犬の鼻が乾燥するのは病気?主な原因と注意したい症状について解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬の鼻が乾燥するのは病気?主な原因と注意したい症状について解説【獣医師監修】
犬の鼻が乾燥するのは病気?主な原因と注意したい症状について解説【獣医師監修】

目次

  • ・ 犬の鼻が湿っている理由とは?
  • ・ 犬の鼻が乾燥する原因は?
  • ・ 犬の鼻が乾燥していたら動物病院へ行くべき?
  • ・ 犬の鼻が乾燥している時の対処法は?
  • ・ 犬の鼻が乾燥している時の治療法とは?
  • ・ 鼻が乾燥しやすい犬種・年齢・性別はあるの?

犬の鼻は基本的に湿っているものですが、時として乾燥してカサカサになっていることがあります。犬の鼻が乾燥するのには何か原因があるのでしょうか。また、乾燥した鼻が病気などのサインになっている可能性はないのでしょうか。犬の鼻が乾燥する原因や対処法などについてchicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。

犬の鼻が湿っている理由とは?

通常、犬の鼻は湿った状態であることがほとんどです。犬の鼻が湿っているのは、鼻の奥にある「外側鼻腺」という分泌腺から分泌物が出ているため。この分泌物が少ないと感じたときには、自ら舌で鼻を舐めて湿らせることもあります。


この外側鼻腺からの分泌物は、私たち人間でいう汗のようなものです。暑いときに分泌量を増やすことで体から熱を逃がし、体温を下げる役割を果たしています。


また、鼻が湿っている状態を保つことで、犬にとっての大事な五感である嗅覚がしっかりと働くようになります。分泌物で鼻が湿っていることで、空気中の匂いの分子が吸着し、匂いを感知しやすくなるのです。

犬の鼻が乾燥する原因は?

犬の鼻の乾燥は、生理的な原因によるものであることも、背景に病気が隠れていることもあります。なぜ犬の鼻が乾燥するのか、ここで確認しておきましょう。


空気の乾燥

人間の肌が空気の乾燥によって水分を奪われるように、犬の鼻も乾燥した空気を吸い込むことで乾くことがあります。この場合はあまり心配する必要はありませんが、空気の乾燥は犬の皮膚炎や呼吸器疾患など別の病気の原因となることもあります。加湿器などを使い、部屋の湿度を調節してあげましょう。


老化

犬が年を取ると、代謝が落ちてきたり、外側鼻腺からの分泌物の量が減ったりするため、鼻が乾きやすくなります。鼻が乾くこと以外に特に異常が見られない場合は、老化による症状のため、特に注意する必要はありません。


睡眠

犬が眠っている間は、嗅覚を研ぎ澄ましたり、体温を下げたりする必要がなくなるため、外側鼻腺からの分泌物が少なくなります。また、自分で鼻を舐めることもできなくなるため、結果として鼻が乾きます。睡眠中の鼻の乾燥は一時的なものなので、心配する必要はありません。


発熱

感染症や熱中症にかかって熱が上がったときには、体内に熱がこもることで水分が不足し、分泌物が減って鼻が乾燥しやすくなります。感染症や熱中症は重篤化すると命にかかわるため、食欲はあるか、下痢や嘔吐、咳やくしゃみなどの症状がないか注意して観察し、体調に異常が見られる場合はすぐに動物病院を受診しましょう。


脱水

脱水によって体の水分自体が足りなくなると、分泌物が少なくなり、鼻が乾燥します。運動後の軽い脱水くらいであれば特に心配する必要はありませんが、病気による脱水症状が疑われる場合は要注意です。重度の下痢嘔吐、歯ぐきの乾燥、皮膚を摘んでみて弾力がなくなっている、衰弱して動かなくなるなどの症状が見られた場合は、すみやかに動物病院を受診してください。


皮膚疾患

鼻も皮膚と繋がっているため、皮膚に炎症が起きていたり、保湿力が落ちたりすることで乾燥します。また、夏場の紫外線による日焼けで鼻が乾燥することもあります。


アレルギー

目や鼻にアレルギー症状が出て炎症反応が起こることで、「鼻涙管」と呼ばれる管が詰まると、鼻まで分泌物が流れずに鼻が乾燥してしまうことがあります。この場合は、動物病院で投薬などの適切な治療を受けることで改善できます。

犬の鼻が乾燥していたら動物病院へ行くべき?

犬の鼻は湿っていることが多いため、愛犬の鼻が乾燥していると「病気かもしれない」と不安になってしまう人もいるでしょう。確かに、犬の鼻が乾燥している状態は病気のサインであることもあります。どうしても判断に迷うときは、「鼻が乾いている」以外に、体調にどのような変化があるのかをよく観察してみましょう。


心配の要らない場合

愛犬が元気でしっかり食欲がある場合、寝ているときや運動後など一時的に乾いている場合は、鼻が乾燥していても特に問題ないと考えられます。運動後など軽い脱水が疑われるときは、たっぷりと水を飲ませてあげましょう。


病院を受診すべき場合

以下のような症状が出ている場合は注意が必要です。

・元気がなくぐったりしている

・食欲がない

・発熱している

・下痢や嘔吐

・歯茎などの粘膜が白っぽくなる


鼻が乾燥しており、元気がない、食欲がない場合は病気が隠れている可能性もあります。特に、ぐったりしている、激しい下痢や嘔吐が見られる、発熱している、歯ぐきなどの粘膜が白っぽくなるといった症状は脱水のサインです。脱水が起こると全身を巡る血液の量が減り、酸素が全身に行き渡らなくなり、酸欠状態に陥ります。さらに重度になるとショック症状を起こし、死に至ることもあります。すぐに動物病院を受診しましょう。


皮膚疾患やアレルギーによって鼻が乾燥している場合は、緊急性はないものの治療が必要です。皮膚疾患やアレルギーを放っておくと、症状が長く続いて愛犬がストレスを感じたり、症状が悪化してしまったりする可能性もあります。できるだけ早い段階で動物病院に連れて行ってあげましょう。

犬の鼻が乾燥している時の対処法は?

では、犬の鼻の乾燥が生理的なものである場合はどう対処すればいいでしょうか。自宅で飼い主ができる対処法を紹介します。


保湿クリームを塗る

老化などによって慢性的に鼻が乾燥している場合、ひび割れが見られることがあります。ワセリンや犬の鼻用保湿クリームを塗って直接潤いを与え、乾燥を和らげてあげましょう。人間用の保湿クリームは犬にとってよくない成分が入っている可能性があるので、使用する場合は事前に動物病院に相談するようにしましょう。

また、鼻にかさぶたや傷が見られる場合は、老化による乾燥ではなく病気の可能性があります。その場合は動物病院を受診するようにしてください。


部屋の湿度を上げる

部屋の空気の乾燥によって鼻が乾くこともあります。加湿器などを使用し、部屋の湿度を上げてあげましょう。


水分を与える

水を飲ませたり、水分の多い野菜や果物、ドライフードに水をかけたものを食べさせたりすることで、体の内側から水分を補いましょう。細胞自体が潤うようになるため、鼻の状態も変わりやすいと考えられます。


体を冷やす

発熱によって水分が奪われているような場合には、冷房の効いた涼しい場所に連れて行ったり、クールマットの上に寝かせたりして体温を正常値まで下げてあげましょう。発熱が治まれば、体が水分維持しやすくなります。

犬の鼻が乾燥している時の治療法とは?

犬の鼻の乾燥が生理的なものではなく、病気によるものである場合は、動物病院で治療を受ける必要があります。例えば、脱水が見られるときには脱水補正として点滴などの処置、アレルギーや皮膚疾患がある場合にはそれに対しての治療を受けることになります。

鼻が乾燥しやすい犬種・年齢・性別はあるの?

鼻の乾きやすさは犬種、性別とは特に関係していないと言われています。ただし、シニア犬は、分泌物の現象や皮膚の保湿能力の低下などから鼻が乾きやすくなる傾向があります。シニア犬以外で常に鼻が乾いており、その他になんらかの症状が見られる場合は、動物病院を受診して病気が隠れていないか診てもらいましょう。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家の コメント:

犬の鼻は外側鼻腺からの分泌物で湿っているのが通常で、眠っているときや空気が乾燥しているときなどの生理的な原因があると乾燥することがあります。また、発熱や脱水、皮膚疾患やアレルギーなど、なんらかの病気が背景にあって鼻が乾燥するケースも。愛犬に元気や食欲がなかったり、鼻の乾燥以外の症状が見られたりする場合は、すみやかに動物病院を受診するようにしてください。


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