ピットブルの性格や特徴は?飼い方やしつけのコツについて解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

ピットブルの性格や特徴は?飼い方やしつけのコツについて解説【獣医師監修】
ピットブルの性格や特徴は?飼い方やしつけのコツについて解説【獣医師監修】

目次

  • ・ ピットブルの歴史やルーツは?
  • ・ ピットブルの平均的な体高・体重、平均寿命は?
  • ・ ピットブルの平均寿命は?
  • ・ ピットブルの毛色の種類や被毛の特徴は?
  • ・ ピットブルの外見や吠え声の特徴は?
  • ・ ピットブルはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
  • ・ ピットブルを飼うのに向いている人は?
  • ・ ピットブルを飼う上で気をつけるべきことは?
  • ・ ピットブルのしつけを始める時期は?しつける際に気をつけるべきポイント
  • ・ ピットブルの食事の注意点は?
  • ・ ピットブルがかかりやすい病気やアレルギーは?
  • ・ ピットブルを散歩させる際に気をつけるべきことは?
  • ・ ピットブルにおすすめの遊びは?
  • ・ ピットブルの日常のお手入れで気をつけることは?

筋肉質で屈強な体に、勇敢な顔つきが印象的なピットブル。そんなパワーあふれるピットブルは、飼う上で注意すべき点が多くあり、初心者が飼うには難しい犬種と言えます。この記事では、ピットブルの性格や体格の特徴、気をつけるべき病気などをchicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生監修のもと、詳しく解説します。

ピットブルの歴史やルーツは?

19世紀、イングランド、アイルランド、スコットランドの愛犬家たちがブルドッグとテリアの交配を始めたことが、ピットブル誕生のきっかけと言われています。牛が閉じ込められた囲い「pit(ピット)」(=自動車レースなどで聞く「ピット・イン」のピットと同義語)の中で、「bull (ブル)」(=雄牛)と闘わせた犬というのが名前の由来だそうです。

 

実は、ピットブルは1犬種だけを指すわけではありません。一般的にはアメリカン・ピット・ブルテリア、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、スタッフォードシャー・ブル・テリアおよびアメリカン・ブリーの4犬種をまとめて「ピットブル」と言います。

 

また、ピットブルは、血統登録団体JKC(ジャパンケネルクラブ)には登録されていないため雑種扱いとなる犬種です。アメリカン・ピット・ブル・テリアという名前での登録が認められているのは、UKC(ユナイテッドケネルクラブ)とADBA(アメリカン・ドッグ・ブリーダーズ・アソシエイション)のみになります。

ピットブルの平均的な体高・体重、平均寿命は?

ピットブルの性格は?_喜ぶピットブル

ピットブルの平均的な体高は、オスで4656cm、メスで4048 cmです。平均体重は、オスが約1317 kg、メスが約1115kgとなります。

ピットブルの平均寿命は?

ピットブルの平均寿命1216歳程度と言われています。しかし、闘犬として命を落としている子もいるためデータ数が少なく、正確な年数とは言えないかもしれません。

ピットブルの毛色の種類や被毛の特徴は?

ピットブルの性格は?_威厳のあるピットブル

短いビロードのような美しい被毛で覆われているピットブル。その毛色の種類や被毛の特徴について詳しく見ていきましょう。

 

ピットブルの毛色の種類

ピットブルの代表的な毛色は、ホワイト、ブラック、ブリンドル、グレー、黄褐色、ブラウンなどです。しかし、単色だけでなく、ブラック&ホワイト、ブラック&グレー、ブラック&ブラウンといった2カラーも多く、中には3カラーも見受けられます。

 

ピットブルの被毛の特徴

ピットブルの被毛にはスムースコートと、ダブルコートがあります。スムースコートは、毛質が太くて硬いのが特徴です。ダブルコートは、皮膚を保護するオーバーコートと、体温調節の役割をするアンダーコートから構成されています。ダブルコートのピットブルの場合、シングルコートの犬種と比較すると抜け毛はやや多めです。

ピットブルの外見や吠え声の特徴は?

ピットブルの見た目や吠え声の特徴は以下の通りです。

 

外見

筋肉質でたくましい体つきで、体長が体高よりやや長めになります。顔つきは、両目が離れていて鼻は短く、大きな口とがっしりとしたあごが特徴です。

 

吠え声

中程度の吠え声ですが、理由なく吠えることはないでしょう。

ピットブルはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?

ピットブルの性格は?_はしゃぐピットブル

闘犬にルーツを持つピットブルの性格の特徴は、以下の通りです。

 

服従心が強い

服従心・忠誠心が強いため、飼い主のことを信頼すると、指示をしっかりと聞き、実行することが出来ます。

 

飼い主に対して愛情深い

忠誠心が強いため、飼い主の気持ちを汲み取って、気遣ってくれる優しい一面を持ち合わせています。

 

無邪気で明るい

遊ぶのが大好きで、友好的な性格の持ち主です。

 

一度興奮したら止まらない獰猛な面も

闘犬としての歴史を持っているため、一度興奮すると抑えるのが困難と言われています。

 

番犬向きというわけではない

警戒心が強いため番犬に向いているイメージが強いかもしれません。しかし、むやみやたらと人を襲ったりする性格ではないため、意外と番犬には向いていないようです。

 

オスとメスで性格の違いはあるの?

特にオスとメスの間に明らかな性格の差はないでしょう。ただし、一般的に、オスは陽気、メスは気の強い子が多い印象です。

ピットブルを飼うのに向いている人は?

飼い方が難しいと言われるピットブル。どんな人が飼い主に向いているのか、詳しく見ていきましょう。

 

ピットブルの特性をよく理解している人

ピットブルは愛情深く、飼い主に対して忠誠心を持つ優しい性格ではあるものの、興奮すると歯止めが利かなくなるという二面性があります。そのようなピットブルの特性をよく理解した人が相応しいでしょう。

 

犬の訓練に精通した人

ピットブルは力が強く、一度、闘犬としての血が暴れだすと止められなくなってしまいます。そのため、トレーニングやしつけを得意とする人や、しっかりとトレーニングやしつけをしてくれる専門家のサポートが受けられる人に向いています。

 

広めの飼育スペースを用意できる人

体がそれなりに大きく、パワフルな一面を持ち合わせるピットブル。狭いところで破壊行動を起こさないよう、ストレス発散ができる、ある程度の広さを確保する必要があります。そのため広めの飼育スペースを用意できる人が向いていると言えるでしょう。

 

体力に自信があって十分な散歩や運動の時間を確保できる人

ピットブルは、スタミナのある犬です。しっかりと散歩をしたり運動したりする時間が確保でき、それに付き合うことができるくらい体力がある人が向いています。

 

小さな子どもや他のペットがいない家庭

小さな子どもや相性の合わない他犬に対して、危害を加える可能性があるため、小さな子どもや他にペットがいる家庭は飼育を避けることをおすすめします。

 

ピットブルは初心者向きではない犬?

どの犬種においても、しっかりとトレーニングやしつけをすることは必要ですが、特にピットブルの場合は、闘犬の歴史を持つため、きちんとしたしつけやトレーニングが重要になってきます。そのため、犬の飼育初心者には向いていない犬種です。

ピットブルを飼う上で気をつけるべきことは?

ピットブルの性格は?_散歩するピットブル

ピットブルを飼うときの注意点は以下の5つです。

 

多頭飼育は避ける

他犬との相性が難しい場合があるため、トラブルが起きないためにも多頭飼育は避けましょう。

 

小動物と一緒に飼育するのは避ける

小動物とピットブルを同じ部屋で飼育しないのであれば、問題ありません。しかし、ピットブルに限らず、どの犬種においても、しつけやトレーニングができていないために襲ってしまう場合は、小動物と一緒に飼育することを避けた方が良いです。

 

暑さに弱いので室温管理に注意

ピットブルは、短頭種のため呼吸で熱を逃すことが苦手です。そのため室温、湿度の管理には、十分注意しましょう。

 

丈夫なおもちゃを与える

ピットブルはあごの力が強いため、プラスチックのおもちゃなどはすぐに破壊されてしまう可能性があります。ある程度の硬さのある、丈夫なおもちゃを選びましょう。ただし、硬過ぎると歯を摩耗するので、注意が必要です。与える際は時間を短くするなど、工夫してみてください。

 

丈夫なリードと口輪を用意する

力が強いため、リードが切れないよう散歩前にリードの摩耗状態の確認が必要です。口輪は絶対に必要というわけではありません。しかし、きちんとトレーニングやしつけができておらず、他犬に危害を及ぼしてしまう可能性がある場合には、ピットブルに限らず、どの犬種も口輪をして散歩することをおすすめします。

ピットブルのしつけを始める時期は?しつける際に気をつけるべきポイント

飼うことが難しい犬種として挙げられるピットブルですが、適切なしつけができれば飼い主に従順で深い愛情を示してくれます。ピットブルのしつけのポイントについて詳しく見ていきましょう。

 

しつけを始める時期

自宅に迎え入れて、新しい環境に慣れたら、すぐに行いましょう。

 

しつけの際に気をつけるべきポイント

ピットブルは力が強く、闘犬としての歴史があるため、興奮して歯止めが利かなくなった場合、死傷事故などにつながる可能性があります。そのため、しっかりとトレーニングやしつけを行うことが重要です。日頃から飼い主をリーダーとした主従関係をしっかり認識させ、きちんと指示に従うように訓練しましょう。また、しつけやトレーニングにおいてプロのトレーナーの力を借りることも一つの手です。

ピットブルの食事の注意点は?

ピットブルの性格は?_フードを待つピットブル

運動量が多いので、筋肉をつけるために十分な動物性たんぱく質を与えてください。肥満による関節への弊害や呼吸器への負担なども考えられるので、体重管理はしっかり行いましょう。

ピットブルがかかりやすい病気やアレルギーは?

ピットブルがかかりやすい病気やアレルギーについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

股関節形成不全

股関節の発育がうまくいかずに、関節に炎症などが起こる疾患です。生まれつきのものが多いですが、肥満による股関節への負担が原因となることも考えられるため、日常的に体重管理をしっかりしましょう。

 

アレルギー性皮膚炎

かゆみや赤みなどが見られる皮膚の病気です。アレルギー性疾患は腸内環境の乱れからくるものがほとんどです。また、ピットブルはお腹の弱い子が少なくありません。そのため、日頃から腸の環境を整えるサプリメントなどを与えておくと、予防につながるかもしれません。

 

動脈管開存症

先天性の心臓の病気で、通常生後23日で完全に閉じる動脈管(肺動脈から大動脈への抜け道になっている血管)が閉じ切らすに残ってしまう疾患です。初期であれば症状はありませんが、重症化するとチアノーゼになったり、運動不耐性、せきや呼吸が困難になる症状が見られたりします。また、合併症として心不全や肺高血圧症が起こるケースも。先天性の疾患のため、残念ながら予防法はありません。

 

口蓋裂

短頭種の犬に見られやすい、生まれつき上あごが裂けた状態になっている疾患です。食事の際にうまく食道に食べ物が運ばれないため、栄養不足になりやすい傾向があります。生まれつきの疾患のため予防はないでしょう。

 

網膜形成異常

網膜血管の発育に異常があった際に起こる疾患です。軽度であれば無症状、重症になると視力の衰えが見られ、網膜剥離、失明の危険性があります。

 

尿石症

尿路からの逆行性の細菌感染や腸内細菌によるもの、ミネラル豊富な食事が原因となり、泌尿器に結晶、結石が出来てしまう病気です。ピットブルに限らず、他の犬種でも見られます。体質的に尿石を作り出しやすい子もいますが、しっかりと水分を摂っておしっこを出すことが予防法となるでしょう。

ピットブルを散歩させる際に気をつけるべきことは?

ピットブルの性格は?_運動するピットブル

ストレス発散や健康のために欠かせない散歩。ピットブルに適した散歩の頻度や注意点を押さえておきましょう。

 

散歩の時間と頻度

ピットブルは体力のある犬種で、運動しないとストレスがたまりやすい傾向にあります。112時間ほど、12回程度を目安に散歩をさせましょう。

 

散歩の際に気をつけるべきこと

子どもや他の犬がたくさんいるコースは避ける

力が強く、万一、引っ張られてしまったときに歯止めが利かず、死傷事故につながる可能性があります。そのため、あまり他の犬や人と触れ合わないコースを選んだほうが無難です。

 

自然の多いコースを選ぶ

起伏の激しいコースだと運動量を確保できるため、ストレス発散につながります。

 

口輪をつける

トレーニングやしつけが不十分な場合には、他の犬や人などを噛まないよう口輪を付けておくと安心です。ただし、短頭種のため、口輪を付けて散歩することで、空気が取り込みにくくなることから呼吸困難を招く恐れもあります。犬の呼吸状態を見ながら散歩し、無理はさせないようにしましょう。

ピットブルにおすすめの遊びは?

運動量の確保におすすめなのは、ボール遊びです。運動がなかなかできない時は、屋内でノーズワークを行いましょう。頭を使うので、運動不足でも満足感が得られます。また、泳ぐことで運動力が確保できるドッグプールも、ストレス発散になりおすすめです。

ピットブルの日常のお手入れで気をつけることは?

ピットブルの性格は?_茶色と白のピットブル

ピットブルの日常のお手入れではどのような注意点があるのでしょうか?それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

ブラッシングの頻度

短毛のため、週12回程度で十分です。

 

シャンプーの頻度

汚れが気になった時に洗う程度で良いでしょう。また、軽い汚れの場合はホットタオルなどでふき取るだけでも良いケースもあります。

 

こまめに皮膚の状態をチェックする

ピットブルは短毛なので、皮膚のチェックがしやすい犬種です。早期発見が早期治療につながるので、傷や赤み、腫れなどがないか日常的に確認をしましょう。

専門家の コメント:

ピットブルは、力が強く体も大きいためさまざまな危険があると言われますが、それとは裏腹に、飼い主に対して従順で、時にはおちゃめな一面を持ち合わせる、とても心やさしい犬種でもあります。ただし、迎え入れてからのトレーニングやしつけは重要です。ピットブルの特性をよく理解し、きちんと訓練ができるかどうかを考えたうえで、迎え入れるようにしましょう。


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