犬がため息をつく理由は?その裏にある犬の気持ちと病気の可能性について解説【獣医師監修】

犬がため息をつく理由は?その裏にある犬の気持ちと病気の可能性について解説【獣医師監修】

犬もため息をつくことがあるのをご存知でしょうか? 実は、人間だけではなく犬もさまざまな理由からため息をつくのです。そんな犬のため息について、ため息の理由となる気持ちや病気の可能性、注意点などについて、動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に解説していただきました。

犬のため息ってどんなもの?

ため息をつく犬人間なら、ため息は「はぁ~」と口から出るイメージですよね。犬も口から大きな息を出すことがありますが、これはため息ではなく「開口呼吸」です。犬の場合、ため息は口からではなく鼻から出ます。その音は、低音のうめき声のようであったり、かすかに聞こえる程度の微音であったり、主に「長く続く息が鼻から出てくる音」が犬のため息です。

では、同じく鼻から出る「鼻息」との違いはどうでしょうか。犬のため息は「吸う量:吐く量=12」。一方、犬の鼻息は「吸う量:吐く量=11」です。ため息のほうが吐く息の量が多く、呼吸量が多くなります。こうした呼吸量の違いによってため息と鼻息を区別するとよいでしょう。

ため息は神経学、心理学、生理学、そして病理学といったさまざまな医学的分野で研究が進んでおり、犬がため息をするのはさまざまな理由があると考えられています。続けて解説していきましょう。

ため息をつきやすい犬種は?

パグはため息をつきやすいため息をつきやすい犬種は、パグ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグです。この3犬種は短頭種なので、生まれつき鼻腔が狭かったり、軟口蓋が長く垂れ下がっていたりしていることが多いのです。そのため、酸素が効率よく取り込めずに呼吸が大きくなり、吐く息がため息として出ることがあります。

日ごろから運動を嫌がる、いびきが聞こえるといった症状がある場合は、呼吸障害が出て苦しそうな息づかいになることもあります。不安な場合は獣医師に相談するとよいでしょう。


ため息をつきやすい犬種

犬のため息の理由は?

疲れている犬犬がため息をつくと、飼い主としては理由が気になりますよね。「どういう気持ちの表れなのかな?」と考える時には、ボディランゲージや表情はどうなっているかも気にかけることが重要です。

犬がため息をついたら、頭からつま先まで犬全体を見てみましょう。例えば、尻尾を振っているなら、そのため息は良い兆候。目が大きく開いているなら、欲求が満たされず諦めたことを表現しているため息と考えられます。

ため息を生み出す犬の気持ちについて、主なものをご紹介しますので、犬を理解する参考にしてみてください。


犬がリラックスしているときのため息

犬がリラックスした表情をしていたり、尻尾がゆるんだ位置にあったりするときに出るため息は、「飼い主が好き」「できるだけ長くそのまま近くにいてほしい」という気持ちの表れです。また、目を閉じてため息をつくことがありますが、これもおそらく喜びの伝達方法と考えられます。


犬が不満やストレスを感じているときのため息

欲求不満や不安、緊張を断ち切ろうとして出るため息もあります。「散歩に出たい」「おなかが空いた」などの気持ちを抱えているときがこれに当たります。この時、犬はウロウロと動き回っていたり、体を震わせたり、後ろ足で体をひっかいたり、前肢を舐めたり噛んだりしている行動が見られることもあります。


犬が満足しているときのため息

おいしいご飯を食べたり、たくさん遊んで満足を得られたりした後や、せがんで抱っこをしてもらったときにもため息が出ることがあります。このため息は満足している気持ちを表しています。


これまでの経験から学習された犬のため息

ため息をついた直後に「飼い主に構ってもらえた」「オヤツがもらえた」など、犬にとって好都合なイベントが起きた場合、犬はそれを覚えていることがあります。この記憶から「またそのようになればいいな」と考え、敢えてため息をついている場合があるのです。飼い主の関心を求める行動なので、飼い主がいないときはこのようなため息をつきません。

こうしたため息が頻繁に起こって気になるなら、別の対象に気持ちをそらせるか、号令をかけて従ったことへのご褒美として構ったりオヤツを与えたりするのがおすすめです。要求を含む犬のため息を減らしていけるでしょう。


犬が疲れているときのため息

体に痛みがあるときや体調が悪いときに、犬はため息をつくことがあります。前日にとても楽しい時間を過ごしたとか、遠出をして疲れているなど、原因がわかっていればそのまま休ませてあげましょう。時間が経てば回復することが多いからです。けれどもなかなか復調せず、うずくまって寝ていて食欲もないなら、獣医師に相談するとよいでしょう。


犬が遠くのにおいを嗅ぎたいときのため息

犬が散歩中のため息には、においの探索行動の意味が含まれます。鼻の通りをよくすることで、遠くからやってくるかすかなにおいを嗅ぎわけようとしているのです。

病気の可能性がある注意すべき犬のため息は?

ため息をつく犬犬のため息は、体の不調によって出る場合もあります。体調不良かどうかを見分けるには、ため息の頻度や時間帯などが目安になります。病気の場合は、命に関わることも。犬の様子がいつもと違うと感じたら、すぐ獣医師に診察してもらうようにしましょう。


犬のため息の回数が多い

犬のため息の回数が多くなったときは要注意。次のような病気が潜んでいる可能性があります。


・鼻腔狭窄

鼻腔が狭くなり呼吸困難になる病気で、同時に鼻水などの症状があれば、鼻腔狭窄の可能性があります。喉が詰まって呼吸が苦しいときや鼻水が溜まって息苦しいとき、吐き気を感じているときなどにため息を出すことがあるでしょう。


・心臓や呼吸器系の疾患

僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気にかかると、犬の呼吸は不規則になります。不規則な呼吸を安定させるため、ため息が出やすくなるのです。他にも肺炎、気管虚脱といった呼吸器系の病気では同様の症状が見られます。日ごろから呼吸が規則的かどうか気を付けて見ておくと、異変に早く気づくことができるでしょう。



食後や夕方など特定の時間にため息が多い

犬が食後、ため息を多くついているときは、食べ物が喉に詰まっているか、吐き気を催していることがあります。また、ため息が多く出る時間帯によっては、次のような体調不良の可能性があります。注意深く観察してあげてください。


・鼻水

寒い時期や緊張時にため息が多く見られるときは、鼻水が詰まっていることが原因と考えられます。


・気管狭窄

気管狭窄は、炎症や異物混入などにより気管や気管支が狭まる病気です。夕方から夜にかけてため息が多い時は、気管狭窄が原因の可能性があります。


胃捻転・胃拡張症候群

食後に犬がため息を多くつくときは、胃捻転か胃拡張症候群の可能性があります。胃捻転・胃拡張症候群は、何らかの原因で食後の胃内にガスが大量発生し、ガスでパンパンになった胃がねじれを起こしてしまう病気です。突然発症し、急速で致死的な進行を示します。一般的には大型犬で胸の深い犬種に起こりやすいと言われますが、どの犬種でも起こり得ます。犬が繰り返し吐いてしまう場合には、胃腸障害だけでなく、内分泌性の病気も疑われます。嘔吐による脱水も命に関わりますので、すぐに動物病院へ連れて行ってあげましょう。

犬がため息をつく理由がわからないときは

引越し作業と犬体調が良いように見えるのに、犬のため息が増える場合は、犬が強いストレスを感じているからかもしれません。ため息とストレスについては先述しましたが、最後にもう少し詳しく解説しておきましょう。


飼い主との不十分な信頼関係がため息の原因に

犬がストレスを感じる原因としては、来客、引っ越し、新しい家族が増えるといった環境要因があります。日ごろから飼い主と信頼関係が十分に築けていないと、飼い主への欲求不満もストレスの原因になります。例えば、留守番が多いことや散歩にしっかり行けていないことなども、犬にとっては欲求不満につながります。犬が安心して過ごせる環境を整えられるよう再検討してみましょう。


犬のストレスの原因を取り除く

ストレスを感じている状態を長く放っておくと、犬は胃腸障害などの体調不良を起こしたり、常同障害や分離不安など問題行動を起こすようになることも。ストレスの早期発見に努め、ストレスの原因を取り除いてあげることが大切です。犬のストレスを減らすよう対処することで、より犬に信頼される飼い主さんになれることでしょう。

「ストレスの原因がわからない」「ストレスの原因が取り除けない」というときは、1人で悩まずに、行動学に詳しい専門家や獣医師に相談するのがおすすめです。対処法を教えてもらうことができますよ。

専門家のコメント:

犬のため息を耳にすると、飼い主は「心配事でもあるのかな?」と気になるかもしれませんね。まずは、犬のボディランゲージや表情、頻度などをよく観察してあげましょう。ため息を適切に対処してあげることで、犬とますますよい関係を築けるようになるでしょう。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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