トイ・プードルの歴史やルーツは?
トイ・プードルの歴史は古く、ヨーロッパ地方では銃で撃ち落とされた水辺の鳥を泳いで拾い集める「鳥猟犬」として飼われていたと考えられています。もともとは20kgを超す体格でしたが、16世紀にはフランスで貴族が愛玩犬としてかわいがるために小型化されました。
プードルには体格別に「スタンダード」、「ミディアム」、「ミニチュア」、「トイ」と4つの呼称がありますが、その中でも最も小型の体格をしているのがトイ・プードルです。
トイ・プードルの体高や体重は?
トイ・プードルは前述したように、プードルのサイズの中で最も小さい種類です。プードル自体は体高によって、以下の4つに分けられています。
・スタンダードプードル(体高45~60cm)
・ミディアムプードル(体高35~45cm)
・ミニチュアプードル(体高28~35cm)
・トイ・プードル(体高24~28cm ※理想は25cm)
さらに、サイズ別に分類すると、大きなサイズからトイ・プードル、タイニープードル、ティーカッププードルに分けられます。ただし、犬種名としては公認されていません。
・トイ・プードル(体高約25cm、成犬時の体重は3~4kg)
・タイニープードル(体高約23cm、体重は2~3kg)
・ティーカッププードル(体高約20cm、体重は2kg以下が目安)
トイ・プードルの平均寿命は?
トイ・プードルの平均寿命は、約15歳といわれています。種類による寿命の違いは明らかになっていませんが、最近の研究ではがんや関節疾患に発症率と避妊・去勢手術の実施時期は関係ないことが明らかになりました。また、避妊手術をしたメスは去勢手術をしたオスよりも長生きする傾向があるようです。
トイ・プードルは社交的な性格なため、見知らぬ人に対する不安や恐怖を感じやすく、ストレスによって短命になったり、病気の発症につながったりすることがあります。リラックスして過ごせるように、飼育環境を整えて飼うことが大切です。
トイ・プードルの毛色の種類や被毛の特徴は?
トイ・プードルには数種類の毛色があります。年齢とともに白い毛が混じることがありますが、一色毛が理想とされています。色の種類は、ブラック、ホワイト、ブルー、グレー、ブラウン、アプリコット、クリーム、シルバー、シルバー・ベージュ、レッドなど多くの種類があり、それぞれの色での濃淡があるとされています。
トイ・プードルはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
トイ・プードルの性格の特徴には以下のようなものがあります。
スポーツが得意
トイ・プードルは水の中でも泳ぐことができ、ドッグダンスや競技スポーツでも能力の高さが見られます。しなやかな背骨で二足歩行もできることから、サーカスドッグとして活躍する姿も見かけるほどです。機敏で活発な性質があり、高い知性を持っていることから訓練性能が高いのもトイ・プードルの特徴の一つでしょう。
自己主張が高い
スポーツが得意で運動欲求が高いトイ・プードルは、定期的な運動習慣がないと欲求不満になり、吠える、噛む、掘る、引っ掻くなどの破壊的な行動に出る可能性があります。自発的な行動や周囲をコントロールする欲求が高いため、飼い主が一貫した態度で付き合わなければ、自己主張が強くなります。
特に吠えることが問題行動として飼い主を悩ませることがあります。吠えの主な原因は欲求不満によるものなので、定期的に運動させたり、触れ合える時間を意識的に作るようにしましょう。
睡眠欲求が高い
睡眠欲求が高いのもトイ・プードルの特徴です。静かに休ませる環境を用意することで、緊張や過敏な反応を予防することができるでしょう。運動や関心の欲求が満たされていれば、活発な時間帯と静かに寝ている時間帯のメリハリが出て、トイ・プードル本来の日常サイクルを送ることができます。
身体的疾患に注意
トイ・プードルは流行犬種なため、過剰な繁殖による身体的疾患に注意が必要です。本来の特性に沿わなかったり、攻撃行動をとったりするなどの問題行動を起こす可能性もあります。信頼できるブリーダーから迎えるようにしましょう。
オスとメスの性格の違い
オスはメスに比べて活動的で縄張り意識が強く、吠えたり噛もうとしたりする傾向があります。一方でメスは知能が高く、関心を求めるための行動が出やすいという特徴もあります。毛色と性格が関連している科学的な裏付けは現状ありませんが、育てる環境や訓練は多くの影響を受ける可能性があることを覚えておきましょう。
トイ・プードルを飼うのに向いている人は?
トイ・プードルの最も特徴的な性質は、アレルゲンとなる抜け毛が発生しないことです。特にアレルギーの心配がある飼い主にとっては、有益な特徴といえるでしょう。毛が抜けないため、日常的に部屋の掃除をする必要はありませんが、定期的なカットが必要です。こまめにカットするのが億劫でなければ、トイ・プードルを飼うのはおすすめです。
またトイ・プードルは知性が高く、訓練するのが簡単なだけでなく、人を喜ばせることが好きな性質です。そのため、補助犬などのサービスドッグや訪問活動のセラピー犬としても活躍できます。走り回れる環境を用意し、仕掛けを施したおもちゃなどで欲求を満たす訓練ができれば、番犬としても理想的でしょう。
子犬として迎える際は、できるだけ早くしつけをし、成犬として迎える場合は信頼感を育むことで愛着をもって触れ合うことができます。しつけや訓練を正しく行うことで、飼い主と深い絆を持つことができる、魅力的な犬種です。
トイ・プードルは初心者向きの犬?
興奮しやすく活発な性格のトイ・プードルは、その落ち着きの無さが、過剰に吠えやすい傾向として現れることがあり、特に都市部での飼育では注意が必要です。飼い主が犬の興奮をコントロールできないと問題となる場合があります。
また、飼い主と離れているときに不安を感じやすく、留守番トレーニングも欠かせません。核家族で留守がちの場合には分離不安をしめすこともあります。予防的にトレーニングができるような時間的な余裕のある方に向いている犬種と言えるでしょう。こういったことから、飼い慣れていない人が飼う場合は、事前に十分な知識と必需品の準備、相談できる専門家などからのサポートが必要です。
トイ・プードルの飼い方や生活上で注意すべきことは?
もともとトイ・プードルは膝蓋骨脱臼になりやすい犬種です。強い衝撃が関節に加わらないように、家具の段差をなくしたり、飛び降りる行動をなくしたりするように工夫の必要があるでしょう。また、滑りにくい床にするなど、環境面を整える必要もあります。
活発で遊び好きな性格なので、家の中でもボール投げや探し物ゲームなどをして心身共に心地よい刺激を与える遊びをするようにしましょう。
トイ・プードルのしつけを始める時期や心がけておくべきことは?
トイ・プードルのしつけを始める時期や心がけておくことは以下のようなものが挙げられます。
しつけは家に来た日から始めるのが理想
トイ・プードルのしつけの開始時期は早ければ早いほどよく、「犬が家に来た日」から始めるのが理想です。トイ・プードルは知能が高く、自分の行動とそれによって引き起こされた相手の反応をすぐに覚えていきます。嬉しかったことはすぐに繰り返すようになり、嫌だったことはやらなくなります。
特に生後3〜12週間の「社会化期」と呼ばれる期間は、怖がらずに肯定的に情報を吸収できる犬の一生の中でも最も重要な学習期間です。この時期に新しい経験を積むことが大切です。
人に体を触られることに慣れさせておく
トイ・プードルは定期的なグルーミングが必要な犬種です。飼い主だけでなく、他の人に体を触られることにも慣れさせておきましょう。子犬の頃から体を触られることに慣れておくことで、動物病院やトリミングサロンに行ったときのストレスが少なくなります。
トイ・プードルにおすすめのしつけ方法は?
トイ・プードルにおすすめしたいしつけが、以下の4つです。
トイレトレーニング
トイレトレーニングで最も重要なことは環境作りです。子犬の場合は、集中が切れやすくて排泄間隔が短いため、失敗が多いです。トイレの場所を中心に仕切りを用意し、定期的に排泄を促すことで成功体験を積ませましょう。自分の住処を汚したくないという習性があるため、トイレの場所はすぐに覚えます。
クレートトレーニング
クレートトレーニングとは、クレート(ハウス)を安全地帯と教えてあげるトレーニングです。形状としては全体がプラスチックで覆われ、中は薄暗いものがおすすめです。犬が伏せた姿勢で前肢が少し出るくらい狭いサイズが安心感を高めやすいです。
ケージやサークルもありますが、中が丸見えで落ち着ける要素がありません。トイレトレーニング用としてサークルは有効ですが、安全地帯としてのクレートはもっと小型のものが適しています。
少し過敏なタイプのトイ・プードルには、屋根があって側面が壁になったクレートを安全地帯として用意しましょう。日頃から閉じ込める時にだけ使うのではなく、開け放したクレート内でフードやおやつを与えると、抵抗心が起きる前にクレートが好きになってくれるでしょう。好きな場所があり、いつでも逃げ込める環境を整えることで、犬に絶対的な安心感を与え、落ち着きを促しやすくなります。
落ち着くトレーニング
落ち着くトレーニングは、興奮しやすく活発な性格のトイ・プードルに欠かせないトレーニングです。伏せて待つことを教えます。号令で「伏せ」をして「待て」ができるようになれば、飼い主が犬の興奮をコントロールできます。
留守番トレーニング
飼い主と離れているときに不安を感じやすいトイ・プードルには、留守番トレーニングも欠かせません。安全地帯を用意し、留守番前に十分に運動をさせれば落ち着いて待っていられるでしょう。急に留守番時間を長くすると不安を感じるため、毎日留守番させるか、一人で過ごさせる練習を重ねましょう。
トイ・プードルを散歩させる際に気をつけることは?
トイ・プードルは猟犬としての遺伝子を受け継いでいるため、運動量が必要な犬種です。1日2回、それぞれ30分程度は歩いたり軽く走ったりするようにしましょう。
散歩はトイ・プードルの血液循環を増加させ、心血管疾患のリスクを減少させます。適切な筋肉の緊張を維持するのに役立ち、胃腸運動の促進による便秘解消や、高齢になった時の寝たきりになるリスクを減らすことができます。
適度な運動は骨の強度を高めますが、成長期は骨が形成途中のため、激しい運動は控えましょう。その代わり、成犬になってからは存分に運動させます。ただし、膝蓋骨脱臼のリスクがあると診察された場合は、痛みの悪化を予防するために活動量は制限する必要があります。
トイ・プードルにおすすめの遊びは?
トイ・プードルは鳥猟犬だった習性を引き継いでいるため、逃げるものを追いかけて捕まえようとする傾向があります。そこでおすすめなのが、ボール遊びです。ボールを持ち帰ると必ず褒めるようにすると喜んで持ってくるようになります。ボールを追いかけて持ち帰るだけの単純動作ですが、飼い主とのスキンシップはもちろん運動欲求も満たすことができるでしょう。また、おやつが好きなトイ・プードルも多いため、おやつが中に入っている知育玩具を与えると長時間遊び続けます。かまってあげられない時間帯は、知育玩具を与えるのもおすすめです。
トイ・プードルの食事の注意点は?
トイ・プードルの食事におすすめなのが、関節の健康促進のためのグルコサミンやコンドロイチン、皮膚などの健康に役立つオメガ脂肪酸、消化を良くするサーモン、サーモンオイル、亜麻仁、およびプロバイオティクスが含まれている食事です。市販のフードは体重あたりの投与量の目安に従うようにし、ウェットフードよりはドライフードの方が歯の健康のためにも良いでしょう。
乾燥したフードは便が固くなる傾向があり、缶詰フードは水っぽい便につながる可能性があります。食事アレルギーのため、一部のプードルはすべての穀物を避ける必要がありますが、ほとんどのプードルは、オートミール、キノア、米など、小麦やグルテンを含まない食材であればアレルギーの心配も少なくなります。何がアレルゲンなのか分からず与えるのが心配な場合は獣医師に相談しましょう。おやつも犬の摂取カロリーに含めますので、1日の消費エネルギーの20%未満を心掛け、肥満を予防しましょう。
トイ・プードルがかかりやすい病気とその予防法は?
トイ・プードルは骨格が細く、体重が増えると関節に負担がかかりやすい傾向があります。また、四肢が長く骨が細いため、骨折に注意が必要です。体重が軽い子は高い場所から飛び降りないよう、段差のある家具には登らせないようにしましょう。抱っこの際に落としてしまう事故も多いため、暴れた時に落とさないようにしっかりと抱えることが大切です。肥満の場合は関節疾患、椎間板ヘルニア、糖尿病などのリスクが高まりますし、心肥大などの循環器疾患にかかる可能性もあるので注意しましょう。
特に生後13カ月未満の若いトイ・プードルに見られるのが、関節炎であるレッグペルテス病、血統や家系などの遺伝的な関連もあるとされる膝蓋骨脱臼、生後3歳までに発生することが多い脳神経の異常興奮によるてんかん発作などがあります。
進行性網膜萎縮症(PRA)も、トイ・プードルによくみられる遺伝性の眼疾患です。網膜が変性し、壊死して失明に至る病気です。近年は遺伝子検査などで事前に遺伝子リスク検出ができるようになったため、心配な場合は迎える前に確認することができます。
トイ・プードルの日常のお手入れで気をつけることは?
トイ・プードルの被毛は他の犬種よりも柔らかく、伸び続ける性質があります。毛質は個体差などもありますが、少なくても3~6週間ごとにプロのグルーミングを行うのが良いでしょう。全身を短くカットしない場合は、毎日のブラッシングとコーミングがおすすめです。特にグルーミングはできるだけ早く慣れさせるようにし、苦手意識を持たないように注意しましょう。
グルーミングは健康管理とスキンシップにも役立ちます。飼い主が自分でお手入れすることで、見た目や体調の変化に早く気付くことができるでしょう。毛玉を放置すると皮膚感染症になってしまったり、足先の毛が伸びすぎると歩くときに毛のせいでスリップして膝へ負担をかけたりしてしまうこともあります。特に足の毛は飼い主がこまめにカットしてあげましょう。
第2稿:2021年10月19日更新
初稿:2021年2月10日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。
専門家の コメント:
トイ・プードルは人気の犬種です。運動能力と知性が高いことから、正しくしつけをすることで飼い主との信頼関係が生まれ、家族として長い期間一緒に過ごすことができます。ボール遊び以外にも水の中も得意な性質があるため、いろんな遊び方を楽しみたい飼い主におすすめです。