犬のマズルに触ることはなぜ必要?メリットと正しい触り方・注意点を解説【獣医師監修】

日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。

犬のマズルに触ることはなぜ必要?メリットと正しい触り方・注意点を解説【獣医師監修】

犬の口周りの部分を指す「マズル」。犬にとっては敏感な場所ですが、抵抗なく触らせてくれるようにしておくと犬自身のケアに役立ちます。この記事では、犬のマズルを触ることについて、目的や得られる効果、適切な方法を、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に解説いただきます。

犬のマズルはどの部分?

「マズル」とは犬の顔のうち、目元の下から鼻先と口周りにかけての出っ張っている部分のこと。

犬のマズルはどの部分?

犬種によって長さが異なり、それぞれ「長頭種」「短頭種」「中頭種」と呼ばれています。犬種ごとのマズルの特徴は以下の通りです。

 

長頭種

長いマズルをもつ犬種のこと。頭蓋骨とマズルの長さが同じ、またはマズルの方が長く、ダックスフンド、イタリアン・グレーハウンド、ボルゾイなどが挙げられます。

 

短頭種

短いマズルをもつ犬種のこと。マズルが頭蓋骨と比較して顕著に短く、ブルドッグ、パグ、シーズーなどが代表的です。

 

中頭種

もっとも一般的で、マズルの長さが頭蓋骨の長さよりやや短い犬種です。柴犬、ポメラニアン、ラブラドール・レトリーバーなどが中頭種です。

犬のマズルコントロールとは?

「マズルコントロール」とは、母犬が子犬のマズルを口で覆い軽く噛むことで犬の社会的ルールを教える、という習性を利用したしつけ方法です。以前は、犬よりも人が上位であると考えられていたため、優位性を伝えるために、このしつけは有効だと考えられていました。しかし、実際にはこのような行為によって犬の攻撃性が増すことなども報告されているため、現在では推奨されていません。また、犬と人は主従関係ではなく、母子関係に近い絆づくりをすることがわかっていて、飼い犬同士でも野生のイヌ科の動物のような明確な上下関係をつくらないことが多いです。

 

しつけの基本は、人との生活ルールをわかりやすく教え、従わせ、褒めること。また、ルールに従えない場合は間違いを正し、適切な行動に導くこと。無理にマズルコントロールをする必要はありません。

犬のマズルに触ることがしつけに効果的な理由は?

犬のマズルに触ることがしつけに効果的な理由は?

マズルを触られることを、嫌がったり怖がったりする犬は多いです。マズルは犬の顔の中心にある過敏な場所。自分の安全をまもるためにも、信頼のない相手に触られることを嫌うのは当然といえるでしょう。

 

しかし、怪我をしたとき、皮膚炎を起こしたとき、口腔内の衛生管理をするときなど、人間がマズルを触る機会は意外と多いです。特に口腔内のケアは、歯周病だけでなく、歯周病の菌による心臓病や腎臓病などの予防にもつながるため、嫌がらずに触らせてくれるようなトレーニングが必要です。

 

マズルに限らず体のどの場所でも、日頃から飼い主が触ることに対して犬が抵抗しないようにしておきましょう。毎回ストレスを感じていると、犬にとっても飼い主にとっても負担になってしまいます。好意的に受け入れてくれるよう、練習してくださいね。

犬のマズルに触る方法は?

ここからは、犬のマズルに触る正しい手順を紹介します。マズルに限らず、足先や尾など、犬にとって一般的に受け入れるのを負担に感じやすい場所でも、同様の練習をしてみてください。

 

1. マズルを触られることに慣らす

子犬の場合、一般的に落ち着きはありませんが、触られることへは抵抗しにくいでしょう。抱っこしているときや、近くに呼び寄せたときなど、人がどんな体勢でいるときでも犬が好意的に受け入れられるよう練習しましょう。

 

犬が興奮する触り方をしたり、嫌になるほど長く触ったりすることはNGです。もし、犬に緊張や嫌がる様子が見られたら、一旦ストップしましょう。まずは犬がリラックスして受け入れられる場所・方法で触ることが大切です。

 

2. マズル触られることに対するイメージをよくする

少しずつマズルに触らせてくれるようになったら、触ったあとすぐにおやつをあげたり、やさしく声かけたりしましょう。あくまでも穏やかに、犬が興奮して喜びすぎないようにするのがポイントです。犬がリラックスして、好意的に受け入れてくれるようになったら、今度は触る時間を長くしたり、唇を軽く持ち上げて動かしたりします。引き続き、すぐにおやつを与えたり、やさしく声かけたりして、たくさん褒めてあげてください。

 

3. マズルを触られることに抵抗がない状態を維持する

犬がマズルを触られることに抵抗しなくなったら、その状態を維持することが大切です。ときどき触り、おとなしくしていられたら言葉やおやつを使って褒めることを続けましょう。

犬のマズルに触る練習はいつから始めればいい?

犬のマズルに触る練習はいつから始めればいい?

過敏な場所に触られる練習をするのに一番適している時期は子犬期です。自宅に迎え入れ、生活に慣れてきたタイミングで、ゆっくり始めていきましょう。

 

また、成犬になるにつれ、触られることを受け入れにくくなります。犬が怖がったり、攻撃的になったりしたら、無理に触る必要はありません。十分な信頼関係を築いたあと、犬が嫌がらない程度に軽く触ることをおすすめします。

犬のマズルに触る際の注意点は?

最後に、犬のマズルを触る際の注意点について解説します。

 

信頼関係を大事にする

犬が、自身の体を抵抗なく、好意的に触らせてくれるのは、相手が安心・安全であると信頼しているからです。犬との信頼関係を築くことは必須条件といえるでしょう。

 

いきなり掴まない

私たち人間も、知らない人や好きでない人から突然触られたら嫌ですよね。いきなりマズルを掴む必要はありません。犬にとって触られることを好意的に受け入れやすい場所から、少しずつ練習しましょう。

 

強く握ったり振ったりしない

強く握ったり振ったりすることも不適切です。犬が嫌がるような方法を無理やり押しつけることは絶対しないでくださいね。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

マズルは犬にとって大切でデリケートな部分です。無理に触る必要はありませんが、触られることに慣れさせておくと後々のケアに役立ちます。高齢になってからいきなり触ろうとすると抵抗されやすいので、子犬期のうちから徐々に慣らしましょう。

監修/フリッツ吉川綾先生(獣医師、獣医学博士、日本獣医動物行動診療科認定医)

監修/フリッツ吉川綾先生(獣医師、獣医学博士、日本獣医動物行動診療科認定医)
動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。東京都文京区なないろ動物病院(一般診療、行動診療)などに勤務。動物の心身の健康と、飼い主様のより幸せで充実したペットライフをサポートしている。そのほか、獣医動物行動学に関する研究、専門書の執筆、翻訳も。

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