますが、大抵、メスはオスからのマウンティングを受け入れません。厳密に発情期の時にだけオス犬にマウンティングを許します。

犬がマウンティングする理由1:人に対してマウンティングする場合

性行動ではない「マウンティング」は、運動によって活性化したり、感覚刺激を受けたり、感情的な衝動によって興奮した時に見られるもので、雄にも雌にも起こります。自分の優位性をアピールしようとしたり、相手の行動をコントロールしようとしたり、相手への挑発を意図している場合が多いですが、マウンティングをする対象やタイミングなどによって意味が変わってくるのでケース別に説明します。まずは飼い主など人間に対してマウンティングするケースです。

飼い主に対してのマウンティング

飼い主さんに対してマウンティングをする場合は、遊びの要素が強くなっています。特に子犬の頃に遊んでほしくて飼い主さんの身体にマウンティングしたときに「ダメ」と言われなかったことで「やっていいのだ」と思ってしまっているケースがあります。「やっても怒られないから平気」と続けるうちに習慣化してしまうのです。

また動きたい、食べたい、遊びたいといった強い欲求が叶えられず不満や葛藤を強く感じたときにその衝動を和らげるために飼い主にマウンティングをする場合もあります。

飼い主以外の人へのマウンティング

こちらも遊びの要素が強いと考えられます。特に女性にマウンティングする場合は過去にマウンティングしたときの恥ずかしげな反応や可笑しがる雰囲気を「心地よいもの」と学習してしまい、繰り返しているケースもあります。

犬がマウンティングする理由2:他の犬に対してマウンティグする場合

よその犬にマウンティングする場合、愛犬の性別や相手の状況により意味合いが変化します。たとえば、発情期の雌を前にした雄の場合は性行動としての表現になりますが、雄・雌同士や避妊した雌相手にマウンティングするのはコミュニケーションの表現のひとつと考えられます。その動機は遊びや自分の強さをアピールしたいなど様々です。

遊びとしてのマウンティング

仲の良い犬同士の場合、互いに上になったり下になったりを交互に繰り返す遊びとしてのマウンティングをすることがあります。子犬の場合は純粋に遊びや社会ルールを学ぶための儀式的な行動でもあり、早い場合は生後3~4週で見られるようになります。

飛びついたり追いかけあったりという活動的なやりとりのひとつとしてマウンティングが起こり、相手に乗り続けるだけでなく次は自分が下になるといった風に立場がどんどん入れ替わるのが遊びの特徴です。ドッグランなどでマウンティングしあっている姿を見たことのある飼い主さんも多いでしょう。あれはマウントではなく、遊びの一環になります。

自分の強さをアピールしたい

成熟した犬はたまに会う犬に対して、自分の強さをアピールしようとすることがあります。同居犬が気に食わない行動をしているときにも、やめさせようとして近づいて唸ったり肩に前肢をかけたりするときにマウンティングが起こるときもあります。

相手との力関係を確かめたい

若い犬が自分の立ち位置がわからなくて、相手との力量を比べようとしてマウンティングすることもあります。そのため性成熟を経て青年期に差し掛かる時期から、犬を相手にしたマウンティングが頻繁になる傾向があります。

犬がマウンティングする理由3:物に対してマウンティングする場合

クッションやぬいぐるみなどの物に対してもマウンティングが起こります。雄犬は快感のために自慰行為をすることもありますが、飼い主さんとの関係性が不満、空腹や運動欲求などの不満、そのほか漠然とした不安などを感じた時にもマウンティングをすることがあります。自分が抱えたストレスをマウンティングによって発散しているのです。物が相手の場合、動いて逃げていかないため満足するまで続ける場合が多く、勃起したペニスを傷付けてしまうこともあるので注意が必要です。

犬がマウンティングする理由4:病気のサインの場合

マウンティングが病気のサインを伝えていることもあります。泌尿器系に感染があったり、足のつけねあたりにかゆみがあったりした場合もマウンティングをすることが多くなります。マウンティング以外にも、性器の周辺や足のつけね付近をよく舐める、排尿が頻繁、尿漏れがあるなどの徴候が同時に見られている場合は早急な治療が必要です。獣医師の診察を受けましょう。

どんな犬がマウンティングをしやすいの?

マウンティングは避妊去勢手術の有無関係なくすべての犬に見られます。その中でもマウンティングしやすいタイミングや特徴についてまとめました。

マウンティングしやすいタイミングは?

遊びや新しい出会いなど、興奮する状況で起きやすくなっています。また欲求不満を強く感じたときに自身を落ち着かせるためにマウンティングをする場合もあります。

また、マウンティングには飼い主さんとの信頼関係も反映されます。家庭環境に日常的な欲求不満、葛藤、あるいは不安がある時に起こることもあるので、飼い主さんとの信頼関係がしっかり構築されていない犬に起きやすくなります。「特に興奮していないはずなのにマウンティングしている」というときには、愛犬との関係性や家庭環境に原因がないか、ストレスを感じさせている部分はないか考えてみましょう。

マウンティングしやすい性格は?

犬の性格によってもマウンティングの起きやすさは変わります。興奮しやすい性格の犬はマウンティングをすることが多くなります。また相手の犬より強い立場に立ちたいという欲求を持っている犬も同様です。飼育環境に対して欲求不満を感じやすい犬や環境の変化に適応するのが苦手な犬もストレス解消のために物に対してマウンティングをする傾向があります。

マウンティングしやすい犬種は?

マウンティングはどんな犬種でもしますが、2013年の研究(※)では体高が小さい犬種のほうが人にマウンティングをする頻度が高いという報告がされています。つまり小型犬種のほうがマウンティングをしやすいということです。

ただこちらの研究では、遺伝子のせいではなく飼い主のせいでは?という指摘もされています。小型犬の活動性や興奮性が高いのは、室内で飼われているために十分な運動をしていないことが原因になっている可能性があります。また、姿形が小さいために、マウンティングしても特にしからない傾向があるため、このような結果になったのではと言われているのです。

犬のマウンティングで起きるトラブルは?

ストレス発散も兼ねているマウンティング。無理に止めると身体に悪いのでは?と心配になる飼い主さんもいるかもしれません。マウンティングが習慣化することで起きるトラブルをまとめてみました。

ほかの犬とのトラブルの原因になる

マウンティングは遊びのつもりで始めることが多いのですが、相手の犬にとっては脅しにもとれる仕草です。ドッグランなどでせっかくお友達になれそうな子がいてもマウンティングが癖になっていると相手から敬遠されてしまうこともあります。そうなるのは避けたいですよね。中にはマウンティングをされるとケンカを売られたと捉えて相手の犬が攻撃的に反応してくることも。マウンティングを放置しておくと、思わぬ怪我やトラブルにもなりかねないのです。

繰り返すマウンティングで日常に支障が出ることも

マウンティングをして実際に射精すれば快感が得られると犬が学習してしまうと、繰り返しマウンティングをするようになります。マウンティングばかりして日常の生活に支障が出る、夜も寝ないでし続けている場合には専門医の治療が必要です。「おかしいな?」と思ったらかかりつけの獣医師に相談しましょう。

犬にマウンティングをやめさせるためにはどうすればいい?

犬にマウンティングをやめさせるのは、しつけが一番です。マウンティングを始めてから続いている期間が長ければ長いほど、やめさせるのが難しくなるので、早めに取り組むことが大切です。

犬にマウンティングをやめさせる方法

1.犬が興奮して飼い主や家族など人に対してマウンティングを始めたら、寄りかかられている人は立ち上がって背を向けすぐに無視をします。

2.それでもやめない場合、犬のいる部屋から出ていきます。

飼い主さんと遊んでいるつもりだった犬にとって、大好きな飼い主さんから無視されるのはとても残念なことです。これは社会的な罰を与えるということです。マウンティングしようとしたら一貫して無視をすることで、残念に思う気持ちがしっかりと記憶に残り、だんだんとマウンティングをしなくなっていきます。

上記の方法が基本ですが、それ以外にも以下のような点に注意しましょう。

体罰はNG!

体罰や叱責は厳禁です。犬をつかんで引きはがそうとするとかえって犬の攻撃性を高め、つかんでいるその手を噛んでくることもあります。また強力な体罰によってその時のマウンティングは止まるかもしれませんが、欲求不満や飼い主さんへの不信感を生み、別の新たな問題行動の発生につながりかねません。

間接罰は有効

直接飼い主さんが手を下したと思われないようなびっくりさせる音や、家電製品のアラーム音などをリモコンで鳴動させ、犬がマウンティングを止めたら、号令をかけて落ち着かせます。号令に従えばご褒美を与えます。マウンティングをしたい気持ちをそらしつつ、さらに行動を望ましいものに置き換えていくのです。

マウンティングをしていない時に褒めるのを忘れずに

マウンティングをしていないときによく褒めます。犬がおとなしくお座りをしていたり伏せていたり、ハウスにいたりするときに声をかけ褒めます。犬が褒められる行動を自分からできるよう、望ましい行動をしているときにだけ褒めるようにすると学習が進みやすくなります。

去勢は有効?

雄の場合は去勢することで70~80%の犬がマウンティングをしなくなります。しかし、25%の雄は去勢してもマウンティングを行います。ある程度の効果は見られますが、必ずしも去勢をしたからマウンティングがなくなるとは言い切れません。


(※)出典:McGreevy, P. D., Georgevsky, D., Carrasco, J., Valenzuela, M., Duffy, D. L., & Serpell, J. A. (2013). “Dog behavior co-varies with height, bodyweight and skull shape”. PloS one, 8(12), e80529.


第4稿:2021年4月15日更新
第3稿:2021年1月27日更新
第2稿:2020年10月19日更新
初稿:2020年8月28日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

どんな犬種でも必ずするマウンティングは、しつけ次第で頻度を減らすこともできます。トラブルを未然に防ぐためにも、しつけにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。お散歩やドッグランでの遊びを気兼ねせずにできるのは、犬にとっても飼い主さんにとっても幸せなこと。たくさんのお友達を作って、快適なドッグライフを楽しんでくださいね。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。テレビ朝日系列動物特別番組 、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」「プードルスタイル」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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