【法律】ドッグランでの事故!飼い犬が他人を骨折させてしまった場合・・問われる飼い主の責任は?

【法律】ドッグランでの事故!飼い犬が他人を骨折させてしまった場合・・問われる飼い主の責任は?

第1回の連載でも触れたとおり、犬が他人や他の犬を噛んで怪我を負わせた場合、飼い主は”動物占有者”として、発生した損害の賠償をしなければいけません(民法718条1項)。この飼い主の賠償責任が否定されることはまず無いのですが、今回ご紹介するのは例外的なケースです。

【監修】弁護士 / 石井一旭

【監修】弁護士 / 石井一旭

京都市中京区に事務所を構えるあさひ法律事務所代表。京都のみならず、大阪・奈良・兵庫・滋賀等、近畿一円において、ペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。司法書士有資格者。「動物の法と政策研究会」会員。「ペット法学会」会員。

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ドッグランで発生した事案の概要

今回は、犬が他人に怪我を負わせた場合に通常問われる飼い主の賠償責任が、例外的に否定されたケースです。

 

お話を伺ったのは・・・⽯井⼀旭 先⽣ [弁護士/あさひ法律事務所 代表] 

 

事案

小型犬(パピヨン)を連れたAさんと、大型犬(雑種の日本犬)を連れたBさんは、ノーリードで犬を遊ばせることのできるドッグランに訪れていました。このドッグランの中で事故が発生しました。

飼い犬と一緒にドッグラン内を走っていたAさん。後から付いてくる飼い犬のほうを振り返りながらドッグラン中央部を走り抜けようとしたところ、他の犬とじゃれあっていたBさんの飼い犬と衝突してしまいました。

Aさんは右足を骨折して20日間の入院を強いられ、手すりなしに階段を上ることや正座することができなくなる機能障害と、傷跡が残る後遺症を負う怪我をしました。この件で、AさんはBさんに対し総額590万9744円の賠償を請求しました。

<東京地方裁判所平成19年3月30日判決>

 

飼い主の『損害賠償責任』について

第1回記事のおさらいになりますが、民法718条1項には、「動物の占有者(通常”飼い主”を指します)は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています。ただし、「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき」は、損害賠償責任を負わないとしています。

ドッグランを走り出す愛犬と飼い主
今回の件では、ドッグラン内でルールを守って飼い犬を放していたBさんが、「相当の注意をもって管理をしていた」と言えるかどうかが主な争いになりました。原告であるAさんは、「じゃれ合って興奮状態だった飼い犬(大型犬)を、Bさんが制御・制止すべきだった」などとして、Bさんの責任を追及しました。

裁判所の下した意外な判決の内容とは

判決では、Aさんの損害賠償請求は棄却されました。では判決のポイントは何だったのでしょうか?

吠えたてる犬
ポイント①:”相当の注意”の意味は?

判決では、民法に記載された”相当の注意”の意味について「通常払うべき程度の注意義務」を意味するものであって、異常な事態に対応できる程の注意義務まで課したものではない、という判断が示されました。

もちろん、ノーリードで遊べるドッグランだからといって飼い犬を完全に放置してよいわけではありません。何か事故が起こればその責任を取らなければならないですが、異常な事態によって損害が生じた場合まで飼い主が責任を取ることはない、という判断をしたわけです。

ポイント②:ドッグランで飼い主がすべき注意はどの程度?

では、飼い主が持つべき「通常払うべき程度の注意義務」とは具体的にどの程度のものなのでしょうか。ドッグランはノーリードで犬を自由に走り回らせることができる施設です。その上で判決では、

・リードを外す前に飼い犬が興奮している
・リードを外すと制御が効かなくなる

といったといった特段の事情はない限り、ドッグラン内で飼い主が「通常払うべき程度の注意義務」とは、犬がノーリードで自由に走り回っている状態におけるものと考えなければならないとしました。

今回の件で、Bさんの飼い犬は、これまでこのドッグランを20回程度利用していましたが、Bさんの命令を聞かず制御できなくなるような事態になったことはありませんでした。

飼い犬をドッグランの雰囲気になじませてからリードを外した後、Bさんがすべき注意は、犬が興奮して制御が効かないような状態が発生しないように、そして、もしそのような事態や事故が発生したとき直ちに対応することができるように「犬を監視すること」で足りるとしました。

リードをつけた愛犬と遊ぶ飼い主

ポイント③:Aさんの行動はどうだったのか?

一方で、「犬が自由に走り回っているドッグランの広場中央部に…人間が立ち入ること」は、危険な行為であって、それは”異常な事態”に当たるとしました。よって、Bさんが「そのような事態を予見して、飼い犬の動向を監視し制御することは必要ない」と判断したのです。

Bさんは、損害賠償責任を問われず

こうしたポイントから、Aさんのような挙動をBさんが予見し、飼い犬を制御する必要まではないと判断されました。つまり、Bさんは民法718条1項但書の「相当の注意」を果たしていたと言えるので、BさんはAさんの負傷などについて責任を負わないとして、Aさんの損害賠償請求は棄却されました。

まとめ

本件はドッグランの中という特殊な環境下ではありますが、飼い主の責任が否定された珍しいケースです。Bさんがこれまでこのドッグランを頻繁に利用していたが一度も事故を起こさなかったこと、飼い主の命令を聞くよう犬をしっかりと調教していたことなど、Bさんが普段からしっかりと犬のしつけをしていたことが決め手となったように思われます。普段のしつけの重要性を再認識させられるケースです。

ドッグランで転ぶ飼い主
一方、自分の飼い犬と走っていて怪我をしてしまったAさんにとっては気の毒な判断です。飼い犬とじゃれ合ってドッグランの中を小走りに走る程度のことが「異常な事態」と言えるか、裁判所の判断に疑問がないではありません。ただ、今回の件では、Bさんの飼い方に問題がないとされたため、賠償は一切認められませんでした。

ドッグランでは、開放的になって大喜びする犬と一緒に自分ものびのびと自由にしてしまいがちですが、本件のように予期せぬ怪我をしてしまう可能性もあります。ドッグランと言えども、飼い犬の安全も含め、周囲の確認はきちんとしておく必要があるといえるでしょう

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