犬に梅干しを食べさせても大丈夫?種を誤食した場合の対処法や塩分中毒などの注意点を解説【獣医師監修】

犬に梅干しを食べさせても大丈夫?種を誤食した場合の対処法や塩分中毒などの注意点を解説【獣医師監修】

食べ物

2022年09月10日 更新 (2022年07月28日 公開)

ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。

犬に梅干しを食べさせても大丈夫?種を誤食した場合の対処法や塩分中毒などの注意点を解説【獣医師監修】

犬に梅干しを与えても大丈夫!

犬に梅干しを与えても問題はありません。ただ、犬には塩味を感じる味蕾がほぼなく、酸味が強すぎるものも好まない傾向があるため、すっぱく、塩辛い梅干しを好んで食べる子は少ないでしょう。犬は自然界で酸味のある食べ物を「食べると危険な未熟な果物」「腐敗したもの」など、食べると害になるものとして認識しているようです。

 

食べすぎると食塩中毒を引き起こすことも

梅干しには塩分が多く含まれており、犬が大量に食べると塩分中毒になる恐れがあるため与える量には注意が必要です。

塩分中毒の症状

犬が塩分中毒に陥ると、異常に水を飲む、嘔吐下痢、ふらつき、痙攣などの症状が起こります。腎臓や心臓に負荷がかかり、心不全を起こすこともあります。

 

塩分中毒の対処法

犬が梅干しをたくさん食べてしまったことに気づいたとき、何ら症状が出ていない場合はひとまず水を飲ませて動物病院を受診してください。塩分中毒の症状がある場合、自宅でできる対処法はほぼありませんので、すぐに病院へ連れて行きましょう。

 

種と生の梅にも注意

梅干しの種や生の梅は、次のような理由で犬が食べてしまうと危険です。誤って犬が口にしてしまわないように注意しましょう。

梅干しの種

梅干しの種を飲み込むと消化管に詰まったり、喉や食道などに引っかかったりすることがあります。そうなった場合、麻酔下での処置や手術が必要になります。

 

生の梅

生の青梅の種や果肉には「アミグダリン」という青酸配合体の一種である毒が含まれています。アミグダリンを摂取すると、腸内細菌が持つ酵素によって分解されシアン化水素(青酸)とベンズアルデヒド(芳香成分)が発生します。この青酸が急性中毒を引き起こし、最悪の場合は命にかかわります。

犬が梅干しをどのくらい食べると危険なの?

塩分の多い梅干しを食べて塩分中毒などを起こさないよう、犬が食べると危険な量を知っておきましょう。

 

犬に必要なナトリウム濃度は1日に体重1kgあたり25~50mgです。食塩でいうと、体重1kgあたり2~3gの食塩を摂取すると中毒を起こす恐れがあります。また、体重1kgあたり4gの食塩を摂取すると致死量になると言われています。

 

体重10kgの犬で考えると、1日に必要なナトリウムの量は250~500mg。これを食塩に換算すると0.635~1.27gとなります。可食部15g程度の梅干しの食塩相当量は2.3gです。つまり、梅干しを半分食べると1日に必要な塩分を摂取してしまうことになります。普段食べているドッグフードにも塩分が含まれているため、梅干しを与えるとしても1/4以下にとどめる方が安心でしょう。

子犬やシニア犬に梅干しを与えても大丈夫?

子犬やシニア犬に梅干しを与えるメリットは特にありません。塩分中毒を起こしたときのリスクも高いため、与えないようにしてください。

持病のある犬に梅干しを与えても大丈夫?

梅干しには多くの食塩が含まれているので、心臓疾患や腎臓疾患のある犬には与えないようにしましょう。

梅干しに含まれている栄養素は?

梅干しには主に次のような栄養素が含まれています。

 

クエン酸

梅干しの酸味のもとで、体内のエネルギーを生み出すのに必要な成分です。唾液や胃酸の分泌量を増やしたり、疲労を抑制したりする効果があるほか、カルシウムや鉄などの吸収を助ける役割も果たします。

 

梅ポリフェノール

ポリフェノールは、植物が生み出す代謝物の一種で高い抗酸化力があります。梅に含まれるポリフェノールには、抗酸化、血圧を下げる、消化管機能改善、抗炎症、脂質代謝改善、抗疲労などの作用があります。

 

カリウム

細胞内に最も多く含まれ、ナトリウムを体外に排泄する働きを持つ栄養素です。カリウムとナトリウムはバランスをとりながら、細胞膜の浸透圧を調節しています。

犬に梅干しを与えるメリットは?

体の維持にとって欠かせない栄養素が含まれている梅干し。与える量には注意が必要ですが、犬に与えるメリットとしては次のような効果が考えられます。

 

疲労回復

梅に含まれるクエン酸やリンゴ酸などは、糖質代謝を促し活性化させる働きがあります。そのため、取り入れることでエネルギー代謝がよくなり、疲労回復が促進されます。

 

食欲増進

梅の酸味成分であるクエン酸は唾液分泌を促し、食欲を増進させます。胃酸など消化酵素の分泌を高めて消化吸収を助ける効果もあります。

 

免疫力を上げる

梅干しにはピルビン酸という成分が含まれており、解毒といった肝機能の働きをよくすると言われています。また、クエン酸は殺菌や除菌効果に優れていて、最近の研究では胃がんの原因になるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑制するという報告もあります。

梅干しを食べてアレルギーを起こす犬はいる?

すでに何かしらの食物アレルギーがある犬や環境などに対してアレルギー症状が起こる犬は注意が必要です。アレルギー検査で梅干しという項目はあまり見かけないため、梅干しアレルギーの有無の判定は難しいですが、初めて食べさせるときには少量を与えることが大切です。

 

アレルギーの症状

アレルギー症状としては、下痢や嘔吐、発熱、元気がない、皮膚のかゆみなどが考えられます。

 

アレルギーを起こした場合の対処法

皮膚のかゆみや違和感から掻いたり、舐めたりして症状が悪化することがあります。抱っこや、エリザベスカラーがあれば装着して、皮膚への刺激を減らしてください。皮膚のかゆみを含め他のアレルギー症状が起こった場合は、様子を見ると悪化する恐れがあります。何を、いつ、どのくらい食べたのかを把握したうえで動物病院を受診しましょう。

犬が誤って梅干しの種を飲み込んだり、生の梅を食べてしまった際の対処法は?

犬が梅干しの種を誤飲したり、生の梅を食べてしまった場合、どのような対処が大切か説明していきます。

 

梅干しの種を飲み込んで喉に詰まらせた場合

犬が梅干しの種を喉に詰まらせると、呼吸困難になることがあります。もがく、舌の色が悪くなる、倒れるといった呼吸困難の症状が起こった場合は緊急処置が必要です。口を開けて舌を引っ張り出し、気道を確保してください。この処置を行ったとしても喉に詰まった梅干しの種が吐き出されるわけではありませんので、必ず動物病院に連絡して早急に連れていきましょう。

 

治療費の目安

動物病院ではX線検査で種の有無と位置を確認し、麻酔下で内視鏡や開腹手術で種を取り出します。治療内容によりますが、内視鏡による摘出の場合は10万円~、開腹手術の場合は15万円~の費用がかかります。別途、血液検査やX線検査、入院費などで5万円~の費用が必要となると考えましょう。

 

生の梅を食べてしまった場合

生の梅にはアミグダリンという青酸配合体の一種が含まれており、食べてしまうと命にかかわります。様子を見ないで、早急に動物病院に連絡してください。いつ、どのくらいの量を食べて、現在の様子はどうであるかを伝えられるようにしてください。

 

治療費の目安

催吐処置や血液検査、重症の場合は入院が必要になります。軽症の場合は3万円~、重症の場合は10万円~の費用が必要でしょう。

 

梅干しを大量に食べてしまった場合

梅干しを大量に食べてしまった場合、様子を確認してまず水を飲ませたうえで動物病院を受診しましょう。水を全く飲まない場合は無理に飲ませようとせず、異常が見られなくてもひとまず動物病院に連れて行ってください。

 

治療費の目安

症状が重い場合は血液検査、入院治療などが必要になりますので、10万円~の費用がかかります。

犬に梅干しを与える際の一日あたりの適量は?

犬に梅干しを与える場合、一日の適量として次の量を目安としてください。ただし、ドッグフードなど食塩を含む他の食べ物とのバランスをとる必要があるため、個別の調整が必要です。

 

体重5kgの犬の場合:一粒の1/4
体重10kgの犬の場合:一粒の1/2
体重20kgの犬の場合:一粒の3/4
体重30kgの犬の場合:一粒

 

※可食部15gの梅干しに含まれる食塩量が2.3gとして計算

犬に梅干しを与える際の注意点は?

犬に梅干しを与える際は、次の点に注意しましょう。

 

細かく刻んだ果肉のみ与える

種を残したままの梅干しを与えると、種を丸のみしてしまう恐れがあります。種は消化できず、消化管閉塞の原因となるので必ず取り除きましょう。また、食べ過ぎによる塩分の過剰摂取を防ぐためにも、量を測ったうえで刻んだ果肉のみを与えてください。

 

愛犬が食べたがらない場合は無理に与えない

梅干しは犬にとって必須の食材ではありません。食べたがらない犬に無理に与えるのはやめましょう。

 

与え過ぎに注意(あくまでトッピングとして与える)

梅干しを与え過ぎると、食塩中毒を引き起こす危険性があります。心疾患や腎疾患がある場合は症状が悪化する恐れもあるため、あくまでもトッピングとして少量が原則です。

犬に梅を使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫?

梅を使用した人間用の加工食品はどれも与えてはいけません。代表例として梅酒と梅ジュースを取り上げて紹介します。

 

梅酒

梅酒は青梅を氷砂糖とホワイトリカーに漬け込んだお酒です。犬はアルコールを分解する酵素を持っていませんので、摂取すると急性アルコール中毒を起こし命にかかわります。体重1kgあたり5.6mlのアルコールで命を落とすと言われており、絶対に与えてはいけません。アルコール濃度にもよりますが、梅酒は甘味も強く犬が興味を持ちやすいため、誤って飲んでしまわないよう注意が必要です。

 

梅ジュース

犬は梅ジュースを飲んでも基本的に問題ありませんが、氷砂糖などを大量に使用しており高カロリーのため、おすすめしません。