あなたも当事者に!?咬傷事故で愛犬が他人に怪我をさせてしまった実例の判決と対策!!

あなたも当事者に!?咬傷事故で愛犬が他人に怪我をさせてしまった実例の判決と対策!!

『犬のトラブル法律相談所』では、犬に関するトラブルについて、実際に発生した事例を現役の弁護士の方に紹介していただきます。いつあなたが当事者になるかわかりません!様々な事例から学び、もしもトラブルの当事者になっても対応できるよう、正しい知識を手に入れましょう。

愛犬が人の顔面を嚙んで怪我を負わせてしまった!

今回紹介するのは、犬が加害者ならぬ"加害犬"となってしまった事件です。犬が危害を加えた対象は『人』です。怪我の程度によっては、高額の賠償責任を負担しなければならなくなる場合もあります。

お話を伺ったのは・・・⽯井⼀旭 先⽣

弁護⼠ / あさひ法律事務所代表
京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。司法書士有資格者。「動物の法と政策研究会」会員。「ペット法学会」会員。
▶︎あさひ法律事務所:https://asahilawfirm.com
▶︎ペットトラブルに関する専門ページ:https://peraichi.com/landing_pages/view/lawyerishiipettrouble


※この記事の解説は、ひとつの見解です。お客様の問題の解決を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。

事案

飼い主さんの自宅敷地内で、リードを付けず放し飼いされていたバーニーズマウンテンドッグ。ある日、ヨーグルトの定期配達のために敷地に入ってきた配達員の顔面に、バーニーズマウンテンドッグが噛み付いてしまいました。配達員さんは、顔に傷跡が残るほどの怪我を負ってしまい、そのことについて損害賠償請求訴訟を起こしました。

<福岡地裁令和2年11月20日判決>

飼い主さんは愛犬を”相当の注意をもって管理”できていたのか?

犬のいる庭に入ろうとする配達員

民法718条1項には、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」と定められています。今回の件で言えば、バーニーズマウンテンドッグが配達員に負わせた怪我(損害)について、飼い主(占有者)は賠償責任を負担する、ということになります。

ただしこの条項は、「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき」は賠償責任を負わない、とも定めています。

 

被告である飼い主さんの反論

飼い主さんは愛犬を、「種類・性質に従い相当の注意をもって管理していた」と主張しました。バーニーズマウンテンドッグはそもそもおとなしい温和な性格の犬で、愛犬もこれまで人に噛み付いたりすることはなかったこと。愛犬には先天性の障害があって素早い行動ができなかったとことを挙げました。

また、敷地内にバーニーズマウンテンドッグがいることを配達員さんは知っていたし、吠えられたりして配達に支障があるときは門の外にヨーグルトをおけるようにもしていた点などから、自分は”相当の注意を払っていた”と主張しました。

そして、この事故が起きたのは、配達員が無理な配達をしたためであって、賠償責任は負わないなどと反論をしました。

犬の飼い主に対して裁判所が命じた判決の内容は?

バーニーズ・マウンテン・ドッグ
裁判所が下した判決

 

バーニーズマウンテンドッグが温和な性格で、この犬もこれまで問題を起こしていなかったとしても、他人に吠えることはあったとのことであり、敷地内に入った人に対して噛み付く可能性はある。

そうである以上、リードをつけていなかった飼い主は「相当の注意をもって管理」していたとは言えず、よって賠償の責任を負う、と判断しました。

ただし、原告についても、バーニーズマウンテンドッグが強く警戒を示していたにもかかわらず、その場を一旦離れたり、飼い主を呼ぶといった行動をせずに配達作業を続行しており、その点については注意を欠いた行動といえる、として50%の過失を認めました。

原告の請求から過失分が減額され、結果的に飼い主に対して『原告の治療費』・『休業損害』・『慰謝料』の合計178万5571円の支払いを命じる判決が出されました。

愛犬が加害犬となってしまったこの事故から学べること

「犬が人を噛んで怪我をさせた」というケースでは、民法718条1項の成否が問題となります。確かに条文上は、飼い主が相当の注意をもって管理していれば免責されるとありますが、裁判ではこの免責が認められることはまずありません。

この件でも、バーニーズマウンテンドッグをきちんと飼っていたという飼い主の主張は通りませんでした。自宅敷地内ではノーリードだったのですが、そのことも飼い主の管理が不十分だった要因と認定されてしまっており、犬の飼い主にとっては不本意とも感じられる裁判例かもしれません。

愛犬が他人に損害を与えた場合、ほぼ起きてしまった結果に対する損害賠償をしなければならないという結果責任になっているというのが実情です。

① リードを外す場合は、敷地内であっても門を閉め、外部者が入れないようにしておく
② 外部者が犬に近づく可能性がある場合は、敷地内であってもノーリードはなるべく飼い主が目を配れるときのみにする
③ 来訪者に対して『入らずに呼び出して下さい等』の注意喚起の看板やプレートを設置する

などできる対策をして、愛犬を"加害犬”にさせないようにしたいですね。それでも起こってしまう事故に備え、賠償責任をカバーできるペット保険に加入しておくことも検討しましょう。

【監修】弁護士 / 石井一旭

京都市中京区に事務所を構えるあさひ法律事務所代表。京都のみならず、大阪・奈良・兵庫・滋賀等、近畿一円において、ペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。司法書士有資格者。「動物の法と政策研究会」会員。「ペット法学会」会員。

石井先生への相談はこちらから
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わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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