犬の脂漏症とは?症状や病院に連れて行くタイミング、治療法について解説【獣医師監修】

犬の脂漏症とは?症状や病院に連れて行くタイミング、治療法について解説【獣医師監修】

病気・健康

2022年09月10日 更新 (2022年07月24日 公開)

バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。

犬の脂漏症とは?症状や病院に連れて行くタイミング、治療法について解説【獣医師監修】

犬の脂漏症はどんな病気?

犬の脂漏症は、全身の皮脂腺の分泌が盛んになったり、皮膚のターンオーバーが乱れたりすることで発症する皮膚病です。脂漏症になると、皮膚が脂っぽくベトベトしたり、逆に乾燥してカサつき、フケが多量に発生したりする症状が見られるでしょう。

 

皮脂には本来、皮膚を保護してうるおす働きがありますが、分泌量が多くなりすぎると炎症を起こし、皮膚が赤くなったり、かゆみが出てしまいます。フケや乾燥が目立つ場合は、皮膚のターンオーバーの乱れが原因と考えられるでしょう。

犬の脂漏症の症状は?

犬の脂漏症とは?_診察する獣医師

愛犬に以下のような症状が見られる場合は、脂漏症が疑われます。それぞれの症状について具体的に見ていきましょう。

 

皮膚のベタつき

皮脂が過剰に分泌されることで、皮膚が脂っぽくベトベトし、独特の臭気(脂漏臭)も発生します。

 

皮膚のカサつき

脂漏症では皮膚のターンオーバーが早くなることにより、皮膚が乾燥しカサつきが見られることも。皮脂が不足すると、皮膚が乾燥してカサカサしたり、フケがたくさん出たりするでしょう。また、乾燥した皮膚を保護するために皮脂が過剰に分泌され、皮膚のベタつきなどにつながります。

 

かゆみ

皮脂分泌が過剰になるだけでは、かゆみは起こりません。しかし、皮脂が過剰になることで、皮膚に常在するマラセチアという真菌(カビの仲間)が異常に増殖することがあります。このマラセチアが皮脂を分解するときに出す物質によって、二次的にかゆみが生じることがあるでしょう。

 

脱毛

皮脂の過剰分泌によって毛包(毛穴の内部全体)に炎症が起きると、毛が抜けてしまいます。皮脂腺は毛包の中に存在しており、皮脂は毛包から分泌されるためです。また、脂漏症にホルモン異常が関わっている場合には、ホルモンバランスの乱れから脱毛が起こることもあります。

 

ひび割れ

脂漏症が慢性化すると皮膚が分厚くなり、厚さが増していくとひび割れてしまうことも。

 

フケ

脂漏症の犬の皮膚ではターンオーバーの周期が乱れ、通常よりも早い速度で表皮が剥がれ落ちるせいでフケが多くなることがあります。

 

吹き出物ができる

皮膚炎が進行するにつれて、皮膚がブツブツと盛り上がる症状も見られるでしょう。

 

独特の臭いがする

皮膚でマラセチアが繁殖することで、特有の臭い(脂漏臭)が発生することもあります。

 

病院に連れて行くタイミングは?

皮膚のベタつきや多量のフケ、独特の匂いなどの症状が進行すると、皮膚炎が起こり、かゆみが発生します。犬はかゆみを感じるとその部分をしきりに舐めたり、かいたりします。こうした様子が見られたら、すぐに病院に連れて行ってください。

 

ただし、理想としては、かゆみや炎症を起こす前に普段より皮膚がベタついていたり、フケが多いと気づいたタイミングで連れて行った方が良いでしょう。強い症状が出る前に対処することで、軽度で済むだけでなく、かいたり噛んだりすることで皮膚が傷ついてしまう二次的な皮膚障害も防げます。

犬の脂漏症の原因は?

脂漏症の原因は、遺伝によるものと、ホルモン異常など後天的なものの、2つに分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

遺伝的な原因

ホルモンの病気

甲状腺機能低下症など、ホルモン異常があると皮脂分泌が多くなることがあり、脂漏症の原因となります。

 

遺伝

親から受け継いだ体質として皮脂の分泌が多い犬種も存在します。常染色体の劣性遺伝と考えられており、若い時期から発症した場合、遺伝が関係していることが多いようです。

 

後天的な原因

皮膚のターンオーバーの乱れ

皮膚のターンオーバーとは、一定の周期で表皮(皮膚の一番外側)が新しい細胞に生まれ変わり、古くなった角化細胞が剥がれ落ちる仕組みのことです。犬の皮膚はおおよそ3週間で新しい細胞に置き換わります。

 

しかし、皮膚のターンオーバーが乱れると表皮の保護作用が衰えて、皮膚が乾燥しやすくなります。すると、今度は乾燥から守るために皮脂が過剰に作られることに。これが、皮膚が脂でベトベトする状態です。また、ターンオーバーが乱れ、皮膚の細胞が剥がれ落ちる周期が早まることで、多量のフケにつながります。

 

間違ったスキンケア

シャンプーの種類や頻度、洗い方、乾かし方などケアの方法が適切でないと、皮膚が乾燥しやすくなります。皮膚を守るために過剰に皮脂が分泌され、脂漏症の原因となるでしょう。

脂漏症になりやすい犬は?

犬の脂漏症とは?_座っているシーズー

犬の中には脂漏症を引き起こしやすい犬もいます。脂漏症になりやすい犬とその理由をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

 

脂漏症になりやすい体質の犬

遺伝的に、以下の犬種は脂漏症になりやすいとされています。愛犬がこれらの犬種に当てはまる場合は、日頃から皮膚を清潔に保つよう気をつけましょう。

     

    栄養が足りていない犬

    皮膚はコラーゲンやセラミドといった脂質やタンパク質でできています。そのため、栄養バランスの取れた食事をしていないと、皮膚の再生やバリア機能を保つことが難しくなり、脂漏症を引き起こしやすいです。

     

    アレルギー体質や皮膚に感染がある犬

    皮膚にアレルギーや細菌や真菌の感染があったりする犬は、炎症から皮膚を守ろうとして皮脂が過剰に分泌されるため、脂漏症を発症しやすいと言えます。

    犬の脂漏症の治療法は?

    脂漏症の治療には、以下のような方法があります。それぞれの治療法や治療にかかる費用の目安などを詳しく見ていきましょう。

     

    投薬治療

    感染を抑える抗菌剤や抗真菌剤、かゆみを抑える薬を使って治療行い、それぞれ飲み薬と塗り薬があります。治療費は、体重や使用する薬の種類によって変わってきますが、小型犬でおおよそ1週間に2,0003,000円程度が目安です。

     

    薬浴(シャンプー療法)

    皮脂を落として清潔に保つためのシャンプー療法も効果的です。皮脂を落とす力の強いものや保湿作用に優れたものなど、さまざまなシャンプー剤があるので、動物病院で皮膚の状態にあったものを選んでもらいましょう。シャンプーの価格は1本あたり2,0003,000円程度です。

     

    アトピー性皮膚炎など基礎疾患の管理

    アレルギーやアトピー性皮膚炎など、脂漏症の原因となる基礎疾患があればその治療を行います。治療には、飲み薬や外用薬、食事療法を用いるのが一般的です。費用は個別のケースによって変わってきます。

     

    生活環境を整える

    梅雨の時期や夏場はクーラーと除湿機で温度や湿度の管理をすることが大切です。高温多湿の環境は、皮脂の分泌を増やしマラセチアを増殖させる原因となるためです。

     

    食事の管理

    太り過ぎていると皮膚が擦れて皮脂が溜まりやすいと考えられるため、食事を管理して肥満を改善していくことが必要です。また、皮膚に必要な栄養を届けるため、皮膚に特化したサプリメントや食事を取り入れても良いでしょう。費用は、体重や選択するものによって変わりますが、小型犬で月に数千円程度と考えられます。

     

    脂漏症はどれくらいで治る?

    遺伝性の脂漏症の場合、治療は生涯にわたることもあります。一方、皮膚炎やアレルギー、ホルモン異常など二次的な要因で起こった脂漏症では、治療期間はもう少し短くなるでしょう。基礎疾患の有無によっても異なりますが、早いものでは数週間、長期にわたる場合は数年といったスパンで治療が行われます。

    犬の脂漏症の予防法は?

    犬の脂漏症とは?_フードを見つめるウエスティ

    犬が脂漏症にならないように、飼い主が日頃から予防を心がけることも大切でしょう。家庭でできる予防法は以下の通りです。

     

    シャンプーやブラッシングなどのお手入れをこまめにする

    脂漏症を防ぐには、定期的にシャンプーやブラッシングを行い、皮膚を清潔に保つことが大切です。シャンプーした後の皮膚はとても乾燥しやすいため、必ず保湿剤を使用してください。ドライヤーの熱風も皮膚を乾燥させるため、乾かすときは冷風にするか、ドライヤーを遠く離して熱風が直接体に当たらないようにしましょう。

     

    食事の管理

    肥満は脂漏症のリスクを高めてしまうので注意が必要です。栄養バランスを考え、年齢に合ったドッグフードを選ぶことが予防につながります。

     

    こまめに皮膚の状態をチェックする

    ベタつきや乾燥、赤み、脱毛などは皮膚トラブルのサインです。こうした症状が見られたらそのままにせず、早めに対処することが大切でしょう。普段から愛犬とスキンシップをとり、こまめに皮膚の状態をチェックしてくださいね。

    犬の脂漏症とともに併発しやすい病気は?

    脂漏症とともに併発しやすい病気として、外耳炎が挙げられます。外耳炎は、外耳道の中で皮脂が増えたり、マラセチアが繁殖したりして炎症が起こること起こる病気です。外耳炎になると、皮膚の赤みやかゆみが発生し、しきりに耳をかいたり、頭を振ったりするようになります。脂漏症になった際は、外耳炎の併発にも注意して見てあげてください。

    脂漏症は人間や他の犬にうつる?

    犬の脂漏症とは?_飼い主を見つめる犬

    愛犬が脂漏症になった際に、同居している家族や他の犬にうつしてしまうかもしれないと心配する飼い主も多いかもしれません。しかし、犬の脂漏症は、人間や他の犬にうつることはありませんので安心して治療に専念してくださいね。