22年の歴史をもつ「THE DOG™」ブランドを通して離島の保護犬を救う。愛犬家・鈴見純孝さんの寄付への想い

22年の歴史をもつ「THE DOG™」ブランドを通して離島の保護犬を救う。愛犬家・鈴見純孝さんの寄付への想い

鈴見純孝(株式会社THE DOG COMPANY代表取締役)

鈴見純孝(株式会社THE DOG COMPANY代表取締役)

特定非営利活動法人DOG EAR FUNDS代表理事。2020年5月「株式会社THE DOG COMPANY」を設立。現在は、愛犬トイ・プードルと暮らしている。

魚眼レンズで撮影されたユニークな動物たちが印象的な「THE DOG」 ブランド。大きな鼻や目、こちらをのぞき込むような様々な犬の愛くるしい表情。見たことがある方も多いのではないでしょうか?

実は、代表的なカレンダーは世界発行累計部数510万部を超えるほどの世界的なロングセラー商品なんです。そして、誕生から22年経った今では、犬猫のより良い暮らしを作るための活動もしています。

2020年に「THE DOG」の事業を引き継いだ「THE DOG COMPANY」代表の鈴見純孝さん。日本の寄付文化の難しさや、宮古島など離島での支援活動の壁、トリミングサロンの課題など、愛犬家の鈴見さんだからこその視点があったようです。支援団体の立ち上げの背景や、新しい取り組みへの想いを聞いてみました。

目次

  • ・ ビルボード広告やマクドナルドのハッピーセットにも起用。世界中で愛される犬ブランド
  • ・ 動物と育った過去。犬猫救済のための「恩返し」を提案
  • ・ 「寄付するのは偉い人?」日本の犬猫支援のハードルを下げたい
  • ・ 飼い主の悩みにも寄り添う。「移動型トリミングサロン」を実現

ビルボード広告やマクドナルドのハッピーセットにも起用。世界中で愛される犬ブランド

――鼻デカな犬の写真が印象的な「THE DOG」ですが、どのような経緯で作られたものでしょうか?

鈴見純孝さん(以下:鈴見):私が「THE DOG」コンテンツを引き継いだのが2020年なので、発売当初には関わりがなかったのですが、2000年に20種類の犬種別ポストカードBOOKが制作されたのが始まりです。魚眼レンズで撮影した犬たちのこれまでにないかわいらしさが支持され、100万部の大ヒットになったそうです。その翌年に犬種別のカレンダーが発売され、現在まで続く人気商品になっています。

専属のカメラマンが手掛けるカレンダー撮影の様子。モデル犬は鈴見さんの愛犬・ベックくん(提供:THE DOG COMPANY)
専属のカメラマンが手掛けるカレンダー撮影の様子。モデル犬は鈴見さんの愛犬・ベックくん(提供:THE DOG COMPANY)


――当時、ぬいぐるみやキーホルダーなども出ていましたね。その人気は、日本だけでなく海外にも及んだとか?

鈴見: 2003年に全米19か所でビルボード広告に使われたことや、2004年から数年に渡りマクドナルドのハッピーセットのおもちゃとして世界展開され、世界57か国での認知が広がったようです。


2004年当時、世界57か国で展開されたハッピーセット(写真は2007年日本展開時のもの)
2004年当時、世界57か国で展開されたハッピーセット(写真は2007年日本展開時のもの)


――世界中にファンがいるのですね。

鈴見:そうなんです。実際に「THE DOG」 のSNSアカウントは合計20万人以上のフォロワーがおり、7割近くが海外の方。

今でもカレンダーの他にもぬいぐるみやTシャツ、帽子など、海外各国でさまざまなグッズ展開をしていますが、どれも人気が高いですね。

海外で発売の「THE DOG」 のぬいぐるみたち。今年秋、公式WEBストア「THE DOG STORE」でも発売予定
海外で発売の「THE DOG」 のぬいぐるみたち。今年秋、公式WEBストア「THE DOG STORE」でも発売予定


――「THE DOG」はカレンダーの場合、何種類くらいの犬種を取り扱っているんですか?

鈴見:カレンダーのサイズや年度で多少の変動はありますが、犬種別で30種以上を揃えています。その他、豚やうさぎなどの動物別や、複数犬種を一冊にしたオールスターもご用意しています。

2023年度の「THE DOG」 大判カレンダー(提供:THE DOG COMPANY)
2023年度の「THE DOG」 大判カレンダー(提供:THE DOG COMPANY)

動物と育った過去。犬猫救済のための「恩返し」を提案

――2020年、「THE DOG COMPANY」として新たな形でスタートした「THE DOG」。鈴見さんが運営をするようになった経緯を教えてください。

鈴見:僕は24歳で起業して以降、イタリア生まれの「Rody」を始め、多くのキャラクターの企画開発やライセンス管理に長年携わってきました。その経験もあり、共通の知り合いを介して「THE DOG」を生み出した会社の社長から相談を受けたのがきっかけです。

2019年末頃、「来年20周年を迎えるにあたり新しいことをやりたい。何か良いアイデアはないだろうか」とお声がけいただきました。

動物と育った過去。犬猫救済のための「恩返し」を提案したTHEDOG鈴見さん

――20周年の節目の時期だったのですね。

鈴見:はい。そこで僕は「これまでカレンダーやグッズ展開で犬猫のお仕事をさせてもらってきたのだから、今度は犬や猫に恩返しになるような事業を展開してみてはどうか」とご提案しました。

――恩返し、ですか?

鈴見:僕たち人間にとって今や犬猫は家族であり、たくさんの幸せをくれる存在ですよね。しかし一方で、現在も犬猫の殺処分問題は依然として社会的に大きな課題です。

だからこそ、この事業を通じて犬猫の救済につながる仕組みを作っていければと考えました。

――以前から、殺処分問題などに関心があったのですか?

鈴見:僕自身、物心がついた頃から動物がいる環境で育ってきたこともあり、ペットたちを取り巻く社会問題には関心がありました。

そこで、これまでの「THE DOG」の知名度を活かしたら、心の片隅にあった、何か犬猫に貢献したいという想いも、現実にしていけるのではないかと思ったのです。

――動物がいる環境で育ってこられたのですね。

鈴見:はい。小学生の頃は多い時で犬5匹、猫8匹と暮らしていたこともあります。

生まれ育った実家ではシェパードのほか、雑種犬が4匹いました。猫は実家にネズミが出るからと最初は1か月限定でご近所から1匹借りたのですが、我が家が気に入ったらしく、お返ししても気がついたら戻ってくるようになりました。そして居着いちゃったんです。一旦お返ししたタイミングで2匹の保護猫をもらっていたのですが、今度は子猫が5匹生まれちゃって。振り返ると、とてもにぎやかな環境でした。

鈴見さんと愛犬のベックくん(提供:THE DOG COMPANY)鈴見さんと愛犬のベックくん(提供:THE DOG COMPANY)


――現在もトイ・プードルを飼っているそうですね。今のワンちゃんとの暮らしはいかがですか?

鈴見:僕が今暮らしているトイ・プードルのベックは12年前、娘のお友達の家で生まれた子を譲っていただきました。我が家は娘が2人なので、ベックはうちの長男です(笑)。彼の寝息が堪らなく好きで、いつも耳を近づけて癒されてます。

「寄付するのは偉い人?」日本の犬猫支援のハードルを下げたい

――「THE DOG」の再スタートとして、具体的にどんな取り組みを始められたのでしょうか。

鈴見:大きく分けて4つです。

  1. 「THE DOG」の全商品、全サービスを対象に売上の一部を寄付に回す「SAVE THE DOG PROJECT」を立ち上げたこと。
  2. その寄付の受け入れ先となり、実際に保護活動の支援行うNPO法人「DOG EAR FUNDS」を設立したこと。
  3. カレンダーの店頭販売を取り止め、廃棄数量を大幅に削減したこと。
  4. カレンダーで使用する紙の見直しをしたこと。


鈴見:まずは、カレンダーを含む「THE DOG」の全商品、全サービスの売上の一部を、動物愛護団体に寄付する独自の取り組みを始めました。

――犬や猫を支える活動ですね。

鈴見:はい。独自に立ち上げた「SAVE THE DOG PROJECT」です。「THE DOG」ならぬ「SAVE THE DOG」ですね。

SAVE THE DOG PROJECT(提供:THE DOG COMPANY)
SAVE THE DOG PROJECT(提供:THE DOG COMPANY)


そして2つ目に、具体的に保護活動の支援を行うために設立したのが、NPO法人「DOG EAR FUNDS」です。

「DOG EAR」は、犬の垂れ耳に見立てて本の片隅を折ること。「大切なことを忘れない、心に留める」との意味合いを込めて名付けました。

DOG EAR FUNDS(提供:DOG EAR FUNDS)
DOG EAR FUNDS(提供:DOG EAR FUNDS)


――素敵なお名前ですね。

鈴見:動物たちは言葉を話せません。だからこそ、かわりに僕たち人間が、取り巻く困難を見逃す事の無いようにしてあげたいのです。この活動が、1人でも多くの人の心に留まり、日々の生活の中に犬猫との幸せなページを増やしていけたら、と思っています。

――なぜ、わざわざ新たに支援団体を立ち上げようと思われたのでしょう?

鈴見:すでに全国にはさまざまな保護団体がありますが、いろいろお話を聞くうちに、自分たちのスタンスで自分たちの責任のもと、保護活動に取り組みたいと思ったからです。

――気軽に寄付ができるような仕組みなんですか?

鈴見:月500円(ワンコイン)から寄付ができるようにしています。以前は月300円だったのですが、システムの関係上2022年10月から月500円になってしまったのが悔しいところではあるのですが……。

――それでも少額からでも寄付ができるのはいいですね。

鈴見:僕は18~23歳頃まで音楽を通して障がい者ボランティアとして全国をまわり、仲間とコンサートを行っていました。しかし当時から日本では「ボランティアや寄付は偉い人、余裕がある人が行うことだ」という概念が根強いとの印象を持っていました。

だからこういった新たな仕組みで、従来の寄付に対する印象を変え、動物を救うことへのハードルを下げたいと思ったのです。

――過去の経験が、今の犬猫の保護支援活動にもつながっているのですね。

鈴見:はい。時々テレビで、犬猫の虐待や殺処分、多頭飼育崩壊などのニュースが流れますよね。幼かった頃の娘たちでさえそうした内容に心を痛め、幼いながら「何かできることはないか」と話していたくらいです。なので、誰でも少し頑張れば支援出来る金額にしたかったんです。

――反響はいかがでしたか?

鈴見:開設時で約数百名の方に寄付していただくことができました。今も少しずつ、支援の実績を重ねているところです。

「寄付するのは偉い人?」日本の犬猫支援のハードルを下げたいTHEDOG 代表鈴見さん
――具体的には、どのような活動をしているのでしょうか。

鈴見:第1弾として、犬と猫の保護シェルターを運営する沖縄県・宮古島の保護団体へ、フィラリアの薬やケージの購入費などに当てていただく寄付を行いました。

――なぜ宮古島だったのでしょう?

鈴見:もともと僕は趣味のトライアスロンのトレーニングとして、自転車を持って宮古島に行くことが多くあり、以前から団体のことは知っていました。寄付にあたり詳しく話を聞いてみると、離島での保護活動はとても大変なのだと知りました。

本島に比べ、まだ野良犬が多く、去勢・避妊手術が行き届いていません。さらに犬の輸送手段も限られてしまうため、保護が足踏み状態。「離島の壁」という大きなハードルが存在しているのです。

――そうだったのですね。

鈴見:こうした問題って、宮古島に限らず全国で抱えていると思うんです。今後は他の離島の保護問題にも着手してゆく計画があり、すでに動き出しています。

――問題をまず知ること、が大切ですね。

THEDOGカレンダー制作の様子提供:THE DOG COMPANY)
カレンダーは新たに撮り下ろす物に加え、およそ35万点もの写真から選定されるそう(提供:THE DOG COMPANY)


――では3つ目の新しい取り組み、店頭販売の取り止めや廃棄数量を大幅に削減したことについて、教えてください。

鈴見:まず、2021年度版からWebストアのEC販売のみに切り替えました。カレンダーは夏に発売するのですが、実際に売れる時期は10~12月が中心。年が明けると売れ行きが鈍くなり、3月には大量に返品が来てしまいます。

返品されたカレンダーはもちろん翌年に持ち越せないので、すべて廃棄になります。「犬や猫に優しくありたい」との思いうからNPOまで作ったのに、そもそも地球には優しくない販売の仕方をしていいのか、と思ったんです。

そこで思い切って店頭販売を止め、公式Webストアでの販売をメインに決めました。

――生産数量の見直しもされたんですね。

鈴見:はい。無駄に作らないことで廃棄数を減らしたいと。「THE DOG」のファンの皆様は長年店頭で買い続けてくださっている方が多いので、ご不便をお掛けしている上に、一時的には販売数も落ちてはいます。ですが、長い目で見ればきっとお客様に理解してもらえるはずだと考えています。

そして4つ目の取り組みとして2023年版のカレンダーからはさらに、使用する紙の見直しを実施しました。

2023年度版のTHE DOG犬種カレンダー:THE DOG COMPANY)
2023年度の犬種別カレンダー


――製造素材の見直し、ですか?

鈴見:2023年版カレンダーに使用する紙を、FSC®認証という世界の森を守るための認証を受けた紙に移行したんです。

2022年度版でも再生紙を使用し環境に配慮していましたが、今年度からはさらなる持続可能な森林活用・保全への貢献を考え、紙の素材を見直すことにしました。

飼い主の悩みにも寄り添う。「移動型トリミングサロン」を実現

――今年7月には、移動型トリミングサロンの事業展開のリリースを行なわれましたね。どういった内容なのでしょうか?

鈴見:「THE DOG Salon Trimming Wagon」という、トリミング設備を完備した軽自動車でお客様のもとへ出張し、トリミングを行うサービスです。

移動型トリミングサロン「THE DOG Salon Trimming Wagon」(提供:THE DOG COMPANY)
移動型トリミングサロン「THE DOG Salon Trimming Wagon」(提供:THE DOG COMPANY)


――これまでの事業とは、ガラリと変わる業態ですね。どうして、移動型のトリミングサロンに辿り着いたのですか。

鈴見:車で近くまで来てくれるトリミングサロンがあれば飼い主さんも犬を連れて行きやすいし、高齢の犬でも足腰に負担をかけずに通えるのではと考えました。タワーマンション前やイベント会場などでの需要も大きいのではないかと思っています。

――トリミングサロンを身近にする施策ですね。

鈴見:はい。そもそも、トリミングサロンの店舗の数は全国的に見ると、飼育頭数に対して全然足りていないそうです。僕も愛犬家仲間から「なかなかサロンの予約が取れない」との話もよく聞きます。

一方では、トリマーさんが独立してお店を持つには、開業資金や集客の面でかなりハードルが高いこともわかりました。「THE DOG Salon Trimming Wagon」は約1/3の費用で開業ができることに加え、本部のバックアップによる広告や集客の支援を行なっていきます。そういう面では、いつか自分のお店を持ちたいトリマーさんの夢を応援していきたい想いもあります。

移動型トリミングサロンでのトリミングの様子(提供:THE DOG COMPANY)
移動型トリミングサロンでのトリミングの様子(提供:THE DOG COMPANY)


――確かに便利そうです! こうした移動型サロンがこれまでになかったのが不思議なくらいです。

鈴見:調べてみると移動式のトリミングサロン自体は20年ほど前からあり、現在も全国で200台ほどが稼働しているようです。ただ個人の方が多く、企業はほとんど参入していません。そこで「THE DOG」の認知度を生かして、本部機能を持ったフランチャイズの形式で展開することで多様なニーズに応えていけるのではないかと考えています。

ーーカレンダーからトリミングサロンまで、形を変えても根底にあるのは「動物たちへの想い」なのですね。

鈴見: そうですね。ビジネスと社会貢献を連動させつつ、犬と猫と人の日々に、幸せな1ページを増やしていきたいと思っています。

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