柴犬のキツネ顔とタヌキ顔とは?見分け方や特徴を解説【獣医師監修】

石井香絵(獣医師)

石井香絵(獣医師)

アメリカ獣医行動学会会員、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。問題行動の治療を専門とし臨床に携わる。

柴犬のキツネ顔とタヌキ顔とは?見分け方や特徴を解説【獣医師監修】
柴犬のキツネ顔とタヌキ顔とは?見分け方や特徴を解説【獣医師監修】

目次

  • ・ そもそも柴犬はどんな犬種?
  • ・ 柴犬には「キツネ顔」と「タヌキ顔」がある?
  • ・ 柴犬の「キツネ顔」と「タヌキ顔」の見分け方は?
  • ・ 柴犬は「キツネ顔」と「タヌキ顔」で性格が違う?
  • ・ 「キツネ顔」と「タヌキ顔」を子犬の時に見分ける方法は?
  • ・ 実は柴犬には顔だけでなくしっぽにも種類がある?
  • ・ 柴犬を迎え入れるときの注意点

日本犬として親しまれている柴犬。そんな柴犬には「キツネ顔」と「タヌキ顔」があるのを知っていましたか? 今回は、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets代表で獣医師の石井香絵先生に教えていただいた、柴犬の「キツネ顔」と「タヌキ顔」の特徴や、子犬のときに見分けるコツなどを解説していきます。

そもそも柴犬はどんな犬種?

芝生に立つ柴犬

日本人に馴染み深い柴犬ですが、いったいどんな犬種なのかを改めて見ていきましょう。

 

日本犬の代表といえる柴犬

日本犬の代表といえば柴犬と言えるほど、国内にとどまらず海外でも高く評価されている「柴犬」。日本犬6種のうちでも柴犬の飼育頭数が最も多く、柴犬は不動の人気犬種であることが分かります。

 

柴犬のルーツ

柴犬の歴史は縄文時代までさかのぼり、番犬として、ウサギや野鳥などを狩る猟犬としても活躍していました。この頃、西洋犬が日本で飼育されるようになり、純血の柴犬の個体が減ってしまいました。そのため、純血の柴犬の保護を目的として、1936年に日本の天然記念物に指定されています。

 

柴犬の外見

見た目の特徴としては、三角にピンと立った耳と丸まったしっぽでしょう。子犬の頃は体も顔も丸く、かわいらしさが強調されますが、成犬になるにつれて凛とした姿に変わっていきます。

 

柴犬はクールでポーカーフェイス

多くの柴犬は警戒心が強く、べたべたされるのが苦手で、自分がゆっくりできる時間と空間があることを好む傾向が強いです。一方で、性格が穏やかで他者にもお腹をゴロンと見せる、触れられるのが好きな柴犬もいます。

 

また、西洋犬と比べると、柴犬はクールでポーカーフェイスな一面があり、顔や体で示す感情表現が読み取りづらい犬種です。愛犬が何を考えているかを知るためには体の一部だけを見て判断せずに、耳や額の広さ、口の開き方、目の形、しっぽの動き、姿勢、体の緊張具合など全体を総合的に見て感情を読み取るようにしてあげましょう。すると、ミスコミュニケーションが減り、絆が強く信頼関係も築きやすくなります。

柴犬には「キツネ顔」と「タヌキ顔」がある?

まず、柴犬には日本各地の地域固有の「地柴」が存在します。それぞれの種類によって見た目、毛色、しっぽ、気質の特徴に違いがあり、「キツネ顔」や「タヌキ顔」など顔つきの特徴にも変化が現れます。一般的に、「タヌキ顔」の柴犬は「キツネ顔」から派生したものだと言われています。

 

「キツネ顔」タイプは、山陰柴や縄文柴

「キツネ顔」タイプの柴犬

「山陰柴」は、アナグマ猟で活躍した因幡(いなば)犬がベースとなっています。アナグマが住む狭い巣穴に潜りこむことに特化した小さい頭部と引き締まった体形をしているため、「キツネ顔」に分類されます。毛色は赤のみで、巻かれていない差尾は遠くの猟師からもよく見えるという利点があります。

 

「縄文柴」とは、1962年に縄文時代の遺跡である愛媛県の黒岩遺跡から出土された、国内最古の犬の骨格と似た特徴を持つ柴犬のこと。額が浅く、体・顔ともに細身の「キツネ顔」をしていて、野性的な気質があります。

 

「タヌキ顔」タイプは、信州柴や美濃柴

「タヌキ顔」タイプの柴犬

「信州柴」は、現在の日本にいる柴犬の多くはこの信州柴の子孫であるといわれるほど、柴犬のルーツとなる種類です。被毛は硬く密集しており、毛色は赤または胡麻です。顔だけでなく体にも丸みがあり、「タヌキ顔」に分類されます。

 

「美濃柴」は、古くから岐阜県で飼育されていた柴犬の一種で猟犬として活躍していました。特徴的な「緋赤」と呼ばれる夕焼けのような赤い毛色をしており、小柄で筋肉質です。タヌキのようなふっくらした顔をしています。

柴犬の「キツネ顔」と「タヌキ顔」の見分け方は?

柴犬の「キツネ顔」と「タヌキ顔」の特徴でどのような違いがあるのか、具体的に見ていきましょう。

 

「キツネ顔」の柴犬の特徴

「キツネ顔」の柴犬の特徴

「キツネ顔」の柴犬は、以下のような特徴があります。顔も体もすらっとスリムな印象で、昔ながらの柴犬が「キツネ顔」の柴犬といえるでしょう。

 

・マズルが長い

・面長で額が浅い

・目尻が少しつり上がっている

・きりっとした顔立ち

・歯が大きい

・体がスリム

 

「タヌキ顔」の柴犬の特徴

「タヌキ顔」の柴犬の特徴

「タヌキ顔」の柴犬の特徴は、以下です。顔も体も丸く、愛嬌があるような雰囲気があります。

 

・マズルが短い

・顔の輪郭や目、鼻が丸い

・丸みを帯びた体型

・首の太さや体の骨格が、「キツネ顔」の柴犬に比べると太くしっかりしている

・愛嬌があるように見える

柴犬は「キツネ顔」と「タヌキ顔」で性格が違う?

クールな表情をした「キツネ顔」の柴犬

「キツネ顔」はクールな印象があり、「タヌキ顔」は愛嬌があって優しそうに見えてしまいます。しかし実際は、顔の雰囲気だけで性格を判断することは難しいとされています。犬の性格は遺伝的に受け継いだ先天的な気質と、一緒に暮らしている家族や飼育環境により生じた後天的な気質の2つの影響を受けて作られていくからです。

「キツネ顔」と「タヌキ顔」を子犬の時に見分ける方法は?

柴犬の子犬

柴犬の子犬のときにも、基本的には前述したような「キツネ顔」と「タヌキ顔」の特徴で見分けます。しかし、子犬時はどの個体もマズルが短い、体や顔が丸い、目鼻が近づいているように見えるため、成犬時に「キツネ顔」になる柴犬も、子犬の頃は「たぬき顔」に見えてしまうことも。子犬時にどちらかを判断することは、なかなか難しくなります。

 

成長すると顔つきが変わることも?

顔つきや体形は子犬から成犬になるにつれて変化していきます。子犬のときは、顔も体も丸みを帯びている「タヌキ顔」の柴犬が、成長とともにマズルの長さも伸びて面長になり、「キツネ顔」に変化することが考えられます。

 

「キツネ顔」か「タヌキ顔」を知りたい場合は、親犬を調べる

好みがはっきりしていて、必ずどちらかのタイプを迎えたいという気持ちが強い場合は、子犬の親犬を見せてもらったり、ブリーダーに自分の好みを伝えて相談してみたりするといいでしょう。

実は柴犬には顔だけでなくしっぽにも種類がある?

柴犬のしっぽ

柴犬には顔だけでなく、しっぽにも種類があります。大きく分けて、クルンと巻かれた「巻尾」と、「巻かれていないタイプ」の2つに分けられるので、それぞれのしっぽの特徴を見ていきましょう。

 

【巻尾について】

日本犬のしっぽによく見られる「巻尾」は、柴犬でも代表的なしっぽです。「巻尾」の巻き方にも、以下のように様々な特徴があります。

 

右巻と左巻

しっぽが正中線からどちら側に巻いているかによって、右巻、左巻と分かれます。しっぽの先端が体の右側にある場合が右巻、体の左側にある場合が左巻です。

 

右二重巻と左二重巻

通常の右巻と左巻よりも巻が強くなり渦巻きのようになっています。

 

車巻

しっぽが背中の正中線の上でひと巻している巻尾で、左右どちらかに偏っていません。

 

半巻

ゆるく巻かれているしっぽのことです。この場合、しっぽの先端が体から離れています。

 

差尾(さお)

しっぽの先が背中に届かず、半円まで巻かれていないしっぽのことです。

 

半差尾(はんさお)

半巻と差尾の中間の巻き具合のしっぽのことです。

 

【巻かれていないしっぽについて】

そのほかに巻かれていない、短いなどの特徴のしっぽをもつ個体もいます。その種類は様々で、太刀(たち)尾、薙刀(なぎ)尾、柳(やなぎ)尾、牛蒡(ごぼう)尾、茶筅(ちゃせん)尾、株(かぶ)尾、無尾(むび)などです。

柴犬を迎え入れるときの注意点

日本犬の中でも体はコンパクトですが、猟犬としての本能も色濃く残っている犬種ですので、縄張り意識や攻撃的な振る舞いが見られるころがあります。また、抱っこや過度に触れられることをあまり好みませんので家族として迎えたら、「キツネ顔」であっても「タヌキ顔」であってもその子の個性を見極めて、その子にあった環境や接し方、しつけを提供してあげましょう。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家の コメント:

柴犬を家族として迎えると、「次も柴犬を迎えたい」と考える飼い主が多いことから、柴犬にはたくさんの魅力があることが伺えます。「キツネ顔」と「タヌキ顔」どちらにしても、毎日の散歩やコミュニケーションで信頼関係を強め、いい関係を築いていきましょう。


関連リンク

この記事に関連するキーワード