犬が反応する音とは?好きな音・嫌いな音はある?音に敏感な理由も解説【獣医師監修】

犬が反応する音とは?好きな音・嫌いな音はある?音に敏感な理由も解説【獣医師監修】

愛犬が何らかの音に反応して玄関へ向かうと家族が帰宅していたりするなど、犬は聴力がとても優れており、さまざまな音を聞き分けることができます。では、犬はどんな音に反応するのでしょうか。また、音の好き嫌いはあるのでしょうか。犬が反応する音について、ヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に解説していただきます。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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犬の聴力は人の何倍?

人と犬の耳

音には、周波数と音圧レベルという2つの側面があります。周波数によって表されるのは、音の高低です。周波数は1秒あたりのサイクル数またはヘルツ(Hz)で測定され、周波数の数字が大きければ高い音、小さければ低い音として聞こえます。例えば、88鍵盤ピアノの最低音は28Hz、最高音は4,186Hz。人間の会話の典型的な範囲は808,000Hz、典型的なデジタルビープ音やホイッスルは1,5005,000Hzとされています。一方、音圧レベル(dB)は音の大きさを示します。では、人間と犬で聞こえる音には、どのような違いがあるのでしょうか。


人間と犬の聞こえる周波数の違い

  • 人間:1620,000Hz
  • 犬:6550,000Hz


人間と犬の聞こえる音圧レベルの違い

  • 人間:最低0dB
  • 犬:最低-5dB


犬が聞こえる周波数と音圧レベルを調べたところ、犬は人間よりも周波数の高い音、音圧が小さい音を聞き取ることができるようです。その反面、人間は全方位からの音を顔を動かさずに聞き取れるのに対して、犬は音の方位に耳を合わせないと聞き取ることができないと言われています。また、犬は音が含む2つ以上の周波数を聞き分けられないという特性もあるようです。つまり、音の識別に関しては、人間のほうが得意と言えます。そのため、犬の聴力が人間の何倍になるかは、一概に言うことはできないのです。

犬の耳の形によって聴力に違いはある?

柴犬チワワは立ち耳、トイ・プードルミニチュア・ダックスフンドは垂れ耳と、犬種によって耳の形状は異なります。とはいえ、人間に聞こえる音で実験した限り、耳の形による聴力の差はないと言われています。

なお、垂れ耳の犬は音が入ってくる方角が限られるため、耳を動かしたり頭を傾けたりして、音源の方位を人間よりも正確に捉えているとされています。

犬が反応する音は?

犬の遠吠え

可聴域の周波数や可聴な音圧レベルの音であっても、犬が反応する音と反応を示さない音があります。本能的に覚醒する音、過去のよかった経験や嫌だった経験と結び付けられている音に対しては、反応を示します。


犬が本能的に反応してしまう音

犬が本能的に反応してしまう音は主に以下の2つです。


小型げっ歯類の立てる音や、それに近い周波数の音

犬が本能的に反応するのは、小型げっ歯類の立てる音や、それに近い周波数の音です。これまでの研究によると、犬は8,000Hz付近の周波数音を特に敏感に感じ取ると考えられており、獲物である小型げっ歯類の音がまさにその周波数にあたります。本能的に覚醒し、音源の方位を定めようとしたり、音を詳しく聞こうと首を傾げたりするしぐさが起こります。


遠吠え

遠吠えも、犬がコミュニケーションに用いる高周波音と考えられています。遠吠えは遠くの仲間が発する遠吠えを聞いたり、あるいはよく似た周波数の音が聞こえてきたりして、同調したくなったときに起こると考えられています。これは「社会的促進」という反応です。犬の先祖種が、森に散らばった仲間に狩りを開始する合図として発したり、群れ以外の動物が縄張りに侵入するのを予防する意味で発したりしていたと考えられています。


音に反応したときの犬のしぐさ

音に好ましい反応を示した犬には、テンションが上がる、興奮する、遠吠えする、動きまわる、尻尾を振るといったしぐさが見られます。逆に不快な感情が沸き起こると、凝視する、震える、パンティング(あえぐような呼吸)するなどの不安を示すしぐさや、警戒咆哮、唸る、攻撃的に突進しようとするといったしぐさが見られます。

犬が好きな音は?

飼い主の落ち着いた声

犬にも好きな音、苦手な音があります。好きな音は、陽気な音、柔らかくて安心できる音です。


陽気な音(大音量、高音)

陽気な音は、遊び心を含んでいるように聞こえます。犬に陽気な声で話しかけると、飼い主が犬の行動に同意していること、好意的であること、あるいは飼い主が犬と遊びたがっていると犬に感じさせます。このような音を聞くと、犬は耳を傾けたり、尻尾を振ったりといった反応をするかもしれません。

そして、どんな行動をしたときに陽気な声が聞こえるのか、犬は次第に学習していきます。「いい子!」「よし!」「かわいい!」といった褒め言葉は、犬が最も好む飼い主からの音です。他には、食べ物やおもちゃを連想させるような音、食べ物やおもちゃがもらえそうなときに聞こえてくる音、具体的には袋をカサカサする音なども好みます。宅急便でおもちゃやおやつを通販している家庭では、段ボール箱を開ける音で興奮することもあります。


柔らかくて安心できる音(低音量、高音)

飼い主の愛情が感じられる落ち着いた声のトーンも、犬が好む音です。飼い主が犬と落ち着いた時間を過ごしたいときによく使用されます。

犬をかわいがる際、「かわいいね、いい子だね」とささやく声には、犬を安心させる効果があります。ただし、これまでそのような声音で話しかけていなかった場合、突然の声の変化に動揺するかもしれません。それでも、小さな音はすぐに犬の心を落ち着かせるでしょう。

犬が怖がる音は?

雷の音

犬が怖がる音の代表的なものは、大きな音や不機嫌な声ですが、それ以上に苦手なのが空気の振動を伴う音です。


空気の振動を伴う音

音は、空気の振動として鼓膜に届きます。しかし、耳では聞き取れない超低周波は、脳、耳骨や顎の骨に振動が伝わり、犬を不安にさせると考えられています。犬が不安になる理由は、低周波は体が大きい動物や物が発生する音だからです。犬は低周波が近づくのを感じると、大きな危機が近づいていると察知する習性があります。そのため、無条件に不安になったり警戒したりするようになるのです。身近な例としては、雷のゴロゴロという音や、和太鼓のドーンドーンという音、エンジンのドッドッドッという音などです。

人間の場合、低周波音を大きな音、うるさい音として感じることはほとんどありませんが、不快感のような心理的影響を及ぼすようです。低周波音が聞こえるとイライラしたり、気になって作業に集中できなくなったり、人によっては気分が悪くなったりすることも。犬でも同様の心理的変化が起こり得ます。


注意喚起する音(大音量で高音または低音)

普段の生活でなかなか聞かないレベルの大音量の注意喚起音は、危険な状況を連想させ、犬を緊張させます。


不機嫌な声(音量が小さい、低音)

この声のトーンで話すと、犬の注意を促し、飼い主が犬の行動を不快に感じていることが伝わります。犬がよくないことをしているとき、このトーンで話しかければ、犬の行動を停止できるでしょう。


経験によって怖がるようになる音

音の直後に不快なことが起こったり、音とともに不快な経験をしたりすると、学習してその音を怖がるようになっていきます。例えば、宅急便のトラックが止まる音、訪問客の玄関先での話し声、雷鳴、掃除機、ドライヤー、それらによく似た家電の音も怖がるようになります。これを「刺激般化」と言います。この状態を放っておくと、些細な音も同じように怖がるようになってしまいます。

逆に、この習性をうまく利用すれば、危険な場面に直面したときに、大きな号令で犬の注意を引くことができます。「だめ!」「こら!」と叫ぶと、犬は行動を止めるはず。ただし、慣れが生じやすいため、特別なときにしか使わないように心がけましょう。

犬が音を怖がっているときに見せるしぐさは?

音を怖がる犬

犬が音を怖がっているとき、以下のようなしぐさを見せることがあります。


犬が音を怖がっているときの通常のしぐさ

  • 耳を伏せて、尻尾を下げる(股に巻き込む)
  • 伏せる
  • 瞳孔が開く
  • 落ち着きなく、行ったり来たりする
  • 飼い主について歩く
  • 挙動不審になる(人のいない方向を見つめる、吠える)
  • 食欲不振になる


さらに、以下のような変化が出ている場合は、積極的に犬を落ち着かせる対応が必要です。当てはまる場合は獣医師に相談しましょう。


犬が音を怖がっているときの注意が必要なしぐさ

  • どこかに隠れてしまう
  • クンクンと鳴いたり、ヒンヒンと鼻を鳴らしたりする
  • ハアハアとあえいだり、よだれを垂らしたりする
  • 震える
  • 大きな音や声に過剰に反応する(家族の会話などにも怯える)
  • パニックになり攻撃してくる
  • 失禁する
  • 破壊的な行動をする(ドアやケージを壊そうとする)
  • 自傷行為をする(床を掘ろうとして爪から血が出る、逃げ出そうとして歯ぐきから出血するまでクレートやケージを噛む)

犬が音を怖がっているときの落ち着かせ方は?

おもちゃで遊ぶ犬

音に怯えている犬を見ていると、「何とかしてあげたい」と思うでしょう。そんなときは、次の方法で落ち着かせてはいかがでしょうか。


怖がっている音をシャットアウトする

多くの犬は恐怖を感じたとき、本能的に隠れようとします。その際、できるだけ怖い音が伝わらないよう、音源から離れた場所に「安全地帯」を作ってあげることがおすすめです。安全地帯には、水、食べ物、お気に入りのおもちゃ、寝具など、犬にとって快適なものを設置します。小さな箱型で上部が覆われているタイプのハウスは、音が伝わりにくいのでおすすめです。ただし、安全な場所だからといって犬を閉じ込めてしまうと、かえってパニック反応を起こす可能性もあります。出入口は開放したままにしておきましょう。


過剰な声かけはNG

音を怖がっているからといって、普段以上に甘くしたりなだめたりしてはいけません。音を聞いて怯えたために飼い主が優しくしてくれたと記憶し、より怖がる行動を見せるようになっていく可能性があるからです。


おもちゃやおやつで気をそらす

集中できる対象物が手近にないと、聞こえてくる音に意識をフォーカスしてしまいます。長持ちして集中できる大好きなおやつ、おやつ入りのおもちゃ、高い音が出る仕掛けのおもちゃなどを使って、怖い音から犬の気をそらすのがおすすめです。普段から慣れているおもちゃは自発的に遊ばないので、必要に応じて与えることで嗜好性を高く維持できるでしょう。怖い音が終わったら、すぐに他の好きなものを与えて交換したり、隠したりしておきましょう。


クラシック音楽やテレビの音を聞かせる

クラシック音楽を犬に聞かせることで落ち着く効果があると言われています。犬のためのクラシック音源も市販されています。飼い主と一緒にリラックスしながら音楽を聞くことで、犬はより落ち着きやすくなっていくでしょう。他にも、テレビや音楽プレイヤーなどをつけ、不快な音をかき消すのもよいでしょう。


ご飯を与えたり散歩に出たりして気分を変える

ご飯を与えたり、散歩に出て気分を変えたりする方法もあります。いずれにしても、飼い主が率先して落ち着いた行動を示すことが、犬の落ち着きを促します。

犬が怖がる音を慣らす方法は?

スピーカーと犬

犬が音を怖がる場合、以下の方法で少しずつ慣らすこともできます。


音を聞かせて少しずつ慣らしていく

雷など飼い主が音の大きさを変えられない場合は、音が聞こえたらすぐにおやつやおもちゃを与えて怖がり始めるのを予防するといいでしょう。可能であれば、音が聞こえそうなときに先んじておやつやおもちゃを与えましょう。


慣れるまでは大きな音がする場所に近づかせない

音を怖がってからフォローしても、その音に対する不快な感情を打ち消すことは難しいでしょう。犬を怖がらせないためには、不快な音が聞こえる場所を避けるのが最善です。


雷の音をスピーカーで聞かせる

犬が怖がる音にできるだけ近い音を音源として用意します。4,000Hz以上の高周波は、一般的なスマートフォンでは再生できないので、音楽プレイヤーを使いましょう。まずは、犬が怖がらない程度の小さな音を聞かせ、気持ちを楽しくさせるおやつやおもちゃを与えることで、「音が聞こえると楽しい」という経験をさせます。音が聞こえても気にせずおやつを食べたり遊んだりしていることを確認したら、音量を少し大きくして、またおやつやおもちゃを与えます。その繰り返しで、音をだんだん大きくしていくと、慣れさせることができるでしょう。

犬が音を怖がらないようにするための予防法は?

子犬は、生後3か月までの「社会化期」に、外界からの刺激を受けて社会に適応していきます。この時期に多くの音を聞かせることが、怖がらないようにさせる最善の予防策です。

一方、生後4か月~12か月になると、逆に周囲の音に対して恐怖を覚えるようになります。この時期には、苦手な音には触れさせないように注意が必要です。

犬が反応する音についての注意点

犬が音を怖がったとしても、それ以降、間を空けずに何度も同じ状況をあえて経験させることで、トラウマにせずに克服させることができます。その際、重要なのは、犬が喜ぶ特別なおやつを与えること。いったん記憶された不快な感情を、楽しい感情に上書きするためです。

また、犬が遠吠えする場合、その原因を探りましょう。留守番で寂しく思っているようなら、留守番中に安全に遊べるおもちゃを与えると遠吠えを解消できるかもしれません。日中の運動不足による欲求不満の場合は、散歩の時間や室内遊びの時間を長くして疲れさせてあげるとよいでしょう。

なかには、特定の音を聞くことでてんかん発作が起こる犬もいます。発作と言っても意識を失うばかりでなく、急に回る、吠える、噛みつく、よだれを垂らして止まるなどのしぐさがてんかん発作であるケースも。突然このような行動を起こし始めたり、こうした行動が続いたり、月に1度以上起きたりするようであれば、獣医師に相談しましょう。

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