犬の多頭飼いって大変?注意点と必要な準備、相性や先住犬へのケアなどについて解説【獣医師監修】

犬の多頭飼いって大変?注意点と必要な準備、相性や先住犬へのケアなどについて解説【獣医師監修】

犬好きなら一度は夢見る多頭飼い。「可愛い犬たちに囲まれて、賑やかに過ごしたい!」と憧れたことはありませんか? しかし、1頭飼いに比べて、多頭飼いにはさまざまな課題がついて回ります。そこで、多頭飼いのメリットやデメリットに加え、法律上気をつけるべきことや2頭目を迎える準備の仕方など、多頭飼いで大切なポイントを、ヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に解説していただきます。

犬の多頭飼いとは?

犬の多頭飼い「犬の多頭飼い」と聞くと、犬を4頭も5頭も飼っているようなイメージですが、実際は2頭以上の犬を飼育することを「多頭飼い」と呼びます。2頭の飼育であっても、1頭飼いと比較して配慮すべき点が格段に増え、2倍以上の手間やお金がかかるようになるのです。

犬の多頭飼いを始める理由・きっかけは?

犬の多頭飼いを始めた理由やきっかけは、人それぞれのようです。実際に多頭飼いを行っている方々に伺ったところ、以下のような回答が得られました。

  • 先住犬の遊び相手が欲しかった
  • 多頭飼いに憧れていた
  • 保護犬を引き取ったなどの縁でもう1頭迎えた
  • 愛犬の子を残したかった

犬の多頭飼いのメリットとは?

遊ぶ2匹の犬犬の多頭飼いは、犬と飼い主にとって次のようなメリットが考えられます。


犬同士で遊べる

多少飼い主が忙しくても、犬同士でコミュニケーションを取って遊んでくれます。仲間がいれば、留守番の時の寂しさも軽減されます。


犬の仲間が増えて安心感が生まれる

犬は元々群れで暮らす動物です。仲間と暮らすことで安心感が生まれて問題行動が軽減されることがあります。


犬がルールやマナーを早く覚えられる

先住犬が後から来た子犬の世話をしてくれたり、子犬が先住犬を見習ってルールやマナーを覚えたりすることがあり、しつけがグッと楽になる可能性があります。


飼い主が癒やされる

複数の犬たちが一緒に遊んだり、お互いを思いやったりする姿を見ているだけで、飼い主は幸せな気分になれます。家族内で話題が増えるというメリットもあるでしょう。

犬の多頭飼いのデメリットとは?

イタズラする2匹の犬犬の多頭飼いはメリットばかりではありません。次のようなデメリットも考えられるのです。

 
犬同士の相性が悪い可能性がある

後から来た犬と先住犬の相性が悪くてケンカが多くなると、犬がケガをしたり、近所迷惑になるリスクがあります。また、犬に強いストレスかかり、病気や問題行動の引き金になるかもしれません。

 
犬が入院した場合などに、残された犬が不安になる

犬は基本的に仲間を大切にする生き物です。もし、入院などの事情で1頭が不在になった場合、残された犬は強い不安に襲われてしまいます。

 

悪いことも覚えるのが早い

ルールやマナーを覚えるのが早い半面、過剰に吠える、盗み食いをする、禁止された場所に飛び乗るなど、悪い習慣やイタズラも先住犬から学んですぐにマネしてしまいます。

 

先住犬が焼きもちをやく

しつけなどで飼い主と後住犬が関わる時間が長くなるため、先住犬が「飼い主を取られた」と勘違いする可能性があります。すると、飼い主の気を引くために問題行動を起こしたり、ストレスで体調を崩したりしてしまうことがあります。

 

災害時の受け入れ探しが難しい

災害時に設置される避難所で、ペットの同行を断られることがあります。避難所のキャパシティの問題もあり、多頭飼いの場合は避難先を探すことがさらに難しくなると考えられます。

犬の多頭飼いにおすすめの頭数は?

散歩頭数で迷っているのであれば、2頭がおすすめです。3頭以上になると、2頭よりもさらに複雑な配慮が必要になります。


3
頭以上の犬の多頭飼いで懸念されること

  • 災害時に避難するときに人手が必要になる
  • ケンカが増える
  • 無駄吠えが増える
  • 散歩が大変

多頭飼いに向いている犬種は?

2匹の犬多頭飼いに向いている犬種や向かない犬種があります。また、行動パターンや好みが似ていて、ケアすべきポイントも同じなので、多頭飼いは同じ犬種同士で行うのがおすすめです。


多頭飼いに向いている犬種

狩猟犬はもともと複数頭で協力して作業する性質があるため、比較的多頭飼いに向いている犬種と言えます。


多頭飼いに向かないかもしれない犬種

小動物を狩るように育種されたテリアタイプの犬は、小動物や子犬を追いかけて殺すという本能を制御できない場があるため、多頭飼いに向かない可能性があります。また、サイトハウンドは走り回る生き物を追いかけたいという衝動を感じやすく、子犬が標的になることもあります。さらに、闘犬など他の犬に対して攻撃的になるように育種された犬種は、他の犬と仲良くならない場合があるため、向かないかもしれません。しかし、いずれも飼い主がリーダーシップを発揮して問題行動を抑制することができれば、問題は予防できるでしょう。

犬の多頭飼いで法律上の問題はある?

2020年6月に動物愛護法が改正され、動物虐待に関する罰則が厳しくなるなどの内容が改訂されました。

その中に「多頭飼育崩壊」を防ぐための条文や罰則も盛り込まれています。「適正を欠いた密度」で動物を飼育して衰弱させた場合なども「虐待」と認められ、法律に基づき1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。また、自治体によっては、ある一定数以上の犬を飼う場合に届け出が必要になっています。

犬の多頭飼いをする前に必ず考えておかないといけないことは?

犬の多頭飼いを始める前に、どのようなことを考えておくべきでしょうか。


犬同士の相性

活動的な犬とおとなしい犬の場合、おとなしい犬がペースを乱されて疲れてしまうことがあります。そのため、活動のペースが似ている犬同士のほうが上手くいくでしょう。


犬の性別

犬の性別も考慮すべきです。オス同士は最も問題が起きやすく、メス同士も若い犬が成熟するときに仲が悪くなることがあります。また、最新データによると避妊去勢によって問題が緩和するということがわかっており、避妊去勢された犬同士のほうが比較的問題が少なく仲良く過ごせる可能性があります。2頭目を迎えるときは先住犬の避妊去勢も検討しましょう。


先住犬の性格をしっかり見極める

先住犬が散歩の時などに他の犬に対して友好的な場合は、後住犬とも仲良く生活できるでしょう。しかし、他の犬に対して警戒したり吠えたりすることが多いようであれば、注意が必要です。また、飼い主への依存心が強い場合も新しい犬を受け入れられず、ストレスをためてしまう恐れがあります。


お金と時間を費やす覚悟

2頭以上になると、フードはもちろんトイレやベッド、クレートなども別に用意する必要があります。トリミング費用やワクチンなどのケアにかかる費用も一気にかさみます。これらの費用を、犬が生涯を全うするまで十数年にわたり継続して支払うことができるか、十分に検討しましょう。

犬の多頭飼いを始める方法は?

対面する2匹の犬多頭飼いをする場合は、まず1頭を飼い、その子が2歳以上になってから2頭目を迎えるのがおすすめです。タイミングをずらすことにより、それぞれに十分なしつけの時間を取ることができます。後住犬を迎える際は、しっかり計画を立てて徐々に慣らしていきましょう。


後住犬と先住犬の初対面の流れ

1.中立の場所を探す

どちらの犬の縄張りでもない、柵で囲まれた屋外スペースが最適です。ペットを飼っていない知人の庭や、人気の少ない公園などがベストです。


2.犬の様子を注意深く観察する

犬のボディランゲージから気持ちを読み解きます。動かなくなったり、尻尾を下げたり、足の間に挟んだりするなどの仕草は、緊張している証拠です。どちらかの犬が緊張していたり、逃げたりしようとする場合は、まだ犬同士を近づけてはいけません。


3.においを確認させる

犬の場所を入れ替え、地面に残ったにおいを嗅がせることでお互いの情報を探らせます。犬同士がリラックスしているようなら並んで歩き、徐々に距離を縮めます


4.オフリードで遊べるようにする

友好的な様子なら、柵の中でリードを外して遊ばせます。興奮しすぎないように、数分経ったらリードに繋ぎ、再び並んで歩かせます。


5.家に連れて帰る

家に入れる前に先住犬だけ散歩に行かせ、後住犬が家の中をチェックする時間を作ります。おもちゃなどは隠しておきましょう。一通りチェックが済んだら先住犬を帰宅させます。


6.しばらくは静かに過ごす

犬たちのペースを崩さないよう、しばらくの間は、来客やホームパーティーを避けます。飼い主は犬11頭と個別に触れ合う時間を作りましょう。サークルなどで犬の居場所を分けて“個室”を作ってあげると安心して過ごせます。

先住犬と後住犬を仲良くさせるために飼い主ができることは?

犬とベッド先住犬と後住犬が仲良くなるには、飼い主の配慮がとても大事です。次のようなことに気をつけましょう。


食事を見守る

食事は別々の場所で与えるようにして、食事が終わるまで見守ります。食後はすぐにお皿を回収しましょう。


1
頭ずつベッドを用意する

犬が安心できる場所であるベッドは1頭につき1つ用意します。


留守番の時は隔離する

留守番のときは、別々の部屋で待たせるかサークルなどで居場所を仕切ります。


遊び方を工夫する

犬同士が遊んでいるときは小まめに休憩を挟みます。また、後住犬が来た初日におもちゃを全て見せてしまわず、1つずつ数日かけて紹介するようにしましょう。

保護犬を後住犬として迎える際に気をつけるべきことは?

保護犬は過去に虐待を受けた体験などから、攻撃的だったり極端に臆病だったりすることがあります。愛情深く接することで徐々に心を開いて穏やかになるため、保護犬を後住犬として迎える場合は、焦らずコミュニケーションを取り続けましょう。

他の動物も含めた多頭飼いをするときの注意点は?

猫やフェレットなどの狩りをする動物と、身体が小さな子犬を一緒に飼う場合、不慮の事故が懸念されます。留守番の時は部屋を仕切るなどの工夫をしましょう。飼い主が在宅しているときでも注意が必要です。片方が遊んでいるつもりで飼い主からもそのように見えても、片方は強いストレスを感じていることがあります。


また、小鳥や観賞魚などは、おもちゃにされたり食べられてしまう恐れもあるため、異なる部屋で飼育しましょう。

犬の多頭飼いに成功するためのポイントは?

犬の多頭飼い成功の秘訣は「飼い主がリーダーシップを取って犬の行動をコントロールすること」です。問題行動が多少現れたとしても、飼い主が積極的に関わる姿勢を持つことが大切です。


また、犬同士がケンカを始めても、リードを強く引っ張るなどの罰を与えてはいけません。罰を与えられた犬は、「他の犬が近くにいるときは、罰を受ける」と間違って学習してしまうため、不安感が強くなって問題行動を引き起こす可能性があります。

専門家のコメント:

多頭飼いは「可愛い」「憧れる」だけでは上手くいきません。覚悟と入念な準備の元に、先住犬も新入り犬も健康で幸せに暮らせるように手間を惜しまず、心を砕くことで、飼い主自身もハッピーなペットライフが送れるのではないでしょうか。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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