パピヨンがかかりやすい病気とその症状、飼い主ができる予防法を見ていきましょう。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は膝のお皿の部分である膝蓋骨が内側に脱臼してしまう状態で、小型犬全般に起こりやすい疾患です。先天的に大腿骨にある滑車溝が浅いことで、膝蓋骨が外れやすくなるとも言われています。予防方法としては筋肉をしっかりつける、または体重を増やしすぎないことが大切です。
骨折
パピヨンは骨格が小さく骨が細いため、骨折しやすい犬種です。適正体重を維持して骨に負担をかけないようにするほか、カルシウムとビタミンDを摂取させ、骨を強化するのがおすすめです。また、ジャンプや高低差のある部分の上り下りなど、骨に負荷のかかる行動をさせないようにすると良いでしょう。
てんかん
てんかんとは、痙攣や意識障害などの発作が繰り返し起こってしまう病気のこと。脳の異常が主な原因と言われますが、発作が起きる要因はさまざまなので予防が難しいのが現状です。てんかんが見られた場合、すぐに動物病院で精密検査を受けましょう。
乳歯遺残
乳歯遺残は乳歯と永久歯が入れ替わる際に、乳歯が抜けずに残ってしまう症状です。小型犬に起こりやすい疾患で、放置すると歯肉炎や歯石蓄積などにつながります。見つけたらすぐに抜歯処置を行いましょう。
進行性網膜萎縮症
網膜が徐々に萎縮することで、視覚低下が起きる疾患です。遺伝性疾患のため、予防法がありません。まず暗いところでの視野が低下するため、夕方の散歩で物にぶつかるといった症状が見られた際は進行性網膜萎縮症が疑われます。
眼瞼内反症
まぶたが眼球側に入り込んでしまう疾患です。内転したまぶたが眼球を刺激することで、涙が出たり、充血や角膜炎が起きたりなどの症状が見られます。予防方法はほとんどありません。症状が見られた際には外科的手術で内反したまぶたを切除します。
黒色被毛毛包形成不全
黒色部分の被毛が成長しない疾患で、パピヨンをはじめダックスや雑種犬によく見られる疾患です。毛のメラニン色素の形成や沈着に異常が起きるのが原因と言われています。遺伝性疾患が疑われており、予防法がないのが現状です。黒色の被毛のみ脱毛が起き、フケのような鱗屑(りんせつ)が見られる場合もあります。
遺伝性難聴
遺伝性の聴覚障害です。耳が聞こえづらかったり、片方のみ聞こえたりなどの症状が見られます。なかには全く聞こえないケースもあります。予防法がないため、定期的な検査を受けることをおすすめします。
監修/林美彩先生(獣医師)
chicoどうぶつ診療所所長
酪農学園大学卒業
獣医保健ソーシャルワーク協会、獣医ホリスティック医療研究会所属
大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。テレビ番組への出演・協力のほか、「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)などの著書がある。
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