【犬の事件簿】『ペットの虐待』を見つけたとき、通報や自力での救出などとるべき行動を解説

【犬の事件簿】『ペットの虐待』を見つけたとき、通報や自力での救出などとるべき行動を解説
【犬の事件簿】『ペットの虐待』を見つけたとき、通報や自力での救出などとるべき行動を解説

目次

  • ・ 【事例】雨ざらしの屋外で自由なく飼われている!
  • ・ 流れてくる多頭飼育崩壊のニュース
  • ・ 動物の虐待は犯罪!通報先はどこ?
  • ・ 乗り込んで救助するのはNG

屋外の雨ざらしで、短いリードに繋がれて自由もなく飼われている犬が近所にいる・・・多頭飼育している家の衛生状態が悪く、ご飯すら満足にあげていないようだ・・・そんなケースを目撃してしまった場合、何かできることはあるのでしょうか?どこに連絡すれば良いのか?もしくは直接飼い主に話に行くのが良いのか?今回はそんな事例について学びたいと思います。

【事例】雨ざらしの屋外で自由なく飼われている!

今回のテーマは、犬の虐待が疑われるケースに関してです。

お話を伺ったのは・・・⽯井⼀旭 先⽣ [弁護士/あさひ法律事務所 代表] 

 

事案

・近所の犬が雨ざらしの屋外で、自由もない状態で飼われている
・近所で多頭飼育をしている家があるが、衛生状態も悪そうだし満足に餌もあげてない様子だ


もしあなたがこのような状態を目にしてしまったらいかがでしょう。「虐待」という文字が浮かぶかもしれません。あなたが取るべき行動として何が正しいのでしょうか。

流れてくる多頭飼育崩壊のニュース

痩せ細った犬

多頭飼育崩壊の現場

最近、多頭飼育崩壊のニュースが世間を騒がせています。飼っている犬猫が世話しきれないほどの数に繁殖してしまい、その結果、悪臭や騒音などで周辺の環境を悪化させてしまったり、犬猫に対し十分な世話をしないネグレクトが疑われるような飼い方になってしまうケースが明るみに出ています。

「虐待」には、身体的に苦痛を与えるような”すべきでない事をやる”というものだけではなく、健康管理や世話など”すべきことをしない・放棄する”ことも含まれます。

動物の虐待は犯罪!通報先はどこ?

雨に打たれて震えている犬

虐待は何を基準に判断される?

動物の虐待は『動物愛護法44条』に定められた犯罪行為です。いわゆるネグレクト行為や飼育放棄行為は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、殺傷行為は懲役5年以下または500万円以下の罰金となります。

雨ざらしで飼われている

最初に挙げた事例のうち、雨ざらしで飼われている状態は、同法44条2項の「健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束」に該当する可能性があります。またその結果、病気になっていれば「疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと」に当たる可能性もあります。

衛生状態の悪い多頭飼育

また、多頭飼育で衛生状態が悪くなっている場合は「飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること」や、「排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること」に、該当する可能性もあります。


まずは行政機関に通報を

もし、児童の虐待が疑われる場合であれば、児童相談所などに通告して対処してもらうことが考えられますが、ペットの場合はどうでしょうか。『動物愛護管理法25条4項』には、以下のような定めがあります。

都道府県知事は、動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、改善命令や改善勧告をすることができ、また、改善命令等をするのに必要な限度において、報告を求めたり、立入検査をすることができる


また、同じ法律内(同法37条の2)には、中核市・政令指定都市以外の動物愛護管理センターにも、動物の飼養をする者に対する指導・助言等を行う権限を認めています。

まずは、行政機関に「近所で虐待のおそれがある事態が生じている」ことを通報し、対応を求めるのが良いでしょう。

警察に相談することも有効

前述したように、虐待が行われていれば犯罪行為にあたるため、警察に相談することも有効です。最近の法改正で厳罰化されたこともあり以前と比べ、動物の虐待に対する警察の消極的な印象は薄くなってきたように思います。

もちろん、全てのケースが条文に照らし合わせて犯罪になるわけではありませんが、動物の生命や健康に危険があると感じられる場合は、警察に通報してみることも検討してください。

乗り込んで救助するのはNG

塀の中を双眼鏡で覗く人

自分で乗り込んで犬を救助したい

可哀想な犬を目の当たりにすると、通報するよりも直接現地に乗り込んで犬を救助(?)してあげたいという方もいるかもしれません。ただし、残念ですがこれは認められません。

法律上、あくまで犬は飼い主の「所有物」であり、その所有権が及んでいるためです。例えばあなたが、所有する人形を乱暴に扱っていたとします。だからと言って、それを見かねた隣人が「人形が可哀想だ!」と持ち去ることが許されないのと同じです。

強硬な手段で自らが犯罪者に

このような強硬手段に及んだ場合、「犬を盗んだ」として逆に窃盗罪に問われたり、家に立ち入ったとして住居侵入罪に問われたりと、救助した方が犯罪者になってしまうおそれがあります。

虐待的な扱いを受けている動物がかわいそうでならない、という気持ちはよくわかりますが、今の法律では、飼い主にやめるよう忠告したり役所や警察に相談するなどの方法しか取れないのが実情です。


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