補助犬ってどんな犬?種類や仕事、訓練など基礎知識を解説!

身体に障害がある人の目や耳、手足となってくれる「補助犬」。名前自体は耳にしたことがあると思いまずが、具体的にどんなことをする犬なのかは、案外知らなかったりしませんか? 今回は獣医師の茂木千恵先生に教えていただいた、補助犬の種類や仕事内容、訓練、法律から、街で補助犬を見かけときの注意点まで、補助犬についての基礎知識を紹介します。

補助犬ってどんな犬?

ラブラドール・レトリーバー とゴールデン・レトリーバー

補助犬の正式名称は「身体障害者補助犬」。「身体障害者補助犬法」という法律に基づいて訓練・認定された盲導犬・介助犬・聴導犬のことを指します。仕事内容は異なりますが、いずれも「身体障害者の自立と社会参加を促進する」ことを目的とし、人の暮らしを支えてくれています。

 

日本では現在(20203月末時点)、約1,000頭の補助犬が活躍中。盲導犬が一番多く909頭、聴導犬は69頭、介助犬は62頭です。

 

犬種を見ると、盲導犬は大型犬のラブラドール・レトリーバーが主流。他にはゴールデン・レトリーバー、「F1」(エフワン)と呼ばれるラブラドールとゴールデンのミックスなどが活躍しています。介助犬は盲導犬と同様の犬種に加えて、スタンダード・プードルも活躍中。聴導犬はさまざまな犬種が活躍中ですが、その大半は元保護犬です。

補助犬になるための訓練とは?

レトリーバーの子犬たち

「身体障害者補助犬法」に補助犬になるための訓練と認定の基準が示されています。盲導犬は国家公安委員会、介助犬と聴導犬は厚生労働省の指定法人として認定された、全国約30の育成団体施設で選抜・訓練を受け、認定されているのです。

 

最初は「候補犬」の選抜から。盲導犬と介助犬は「障害者の補助活動をスムーズに実施できる」と判断できるような健康状態体格・性質が求められます。聴導犬には体格基準はないものの、健康状態の良好さは必要で、さらに「補助活動がスムーズにできる性質」が必須です。

 

選抜をクリアすると訓練へ進みますが、盲導犬は生後2ヵ月から1歳まで、「パピーウォーカー」と呼ばれるボランティア家庭で、人間社会で暮らすためのルールを学んでから基礎訓練へ入ります。介助犬や聴導犬も同様にボランティア家庭で育てられる期間があります。

 

訓練内容は育成団体や補助犬の種類によって異なりますが、通常12年半をかけて、次のような3つの段階で訓練を進めます。

 

STEP1:基礎訓練

呼んだら来る、指示で伏せる、といった基本的動作を学ぶ訓練。おいしそうな食べ物、他の動物など「刺激」を無視できるようになることもトレーニングします。

 

STEP2:ニーズに合わせた動作の訓練

盲導犬は、視覚障害者の方と街中を歩く「タウンウォーク」で、安全な歩行をサポートする「誘導訓練」を行います。介助犬・聴導犬は「介助動作訓練」と言う、物の拾い上げや運搬、ドアの開閉など、日常生活動作を介助するために必要な動作を身に付けます。

 

STEP3:使用者との訓練

STEP1〜2で身に付けたことを、補助犬の使用者本人からの指示で、どんな場所でも落ち着いてできるようにする訓練です。

 

使用者とパートナーとなる補助犬が訓練センターで宿泊して生活を共にしたり、使用者の自宅や職場などで、きちんとサポートができるか確認をしたりします。盲導犬の場合は「共同訓練」、介助犬・聴導犬の場合は「合同訓練」と呼ばれます。使用者が、排泄や給餌など補助犬の世話について教わるのも、この訓練でのポイントです。

 

これらの訓練を突破すると、晴れて補助犬に! 補助犬に認定された後も、定期的に育成団体によるフォローアップや指導が行われます。

補助犬のお仕事とは?

介助犬

訓練を経て補助犬になった犬たちは、どんなお仕事をするのでしょうか? 種類別にそれぞれ見てみましょう。

 

盲導犬のお仕事

視覚障害者の方の歩行をサポートします。障害物や曲がり角、段差を教えることで、安全で快適に歩けるようにしてくれます。

 

介助犬のお仕事

肢体不自由者の方に対して、日常生活の動きをサポートします。例えば、落としたものを拾って渡す、手の届かないものを持ってくるなど。ドアの開閉、スイッチ操作なども仕事のうちです。

 

聴導犬のお仕事

聴覚に障害を持つ方のサポートをします。音を聞き分けて教え、音源へ誘導するのが主な仕事。例えば、玄関のチャイム音、キッチンタイマー、赤ちゃんの泣き声、車のクラクションなどを教えてくれます。

 

こうして大体2歳くらいから活躍した補助犬たちは、その多くが10歳前後で引退。引退後はボランティアさんの家庭で普通の家庭犬として、第二の犬生を送るのです。

「身体障害者補助犬法」とは?

盲導犬

「身体障害者補助犬法」とは、補助犬についてさまざまに定めた法律です。補助犬の訓練や認定は、この法律に基づいています。また、補助犬の表示や書類(身体障害者補助犬健康管理手帳と、盲導犬使用者証または身体障害者補助犬認定証)の携帯など、補助犬の使用者の義務も定められています。そして、さらに注目したいのが、国内の不特定多数の方が来訪する施設などに、補助犬同伴の受け入れを義務付けているということです。

 

同法によると補助犬の表示として、盲導犬は「ハーネス」と呼ばれる白や黄色の胴輪、介助犬は「介助犬」と書かれた主に黄色い胴着、聴導犬は「聴導犬」と書かれた主にオレンジ色の胴着の着用が義務付けられています。そして国の管理施設、民間施設、公共交通機関などは、これらの表示を身に着けた補助犬の同伴を拒んではならないと規定されています。

 

しかし実際には、レストランやホテル、タクシーなどで、他のお客様への配慮を理由に同伴を拒否されることも……。そんな中、厚生労働省では、補助犬の同伴受け入れを施設利用者の方に知っていただくため、「ほじょ犬マーク」を作成しています。

 

ほじょ犬マーク

(出典:厚生労働省ホームページ

 

 

ほじょ犬マークを施設入口に掲示することで、施設利用者があらかじめ補助犬同伴の可能性を心得ることができます。そして、補助犬の使用者が安心して補助犬を同伴でき、周囲の人たちへの意識啓蒙にも役立つことを目的としています。その他にも厚生労働省では補助犬啓蒙のため、さまざまなリーフレットを制作しています。

 

これらの法律や啓蒙活動によって、補助犬の役割について理解が広まり、施設や周囲の方が補助犬の同伴を温かく受け入れる世の中になることを願います。

実は補助犬の数は減っている!?

飲食店での同伴拒否など、補助犬への理解がなかなか厳しいという現実がある日本。実は近年、補助犬を希望する人がだんだん減ってきているのです。人間のヘルパーさんには来てほしいけど、補助犬では不安が……と考えてしまう傾向もあるそうです。

 

ただ、犬と暮らすことや一緒に歩くことは、「自分で生活できている」という自信につながり、自立の支援にもなります。補助犬の存在そのものが、「心のサポーター」として役立つと考えられているのです。

 

補助犬の利用については、日本補助犬協会では希望者を随時募集しています。日本盲導犬協会でも随時相談を受け付けていて、盲導犬を無償で貸与してくれることも。

 

身体に不自由があって「補助犬と一緒に暮らしたい」と考えているなら、ぜひ、各協会へ相談してみるのをおすすめします。もし周囲に、生活や歩行に不自由を感じている方がいらっしゃったら、補助犬について伝えてみてください。

街で補助犬を見かけたらどうすればいい?

聴導犬

街でお仕事をしている補助犬を見かけたとき、周囲の人たちはどういう態度でいるのがよいのでしょうか。一番とるべき態度なのは、補助犬がお仕事に集中できるよう、温かく見守ることです。

 

逆にやってはいけないことは、犬を褒める言葉や驚かすような言葉をかけ、おもちゃやおやつを使って補助犬の注意を引こうする行動です。取り返しのつかない事故につながる危険があるので、絶対にやめましょう。

 

使用者(飼い主)さんへは、温かな声掛けが望まれます。特に盲導犬の使用者は周囲が見えないため、声による触れ合いが重要です。まれに「仕事にこき使ってワンちゃんが可哀そう」という言葉を投げかけてくる人もいて、使用者が心を痛めることもあるそうです。そうした声掛けが、補助犬への理解が世の中に浸透することで、なくなることを祈っています。

専門家のコメント:

補助犬は人に迷惑をかけないトレーニングを受け、衛生的に問題のないケアを受けた動物。補助犬が人を優しく支えてくれているように、社会も補助犬を温かく受け入れる雰囲気を作っていきたいですね。

茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。テレビ朝日系列動物特別番組 、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」「プードルスタイル」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

詳しく見る