子犬の下痢の原因は?注意すべき症状と病院に行くタイミングを解説【獣医師監修】

子犬の下痢の原因は?注意すべき症状と病院に行くタイミングを解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬は様々な原因で下痢をしてしまいますが、特に子犬はお腹を下しやすい傾向があります。軽度のものから病気の恐れがあるものまで、程度に幅があり、病院に行くべきかどうか判断に迷うことも多いでしょう。今回の記事では、子犬の下痢で注意したい症状や病院へ連れて行くべきタイミングについて、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきます。

目次

  • ・ 子犬はよく下痢をする
  • ・ 子犬の下痢の原因と対処法は?
  • ・ 子犬の下痢に、こんな症状が見られたらすぐ病院へ
  • ・ 子犬の便がゼリー状の軟便の場合は?
  • ・ 子犬が下痢をしていて病院へ連れて行く場合、用意するべきものは?
  • ・ 子犬の下痢の症状が軽い場合、家でできる対処法は?
  • ・ 子犬の下痢の予防法は?

子犬はよく下痢をする

子犬は成犬と比べて消化管の免疫力が十分に備わっていません。そのため、ちょっとしたことが原因で下痢を起こしてしまうことがあります。特に、新しい家に迎え入れた直後など、環境の変化によるストレスには注意が必要です。さらに、子犬の下痢はしばらく様子を見ても問題ない場合もあるものの、中には命に関わるような感染症が原因の場合もあるので、軽く考えず放置しないことが大切です。

子犬の下痢の原因と対処法は?

子犬が下痢を起こしている場合に考えられる原因とその対処法について、詳しく見ていきましょう。

 

原因1:生活環境の変化によるストレス

ペットショップやブリーダーの元から新しい家に迎え入れられ、生活環境が変わることは、子犬にとって負担を伴います。可愛さのあまり、つい飼い主が子犬を構いすぎてしまったり、人の出入りが多かったりすると、余計にストレスがかかってしまい、下痢を引き起こすことがあります。

 

【対処法】

子犬が新しい家の環境に慣れるまでは、必要以上にかまわない(いじらない)ようにしましょう。

 

原因2:食事によるもの

今までペットショップやブリーダーのもとで与えられていたフードをいきなり別のものに切り替えてしまうと、消化器が対応しきれず下痢になることがあります。また、フードの食べ過ぎによる消化不良や、水の飲み過ぎも下痢の原因となります。


【対処法】

フードを切り替えるときは、時間をかけて少しずつ新しいものに移行していくようにしましょう。フードの量について、パッケージに記載がある一日の目安量はあくまでも「目安」なので、排便の状態を見ながら調整してあげることが大切です。水をどれくらい飲んでいるかのチェックも、あわせて行うと良いでしょう。

 

また、消化器の負担を減らすために、フードをふやかして与えるのも有効です。ドッグフードに含まれる栄養は熱に弱く、熱湯を使うと栄養素が破壊されてしまいます。30〜40℃ほどのぬるま湯を使うのがおすすめです。5〜10分ほどひたせば、指で軽く押すと崩れるちょうど良いやわらかさになります。

 

原因3:部屋の寒さや暑さ

子犬は体温調節がまだしっかりとできない状態のため、寒暖差でお腹を冷やしてしまい下痢になることがあります。また、夏場は熱中症による下痢にも注意が必要です。


【対処法】

冬場や夜間は部屋が想像以上に冷え込むことがあります。室内の温度や湿度を一定に保ち、子犬のお腹を冷やさないように工夫することが大切です。夏場も部屋の温度が上がったり、下がったりしすぎないようにエアコンの温度管理をしっかりと行いましょう。とくに、子犬は少し暖かめの室温25℃〜26℃、湿度50%ほどがおすすめです。

 

原因4:誤飲や誤食

子犬は好奇心旺盛なので、何でも口に入れてしまう傾向があります。食べてはいけないものを口にしたことで消化器に負担がかかると下痢を誘発します。大きいものを飲み込んでしまった場合、窒息や腸閉塞になる恐れもあるので注意が必要です。


【対処法】

食べ残しや飲み残し、小物など、子犬が口に入れてしまいそうなものを、子犬が触れられる範囲に置かないように注意しましょう。

 

原因5:食器

食器や給水ボトルなど子犬の口に触れるものが不衛生だと、細菌などによる腸炎を引き起こし、下痢になることがあります。


【対処法】

直接口に触れる食器や給水ボトルは定期的に洗い、清潔な状態を保ちましょう。

 

原因6:食糞

下痢を起こして栄養が十分に吸収できない状態になると、排泄した下痢を食べてさらに下痢を起こしてしまうという悪循環に陥ることがあります。


【対処法】

子犬の便はできるだけ早く片付け、誤って口にしてしまわないようにしましょう。

 

原因7:寄生虫に感染

子犬の時期は、食べ物や母犬から寄生虫に感染し、下痢や軟便になってしまうことが多くあります。


【対処法や治療法】

寄生虫に感染してしまった場合は、基本的に駆虫薬を用いて治療します。あまりにも下痢が激しく脱水症状を起こしている場合には、皮下補液という点滴治療を行うこともあります。

 

原因8:ウイルス感染

ウイルス感染による下痢も考えられます。特にパルボウイルス感染症は、激しい下痢と嘔吐を伴い、悪化すると死に至る危険性のある感染症です。


【対処法や治療法】

ウイルスに対する特効薬はありませんので、対症療法として点滴による脱水補正と栄養補給を行います。免疫が落ちていて細菌の二次感染が懸念される場合には、抗生物質による治療も行います。

 

原因9:睡眠不足


成犬と比べて子犬は睡眠時間が長いため、寝ているところを邪魔されたり、起こされたりすることによるストレスが原因で下痢になることがあります。


【対処法】

子犬は十分な睡眠時間を確保してあげることが重要です。子犬が寝ているときは、無理に起こしたり、いじったりしないように注意しましょう。

子犬の下痢に、こんな症状が見られたらすぐ病院へ

子犬の下痢に次のような症状が見られたら、緊急度が高いと考えてすぐに病院に連れて行きましょう。

 

下痢だけでなく、嘔吐している

下痢に加えて嘔吐が見られた場合は、脱水が懸念されるのですぐに病院を受診してください。感染症が原因の場合は、同居する犬や人に感染が広がってしまわないように、手袋をして下痢や嘔吐物を速やかに片付けましょう。

 

元気や食欲がない

下痢をしているときに元気がなく、食欲もなくなっている様子が見られたら、何らかの病気のサインかもしれません。病院を受診して、原因をはっきりさせることが大切です。

 

噴射するような激しい下痢

噴射するような激しい下痢は感染症が疑われるため、すぐに病院を受診して適切な治療を受けましょう。

 

血が混じった便をしている

血便は、消化器からの出血などが疑われます。とくに、トマトジュースのような血便はパルボウイルス感染症時の症状のため、緊急性が高いと言えます。

 

3日以上、下痢が続く

3日以上も下痢が続いた場合、一時的なものではない何かしらの病気や感染症による下痢である恐れがあります。すぐに病院を受診しましょう。

子犬の便がゼリー状の軟便の場合は?

子犬にゼリー状の軟便が見られた場合でも、食欲が安定しているようであれば一時的なものと考えて、しばらく様子を見守りましょう。軟便が数日続いたり、食欲が落ちたり、血が混ざったりするようであれば動物病院を受診してください。

子犬が下痢をしていて病院へ連れて行く場合、用意するべきものは?

下痢の子犬を病院に連れて行く際には、次のようなものを用意しておくと診断の助けとなる場合もあります。

 

新鮮な便があれば、持参する

下痢の診察では、原因を探るために検便を行うので、できるだけ新鮮な便を持参してください。難しい場合には、病院で採取することも可能です。

 

便を写真撮影するのも診断の助けに

一口に「下痢」と言っても、飼い主と獣医師とで想定する状態が違うケースが多々あります。便を持参しつつ、自宅での便の状態を写真に撮っておくと、言葉による相違を防ぐことができます。

 

食べたものの記録をとる

下痢は食べ物が原因で起こることもあるので、フードの種類や与えた量を記録しておくと、診断の助けとなります。

 

環境の変化を記録しておく

下痢が起こった前後で、環境に変化がなかったか(どこかに出掛けた、人の出入りが激しかったなど)が分かるような記録も用意できると良いでしょう。

子犬の下痢の症状が軽い場合、家でできる対処法は?

子犬の下痢に嘔吐が伴わず、元気で食欲もある場合、緊急性はあまり高くないと考えられます。お腹を冷やさないように気をつけつつ、ストレスを与えないよう安静に過ごさせてあげましょう。食べ物は、消化が良いもの(ドロドロとした液体状のもの、ドライフードであればしっかりとふやかしたもの)を与えてあげてください。

子犬の下痢の予防法は?

子犬が下痢をしないようにするために、どのような予防法を心がければよいのでしょうか? 家でできる予防法について見ていきましょう。

 

子犬の年齢や体質に合ったフードを選ぶ

子犬は成長過程にあるので、必要な栄養をしっかりと摂らせることが大切です。子犬の栄養バランスに配慮された「パピー用」のフードを与えることをおすすめします。

 

ウイルス性の下痢はワクチンで予防することができる

致死率が高いパルボウイルスによる下痢は、ワクチンで予防することができます。パルボウイルスは2種と5種以上の混合ワクチンで対応が可能ですが、不安な場合は獣医師に確認すると良いでしょう。適切な時期にワクチン接種をすることが、子犬の命を守ることにつながります。

 

拾い食いをさせないよう注意する

異物の誤飲、誤食による下痢を防ぐため、子犬が触れられる場所には食べてはいけないものを置かないようにしてください。拾い食いをさせないトレーニングを取り入れるのも有効です。

専門家の コメント:

犬の下痢は、「たかが下痢」と軽く考えてしまう人も多いかもしれません。しかし、成長過程にある子犬の場合、まだ体がしっかりとできあがっておらず、免疫力も弱いので、そのまま放っておくと、命に関わるような深刻な事態に発展することもあります。少しでも心配なことがあれば、早めに動物病院を受診して獣医師に相談するようにしましょう。

監修/林美彩先生(獣医師)

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長
酪農学園大学卒業
獣医保健ソーシャルワーク協会獣医ホリスティック医療研究会所属

 

大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。テレビ番組への出演・協力のほか、「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)などの著書がある。

監修者の他の記事一覧


関連リンク

この記事に関連するキーワード