【獣医師監修】犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説

【獣医師監修】犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説

病気・健康

2022年10月28日 更新 (2020年12月29日 公開)

ヤマザキ動物看護大学准教授 博士(歯学)。動物病院にて、予防歯科を推進すべく、診療および歯みがき教室等も行っている。

【獣医師監修】犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説

そもそも犬が虫歯になることはあるの?

犬の虫歯は非常に稀で、「犬に虫歯はない」と考えられていたほどです。そのため、獣医学でも人間の歯科のような研究はされていませんでした。犬に虫歯が少ない理由としては以下の点が挙げられています。


歯の形が人と違って尖っている

人と犬では歯の形状が違います。人の奥歯は臼歯と呼ばれ、臼の形をしていますが、犬の奥歯は一部の歯を除いて薄く尖っており、奥歯は一部を除いて、いわゆる虫歯菌がたまりにくい形となっています。


食事に糖質が含まれていることが少ない

虫歯の原因は糖質にあるとされています。人間の食事には小麦や白米など糖質の多いものが多く含まれますが、犬の食事にはその糖質が含まれている食事が少ないため虫歯になりにくいとされています。


唾液にアミラーゼがないため、デンプンを口にしても糖質に変化されない

人間の唾液にはアミラーゼという酵素が含まれており、このアミラーゼによってデンプン等を消化することができます。口内に常在する菌によってこの糖分が分解されて、虫歯の原因となる「プラーク」という物質が生み出されます。プラークとは歯の表面に付着する細菌のことです。この消化酵素が犬にはないため、プラークが生み出されず、虫歯になりにくいとされています。


ph値が人より高い

ph値が低いほど、口内が酸性傾向になり、歯が溶けやすく虫歯になりやすいと考えられています。糖分が多い飲料などを繰り返し飲んでいると酸性でいる時間が長くなり、歯が溶け出しやすくなります。

犬が虫歯になってしまった場合、どうすればいいの?

犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説_犬の口犬が以下のような状態、サインを見せた場合は虫歯の可能性がありますので、獣医師の診察を受けましょう。

 

・息が臭い

・歯の色が茶色や黄色に変色している

・歯に穴が空いている、歯茎から出血している

・歯の一部が欠けていたり、変形したりしている

・口の片側だけでご飯を食べている

 

また気になる箇所があったら写真を撮っておくようにしましょう。診察の手助けになるかもしれません。

犬の虫歯の治療法や費用はどうなっているの?

犬の虫歯の治療法は、人と同じ初期治療、歯周外科治療、再建治療から成り立っています。それぞれの大まかな内容を紹介します。

 

・初期治療

虫歯を削り取ったり、患部に詰め物をしたりします。虫歯がひどい場合には、歯の神経を抜いたり歯そのものを抜いたりします。

 

・歯周外科治療

歯周病を改善させるための治療です。歯周病の原因である歯垢や歯石を手術によって取り除きます。

 

・再建治療

歯を失った際に、入れ歯などで代用させる治療です。

実際に虫歯治療を行うのか、歯肉炎・歯周炎治療を行うのか、抜歯などを行うのか、などそれぞれの症状や状態に合わせて総合的に検討が必要です。麻酔をかけてから診断をして初めて症状が分かるという場合もあるので、事前に費用を確定させるのはなかなか難しいところです。

費用は症状や病院にもよりますが30,000円前後だと言われていますが、事前に、飼い主さんの要望等も伝え、よく相談して下さい。犬の虫歯の場合、治療の際にほとんどが全身麻酔となります。ただし全身麻酔は負荷が高いため、なるべく予防を徹底しましょう。また、同じ状況が繰り返されぬよう、処置後の予防法についても確認しておくことが重要です。

虫歯だけじゃない!犬に多い口の中のトラブルは?

犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説_口を開ける犬犬は虫歯になりにくいのですが、口の中のトラブルで多いのが歯肉炎・歯周炎です。歯肉炎・歯周炎になると、歯肉の赤み(発赤)や腫れ(腫脹)、血が出る(出血)、重度の場合は口臭が強くなり、膿が出ることもあります。また、歯根部まで炎症が及ぶと、口から鼻に通じて、くしゃみや鼻水が出たり、頬や目の下の皮膚にも影響が出たりして、あたかも皮膚炎のように血や膿が出てくることがあります。

犬が歯周病にかかる原因は?

歯垢が歯肉溝(歯周ポケット)に溜まり、感染がおこることで歯周病が進行します。歯垢自体は細菌のかたまりであるため、放置しておくと歯ぐきに炎症を起こしたり、歯を支えている周辺組織が破壊されてしまったりします。

犬の歯周病のサインにはどんなものがあるの?

犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説_歯みがき前の犬歯周病のサインを見つけるためにも、口腔内を定期的にチェックしましょう。ためにも、口腔内を定期的にチェックしましょう。

 

歯肉炎・歯周炎については

・歯肉の赤み(発赤)や腫れ(腫脹)

・血が出る(出血)

・重度の場合は口臭が強くなり、膿が出る(排膿)

といった症状が見られます。

 

また、歯根部まで炎症が及ぶと、口から鼻に通じて、くしゃみや鼻水が出たり(口鼻瘻)、頬や目の下の皮膚に影響が出てしまい、皮膚炎のように血や膿が出てきたり(歯根膿瘍)することもあります。

 

ただし、人と違って、犬は虫歯や歯周病になっても違和感を示さないことがあります。ごはんを食べない、元気がない、好きなおやつを口にしない、フードを口の片方だけで食べているといった状態が続く場合、虫歯とは断定できなくても、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

虫歯や歯周病にかかりやすい犬種は?

犬の虫歯については不明点が多いため断言できませんが、歯周病にかかりやすい犬は、人と同じで、歯並びやかみ合わせに問題がある犬種と言えます。チワワやマルチーズなどの小型犬、シーズーやフレンチブルドッグなどの短頭種が該当します。口元が長い犬種でも、高齢のミニチュアダックスフンドの歯周病の症例も数多く報告されています。

犬の虫歯や歯周病の予防や注意点は?

犬にも虫歯はある?治療法や予防のためのケア、その他にも注意したい口の中のトラブルについて解説_口を開けている犬虫歯や歯周病の予防として、日頃の口腔ケアをオススメします。まずは、お口の周りをさわって、嫌がったり痛がったりしないか?を確認しましょう。それができたら、犬のくちびるをめくり、人の手指を犬のお口にいれます。ワンちゃんが少しでも嫌がったら、すぐに中止しましょう。口腔内を見せてくれるようだったら、前歯、犬歯、奥歯まで見て、状態をチェックします。最終目標は歯ブラシでのブラッシングができるようになることです。

 

また、さまざまな口腔ケアグッズがありますが、使用を嫌がるワンちゃんもいます。デンタルグッズやフードおやつ等も日々開発、改良され、市販されていますが、動物病院専売のものなどもあるため、かかりつけの動物病院で相談の上、安心安全なものを選択するようにして下さい。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。