2023年11月22日 公開
2021年4月シヤチハタ株式会社に入社。入社後、商品企画を担当。同社初のペット用商品『ぺたっち 犬猫用』の商品開発にも携わった。トイプードルが大好き。
いぬ・ねこ用足形作成キット『ぺたっち 犬猫用』の開発秘話とは?
目次
- 肉球を汚さず、思い出が残せる足形作成キット『ぺたっち 犬猫用』
- 販売まで約3年。シヤチハタ株式会社初のペット用商品への挑戦
- クラウドファンディングに掲載し、わずか2時間で目標金額を達成
- 繰り返し使える、愛犬の肉球が汚れない足形スタンプの仕組み
- 愛犬と一緒に楽しむ共同作業だから、失敗作だって愛おしい
- 愛犬の誕生日や記念日…何気ない日常も思い出づくりにも活躍
肉球を汚さず、思い出が残せる足形作成キット『ぺたっち 犬猫用』
ペットの飼い主さんなら一度は「うちの子の足形を思い出に残したい」と思ったことがあるのではないでしょうか?
しかし、足を触られるのが苦手な子やじっとしていられない子もいるなかで、インキを肉球に塗って押すという作業はなかなか大変です。中には、インキをつけたまま家を歩き、床やカーペットを汚してしまったなんてことも。
『肉球を汚さずに足形を取れたらいいのに』
そんな飼い主さんたちの願いを叶えた商品が、いぬ・ねこ用足形作成キット『ぺたっち 犬猫用』です。
『ぺたっち 犬猫用』は、フィルムの上からわんちゃん・ねこちゃんの足を押すことで、ペットの足も飼い主さんの手も汚れることなく、紙に足形を取ることができます。
「ペットの足形までも愛おしいと感じる、飼い主さんたちからの熱量に驚きました」
そう話してくれたのは、『ぺたっち 犬猫用』を販売するシヤチハタ株式会社の商品企画担当・多和田舞乃さんです。
新卒でシヤチハタ株式会に入社後、約3年間『ぺたっち 犬猫用』の企画に携わってきました。そんな多和田さんに『ぺたっち 犬猫用』の開発秘話や商品に込めた想いを伺いました。
販売まで約3年。シヤチハタ株式会社初のペット用商品への挑戦
主に、文具や事務用品を製造してきたシヤチハタ株式会社。ネーム印やスタンプでもおなじみです。
子ども用の手形スタンプパッド『パームカラーズ』など、さまざまなスタンプパッドを販売してきました。
そんな同社にとって、ペット用商品の製造・販売はこの『ぺたっち 犬猫用』が初めてでした。企画から販売までにかかった期間はおよそ3年。他の商品と比べると、試作に長く時間を割いたそうです。
始まりは、お客さんからの問い合わせでした。
「『子ども用の手形スタンプをペットに使っても問題ありませんか?』と、問い合わせをいただくことがよくありました。また、『実際にペットの足にインキ塗ってみたら、そのまま部屋中を歩き回って汚れてしまった』という飼い主さんのお悩みの声を聞くこともあったんです」
そんなお客さんたちの声から「もしかしたら、肉球を汚さずに足形が取れるペット用の商品に、ニーズがあるかもしれない」とひらめき、『ぺたっち 犬猫用』の企画はスタートしたのです。
クラウドファンディングに掲載し、わずか2時間で目標金額を達成
社内にペットの飼育経験があるメンバーが少なかったこともあり、商品企画段階では本当にニーズがあるか疑問視する声もあったそうです。
しかし、商品完成後にクラウドファンディング『Makuake』に掲載してみたところ、たったの2時間で目標金額を達成。終了時にはなんと目標金額の1440%もの支援金が集まりました。
「ペットの足形を残したい飼い主さんがこんなにたくさんいるんだと、正直驚きました。飼い主さんにとってはペットの足形までも愛おしいものなんですね。みなさんの愛犬・愛猫を想う熱量の高さに感動したのをおぼえています」
繰り返し使える、愛犬の肉球が汚れない足形スタンプの仕組み
『ぺたっち 犬猫用』は、フィルムとインキパッドがセットになっています。
付属のフィルムにインキパッドでインキを均一に塗り、フィルムを裏返し、反対側から台紙に肉球を押し当てるだけで足形スタンプが取れます。
直接わんちゃんの肉球にインキが触れないので、肉球を汚さずに足形スタンプを押すことができます。
フィルムについたインキは、ウェットティッシュなどで簡単に拭き取れます。後片付けもお手軽です。
開発段階では社内のわんちゃん・ねこちゃんを飼っているメンバーを集め、ヒアリングを行いました。その結果、ほとんどの飼い主さんは足形キットで『成長記録として足形を残したい』と感じていることがわかりました。
そこで、はじめは使い捨ての商品を検討していましたが、誕生日などの記念日ごとに毎年足形スタンプを取れる、繰り返し使える商品のほうが飼い主さんの希望を叶えられるのではないかと考えたのです。
『ぺたっち 犬猫用』は、フィルムにインキを塗り足せば、何度も足形スタンプを押せます。インキも約25回分、使用可能です。
「弊社がこれまで取り扱ってきた商品、スタンプやハンコなどは、あまり“やり直しをしない”ものが大前提だと思うんです。でも、『ぺたっち 犬猫用』は飼い主さんとわんちゃんが楽しむもの。何回も、何年経っても遊べるのような仕組みにしました」
開発当初はフィルムではなく紙を、インキもインキパッドではなくローラーやペン、スプレーなど、さまざまな形態での試作を繰り返したそうです。
「ペットの肉球を汚さない形状で、かつ一番足形をきれいに取れる素材の研究を重ねました。その結果、インキを薄く均一に塗ることがコツであることが判明したんです。そのため、薄くインキを塗ることができるインキパッドとフィルムの組み合わせに決めました」
愛犬と一緒に楽しむ共同作業だから、失敗作だって愛おしい
試験を重ねるうちに、よりきれいに足形を押す方法もわかってきました。
- 体重の軽い小型犬は、犬を抱え、空中で押すのがおすすめ
- 足形を取るタイミングはトリミングの後がおすすめ
大型犬の場合は、歩くように上から体重をかけるだけできれいに足形を取ることができます。しかし、小型犬の場合は体重が軽いため、上から押してもあまり圧力がかかりません。そういう時には、二人での作業がおすすめです。
1人がキットを手に持ち、もう1人が愛犬を抱っこをして、飼い主さんの手で愛犬の足をギュッと押してあげるときれいな足形が取りやすくなります。
この発見をきっかけに、商品に同封されている説明書には、この2つの足形の取り方が記載されています。
また、肉球の間に毛が多いと、その毛も写り込んでしまいます。できるだけ毛をカットし、肉球回りがスッキリした状態のほうがスタンプに適しています。この点も、説明書に追記されました。
「他にも工夫した点はいくつかあります。他の商品よりもインキの粘度を高くすることで薄く塗れるようにし、梱包材もフィルムが曲がらない仕様に工夫しました。初めてのペット用商品だったので、私たちにとっても挑戦が多い商品でしたね」
こうして、肉球を汚さずにきれいに足形を取れることにこだわってきた『ぺたっち 犬猫用』ですが、実際に使ってみた飼い主さんのSNSの投稿には、『きれいに取れなくても、それはそれでうちの子らしくてかわいい』という感想もあったそうです。
「きれいに押せなくてもかわいいというのは、少し意外な反応でした。取れた足形はもちろん、飼い主さんと協力して押している姿もかわいいんですよね。たとえ失敗しても何度でも挑戦できるし、その過程も楽しいのでぜひ気軽にチャレンジしてみてもらいたいです」
愛犬の誕生日や記念日…何気ない日常も思い出づくりにも活躍
足形を押すイメージの“ペタッ”ていう感覚と、触れる“タッチ”を掛け合わせて、『ぺたっち』というネーミングになっています。
「わんちゃんと飼い主さんとの触れ合いやコミュニケーションの機会になったらうれしいです」
家族になった日や誕生日などを記念して作ってみるのはもちろん、何気ない日常の思い出づくりにもピッタリな『ぺたっち 犬猫用』。
フレームに入れて飾ったり、キーホルダーやしおりにして持ち運んだり……愛犬の足形作品のアレンジ方法はさまざまです。
『Makuake』で支援してくれた飼い主さんの中には、『亡くなる前の最後の思い出づくりに使いたい』という声もあったそうです。
「亡くなる前に商品が届いてほしいというコメントをくださった方もいます。切ない気持ちにもなりましたが、それだけ大切な瞬間に『ぺたっち 犬猫用』を使っていただけるのは、ありがたいことでもありますね」
『ぺたっち 犬猫用』は、これからフォトフレームとのセット販売やご供養関連の商品とのセット販売などを計画中なのだそうです。ペットとの大切な思い出を彩る『ぺたっち 犬猫用』。気になる方はぜひトライしてみてはいかがでしょうか。