犬が火傷(やけど)をしたとき、どうすれば?原因と応急処置、予防法について解説【獣医師監修】

犬が火傷(やけど)をしたとき、どうすれば?原因と応急処置、予防法について解説【獣医師監修】

犬がいつもと違い元気がない場合、飼い主も心配になることかと思います。この記事では、皮膚トラブルの一つ「火傷」について、原因や治療法、発生した場合の対処法や予防法などを海動物病院の獣医師・鈴木佐弥香先生監修のもと解説していきます。

そもそも犬の火傷とは?

犬が火傷(やけど)をしたとき人と同じように、犬も皮膚や肉球を火傷することがあります。具体的に、どのような状態を火傷というのか解説します。

 

犬の火傷と低温火傷

火傷とは、医学的に言うと「熱傷」と表し、高温物質や化学物質などが皮膚に付着することによって皮膚や粘膜などが障害を生じた状態のこと。火傷の中でも、短時間の接触では問題にならない温度の熱源が、長時間接触することによって生じる火傷を低温火傷といいます。湯たんぽや電気カーペットなどに犬が接触した状態で眠ってしまい、低温火傷を引き起こすケースも多いです。

 

犬の火傷の重傷レベル

火傷には、I度・II度・III度のレベルがあります。それぞれの定義は下記の通りです。
犬の皮膚の構造

 

I度

表皮のみの火傷。発赤、乾燥、知覚過敏が認められます。数日で完治し、痕は残りません。

 

II度

II度熱傷は深度によって2つに分類されます。

 

・浅達性Ⅱ度熱傷……真皮中層までの熱傷をいい、発赤、浮腫、水泡が認められ強い痛みがあります。1~2週間で完治し、痕が残ることはあまりないですが、色素沈着することがあります。

 

・深達性Ⅱ度熱傷……真皮下層までの熱傷をいいます。皮膚の一部が白っぽくなり潰瘍化(深く欠損)し、知覚の麻痺によって痛みはそんなにありません。3~4週間で完治しますが、痕が残る可能性が高いです。

 

III度

皮下にまで及ぶ熱傷をいい、皮膚構造は完全に破壊された状態です。壊死による潰瘍が認められ、白色化したり黒ずんだりします。完治には1か月以上かかり、痕が残ります。

犬が火傷をしているかもしれないサインは?

下記のような行動、様子が見られたら愛犬が火傷をしているかもしれません。

 

・患部を執拗に舐めたり、気にするような仕草をする
・患部を触ると嫌がる、威嚇する、キャンと痛がるような仕草をする
・患部をかばうような動き、寝方をする
・毛の焦げた匂いがする(毛が焼けてしまう)
・皮膚に赤みが見られる
・水泡(みずぶくれ)ができる
・皮膚がむけて白や黄色っぽくなっている
・皮膚がむけて白や黒っぽく見える、筋肉が露出している

 

また、犬が低温火傷を引き起こしている場合、基本的に皮膚の状態は通常の火傷と同じ症状が見られます。特徴は、火傷の範囲が小さく、神経を損傷している場合が多いので熱さや痛みを感じにくくなること。患部が毛に隠れているので、飼い主も気づきにくいです。しかし、低温火傷はゆっくりと進行し、発赤や水疱ができて、ひどい場合は血流の悪化とともに2週間ほどで細胞の壊死を引き起こすこともあるので気をつけましょう。

犬が火傷をしやすいシチュエーションは?

犬が火傷(やけど)をしたとき何気ない生活の中でも、愛犬が火傷してしまうリスクのある場面があります。主な例をご紹介します。

 

夏の散歩中に熱いアスファルトやマンホールを踏む

アスファルトやマンホールは黒っぽい色をしているため熱を吸収しやすく、太陽の熱を溜めこみやすいです。側溝の蓋なども同様で、夏場は60°以上の熱さになることもあります。散歩中の火傷の原因になってしまうので、十分気をつけましょう。

 

石油ストーブやファンヒーターに当たりすぎる

愛犬が遊んでいてぶつかってしまったり、つい近づきすぎて触れてしまったりするだけでなく、すぐ近くで暖かい空気に触れ続けていることによる低温火傷のリスクがあります。

 

調理中の事故

揚げ物をしている最中に油が飛んでしまったり、犬が飼い主に飛びついた拍子に熱湯がかかってしまったりといった事故も考えられます。台所にはなるべく犬が入れないようにしておくといいでしょう。

 

家電の電気コードを噛む

子犬や噛み癖のある犬は、家電の電気コードを噛んで感電してしまうリスクがあります。

 

シャンプー後のドライヤー

愛犬をシャンプーした後にドライヤーで乾かしてあげることも多いでしょう。しかし、これも低温火傷を引き起こす原因になりえます。風を当てる場所をまめに変えたり、風の温度を調整するといった配慮が必要です。

 

湯たんぽや電気カーペットに触れすぎる

湯たんぽや電気カーペットに長時間触れていると、低温火傷を引き起こしてしまうことがあります。愛犬がぬくぬくと気持ちよさそうにしていても、飼い主が気をつけてあげましょう。

火傷に特に気をつけたほうがいい犬は?

子犬やシニア犬は皮膚が薄く、免疫力や心肺機能なども低いです。火傷した場所から細菌に感染することによる重症化のリスクのほか、ショックからの回復力が低いので十分気をつけてください。子犬は何でも噛んでしまうので、電気コードからの感電にも注意が必要です。シニア犬の場合は、被毛が少なく体温調節が上手くいかないうえ、熱さを感じにくので電気カーペットなどによる低温火傷に注意しましょう。

 

また、元気な子犬、視力や体力の衰えたシニア犬は、電気コードに足を引っかけて熱湯が入っているポットを倒し、火傷してしまうケースなども考えられます。今一度、愛犬が火傷する原因になりそうなものがないか、家の中を見回してみてくださいね。

 

この他、活発な性格、好奇心旺盛な犬も電気コードに引っかかるリスクがあるうえ、飼い主の調理中に火の元をめがけて飛びついてくるといった危険もあるのでいっそう注意が必要です。長毛の犬種は、毛の間に熱がこもりやすく熱さに気づきにくく、毛に覆われて飼い主が火傷を発見できないこともあるので気にしてあげてくださいね。脳血管障害や糖尿病を患っている犬の場合は、皮膚の感覚が鈍くなっていることがあり、低温火傷を起こしやすいので注意が必要です。

犬が火傷になった場合の治療法は?

犬が火傷(やけど)をしたとき

火傷した場所や程度による適切な処置を解説します。

 

家庭での応急処置

火傷をしてから2時間以内であれば、まずは冷水で10分ほど冷やしてあげましょう。患部が赤くただれているような場合には、ワセリンやサラダ油を塗って皮膚を保護してあげるとより良いです。

 

動物病院での治療

皮膚がめくれて真っ赤になっている、水疱ができているといったⅡ度以上の火傷とみられる場合、また火傷が広範囲に及ぶような場合には、すぐに動物病院へ連れて行ってください。移動中もアイスノンなどで患部を冷やし、水疱は潰さないように。飼い主の判断で薬を塗るのは、悪化させてしまう可能性もあるのでやめましょう。

 

動物病院では、基本的には患部を乾燥させず、創傷被覆材などで湿潤な状態を保ちます。それによって肉芽組織の増殖、上皮化を促すのです。感染症や疼痛予防のために、抗生剤や鎮痛剤の投与が必要なこともあります。

 

手術が必要な場合

壊死を引き起こしている、細菌に感染している、汚染されているなどの可能性がある場合は、壊死した組織を切除したり患部を洗浄したりします。また、広範囲に及ぶ火傷では犬がショックを引き起こすことも。そのような場合には輸液や心肺蘇生、腎不全対策、感染症対策、皮膚移植などといった手術が必要です。

 

低温火傷の場合

低温火傷では、気づいたときにすぐ冷やしても効果がないことが多いです。愛犬が低温火傷になっているかもしれないと思ったら、すぐ動物病院へ連れて行ってあげましょう。低温火傷は皮膚の深部まで損傷していることが多いため、治療に数カ月かかることもあります。場合によっては、細菌感染症の予防や皮膚移植が必要です。

犬が火傷になった際の普段の生活で飼い主ができること

愛犬が火傷を治療している間は、下記のような生活を整えてあげましょう。

 

食事

健康な皮膚を保つのに欠かせないコラーゲンやビタミンC、ビタミンA、亜鉛などが豊富な食材、海藻などのサプリメントを与えてあげるといいでしょう。

 

運動

肉球以外の軽度な火傷で、犬が痛がったりしないようであれば普段通りの生活を送って問題ないと思われます。患部が擦れたり圧迫されたりしないよう、激しい運動は避けましょう。肉球を火傷している場合は、歩くと痛みを伴ったり症状が悪化したりしてしまうこともあるため、なるべく運動は控えてください。外科的処置を伴うような火傷の場合は、基本的に運動はさせないようにしてくださいね。

 

家の環境

同じ体勢が長時間続くと、血流が悪くなり患部の治りが遅くなってしまいます。定期的に寝返りを打たせてあげたり、犬のリラックススペースに柔らかいクッションなどを敷いてあげたりするとよいでしょう。

犬が火傷しないための対策は?

犬が火傷(やけど)をしたとき愛犬に火傷をさせないために、家の中と外でそれぞれ気をつけたいポイントを解説します。

 

家庭内での火傷対策

冬場に石油ストーブやファンヒーターを使用している場合は、なるべく犬から遠ざけ、ストーブガードなどを使って接触を防いであげましょう。ストーブガード自体が熱くなることもあるため注意してくださいね。愛犬に留守番させる場合は、石油ストーブやファンヒーターを切ってエアコンで部屋を暖めてあげる方が安心です。

 

小犬が噛みやすいコンセントなどには、カバーをしてあげるのも感電を防ぐのに効果的です。シャンプーの際などお風呂での火傷を防ぐには、高温のお湯が出ないようにあらかじめ温度の設定を低くしておきましょう。また、料理中は犬が台所に近付けないようゲートを設置するのもいいかもしれません。

 

外出時の火傷対策

暑い日に散歩するなら、早朝か夕方以降にしましょう。夕方になってもコンクリートの地面が熱いこともあるので、犬を歩かせる前に飼い主の手の甲で触って熱くないか確認してあげてください。また、靴を履かせてあげるのも対策として挙げられますが、お座りや伏せなどして肉球以外の部分を火傷してしまうこともあるので注意が必要です。

 


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

犬は人と違って、熱いとき、痛いときに言葉で伝えられません。飼い主が常に見守って、もし火傷をしていたらすぐに気づいてあげられるようにしておきましょう。しかし、それでも事故は100%防げるものではありません。万が一愛犬が火傷をしてしまったときは、慌てずに応急処置をして動物病院に連れて行ってあげてくださいね。

監修/鈴木佐弥香先生(獣医師)

酪農学園大学卒。公務員、製薬会社勤務を経て産後動物病院に転職。現在は、メディカルアロマや栄養学についても勉強中。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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