柴犬にはどんな種類がある?それぞれのルーツや特徴を解説【獣医師監修】

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う

柴犬にはどんな種類がある?それぞれのルーツや特徴を解説【獣医師監修】

海外でも「shiba inu」の愛称で人気を集めている「柴犬」。実は日本古来の犬種として貴重な国の文化財のひとつとされており、1936年には国の天然記念物として登録されているほど歴史ある犬なのです。今回は、知っているようで知らない「柴犬」の種類とその特徴について獣医師の茂木千恵先生監修のもと解説していきます。

実はあまり知られていない? 柴犬のルーツ

柴犬の起源は古く、縄文時代の遺跡から発掘された「縄文犬」が、柴犬の先祖だと考えられています。遺跡の歯の状態などから生前は狩猟犬であったことがうかがえ、丁寧に埋葬された形跡があることから、昔から人間のパートナーだったと考えられています。

 

その後、明治から大正にかけ、イギリスから狩猟用に輸入された洋犬が流行となって交雑化が始まりました。昭和のはじめには純粋な日本犬は絶滅の危機に瀕したため、保護活動が起こりました。

 

現在、日本で飼育されている日本犬種の頭数の80%位を柴犬が占めています。柴犬という呼び名は中部(岐阜から長野の山間部)地方で猟のために飼育されていた小型の赤褐色の日本犬の俗称として使われていたもので、「柴」には「小さい」という意味があります。柴犬は日本古来の犬種として貴重な国の文化財のひとつとされており、昭和11年(1936年)12月に、国の天然記念物に指定されました。

 

柴犬の種類は?

柴犬

一口に「柴犬」といいますが、実はそのなかに多くの種類があります。また、柴犬の大きな特徴として、育った地域によってさまざまな違いが生まれ、その地域名を呼称に含めた「地方的呼称」がついていることがあげられます。種類ごとに詳しく見ていきましょう。

 

信州柴犬

現在の柴犬の基本体型のベースになっているのが信州柴犬。もともとは長野県や群馬県周辺の山間部で狩猟犬として活躍していました。額が広く、柴犬の特徴の一つである適度に張った頬は丸みを帯びた外貌を印象付けています。耳は小さく三角形に立ち上がり、目は丸すぎず、細すぎない三角形。下顎が厚く、唇がよく引き締まった丸い感じの口もととなっています。

 

美濃柴犬

古来より狩猟犬として飼育されていた柴犬の特性をもっとも強く受け継いだ犬種です。緋赤と呼ばれる美しい赤毛をまとっているのが他の柴犬にはない魅力といえます。岐阜県の木曽川、長良川、揖斐川の流域で、タヌキ、アナグマ、テン、イタチなどの小獣猟によく利用されていました。もともとは中型犬サイズであったのが、戦中の混乱を経て小型の犬が残ったとされています。

 

山陰柴犬

鳥取県鳥取市周辺で鳥、ウサギ猟などに使用されていました。「太刀尾(たちお)」と呼ばれる尾を巻きあげない柴犬が多いほか、耳が小さく上方についていることが特徴です。また、頭部がやや小さく、耳も小さいです。額段(ストップ)が明瞭でくぼみが大きく、目の色素が濃く、まつげがよく見える犬が多いです。

 

縄文柴犬

すでに絶滅した日本犬の先祖といわれる縄文犬を復元しようと改良された柴犬です。縄文時代の遺跡より出土した多くの小型犬の骨から外貌を想定し、現存する柴犬の中からよく似た風貌の犬を掛け合わせて近年約60年かけて作り出した系統で、品種ではなく愛称です。長い足に面長の顔、くるりと巻いた尾が特徴的です。また、額段が浅く面長で、口吻部は太く頑丈です。

 

川上犬

長野県の南佐久郡川上村で保護育成されている柴犬です。大柄でオオカミのような鋭い眼光が印象的です。知的好奇心旺盛な性格が特徴で、全国に300頭ほどしか存在しておらず、長野県の天然記念物に指定されている希少な種類のため、購入には厳しい審査があります。野性的な日本犬の特徴をよく残している信州柴犬の一種です。

 

これらの柴犬は現在も各保存会や育成会により継承と保持がされています。

 

「豆柴」「小豆柴」は正式な犬種ではない

子犬のような見た目の豆柴・小豆柴(あずきしば)は、柴犬の種類、品種の名前ではありません。小さい柴犬同士を掛け合わせてできた犬種で、日本犬保存会が認めている柴犬の雄の標準体高や体重を下回る体格が豆柴、豆柴よりもさらに小さい体格となるのが小豆柴と呼ばれています。

 

昔から少数ですが標準体格の柴犬に混ざり、他の子よりも小さな体格の柴犬は存在していました。現時点では昭和後期の頃に『豆柴』という名称で販売が開始されたと言われています。

柴犬の平均的な体高・体重は?

柴犬の平均的な体高・体重は?

柴犬は日本犬の中で唯一の小型犬に部類されます。柴犬のオスの平均的な体高は38~45cm、平均的な体重9~11kg。メスの平均的な体高は35〜38cm、平均的な体重は7〜9kgと比較的飼いやすいサイズとなっています。

柴犬の見た目の特徴は?

ピンと立った耳、くるっと巻いた尻尾が柴犬の特徴です。また、硬くて直毛の上毛と柔らかい下毛のダブルコートと呼ばれる二層構造のしっかりと厚い被毛を持っています。体格の良い犬は表情筋が豊かで、笑顔が愛らしい印象となります。

柴犬の毛色の種類は? 

毛色は一番で柴犬らしいイメージの赤、眉毛のような斑点がチャームポイントの黒、赤白黒が混ざった珍しい毛色である胡麻、白があります。

柴犬の性格の特徴は?

物覚えが良く、問題を解決する能力も高いです。小柄でも勇敢で感覚が鋭く、番犬としても優秀でしょう。飼い主や家族にはよく懐く一方、他者への関心は薄いとされています。また、オスとメスでは性格が異なり、メスは人懐こさと服従性を兼ね備えているため、しつけやすいです。オスは縄張り意識が強いため、活発で攻撃性が高い特徴があります。ただし、去勢手術を行うとその傾向は弱まるでしょう。

柴犬の顔のタイプは?

キツネ顔

柴犬の顔のタイプは大きく「キツネ顔」と「タヌキ顔」の2種類にわかれます。

 

キツネ顔

山陰柴や縄文柴がキツネ顔に分類されます。小さい頭部と引き締まった体型で面長、体・顔ともにすらっとしていて細身であることが特徴です。そのほか、マズルが長く、目尻が釣り上がった凛々しい顔立ちや歯が大きいことも特徴的です。

 

タヌキ顔

キツネ顔から派生したのがタヌキ顔とされていて、信州柴や美濃柴が分類されます。体・顔はふっくらとしていて、目・鼻に丸みがあることが特徴です。マズルは短く、キツネ顔の柴犬に比べると首や骨格が太くしっかりしています。愛嬌があるように見えることも特徴です。

柴犬の尻尾の種類は?

柴犬の尻尾の種類は?

尾は柴犬の特徴であり、太くて長すぎず短すぎない、巻尾あるいは差尾(さしお)が標準です。巻尾、差尾いずれものんびりした精神状態のときは巻き方もゆるやかで、緊張するとぐっと力が入って強く巻かれ、差尾の場合は尾の先端まで力が入ったように見えます。

 

巻尾

巻尾は文字通り巻いた尾で、右巻き左巻きは犬を後方より見ての巻き方です。

 

差尾

差尾というのは巻かずに背上に差している尾のことで、その形から太刀尾、なぎなた尾、たたき尾などと呼ばれています。たたき尾というのは尾端が背に近く、歩行に際して背をたたくように見えるところから名づけられました。

 

※出典

柴犬(愛犬の友犬種ライブラリー),愛犬の友編集部,誠文堂新光社, 2002,10,1

 

柴犬のミックス犬は?

実は柴犬にもミックス犬種があります。外見や性格の特徴を見て行きましょう。

柴犬のミックス犬は?

【ポメ柴(ポメラニアン×柴犬)】

ポメラニアンと柴犬を交配させて生まれたのがポメ柴です。

 

外見の特徴

個体差が大きいですが、ポメ柴はオスメスともに体高は25〜34cm、体重は6〜8kgほどです。外見や体格は小型の柴犬に似ていて、被毛はポメラニアンのようにリッチなダブルコートとなることが多いでしょう。

 

性格の特徴

ポメラニアンと柴犬に共通する性格に、警戒心と気の強さ、そして神経質なところがあります。ポメ柴も同様に気が強く警戒心も強くなりがちだと考えると良いでしょう。また、ポメ柴は活発な犬種なので、運動不足になると過剰に吠える、いたずらするといった問題行動を起こしがちです。一貫した態度で子犬の頃から号令を使ったしつけをして、周囲の環境と見知らぬ人・犬への社会化を進めることで、将来的な問題行動の予防に努めましょう。

 

飼い方の注意点

ポメ柴は柴犬のスタミナを受け継いでいることが多いです。運動不足にならないよう、まとまった運動の機会を習慣づけましょう。運動不足は肥満や問題行動の要因ともなりかねないので気をつけてあげてください。

 

柴チワ(柴犬×チワワ)

【柴チワ(柴犬×チワワ)】

チワワと柴犬を交配させたのが柴チワです。「柴チワ」という名前はあくまでも流通させるときに伝わりやすくつけられたものです。「チワ柴」と表記されることもあり、正式な名前は存在しません。

 

外見の特徴

柴犬の体格とチワワの体格は大きく異なっているため、柴チワの成長後の体格には個体差が大きく、予測しづらいです。同じ母犬から生まれる兄弟であっても、柴犬に近い大きさに成長する犬もいれば、チワワくらいの体格に成長する犬もいます。

 

毛色は「白」「黒」「赤」「ブラック&タン」などが知られていて、親犬の毛質に関わらず、ロングコート(長毛種)あるいはスムースコート(短毛種)となります。こちらも成長後に変化することがあるため、予測が難しいです。

 

性格の特徴

子の性格は両親から受け継ぐ気質や成育環境の影響を大きく受けるので一概には言えませんが、柴犬に似て特定の人にだけ愛着を示すこともあれば、チワワに似て友好的で親しい人に対して親密さを求めることもあり、さまざまです。

 

飼い方の注意点

神経質な面が強く出ると、特に飼い主以外に攻撃的になりがちです。一貫した態度で号令とご褒美を使ったトレーニングを積み、日々の一対一の丁寧なコミュニケーションがよい子に育てる秘訣です。また、見知らぬ人や犬に対しては警戒させないよう、社会化に努めましょう。

 

柴犬の飼育のポイント

柴犬の飼育のポイント

柴犬を飼育するうえで、知っておきたいポイントはいくつかあります。以下のような点に注意しましょう。

 

理想的な飼育環境

柴犬はとてもきれい好きで、トイレと寝床を離した環境を好みます。カビ、ダニ、食べ物、花粉、ハウスダストが原因でアトピー性皮膚炎になってしまうこともあるため、掃除も徹底しましょう。

 

運動量と散歩の仕方

柴犬は一般的に他の犬と比較して運動量が多い傾向にあります。そのため、日々の散歩は1日2回、30分〜1時間程度行うようにしましょう。

 

日常のお手入れ

柴犬は肌が弱く、アトピー性皮膚炎になりやすい犬種のため、日々のお手入れが重要になってきます。柴犬の被毛はダブルコートであるため、下毛(アンダーコート)が抜けやすいです。換毛期ではないときでも衛生状態を保つため、毎日ブラッシングをするのがよいでしょう。シャンプーはやりすぎると表皮の油分が奪われすぎてしまうため、2か月に1回程度が理想的です。

専門家のコメント

柴犬は猟犬として古代から日本人の生活に密着し、パートナーとして共生してきた歴史の長い犬種です。そういった猟犬由来のスタミナと野生的な行動特性が今も受け継がれていますが、都市生活で屋内飼育となるとストレスを抱え、心身が弱る可能性もあるでしょう。そのため柴犬を家族に迎える際は、愛犬のために時間を作って自然とのふれあいを楽しめるライフスタイルを心がけるといいでしょう。日々のコミュニケーションを積み重ねることで笑顔の多い犬となっていくので、犬は飼い主の鑑と考えて、柴犬との生活を楽しんでください。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

監修/茂木千恵先生(獣医師)
博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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