犬のダニ(マダニ)の取り方は?見つけた時の正しい対処法と注意点について解説【獣医師監修】

犬のダニ(マダニ)の取り方は?見つけた時の正しい対処法と注意点について解説【獣医師監修】

犬とアウトドアを楽しむ際にとくに注意したいのがダニの一種のマダニです。犬の体にマダニが付いているのを見つけたら、慌ててすぐに取ってあげたくなるかと思います。しかし、無理して取ると炎症や病気につながる恐れがあり、適切な対処が必要なのです。今回の記事では、犬の体に付いたマダニを見つけた時の正しい対処法について、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生監修のもと解説していきます。

監修/林美彩先生(獣医師)

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長
酪農学園大学卒業
獣医保健ソーシャルワーク協会獣医ホリスティック医療研究会所属

 

大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。テレビ番組への出演・協力のほか、「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)などの著書がある。

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犬に咬みついたダニ(マダニ)を勝手に取るのはNG!

犬にマダニが咬み付いているのを見つけたら、飼い主自身で対処するのではなく、なるべく動物病院に連れて行って適切な方法で取り除いてもらいましょう。マダニは、口下片(こうかへん)と呼ばれる突起物を犬の皮膚に差し込んで血を吸います。この時、マダニは皮膚上に強く固定されているため、無理に取ろうとすると口下片が皮膚内に残り、化膿や炎症の原因となってしまいます。

犬につくダニ(マダニ)の特徴や寄生する原因は?

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そもそもダニ(マダニ)はどのような生き物なのでしょうか? その特徴と犬に寄生する理由を見ていきましょう。

 

ダニ(マダニ)の特徴

マダニは昆虫というよりクモに近い生き物で、肢が8本ある節足動物です。家の中に住むダニ(イエダニやヒゼンダニなど)とは違って体は固い外皮に覆われ、その大きさは成長段階や吸血前後で異なりますが約1~10mmほど。肉眼でも捉えることができる大きさです。マダニのほかにも、ニキビダニやヒゼンダニも犬の体に寄生しますが、こちらは約0.2~0.4mmの微小なダニのため、肉眼では確認できません。

 

ダニ(マダニ)が寄生する原因

ダニ(マダニ)はその生涯において、動物の血が唯一の栄養源です。発育、脱皮、産卵というライフサイクルの中で、宿主動物となる犬の体に寄生して血を吸います。

 

犬から人にも感染する?

ダニ(マダニ)は吸血する際に、ウイルスや細菌などの病原体を媒介し、様々な感染症の原因となります。その中には、バベシア症やライム病など人にも感染する「人獣共通感染症」も含まれます。ダニ(マダニ)の予防をすることは、犬だけでなく飼い主自身を守るためにも重要なのです。

犬についたダニ(マダニ)の見つけ方

犬についたマダニは、どのように見つければよいのでしょうか? 確認する時のポイントを知っておきましょう。

 

目視だけでなく、犬の体を触ってチェックする

マダニは、目視だけではなかなか見つけることができません。見つけるには、犬の体にやさしく手を沿わせ、小さなでっぱりやしこりのようなものがないかをチェックしましょう。吸血したマダニの場合、膨れ上がって小豆ほどの大きさになることもあります。触って気になる箇所があったら、その部分の皮膚を目視で確認してください。炎症を起こしている箇所がないかどうかも発見の手がかりになります。

 

ダニ(マダニ)がつきやすい場所

マダニは、耳、目・鼻・口周り、胸部、内腿、肛門周囲など、被毛の少ないところに寄生しやすい傾向があります。こうした箇所は、とくに念入りにチェックしましょう。

 

吸血後の膨らんだダニ(マダニ)はイボのようにも見えるので注意

血を吸った後のマダニの体はパンパンに膨らみ、一見するとイボのようにも見えます。知らないと、マダニだと気づかないこともあるので注意が必要です。

犬がダニ(マダニ)に咬みつかれた場合の症状は?

犬がマダニに咬みつかれると、次のような症状が引き起こされることがあります。

 

貧血

犬はマダニに大量に寄生・吸血されることによって、貧血を起こすことがあります。特に小型犬は体が小さい分、体への負担が大きくなるので注意が必要です。貧血になると、粘膜が白くなったり、食欲が落ちたりする症状も見られます。貧血は、マダニを媒介とするバベシア症を発症した際にも起こります。

 

アレルギー性皮膚炎

マダニは血を吸う際、皮膚を溶かす酵素を含んだ唾液を分泌します。この唾液がアレルゲンとなり、咬まれた場所に強いかゆみや赤みなどの炎症反応が起こることがあります。

 

ダニ麻痺症

マダニの唾液に含まれる毒性物質によって、神経障害が起こる恐れがあります。これは「弛緩性麻痺」とも呼ばれ、体を動かそうとしても筋肉が動かず、力が抜けているような状態を招きます。

犬がダニ(マダニ)に咬みつかれることで併発する病気にも注意

前述の症状以外にも、マダニに咬まれることで併発する恐れのある感染症にも注意が必要です。その中には、犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症が含まれるため、人が感染した場合の症状も合わせて紹介します。

 

バベシア症

マダニを介したバベシア原虫による感染症です。犬の体内に入ったバベシア原虫が赤血球に寄生して破壊することによって、貧血や食欲不振、元気がなくなる、発熱、血色素尿(濃い黄〜茶色の尿)、などの症状が現れます。急性の場合には、黄疸や多臓器不全が起こり、死に至る危険性もあります。

 

日本紅斑熱

日本紅斑熱は人獣共通感染症のひとつで、マダニが持つリケッチアという細菌が原因となる感染症です。犬は無症状ですが、人の場合は、発熱や頭痛、倦怠感、全身発疹などが見られ、死亡例(※1)も報告されています。

出典:(※1)厚生労働省健康局結核感染症課「日本紅斑熱による死亡例の発生について(情報提供)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kohan-netsu/index.html

 

ライム病

ライム病はボレリア菌による人獣共通感染症で、犬の場合、食欲の減退、足を引きずる、発熱などの症状が見られます。人の場合は、咬まれた部位を中心として特徴的な紅斑(遊走性紅斑)が見られるほか、発熱やリンパの腫れ、関節痛などの症状が発生します。放置してしまうと、心膜炎や顔面神経麻痺が起こることもあるので注意が必要です。

 

Q熱

コクシエラという細菌が原因の感染症で、人獣共通感染症のひとつです。犬の場合、無症状であることが多く、症状が見られたとしても軽い発熱程度ですが、妊娠した犬が感染すると流産や死産の危険性があります。人が感染した場合、インフルエンザに似た症状が見られ、肺炎や肝炎を引き起こすこともあります。

 

エールリヒア症

リケッチアという細菌によるダニ媒介感染症で、犬が感染すると発熱や鼻水、なみだ目、食欲がなくなる、貧血といった症状が見られます。人に感染する場合もあり、発熱や頭痛、倦怠感、関節痛などを引き起こします。重症化すると呼吸困難などに陥り、命に関わることもある病気です。

 

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

2009年に中国で発見されたSFTSは、犬から人間にマダニが寄生したことで見つかった感染症です。日本では2013年に初めて死亡例(※2)が報告されました。SFTSは、マダニの媒介だけでなく、感染した犬や人からも直接感染します。犬は基本的に無症状ですが、まれに発熱、食欲がなくなるほか、白血球減少症や血小板減少症を発症することもあります。人が感染すると、発熱や食欲の減退、倦怠感、リンパの腫れ、出血、消化器症状といった症状が見られます。

出典:(※2)国立感染症研究所「国内で初めて診断された重症熱性血小板減少症候群患者」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrd/3142-pr3963.html

犬に咬みついたダニ(マダニ)の正しい取り方とは?

基本的に飼い主が行うことはおすすめしませんが、緊急時や、病院での処置内容を理解するためにも犬に咬みついたマダニを適切に取り除く方法を確認しておきましょう。

 

ダニ(マダニ)の正しい取り方

マダニは、消毒をした先端の細いピンセットを使い、口だけが残らないよう力を均一にかけ、ゆっくりと上に持ち上げて取り除きます。マダニを取り除く専用のピンセットもあるので、それを使用して取り除くのも良いでしょう。

 

取り除いた後のケア

マダニに咬まれた部位は、消毒用のアルコールや石鹸などでしっかりと洗い流します。一匹取り除いても、ほかのマダニが寄生していることも考えられるため、駆除薬を使って確実に体のマダニを除去する必要があります。

 

動物病院へ連れて行った方がいい?

犬の体にマダニを見つけたら、必ず動物病院に連れて行き、取り除いてもらいましょう。マダニが犬に咬みつくと、口下片(こうかへん)のかぎ状の歯が皮膚に刺さり、吸血時の唾液と分泌される物質が合わさって硬く固定されます。そのため、犬に咬みついている状態のマダニを無理に引っ張ると、口の部分が皮膚の中に残ってしまいます。

 

ダニ(マダニ)が犬に咬みついておらず、表面を歩いている場合

マダニが犬に咬みついておらず、トコトコと表面を歩き回っているのを見つけた場合には、ピンセットや目の細かいノミ取りコームを使って取り除きましょう。除去したマダニは粘着テープに張り付けたり、密封容器に入れたりして、完全に死滅させてから破棄します。うまくいかない場合には、マダニに駆虫薬を垂らして除去することもできます。

 

一匹マダニを見つけた場合、すでに他のマダニに寄生されてしまっている可能性があるため、駆虫薬で確実なケアを行うことがおすすめです。さらに、家の中にマダニが潜んでいることも考えられるので、部屋の駆虫(殺虫)を行っておくと、なお安心でしょう。

酢でダニ(マダニ)を取り除くことができる?

マダニは酢の匂いを嫌うため、酢を使ってマダニを駆除する方法は有効と言えます。方法としては、酢をたっぷりと含ませたコットンをマダニにかぶせたり、酢と水を1:1の割合で混ぜたスプレーをマダニに噴射したりする方法があります。いずれの方法でも、酢の匂いにマダニが反応し、自然と口を離すまでそのまま待ちます。ただし、この方法で必ず取れるというわけではありませんので、取れない場合は速やかに動物病院を受診しましょう。

犬のダニ(マダニ)の予防

犬にマダニが寄生しないようにするには、日頃から予防しておくことも大切です。予防方法としては、次の方法が挙げられます。

 

ダニ(マダニ)のいそうな草むらを避ける

マダニは草むらを好み、葉の裏や茎の先などで寄生する動物が来るのを待ち受けています。散歩に行く際は、できるだけ犬が草むらに入らないようすることで、マダニが付着するリスクを軽減できます。

 

駆除薬の定期的な投与(定期駆虫)を行う

マダニの寄生を防ぐ駆除薬を定期的に投与することも有効な予防法です。基本的に、市販の駆除剤を使って問題ありませんが、まれに犬の体質に合わず体調不良を起こすこともあります。動物病院で処方されたものを使うのがおすすめです。

 

【駆除薬のタイプ】

スポット薬

駆除薬には様々なタイプがありますが、スポットタイプの使用を推奨しています。スポットタイプは犬の肩甲骨の間の皮膚に垂らす薬で、消化器が弱い犬や内服が難しい犬にも安心して使うことができます。

 

内服薬

スポットタイプの薬を使うと、薬を垂らした部分の毛が抜けてしまう犬もいます。皮膚が弱い犬は、内服薬を使用したほうが良いでしょう。最近はフィラリアやノミ、ダニの駆除がまとめてできるオールインワンタイプの内服薬が主流になっています。しかし、一度に予防できるということは、それだけ効力も強いということ。犬の体へ負担となってしまうこともあるので、フィラリア、ノミ、ダニの薬はそれぞれ別々に投与できるものを推奨しています。

 

定期的なブラッシング

散歩後にブラッシングをすることによって、被毛についたマダニを落とすことができます。ただ、室内でブラッシングをした場合、家の中に落ちて生き延びてしまうことがあるので、玄関先や屋外でブラッシングをしてから家に入ったほうが良いでしょう。

 

ダニ(マダニ)除けグッズを使う

市販の虫除けスプレーやマダニ除け効果のある首輪などの活用も予防につながります。体への負担が少ない天然成分を使用したグッズがおすすめです。

専門家のコメント

犬に寄生したマダニの対処は基本的に飼い主自身で行わず、動物病院に連れて行って処置してもらうことが大切です。マダニを媒介とした感染症は人も発症する恐れがあります。悪化すると命に関わることもあるため、決して甘く見ることはできません。犬にマダニを寄生させないことが一番安全なので、日頃から寄生のリスクのある行動は避け、駆除薬などを使って予防を心がけましょう。


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