和食みたいなドッグフード? 日本の犬に合わせてフードをつくったペット栄養管理士・奥村順司さんの情熱【愛犬家列伝】

株式会社ベッツ・チョイス・ジャパン ブランドマネージャー 自身も3頭のミニチュア・シュナウザーと暮らす愛犬家で、ペット栄養管理士・愛玩動物飼養管理士の資格も持つ

和食みたいなドッグフード? 日本の犬に合わせてフードをつくったペット栄養管理士・奥村順司さんの情熱【愛犬家列伝】

海外のドッグフードを「イメージが良い」という理由だけで愛犬に与えていませんか?

「欧米はペット先進国と言われているから……」
「海外ブランドは何だか良さそうだから……」

日本で生活する愛犬にとって、海外のドッグフードは、本当に体質に合っているのでしょうか?

ドッグフードが誕生したのは19世紀後半。諸説ありますが、アメリカ人であるジェームス・スプラッツ氏の作った犬用ビスケットがその始まりだと言われています。

運動量の多い環境で暮らす欧米の犬たちにとっては、高カロリー・高タンパクな食事が必要とされ、ドッグフードはその考え方を中心に開発されてきた歴史があります。

「いまもアメリカやヨーロッパ諸外国で作られているドッグフードは、比較的運動量の多い大型犬種向けの高カロリーフードが主流です。約8割が室内飼育されている日本のわんちゃんたちの体質や健康を考えずに与えると、肥満や皮膚トラブルなど健康に影響が出てしまう場合もあります」

そう警鐘を鳴らすのは、株式会社ベッツ・チョイス・ジャパンのブランドマネージャーでペット栄養管理士の奥村順司さん。

「もとはといえば、私たちの販売しているドッグフード『セレクトバランス』も、アメリカ生まれだったんです。でも、海外の犬向けに配合されたドッグフードは、日本の犬には必ずしも合っていないと気付いてから、日本のわんちゃんのためだけを徹底的に考えて改良してきました」

奥村さんは20年以上、セレクトバランスの開発に携わっており、犬の食事や健康に情熱を注いできました。


たとえば、「いちから犬を育てたこともないくせに、犬の健康について偉そうなことを言うな!」とブリーダーさんに言われたときは、一念発起して、犬を出産から育てることも自ら経験しました。

奥村さんの自宅で出産した母犬とその仔犬たち
奥村さんの自宅で出産した母犬とその仔犬たち


なぜ、奥村さんはそこまでして「日本の犬の健康」について真剣に考え、「和食のようなドッグフード」を目指して開発しているのでしょうか? 

海外のドッグフードの特長や大容量ドッグーフードの問題点なども含め、いろいろ情熱的な話を聞いてきました。

動物病院で販売する健康維持食から始まったドッグフード「セレクトバランス」

株式会社ベッツ・チョイス・ジャパン ブランドマネージャー奥村順司さん
株式会社ベッツ・チョイス・ジャパン ブランドマネージャー奥村順司さん


――日本のドッグフードと、海外から輸入したドッグフードの違いはどこにあるのでしょうか?

奥村順司さん(以下、奥村):日本メーカーが作っているドッグフードに比べ、アメリカやヨーロッパ諸外国のメーカーで作られているドッグフードは、運動量の多い犬向けに作られています。

そのため、高カロリーで脂肪分の多いものが一般的です。また、大型犬の飼育頭数が多いので、ドッグフードの粒も大きめなのが特徴です。

――奥村さんは、日本で暮らしている犬に海外のドッグフードを与えることに対し、何を問題視しているのでしょうか?

奥村:今、日本では約8割の犬たちが室内飼育されています(一般社団法人ペットフード協会「令和3年全国犬猫飼育実態調査」)。欧米諸国に比べて、日本で暮らす犬たちは、日々の運動量も多くありません。
そんな日本の室内犬たちが、海外の犬のためにつくられたドッグフードを食べることは、脂肪分の取りすぎになってしまう場合があります。

脂肪分の取りすぎによる、健康への影響を心配しています。

――「セレクトバランス」も輸入のドッグフードではないのでしょうか?

奥村:たしかに、セレクトバランスは、約27年前にアメリカの獣医師が動物病院で健康維持食として販売していたドッグフードを輸入する形でスタートしたのが始まりです。

――動物病院で販売されていた健康維持食と聞けばポジティブなイメージを持つ方も多そうです。評判がよかったのではないでしょうか?

奥村:いや、それが全く売れず、私が担当を始めた22年前の日本での売れ行きは伸び悩みました。そこで日本の気候や日本で暮らす犬の生活スタイルに合わせて見直すことにしました。

――なぜ、セレクトバランスは売れなかったのでしょう?

奥村:まさに海外ドッグフードの特徴が、そのまま裏目に出てしまいました。粒の大きさや脂肪分の多さが、日本にいる犬たちには合っていなかったんです。

まずアメリカの犬たちに向けて作られたドッグフードの粒は、日本に多い小型犬のわんちゃんたちにとっては大きすぎました。

お客様からも愛犬が食べにくいというご意見を頂戴し、私たちは小粒と中粒を開発することにしました。

――粒の大きさを日本の犬仕様にしたんですね。


奥村:はい。また当時、私は自分で飼っていた愛犬の背中の皮膚に赤いブツブツができていることに悩んでいました。

動物病院でも、病気やアレルギーではないと診断され、原因がわからずにいたんです。

お客様の中にも、同じような症状に悩む飼い様がいらっしゃいました。

原因の全てがドッグフードのせいとは言い切れません。

しかし私は、病気のせいでないのであれば、日々の食事が原因ではないか? 人も思春期に脂っこいものを食べるとニキビができやすくなるように、愛犬に余計な脂肪分を摂らせすぎているのではないか? と考えるようになりました。

――なるほど。でも、フードに脂肪分が多く含まれるのは、犬にとって必要だからではないのでしょうか?

奥村:もちろん、ある程度の脂肪分は必要です。しかし、食いつきをよくするために使われている脂肪分もあります。

余計な脂肪分を摂らせすぎているのではないか? という懸念を抱くようになってからしばらくして、ドッグフードの製造工程では、最後に美味しさ成分として、必要以上の脂肪分を添加されていることが実に多い、という事実を知ることになりました。

日本で暮らしている犬にはそれが合っていなかったんです。

――食いつきが良い=犬の健康にいいフードとは限らない、ということですね?

奥村:そうです。この時、私たちはまだ勉強不足でした。どこの国に暮らしていても、犬ならみんな同じだと考えていました。

しかし、そうではないということを、とても痛感しました。いくら獣医師がつくったドッグフードだからといって、それが目の前の愛犬に合っているかはまったくの別問題だ、という現実をたたきつけられたのです。

――その時、どんな心境でしたか?

奥村:私にとって一番身近なお客さんはわんちゃんです。自信を持って食べさせられるドッグフードをつくらなければ申し訳ない! 意味がない! と本気で思いました。

それ以来、愛犬の食いっぷりや体調の変化を一番近くで見ている飼い主様の元へ、自分の足で直接出向くようになりました。現場の声を聞いて、それをフードに反映していこうと。

――お客様から直接聞ける意見は貴重ですね。

奥村:はい。厳しいご意見もたくさんいただきました。ですが、クレームを「愛」として受け止め、その期待に応えられるよう努力することが、私の使命だと感じていました。

とても地道な道のりでしたが、私は「お客様と一緒にセレクトバランスを作ってきたんだ」ということに、とても誇りを持っています。

――今のセレクトバランスには、たくさんのお客様の思いが反映されているということですね。

奥村:はい。今も一部の製品を除いて工場はアメリカにありますが、レシピは完全に日本のわんちゃんに向けて作られているため、アメリカでの販売は行っていません。

日本の犬だけに特化したドッグフードなんです。

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目指したのは「和食のようなドッグフード」
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