犬の性格に悪影響を与えてしまう飼い主のNG行動5選【獣医師監修】

犬の性格に悪影響を与えてしまう飼い主のNG行動5選【獣医師監修】

犬の性格は、さまざまな要素によって形成されていきます。飼い主の行動も、犬の性格に影響を与える要因のひとつ。場合によっては、犬が問題行動を起こす原因にもなり得るのです。ヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に、犬の性格に影響する飼い主の行動について解説していただきます。

専門家の コメント:

飼い主の行動は犬の性格に影響を与える要素のひとつですが、場合によっては、犬が問題行動を起こす原因にもなり得ます。ヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に、犬の性格に悪影響を与える飼い主の行動について解説していただきます。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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飼い主の行動が犬の性格に影響を与えるのはなぜ?

子犬と飼い主

「飼い主との関係」は、犬の性格を形成する要素のひとつです。犬が飼い主の元に来るのは、生後57日以降と法律で定められており、この時期は、犬がさまざまなことを柔軟に吸収する「社会化期」があと1か月で終わってしまう頃。その後迎える「青年期」(「若齢期」とも言います)は、環境からの刺激に対して不安反応が起こりやすく、飼い主に対してわがままに振舞ったり、これまでに習得していた号令などが一時的にできなくなったりする時期です。この期間に、飼い主が犬に不適切な罰を与えたりネグレクトしたりすると、不安や葛藤を感じやすい犬は飼い主に対して攻撃的になることがあります。

また、1歳以降でも飼い主がストレスを感じている家庭では、犬もストレスを感じていることがわかっています。ストレスを受けると些細なことで葛藤や不安を感じるため、犬が攻撃的になることもあります。

さらに、最近では以下のような研究結果(※)も報告されています。人間の場合、「感覚処理感受性(さまざまな情報を他者より強く深く処理する傾向を指す性格)」(SPS)の傾向が高いと、些細な刺激に過度に反応しやすく、強い感情的反応が出る傾向があるとされていますが、そんなSPSに類似した特性が犬でも確認されたのです。「犬の感覚処理感度」(cSPS)と呼ばれ、生まれつきcSPS傾向が高い犬は、SPSの低い飼い主や体罰を与える飼い主の行動からネガティブな影響を受けやすく、性格形成に悪影響を及ぼす可能性も。好きなものを取り上げたり、無視したりといった負の罰によって、ネガティブな影響が大きくなると報告されています。

では、次からは具体的に飼い主のどんな行動が犬の性格に悪影響を及ぼすのかをそれぞれ解説していきます。

(※)出典:M. Bräm Dubé, L. Asher, H. Würbel, S. Riemer, L. Melotti,“Parallels in the interactive effect of highly sensitive personality and social factors on behaviour problems in dogs and humans” nature, 2020.

https://www.nature.com/articles/s41598-020-62094-9

犬の性格に悪影響を与える飼い主のNG行動①:間違った方法で犬を叱る

犬を叱る

間違った方法で犬を叱ると、犬との信頼関係が揺らぎかねません。以下のような叱り方は、避けるべきでしょう。


しつけをしていないのに叱る

正しい行動が示されていないのに罰せられると、犬が混乱したり学習性無力となったりすることが懸念されます。また、飼い主への漠然とした不信感が募ることにもなります。


犬の名前を呼びながら叱る

名前を呼ばれることが、叱られることの合図として記憶されると、飼い主が犬の名前を呼ぶと逃げるようになっていきます。


大きな声で怒鳴る

大きな声は犬に緊張をもたらします。強い語気は犬を不安にさせ、怒鳴っている人への信頼感も失われます。また、犬が身の危険を感じるほどの叱り方をすると、犬は自己防衛のために攻撃に転じることもあり大変危険です。さらに、犬の攻撃によって飼い主のネガティブな行動を抑止できると一度でも経験させてしまうと、犬は飼い主を制止する目的で攻撃的に振る舞うようになっていきます。

犬の性格に悪影響を与える飼い主のNG行動②:犬に暴力を振るう

そもそも暴力は犬に痛みを与える行為であり、肉体的なストレスの要因になります。さらには、人に対する不信感や漠然とした不安感を起こさせ、心理的なストレスを感じやすくします。体罰はストレスを与えるだけで適切な代替行動が示されないため、犬は取るべき行動がわからなくなり委縮してしまうでしょう。また、動物の遺棄や虐待を行うことは、動物の愛護及び管理に関する法律に基づき処罰されます。

犬の性格に悪影響を与える飼い主のNG行動③:犬に対して気まぐれで一貫しない態度をとる

飼い主の態度が一貫していないと、犬は常に不安や葛藤を感じます。特に、気まぐれで叱る飼い主は、犬にとっては理解しがたい存在。一緒にいると不安を感じやすくなり、飼い主から離れて過ごすことを好むようになってしまうでしょう。

犬の性格に悪影響を与える飼い主のNG行動④:犬の要求をすべて聞き入れて甘やかす

犬を甘やかす

犬の要求を聞き入れすぎると、犬は飼い主をコントロールできると学習してしまいます。そうすると、飼い主が犬の意図に反した対応をした場合、犬は葛藤や不満を感じ、時には攻撃的に振る舞って飼い主に要求を飲ませようすることもあるでしょう。また、常に飼い主をコントロールしたいという欲求が高まるため、周囲の変化に過敏に反応するようになってしまいます。結果として、犬は落ち着いた安心できる時間を持てなくなっていくでしょう。

犬の性格に悪影響を与える飼い主のNG行動⑤:いろんなところに犬を連れて行きたがる

飼い主が犬をいろいろな場所に連れていくことも、犬の性格に影響を及ぼします。もともと外交的なタイプであれば、より社交的に成長し、家庭外での出会いを楽しめる性格になるでしょう。その反面、内向的で不安を感じやすい性格であれば、外に出ることがストレスになりかねません。外に出ることにより一層不安を感じる性格になるでしょう。

社会化期であれば、外に出る機会が多いほうが見知らぬ人や動物への社交性は高まるとされていますが、社会化期を過ぎてから外に出る機会を持つときは慎重に扱う必要があります。もちろん高齢になってからでも、徐々に慣らすことはできます。不安を示さない程度の短い時間、軽い接触にとどめるよう心掛ければ、お出かけにもやがて慣れていくでしょう。

犬の性格に悪影響を与えないために飼い主が気をつけるべきことは?

犬は飼い主を常に見つめている

飼い主が一貫しない態度を取ると、犬に不安や葛藤が生まれ、悪影響を与えます。飼い主が犬の気持ちを汲み取らずに行動することも、犬に悪影響を与えると思われるかもしれませんが、飼い主の言動が一貫してさえいれば犬は不安を感じません。犬から信頼されるためには、飼い主は気まぐれで一貫しない態度をやめ、好意的に接することが大切です。

また、犬は飼い主の雰囲気からその心情を推測するため、飼い主自身が不安や葛藤を感じないことも大切です。犬がいつも飼い主を見ていることを忘れないようにしましょう。


犬の性格が飼い主に影響を与える可能性も

一般的に、犬は飼い主の言動の影響を受けて性格を形成すると言われていますが、犬の感情や行動が飼い主に影響を与える可能性もあります。犬の不安は、しばしば飼い主の不安につながるでしょう。鼻を鳴らす、ハアハアと呼吸が早い、ずっとうろうろしている、物を壊す、絶え間ない吠えなど、犬の不安な行動をなかなか緩和できない場合、多くの飼い主は無力感を覚え、不安を引き起こします。逆に、穏やかな犬は飼い主を落ち着かせ、癒します。つまり、飼い主の言動が犬の性格を変えると同時に、犬の性格が飼い主のストレスを増減させるというとても密接した関係性にあるのです。

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