ペットロスの症状とは?心理状態や克服方法、身近な人がなったときの接し方などについて解説【獣医師監修】

ペットロスの症状とは?心理状態や克服方法、身近な人がなったときの接し方などについて解説【獣医師監修】

どれだけ愛情を注いでお世話をしていても、いずれは必ず訪れる「ペットとの別れ」。大切なペットの死は、飼い主にとって非常につらく苦しいものです。ペットを亡くした人の中には、「ペットロス」と呼ばれる状態になる人も少なくありません。ペットロスとはどのような状態で、克服するにはどうすればいいのでしょうか? 今回は、獣医師の林美彩先生に教えていただいた、ペットを飼っている人なら誰でも起こる可能性のある、ペットロスについて解説します。

ペットロスとはどんな状態?

ペットロスペットロスとは、ペットを亡くしたことによる飼い主の悲しみや苦しみ、亡くした体験自体のことを指します。これは決して珍しいことではなく、どんな飼い主でも経験する可能性があります。

 

近年、人間社会におけるペットの地位は、かつての家畜や使役動物から伴侶動物を意味する「コンパニオンアニマル」と呼ばれるまでになりました。ペットを迎える人の数はますます増え、医療の発展や飼育環境の改善によってペットの寿命も延びています。そのぶん、ペットを失うときの悲しみが大きくなり、ペットロスに陥る人が増加している背景があります。


ペットロスになった際の心理状態や症状とは?

ペットロスになった飼い主は、悲しみを抱くだけでなく、死の原因を作った出来事、自分自身や獣医師に対して怒りを感じたり、ペットを死なせてしまったことに罪悪感を覚えたりすることが多いようです。

 

また、混乱に陥り、ペットが死んでしまったことを認められなくなったり、情緒的にマヒ状態になったりする人もいます。そのほかには、抑うつ・不安・落ち着かない・物事に集中できないなどの状態がよく見られます。

 

人によっては体に症状が現れることも。食欲不振や過食などの摂食障害、不眠、下痢・便秘・嘔吐・吐き気などの消化器症状など、さまざまな症状があります。

 

また、頭重感や頭痛、めまい、すぐに涙が出る、倦怠感、元気消失などが起こる人もいます。ストレスにより、蕁麻疹などが出る場合もあります。

ペットロスになりやすい人の特徴とは?

ペットロスはどんな飼い主にも起こる可能性のある症状ですが、ペットを溺愛しすぎている、生活の中心がペットになっているなど、ペットに対して依存度が高い場合は特に陥りやすくなります。

 

一人暮らしで常にペットと一緒に過ごしている人、子どもが独立してから飼育し始めた人や、ペットを我が子のように扱っている人もペットに依存していることが多く、ペットロスのリスクは高めなようです。

 

日ごろからストレスや不安を感じやすい性質の人も、ペットロスになりやすいと言われています。また、「親しい人を亡くした場合、周囲のサポートがない人ほど気分の落ち込みなどの症状が長期化する」という研究結果があるため、ペットを亡くした場合にも同様のことが言えるかもしれません。

ペットロスが長期化・重症化してしまう理由は?

2017年のアイペット損害保険株式会社の調査によると、「ペットロスの症状はどのくらい続きましたか?」という質問に対し、「1か月未満」と答えた人は28.8%、「1か月~3か月未満」の人は22.2%であり、51%の人が3か月未満でペットロスから脱していることがわかりました。

 

しかし、「6か月~1年未満」が6.1%、「1年以上」が8.0%と、長い間苦しみを引きずっている飼い主も決して少なくありません。ペットロスが長期化・重症化してしまう理由はどこにあるのでしょうか?


ペットロス克服のプロセスが進んでいない

ペットを失うという大きな喪失体験をしたあとは、混乱、亡くしたことを受け入れられず、獣医師や周りの人への怒りなどを経て、抑うつや諦めにたどり着き、気持ちを整理する作業を始めようとする転換期を迎えます。

 

通常はこうしたプロセスを何度も繰り返し、心が落ち着いてきたころにようやく立ち直ることができるもの。しかし、このプロセスがうまく進まなかったり、別の方向に感情が向いてしまったりすると、重症化しやすくなると言われています。


つらい気持ちを吐き出せていない

悲しみやつらさを吐き出す機会がない、相手がいない場合にも、ペットロスからなかなか抜け出せなくなる可能性があります。場合によっては、家族や周囲の人とペットに対する価値観が異なり、「ペットを亡くしたくらいで」といったような心無い言葉をかけられ、悲しみを深めてしまう人もいるようです。


ペットの死に関して後悔がある

ペットが病気や不慮の事故で亡くなる場合もあります。その際に起こる「早く病院に連れて行けばよかった」「もっと注意して見守っていればよかった」といった自責の念や後悔は、ペットロスを重症化し、長引かせる原因となることがあります。

 

また、突然ペットを失ってしまった場合は心の準備ができていないことが多いため、重症化しやすいと言われています。

ペットロスを克服するためにできることはあるの?

ペットロスペットロスに陥った場合、早く克服したいという気持ちを抱くのは当然のことです。しかし、悲しみやつらさなどの感情を強引に抑え込むと、かえって悪化したり、長引いたりすることもあります。

 

ペットを亡くしたときは、無理やり明るく振る舞おうとせず、まずは思いきり悲しみに浸る期間をつくりましょう。泣きたいときはしっかり泣き、辛い思いをを涙に換えて発散してください。また、次のような方法もペットロスを克服するには有効です。


ペットロス経験者と話す

ペットの地位が向上してきたとはいえ、ペットロスに関してはまだまだ理解を得られにくいかもしれません。ペットの死を引きずることに抵抗がある、「どうせ理解してもらえない」と周囲の人の前では気丈に振る舞ってしまうという人もいるでしょう。

 

そんな人は、同じくペットロスを経験した友人や知人に気持ちを打ち明けるのもひとつの手です。悲しみを共有するだけで、心が軽くなることもあります。また、経験者からは思わぬ有益なアドバイスをもらえるかもしれません。


新たにペットを迎える

新たにペットを迎えることも、ペットロスから脱する方法としては有効です。新しいペットを飼い始めることで、ペットロスの症状が早く収まるという調査結果もあります。

 

ただし、ひどい悲しみに襲われている最中に無理をしてペットを飼い始めることで、症状を悪化させてしまうこともあります。新しいペットを迎えるタイミングは慎重に検討しましょう。

ペットロスに陥ったときの相談窓口はあるの?

周りに話を聞いてくれる人がいない、ペットロスに陥っている人のケアができないなどの悩みがある場合は、ペットロスの相談窓口を利用してみましょう。

 

アメリカにはペットロスの相談窓口が数多くあり、ペットを亡くした悲しみやペットとの思い出について話を聞いてもらうケアが一般的です。近年は日本でも、そうした相談窓口が増えつつあります。

 

相談窓口では、ペットを亡くした悲しみやペットとの思い出についてじっくり話を聞いてもらうことができます。話を聞いてもらうことで、気分が落ち着いたり、現実を受け止められるようになったりする効果が期待できます。


ペットロスの症状が重かったり、長く続いたりする場合は病院へ

ペットを亡くしたこときっかけに心身の調子を崩し、抑うつや不眠、摂食障害や消化器症状などが1か月以上も続くようなときは、病院で診察を受けてみてもいいかもしれません。その場合は、かかりつけ医や精神科・心療内科の医師に相談してみましょう。

ペットロスを防ぐため、事前に準備できることは?

ペットロスペットロスは誰にでも起こる正常な反応です。そのため、ペットロスを防ぐのはとても難しいこと。「ペットを飼っている限り、いずれ必ず訪れるもの」と、ある程度割り切る必要があるかもしれません。日頃から「命」や「死」といったテーマに向き合い、いつかは別れがくることを覚悟しておきましょう。

 

また、適切な飼育環境や飼育方法を心がけ、日頃からペットの健康を気遣うようにしてください。今ある命を大切にし、ペットとの日々を楽しく過ごしてたくさんの思い出を作りましょう。


新たなペットを迎えてみる

ペットロスは新しいペットを飼うことや、他のペットの存在によって和らげられることもあります。例えば今一緒に暮らしているペットが10歳を超えたあたりで、もう1頭のペットを迎えるのもひとつの選択かもしれません。

 

しかし、新たなペットを迎えるということは、もう1頭の命を預かる責任が発生するということ。今いるペットのストレスになる可能性もあるため、安易に決断せず、じっくりと考えるようにしましょう。

周囲の人がペットロスになった場合はどうすればいい?

家族や友人、同僚などがペットロスになった場合、どう対応すればいいか悩んでしまうこともあるでしょう。そんなときにもっとも大切なのは、相手の気持ちに寄り添う姿勢です。

 

ただゆっくりと話を聞き、相手が抱く悲しみを受け止めてあげること。「たかだかペットでしょ」「もう〇か月も経ったんだし、そろそろ忘れよう」などと、相手の悲しみを決して軽視してはいけません。

 

すぐに新しいペットを飼うことを勧めたり、安易な言葉で慰めたりするのもNGです。ひどく悲しみに暮れている場合は、グリーフケアのワークショップなどを勧めてみてもよいかもしれません。

 

また、ペットロスに陥っている人の中には、無理に明るく振舞おうとする人もいます。そうした人に対しては、安心して心から悲しめる状況、環境を作ってあげましょう。

 

ペットロスについての知識がある場合はアドバイスができることもありますが、知識がない状態でのアドバイスは、逆にペットロスを助長してしまう可能性もあります。無責任な発言をしないように十分注意しましょう。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

ペットを飼っている人であれば、誰しもが経験する可能性のあるペットロス。早く悲しみから脱したいと思ってしまう人もいますが、無理せず、心のままに悲しむこと、ペットに対して「ありがとう」の気持ちを持って供養することが、ペットロスを脱する近道かもしれません。ペットロスに陥ってしまったときは、ぜひこれらのことを思い出してくださいね。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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