お手は右手と左手、どっちで教えるのが正しい?しつけ方のコツと注意点を解説【獣医師監修】

お手は右手と左手、どっちで教えるのが正しい?しつけ方のコツと注意点を解説【獣医師監修】

かわいらしい、犬の「お手」のしぐさ。実は、しつけと言うよりトリック(芸)の位置づけにありますが、飼い主と犬の絆を深めることなどに役立てることができます。そんな「お手」について、メリットや教え方のコツなどを「ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets」代表で獣医師の石井香絵先生に解説していただきます。

監修/石井香絵(旧姓:牧口)先生(獣医師)


ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets代表
AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員
神戸ロイヤルグルーミング学院 犬猫行動学講義担当講師
麻布大学 獣医学部獣医学科卒業

 

犬猫の問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナーやテレビ協力、雑誌「NJK」(ホーピスト)や「trim」(エデュワードプレス)、Web媒体にて、犬の行動学についての記事を執筆するなど幅広く活躍。著書に「愛犬をやさしく癒すクリスタルヒーリング」(エー・ディー・サマーズ)。行動治療にホリスティックケア(メディカルハーブ、フラワーレメディ、レイキ、アニマルコミュニケーションなど)を取り入れ動物たちに優しい治療を行っている。

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犬の「お手」は教えるべき?「お手」のメリット

犬の足を診察

犬の「お手」はトリックのひとつです。基本のしつけである「おすわり」「ふせ」「まて」「おいで」に比べると、教える重要性は低いとされています。それでも、教えることで得られるメリットもあるので、基本的なしつけができたら「お手」を練習するのをおすすめします。

「お手」を教えることには、次のようなメリットが期待できます。


犬と飼い主の絆が深まる

「お手」ができるようになると、それをきっかけに、前足を「お手」よりも高くあげて飼い主の手にタッチする「ハイファイブ」や、前足を空中でヒラヒラと振る「バイバイ」など、さまざまなトリックを教えられるようになります。トリックを教えることは楽しく、飼い主と犬の良質なコミュニケーションにつながります。


肉球や足に触られるのに慣れ、怪我や病気の早期発見に

足や肉球はお手入れ時に触れやすい部位ですが、触れられるのが苦手な犬は多いもの。「お手」を教える延長として、そうした部位に触れられることに慣れさせるとよいでしょう。足や肉球に触られるのに慣れると、爪切りや足拭きなどの定期的なお手入れが、飼い主と犬の双方ストレスなくできます。また、怪我や病気の早期発見・対処につながることもあります。

私の愛犬の例では、散歩中に急に「びっこ」を始めたことがありました。肉球間に小石がはまっていたのが原因でしたが、犬が嫌がらずに足を触らせてくれたので、小石にすぐ気づいて素早く対処することができました。

犬にとって「お手」の意味とは?

犬同士で遊んでいて、前足を相手の肩や背中にかけるしぐさをするのを見たことはないでしょうか。これは、優位を示したいときに行なうしぐさです。犬の先祖と考えられているオオカミも、相手との優劣関係を示すコミュニケーションとして同様のしぐさを使い、前足をかけるほうが優位で、かけられたほうは忠誠や服従を示すと考えられています。つまり、「お手」のしぐさは、相手への優位を示す意味を持つことがあるのです。

ただし、飼い主に足をかける「お手」には、飼い主に優勢性を示す意味はないようです。今では、飼い主の気を引きたいときや何か要求があるとき、「遊ぼう」と誘うときなどに使う場合が大きくなってきています。

犬の「お手」は右手、左手?

犬のお手

「お手」は左右どちらの前足で行うのがよいのでしょうか。この点については、国際的愛犬団体「ジャパンケネルクラブ」(JKC)による犬の訓練競技会などの正式な競技会では、「お手」は右前足、「おかわり」は左前足と規定されています。

しかし、家庭でトリックとして犬に「お手」を教える場合は、右左どちらの前足にするかは、飼い主がルールを決めてよいでしょう。おそらく、犬は利き足を最初に出すので、基本的には利き足が「お手」で、もう片方の足が「おかわり」になります。

大事なのは「お手を右手、おかわりを左手」などと一度決めたら変えないこと。曖昧さを作らず、ルールに沿って教えてあげたほうが犬に混乱が起こらず、練習もスムーズに行えます。

 

犬に「お手」を教える時期

家に犬を迎え入れたら、すぐに「お手」を教えたくなるかもしれません。でも、「お手」は犬と暮らしたら絶対に教えなければいけない号令ではないので慌てなくて大丈夫。

犬を迎えたらまず、犬の名前やよいことをしたときの言葉(「いいこ」など)を教えます。続いてアイコンタクト、「おすわり」「ふせ」「待て」「おいで」などを教えるようにしましょう。

こうして犬が飼い主と行うしつけやトレーニングに慣れてきた頃に、「お手」をトリックやコミュニケーションの一環として教えてみるとよいでしょう。

犬に「お手」を教える方法

犬のお手

「お手」は、足を触れられるのが平気な犬と、そうではない犬によって教え方を変えるのがおすすめです。それぞれご紹介しましょう。


足に触られるのが平気な犬への「お手」の教え方(右前足の場合)

  1. 犬の右前足に優しく触れて少しだけ上に持ち上げます。拒絶なく行わせてくれたら、「いいこ」と言葉で褒め、おやつを与えます。これを繰り返します。

  2. 「右前足を上げると、おやつがもらえる」と理解できてくると、飼い主の手が犬の右前足に触れると、犬が自ら右前足を上げるようになります。犬の右前足が上がった瞬間、飼い主は「お手」と号令を出し、犬の右前足を手のひらで受け止めましょう。これを繰り返します。

  3. 「お手=右前足を飼い主の手のひらに乗せること」と理解できたら、最初に「お手」と号令を出し、飼い主の手のひらを差し出し、犬の右前足をのせてもらいます。


※左前足で「お手」をさせる場合は、上記の右前足を左前足に置き換えて教えてください。


足に触られるのが苦手な犬への「お手」の教え方

  1. 「ぐー」にした手中におやつを入れ、犬に差し出します。犬は匂いでおやつがあることがわかるので、飼い主の手を鼻で押したり、前足をかけたりしておやつを取ろうとします。犬の前足が飼い主の手に触れたら、「いいこ」と言葉で褒め、手の中のおやつを与えましょう。これを繰り返します。

  2. 「前足を使うと、おやつがもらえる」と理解できたら、犬は鼻を使わずに前足で飼い主の「ぐー」の手にアプローチしてきます。前足が出たら飼い主の手のひらで受けとめ、「お手」と言い、言葉で褒め、おやつを与えます。

  3. 「飼い主の手のひらに前足が触れたら、おやつがもらえる」と犬が理解できたら、飼い主は最初に「お手」と号令をかけ、手のひらを差し出し、犬の前足をのせてもらいましょう。


「シェイピング」手法を活用

以上が「お手」の教え方です。どちらのケースでも「シェイピング」手法を活用しながら行うのがおすすめです。「シェイピング」とは、目標到達までの行動を数ステップに分割して教え、最終的に目標に導く手法です。「お手」の場合、犬が前足を上げるのが第1ステップ、前足が飼い主の手に触れるのが第2ステップ、前足が飼い主の手のひらにのるのが第3ステップ。ステップごとに、少しでもできたら褒めるのが大切なポイントです。

犬に「お手」を教える際のコツと注意点

犬のお手

最後に、犬に「お手」を教えるときのコツと注意点をご紹介します。


練習は短時間で

「お手」のトレーニングは犬が過度に疲れておらず、ある程度空腹のタイミングで行なうのがコツです。集中力や忍耐力もトレーニングを続けるなかでついていきます。集中力が切れてきたら休憩を入れたり別の号令を教えたりして、「お手」の練習はいったん切り上げるとよいでしょう。


犬の機嫌がよいときに行う

気分が乗らないときに号令を練習しても効果が期待できません。犬のモチベーションが高いときに行いましょう。


犬の前足を無理やり引っ張らない

「お手」を早く習得してほしいという気持ちから、犬の足を無理に引っ張ったり持ち上げたりしてしまうと、犬は飼い主とのトレーニングや前足に触られることが苦手になることも。犬の自主性を尊重し、犬のペースでゆっくり教えていきましょう。


家庭内で「お手」のコマンドを統一させる

飼い主の家庭で号令を統一してあげると、犬の学習能力が向上します。どのような号令を使うか、同居するメンバーで事前に話し合うとよいでしょう。


空振りは失敗?

前述の「シェイピング」手法により、段階的に「お手」を練習していく場合、初期段階では犬が前足を上げれば空振りをしても誉めます。ステップが進み「お手」が完成に近づくにつれ、空振りはだんだん誉めないようにし、最終的に「お手」の号令を犬が理解したら、空振りはもう誉めないようにしましょう。


噛んだり怒ったりする場合は

犬が前足に触られると嫌がってかみつくような場合は、無理に「お手」を教えるのは避けます。まずは足に触られる練習をゆっくり行うとよいでしょう。

専門家のコメント

「お手」のしぐさはかわいらしいもの。そのため、「お手」を犬に必要以上に指示してしまうことがありますが、もともと前足を使うのが得意な犬に「お手」を強化し過ぎると、飼い主が号令しなくても犬側に何か要求があるたびに「お手」をするようになってしまうことも。「お手」を教える際には、号令時だけ「お手」をするように教えるようにしましょう。暮らしに「お手」をほどよく取り入れて、犬との毎日をますます楽しんでくださいね。


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