2024年02月19日 更新 (2020年09月06日 公開)
博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う
シャリシャリとした食感が心地よい梨。食後のデザートとして楽しむ飼い主さんも多いでしょう。でもそんなときに犬が欲しがったら? 果物の中には人間が食べても大丈夫なのに犬が食べると有害になってしまうものもあります。犬にとって梨は安全な果物なのか気になりますよね。今回は獣医師の茂木千恵先生に梨の安全なあげ方や与えるときの注意点などをお伺いしました。
目次
- 犬は梨を食べても大丈夫!ただし、食べ過ぎはNG
- 梨を食べるとアレルギーを発症する犬はいる?
- 犬に梨の皮や軸(芯)、種をあげても大丈夫?
- 梨に含まれている栄養素と犬に与える健康面でのメリットは?
- 犬に梨を与える際の適量は?
- 犬に梨を与える際の注意点は? 小さくカットしよう
- 梨を使ったジュースやお菓子など加工品を与えても大丈夫?
- 犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物
犬は梨を食べても大丈夫!ただし、食べ過ぎはNG
梨は犬に与えても基本的には問題ありません。和梨でも洋梨でも同じです。ただ気を付けたいのがおしっこの量。梨はカリウムを多く含む果物です。カリウムには利尿作用があるため、梨を食べた犬は普段よりおしっこの量が多くなる可能性があります。梨を与える場合はそれを想定して、車に乗る前などは避けておいたほうがいいかもしれません。また過剰摂取は禁物です。
美味しい梨の選び方
美味しい和梨を選ぶときは次の4つのポイントを確認しましょう。
- 手に持ったとき、ずっしりと重みを感じられるもの
- 色ムラが少なく、全体的に均一に色づいているもの
- 軸にしっかりと太さのあるもの
梨を食べるとアレルギーを発症する犬はいる?
梨にアレルギーを持つ犬もいます。食べてすぐに症状が出る場合もあれば、数時間経ってから発症することもあるので、初めて梨を与えるときや2回目に与えるときは特に慎重に様子を見ておきましょう。
重篤なアレルギー反応が起きた場合は、以下のような症状があります。
・皮膚のじんましん
・激しい嘔吐や下痢
・元気がなくぐったりしている
・呼吸が苦しそう
梨を食べた後にこのような症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。また、これまでにモモやリンゴでアレルギーの徴候があった犬は高い確率で梨にもアレルギーの徴候が出ると考えられているので、該当する場合はあげる前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。
犬に梨の皮や軸(芯)、種をあげても大丈夫?
皮には農薬が残っている可能性があるので、むいてからあげる方がいいでしょう。また、種にはアミグダリンという有害な成分が含まれています。人が食べるときと同じように、犬に梨を食べさせるときも皮や軸を取り除いてからあげましょう。
>犬はりんごを食べても大丈夫!食べると危険な部位などの注意点や健康面でのメリットについて解説【獣医師監修】
梨に含まれている栄養素と犬に与える健康面でのメリットは?
梨はカロリーが100gあたり43kcalと低く、甘すぎない果物なので犬に与えやすい食材です。梨を食べることで得られる効果や栄養には以下のようなものがあります。
水分が多い
梨は果物の中でも特に水分が多く、全体の88%を占めています。お水を飲まなくなってきたシニア犬や夏バテでごはんを食べない犬には、フードに梨をトッピングしてあげると嗜好性が上がり、水分補給にもなります。
食物繊維
梨は水溶性の食物繊維を多く含みます。水溶性の食物繊維は腸内で水分を吸収しながら、穏やかに腸の動きを刺激してくれるため、便秘の解消に役立ちます。また食物繊維のおかげで糖分の吸収を抑制することができ、血糖値が急激に上がることも抑えられます。
さらに、脂質コレステロールの吸収を抑制する効果もあります。腸内の便や老廃物の排出を促し、腸内環境を整えてくれるのです。
ただし、食物繊維は消化されにくく、犬は人間に比べて食物繊維の消化が得意ではありません。食べすぎるとかえって便秘や腹痛、軟便、下痢になる可能性がありますので、与える量には注意が必要です。
アスパラギン酸
梨にはアミノ酸の一種のアスパラギン酸が多く含まれています。あまり聞き慣れない成分かもしれませんが、このアスパラギン酸は肝臓での代謝を良くし、利尿作用や疲労回復の効果もあります。
アスパラギン酸は犬が過剰摂取しても問題はないと言われているので、安心して与えることができます。
ソルビトール
梨に含まれるソルビトールは甘みを持つ糖アルコールで、解熱効果があるとされています。暑いときに食べることで体の冷却効果が期待できます。水分を保持する作用があり、乾いた喉を潤す効果もよく知られています。秋になり空気が乾燥してくる時期には好適の果物でしょう。ただしこのソルビトールも摂取しすぎると下痢の原因になります。
洋梨は食物繊維が2倍
なお、洋梨もほぼ栄養成分は同じですが、100gあたり54kcalと和梨より若干高カロリーです。また、食物繊維は和梨の2倍含まれており整腸作用が期待できます。
犬に梨を与える際の適量は?
与えてもいい量の目安
梨を犬にあげるなら、犬が1日に必要なカロリー量の10%以下をおすすめします。ちなみに梨20gで7.6kcalとなります。梨20gは皮・軸(芯)・種部分を除いて厚さ1.5㎝のくし切り1個程度の量と考えてください。
小型犬の場合
体重が3㎏程度で、必要カロリーの1割は25kcal。
梨65gで25kcalです。
中型犬の場合
体重が10㎏程度で、必要カロリーの1割は62kcal。
梨163gで62kcalです。
大型犬の場合
体重25㎏程度で、必要カロリーの1割は125kcal。
梨329gで125kcalです。
上記はいずれも避妊・去勢済みの成犬で計算した場合です。これらの量はフード以外におやつとして梨だけを与える1日の上限です。
ただし犬によっては梨をほんの少し食べただけでも、梨に含まれる食物繊維や甘味(果糖やソルビトール)などによって腹痛や下痢を引き起こしてしまう可能性があります。
犬に梨を与える際の注意点は? 小さくカットしよう
犬に梨を与えるときには皮をむいて種と軸を取り除く必要があります。また、梨のサイズが大きいと喉に詰まらせてしまう恐れがあります。薄くスライスするか、おろし器ですりおろす、みじん切りにするなどしてから与えるようにしましょう。小さく切ることで犬の体格に関係なく与えることができます。
あげるときはフードのトッピングやおやつとして少量ずつ与えましょう。飼い主さんが梨を食べているときに、一緒に犬にも与えるというのはおすすめできません。犬も食べたいとねだるかもしれませんが、ついほだされてあげてしまうと「次ももらえる!」と期待させてしまいます。日によってあげたりあげなかったりすると、欲求不満や葛藤、飼い主さんへの不信感などにつながりかねません。お互いの信頼関係のために、あげないようにしましょう。
加熱せずに生で与える
梨の成分の一つであるアスパラギン酸は加熱することで壊れてしまので、生で与えた方がいいでしょう。ただ、梨を食べた後の排尿量が気になる場合は、加熱することで水分を減らしたり、茹でたり水にさらすことでカリウムを減らすなどして調節するとよいでしょう。ちなみに。食物繊維とソルビトールは加熱しても減りません。
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梨を使ったジュースやお菓子など加工品を与えても大丈夫?
犬に与えることを想定して作られている加工品であれば問題ありません。ですが、人間用に作られた加工品は犬にはカロリーが高すぎますし、甘味料や油脂、小麦、乳製品などが含まれていることが多く、犬にとって有害となる可能性もあるためおすすめできません。
缶詰も同じです。洋梨などはよく缶詰として販売されていますが、人間用に作られた梨の缶詰には保存性を高めるために砂糖が多く含まれているため、犬が食べたときに中性脂肪となり肥満につながる可能性があります。これは梨に限らず、他の果物の缶詰であっても同じです。
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