犬の認知症とは?主な症状と介護・サポート方法を解説。症状チェックリストを確認しよう!【獣医師監修】

犬の認知症とは?主な症状と介護・サポート方法を解説。症状チェックリストを確認しよう!【獣医師監修】

ペットも人間と同じく、年齢を重ねると認知症になることがあります。もし、愛犬が認知症になった場合には、どのような症状が現れるのでしょうか。また、飼い主はどのように対応すればよいのでしょうか。今回は獣医師の林美彩先生に教えていただいた犬の認知症の症状や介護方法などについて解説していきます。

犬にも認知症ってあるの?

さまざまな原因で脳の働きが低下して起こる認知症。老化に伴い認知症を発症する人が多く、もの忘れや徘徊、過食・拒食、幻覚・妄想などが現れることがあります。実はそんな認知症は、人間以外の動物でも起こる症状です。犬も年齢を重ねると認知症になりやすくなり、行動や態度にさまざまな変化が見られるようになります。近年は医療の発達や食生活・生活環境の改善によって犬の寿命も延びており、人間同様に高齢化が進んでいます。そのため、認知症にかかる犬は決してめずらしくありません。

犬の認知症にはどのような症状があるの?

舌を出している犬

認知症になった犬にはどのような症状が出てくるのでしょうか。主な症状と、しつけとの関係性について解説していきます。

 

犬の認知症の症状

犬が認知症にかかった場合は、以下のような症状が出てくることが多いと言われています。

 

・夜鳴き

・徘徊

・生活リズムの昼夜逆転

・狭いところに潜り込んで出られなくなる

・前にしか進めずパニックを起こす

・同じ方向にグルグルと回り続ける

・単調な声で鳴き続ける

・飼い主が名前を呼んでも反応しない

・排便排尿の粗相が多くなる

・食欲旺盛なのに痩せていく

・食事を食べたことを忘れて要求鳴きをする


犬のしつけと認知症の関係性

愛犬にこのような行動が現れると、「しつけがうまくできていないせいかも」と思ってしまう人もいますが、しつけと認知症の症状は無関係です。きちんとしつけられていた犬であっても、加齢とともに認知症の症状が現れたり、覚えたことを忘れてしまったりすることがあります。

犬はどれくらいの年齢になると認知症になるの?

認知症の症状は、犬がシニア犬と呼ばれる年齢になると現れることが多くなります。


犬のシニア期はいつから?

何歳からシニア犬と呼ばれるかについて明確な定義はありませんが、一般に体が大きくなるほどシニア期の訪れが早くなります。次の目安を参考にしてみてください。

 

・超小型犬(5kg未満):913

・小型犬(510kg未満)913

・中型犬(1020kg未満)911

・大型犬(2040kg未満)710

・超大型犬(40kg以上)69

 

認知症を発症しやすくなるのは、超小型犬~中型犬であれば、概ね10歳を過ぎた頃と言われています。また、13歳を超えた頃には急増することがわかっています。

認知症になりやすい犬種はあるの?

柴犬や秋田犬などの日本犬、日本犬系の血が入っている雑種などは、認知症になりやすいという説があります。しかし、犬の認知症のリスク因子についてはまだわかっていない部分も多いのが現状です。

 

「メスと去勢した犬の有病率が高い」「オスの方が有病率が高い」「去勢の有無で差は見られない」「犬種やサイズでは差が見られない」「中型犬・大型犬はリスクが高い」など、さまざまな研究結果が発表されているため、犬種による大きな差はないと考えてもよいかもしれません。

犬が認知症になる原因としてはどのようなことが考えられる?

庭に佇む犬犬の認知症は単なる老化現象ではなく、神経伝達物質の減少、脳の病理学的変化など、加齢に伴う神経の変性によるものです。人間と同じく、犬の場合も認知症になる明らかな原因はまだ明らかになっていません。


犬は環境によって認知症の現れやすさに差が出る?

認知症は加齢による変化のため、環境は特に関与していないと考えられています。ただし、ストレスなどによって老化が進行しやすい状況であれば、認知症の原因にもなると考えられます。


犬の認知症の発症リスクを高めると考えられている病気

病気については「特発性てんかんを患っている犬は、早期に認知症を発現するリスクが高い」という報告があります。また、低血糖は脳の機能に障害を与えるため、認知症のリスクを高めるとされています。

愛犬が認知症かな?と思ったらすぐに動物病院に連れていくべき?

犬の認知症の症状チェックリスト

左を見つめる犬高齢の愛犬にこれまで見られなかった行動や態度が見られたときは「認知症かな?」と不安になる人も多いでしょう。犬の認知症の症状は「DISHAAL」と呼ばれるカテゴリーに分けられます。愛犬の症状に当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみましょう。


犬の認知症の症状「DISHAAL

Disorientation(見当識障害)

・方向やドアの開く方がわからない

・家具の隙間にはまって出られない

・床や壁をじっと見る

・視覚や聴覚の刺激に対する反応が低下、増加

 

Interaction(社会的相互反応の変化)

・飼い主や同居動物に対する反応が鈍化、攻撃的

・飼い主に過度に依存

・常に接触したがる

 

SleepWake Cycles(睡眠覚醒の変化)

・昼夜逆転

・夜鳴き

 

Housetraining(家庭でのしつけの混乱)

・トイレの粗相

・寝場所や家を汚す

 

Activity level(活動性の変化)

・徘徊

・食欲の増加

・同じことを繰り返す

・食べ物に関心がなくなる・遊びや活動の減少

 

Anxiety(不安や恐怖の増加)

・飼い主がいないと落ち着かない

・新しい場所や物、人を怖がる

 

Learning/memory(学習能力や記憶の低下)

・コマンドに対する反応が鈍い

・新しいことが覚えられない


動物病院にはすぐに連れて行った方がいい?

認知症は加齢に伴う変化のため、根本的な治療法はありません。しかし、早期に発見すれば抗酸化物質を含むサプリメントや神経の流れを整えるサプリメント、鎮静剤、抗不安薬などの服用といった治療をスタートできるため、症状の現れ方や進行を穏やかにすることが期待できます。

認知症になった犬はどのような場面で介護・サポートが必要になるの?

寝そべっている犬愛犬が認知症になった場合は、飼い主によるさまざまなサポートが必要になります。ここでは、介護やサポートが必要な場面ごとに、飼い主ができることを紹介します。


認知症になった犬の介護のポイント1:食事の改善

老化の進行をゆるやかにするために、抗酸化作用を持つ食材やサプリメントを普段の食事に取り入れましょう。ビタミンCやビタミンE、カロテノイドなどの栄養素は抗酸化作用を持つことで知られています。

 

また、脳の機能低下を抑制し、神経疾患の予防・改善効果が期待できるn-3系脂肪酸を含む食べ物を与えるのもいいでしょう。DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富な青魚や魚油、α-リノレン酸を多く含む亜麻仁油、えごま油などがおすすめです。特に、DHAは脳の機能維持には必要な栄養素なため、積極的に与えるようにしてください。


認知症になった犬の介護のポイント2:夜鳴き・深夜徘徊対策

犬の認知症の症状で、飼い主が特に困ってしまうのが夜鳴きや深夜徘徊です。夜鳴きがひどい場合は、昼間になるべく眠らせないようにする、日光浴をさせて体内時計をリセットするなどの方法で、夜に眠れるようにしましょう。

 

認知症で学習能力が落ちている犬には、同じ場所をグルグル回るなどの症状が出ることがあります。深夜に徘徊する場合は、満足するまで回れるエンドレスサークルを与えましょう。疲れてバタッと倒れたときに硬い床で打撲や骨折をしないよう、クッション性のあるマットを敷いておくのがおすすめです。


認知症になった犬の介護のポイント3:メンタル面のケア

認知症になると、攻撃的になって急に怒りだす犬もいます。普段から、血流を改善して神経の流れを整えるマッサージをしてあげましょう。マッサージなどで触れ合うことで、ストレスを和らげるホルモン「オキシトシン」の分泌を促し、不安を軽減する効果も期待できます。


認知症になった犬の介護のポイント4:住環境のバリアフリー

認知症の犬は、いろんな場所にぶつかったり、転倒したり、狭いすき間に挟まったりしやすくなります。ぶつかった際にケガをしないよう、家具や柱などの角には保護材を取りつけましょう。家具の隙間や裏は、犬が入り込まないようできるだけ塞ぐようにしてください。

 

また、勝手に外へ出てしまう可能性もあるため、階段の前やベランダ、玄関などにはゲートなどを設置しましょう。


認知症になった犬の介護のポイント5:コミュニケーションのコツ

認知症にかかると、名前を呼んでも反応しない、ぼんやりしているなど、反応が鈍くなる犬も少なくありません。ボーっとしているとき、声をかけても反応しないときに突然触ると驚いて噛みついてしまうこともあるため、接し方には注意しましょう。

 

愛犬が認知症でぼんやりしているときは、まず目の前に回り込みます。その後、鼻の近くに手の甲を持っていって、匂いを嗅がせてから触るといったワンクッション挟んだ動作を心がけるようにしましょう。


認知症になった犬の介護のポイント6:生活改善

脳の活性化や筋力の維持には、適度な運動が欠かせません。無理のない範囲で散歩や軽い運動を続けて、老化の進行を和らげましょう。

 

また、犬用の知育玩具で遊ぶ、においを当てるゲームをさせるなど、犬が楽しみながら脳を刺激できる遊びを取り入れるのもおすすめです。


認知症になった犬の介護のポイント7:排泄の粗相対策

認知症になった場合、排泄の粗相は「ある程度仕方のないこと」と割り切る必要があります。ただし、トイレに連れ出す回数をなるべく増やしたり、室内のトイレの場所を増やしたりすることで、粗相の回数を減らせる可能性は上がるでしょう。


第2稿:2021年3月12日更新
初稿:2020年11月24日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

どんな犬でもいつかは高齢になり、認知症になる可能性があります。愛犬が認知症になった時、ショックを受ける飼い主も少なくありませんが、これまで築いてきた絆は決して変わりません。「今は元気な愛犬も、いつかは認知症になるかもしれない」ということを念頭に置いて、準備や心構えをしておきましょう。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

監修者の他の記事一覧


関連リンク

著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

詳しく見る