ウィペットを健康的に長生きさせるには、その体質やかかりやすい疾患について知っておくことも大切です。その一例を以下に紹介します。
白内障
白内障とは、目の中にある水晶体の一部、または全体が白く濁った状態になる病気です。その原因は遺伝性のものから老齢性、別の目の疾患や糖尿病などが原因となるものまであります。予防するのは難しいため、早期発見を意識することが重要となります。
緑内障
緑内障は、眼球内にある眼房水が溜まることで眼圧が上がり、視神経や網膜に異常が起きる病気です。目が大きく見えるほか、充血や痛みを伴います。病状が進行すると、失明する可能性があるため注意が必要です。
遺伝的に眼房水が流れ出る部位が閉塞していたり、角膜炎やブドウ膜炎などをはじめとした他の眼疾患から続発性に起きたりする場合があります。そのため角膜炎をはじめとした眼疾患が起きないよう、注意する習慣も大切です。例えば、角膜に傷がつかないように、室内や散歩コースで目にぶつかるものは避けるようにしましょう。緑内障を進行させないためにも、目の異変を感じたらすぐに病院に連れていき、早期発見・早期治療に努めるようにしてください。
水晶体脱臼
ピントの調節をしているレンズ部分である水晶体が、前もしくは後ろに脱臼してしまう病気を水晶体脱臼といいます。痛みの他、眼内出血や角膜浮腫が起きます。ブドウ膜炎や緑内障、網膜剥離などを併発することもあるので、早期発見と治療が大切です。
原発性の場合は予防が難しいですが、外傷や眼疾患、腫瘍が原因で起こる続発性の水晶体脱臼は普段の生活で防ぐことができます。外傷を避けたり、異常が見られたらすぐに病院を受診したりするようにしましょう。
耳介脱毛症
耳介脱毛症は耳の全体もしくは一部に脱毛が見られる、原因不明の病気です。若いオスでの発症率が高く、病気が進行すると8歳頃までにほとんどの毛が抜けてしまいます。遺伝性の疾患のため、現段階では明確な予防法はありません。
口蓋裂
口蓋とは、口の中と鼻の穴を分ける部分のことです。口蓋裂では生まれつき口蓋が裂け、穴が開いたような状態になります。子犬の時にはその穴からミルクや離乳食が鼻腔内に流れ込み、鼻から出てきてしまうケースもあります。生まれつきの病気で予防法のない疾患です。
アレルギー性皮膚炎
ウィペットは、ハウスダスト・花粉・ノミ・食べ物などが原因となって起こるアレルギー性皮膚炎を起こしやすいと言われています。発症すると皮膚に発赤やかゆみなどの症状が見られます。明確な予防法はありませんが、生活環境を整えたり、アレルゲンを避けたり、腸内環境を整えたりすることが症状の緩和につながるでしょう。
停留睾丸
停留睾丸(ていりゅうこうがん)とは、一定期間を過ぎても睾丸が陰嚢におりてこず、腹腔内や鼠径部にとどまってしまう病気で、何か症状が現れるわけではありません。遺伝が関与していると言われ、予防法のない疾患です。
靭帯のケガ
ウィペットは、前十字靭帯断裂をはじめとした靭帯のケガを起こしやすい犬種です。原因は加齢による靱帯の劣化や肥満による負荷が考えられます。その他、ジャンプやダッシュ、ターンなどの過度な運動、事故や打撲による外傷が原因になることもあります。肥満にならないような体重管理、フローリングのような滑りやすい床材を避けたりすることなどが予防につながります。
胃捻転胃拡張症候群(GDV)
ウィペットのような胸が深い犬種は、胃捻転胃拡張症候群を起こしやすいと言われています。胃捻転胃拡張症候群は胃が拡張し、ねじれてしまう病気です。吐きたそうなしぐさや苦しそうな様子、よだれが出るなどさまざまな症状が見られます。さらに、胃にガスが溜まることで腹部の膨張がみられ、呼吸困難やショック症状、多臓器不全から短時間で死に至ることもあります。予防としては、食後の激しい運動や早食いを避けることが大事です。
監修/林美彩先生(獣医師)
chicoどうぶつ診療所所長
酪農学園大学卒業
獣医保健ソーシャルワーク協会、獣医ホリスティック医療研究会所属
大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。テレビ番組への出演・協力のほか、「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)などの著書がある。
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