2023年09月13日 更新 (2023年09月12日 公開)

トイプードルの愛犬のカットを担当する飼い主・ななえさん
めずらしいカットをしたトイプードルのちろるちゃんを知っていますか?

『New York Post』というメディアに取り上げられたり、SNSのコメント欄には様々な言語でのコメントが溢れたりと、世界中の人からも注目を浴びています。
ちろるちゃんのInstagramのフォロワーは29万人を超える人気ぶり。海外でも、モフモフでまんまるな姿の通り、“mohu”という愛称で親しまれ、「世界で最もかわいい犬」と評されたされたこともあるほどです。
「ちろるの個性を一番引き出せるカットがしたかったんです」
そう話してくれたのは、ちろるちゃんの飼い主であるななえさん。幼少期からワンちゃんが大好きだったというななえさんは、ちろるちゃんを迎えたことをきっかけに、専門学校への進学を決めトリマーの資格を取得しました。
実は、このちろるちゃんの個性あふれるカットは、飼い主のななえさん自ら生み出したのです。

あまりSNSには登場していませんが、ななえさんの家にはもう2匹、トイプードルがいます。この2匹のカットもななえさんが担当しています。

ちろるちゃんのカットのこだわりや、トイプードル3匹を迎えたことによる家族の変化について、ななえさんにお話を聞いてみました。
「もっと愛犬の個性を活かしたい」トリマーの専門学校への進学を決意
トイプードルは、定番といわれる「テディベアカット」や頭を丸くふんわりさせる「アフロカット」、お尻を大きく見せる「おパンツカット」など、さまざまなカットを楽しめる犬種です。
しかし、ちろるちゃんのような顎の毛も長く、胴や足までモフモフしたトイプードルは初めてみたという人も多いのではないでしょうか。

ちろるちゃんのカットの一番のこだわりは、足の形にあるといいます。「鉛筆カット」とななえさん自ら名づけたカットは、通常は足は真っ直ぐな形にカットするところ、鉛筆のように足先に向けて細くなる形をしています。

「ちろるは足が短めなので、その短さを活かしたカットの仕方を探しているうちに『鉛筆カット』に辿り着きました。漫画みたいで可愛いなって。ちろるは鼻が長いのでそのバランスをとるために顎も長くしているんです。この全体のカットのことを私が勝手に『モフカット』と名付けました(笑)」
トイプードルに定番デザイン「テディベアカット」や「アフロカット」など、ちろるちゃんはさまざまなカットに挑戦してみたものの、ななえさん曰くどこかしっくりこなかったそう。
「この子の個性を一番活かせるカットをしてあげたい」
そんな想いから、トリミングの専門学校に通いトリマーの資格を取得しました。いまでは月に1回、ちろるちゃんだけでなく、シエルちゃん、フルールちゃんのカットもななえさんが行なっています。

「シエルは、胴体はモフモフで足はバリカンで落とす『羊カット』にしています。もともと『サマーカット』やおしりに丸みを持たせる『おパンツカット』にしていたのですが、最近少し太ってきたからか似合わなくなってしまって(笑)むしろ、いまの体型を活かしたカットを考えたときに『羊カット』がぴったりかと思いました」

「トイプードルだからこのカット」と決めるのではなく、トイプードルの中でも鼻や足の長さ、目の雰囲気や体の形など、1匹1匹が持つ個性を見た上でカットの仕方を決めるのが、ななえさんの流儀なのだそうです。
「この顔の形だったら、このカットが絶対似合う! っていう絵が、頭の中に浮かんでくるんです。そのカットに近づけられた瞬間が一番うれしいです」
100点はない! 進化しつづける、ちろるちゃんの『モフカット』
トリマーの資格を取得するためには、毎日違うワンちゃんをカットしながら技術を身につける必要があります。
「みんな性格が違うので、噛む子もいれば暴れる子もいるんです。どう接したらおとなしくカットさせてくれるかなと、試行錯誤する日々でした」
専門学校で学ぶデザインや飼い主さんから求められるデザインは、「テディベアカット」や「アフロカット」などの定番カットが多かったそう。しかし、そんな中でななえさんは、ちろるちゃんの『モフカット』を生み出しました。そして、このカットの魅力は、ななえさんの満足だけにはとどまらず、SNSを通じて世界中に広がりました。

「大喜利のように海外の人からいろんなコメントが届くんです。近所の人に似てるとか、家にある椅子に似てるとか(笑)」
中には、トリミングサロンの人から『このカットにして欲しいとお客さんからちろるちゃんの写真を見せられました!』との声まで。
ななえさんが生み出した独特のデザインやセンスは、多くの犬好きの心を動かしています。
「でも、これまで『今回のモフカットは100点だ!』と思えたことがないんですよね。いつもちょっと納得できないところや悔しさが残る部分があって、来月はもっとこうしてみようとブラッシュアップし続けているんです」

犬への熱量に根負け。魅力を知り、多頭飼いするまでに
ちろるちゃんを迎えるまでは、一度も犬を飼ったことがなかったというななえさん一家。初めての愛犬となるちろるちゃんを迎えたのは約7年前、ななえさんが高校生の頃でした。
家族でよく訪れていたという和歌山県にあるテーマパーク『アドベンチャーワールド』には、ワンちゃんとの散歩を体験できるコーナーがあったそう。
「3歳くらいの頃から、毎年通ってはワンちゃんと触れ合っていました。尻尾を振って近寄ってくる姿を見て、どんどん好きになってしまったんです」とななえさん。
当時は犬を飼える物件に住んでおらず、かつお母さんは少しワンちゃんに苦手意識があり、なかなか迎えることができませんでした。ななえさんは、お姉さんと妹がいる3人姉妹。その中で唯一ななえさんだけが「犬を飼いたい!」と主張し続けていました。
犬を飼いたいから引っ越そう! モデルルームを見にいこう! と積極的に犬とのくらしに向けて、両親を誘導。そしてついに、ななえさんが高校生になる少し前、犬OKのお家に引っ越しが決まり、念願のワンちゃん探しが始まりました。
「母も犬を飼った経験がなかったので不安があったようでしたが、私のワンちゃんへの想いやこれまでずっと我慢をしてきたこともあったので、賛成してくれました」
ワンちゃんを迎えるにあたり心掛けたのは、初めてでも飼いやすい「大人しそうな子」を探すことでした。そんな時にペットショップで見つけたのが、クマのぬいぐるみのようなクリクリな目をした1匹のトイプードル、のちのちろるちゃんでした。

「子犬ってこんなに可愛いんだとびっくりしました。ちろるは初めから大人しく腕の中に収まってくれて、抱っこした瞬間、『この子だ!』ってなりました」とななえさん。
比較的大人しめであるとはいえ、お家にやってきたちろるちゃんは元気いっぱいでちょっぴりやんちゃ! 子犬ならではの多少の噛み癖があったそうです。
「お互いが気持ちよく生活ができるように、『噛まれたら目を離さずにダメだよと伝えつづける』など、家族でしつけを徹底するように心掛けていました」とななえさん。そのおかげか、いまでは一切噛むことはなくなり、むしろちょっと歯が触れることすら気にかけるほど、お利口さんに育ちました。
ちろるちゃんを迎えた数ヶ月後。トリミングサロンに連れて行った際、ブリーダーをしている人から『こんな子がいるんですけど、どうですか?』と2匹のトイプードルの写真を見せられたそうです。それが、のちのシエルちゃんとフルールちゃん姉妹でした。

「『いやいや、うちは1匹で十分ですから〜』と母は言っていましたが、正直写真を見て心が揺れていたと思います(笑)」
実際に会いに行き、2匹がわちゃわちゃ仲良く遊んでいる様子を見た結果、2匹とも迎えることとなりました。
念願の愛犬を迎えたことで、外に遊びに行く頻度も減ったななえさん。
「3匹に対する愛情は、私が家族の中で一番強い自信があります(笑)外出していても早く帰って、早く会いたいなあといつも思っています」
見た目も性格もそれぞれ。犬とくらして初めて知った感覚
「犬でもこんなに性格が違うんだって驚きました」と話すななえさん。
ちろるちゃん、シエルちゃん、フルールちゃんは、ベタベタするほどではないですが、たまに寄り添いあったり、程よい距離感を保ちながらくらしているそう。仲良く穏やかに日々を過ごす様子を、ななえさんは、「まるで人間みたい」といいます。

ちろるちゃんは、おっとりとしたマイペースな性格で、自分だけの世界を持っているタイプ。シエルちゃんは甘えん坊で、飼い主に従順な子。そして、フルールちゃんは一番の甘えん坊で誰にでもお腹を見せるほどの社交家です。
「人間の性格がみんな違うように、犬もみんな性格が違うし、私たち人間が言っていることを一生懸命理解しようとしているのが伝わってきます。本当に人間と一緒なんだなあと、犬を迎える前に自分が抱いていたイメージとは全然違いましたね。ちろるたちがいてくれるだけで幸せ。一緒にいるだけで日々、愛情が込み上げてきます」

家族みんなが優しい気持ちになれる、愛犬たちの力
「ワンちゃんとのくらしの魅力は、何気ない日常の中にある」と話すななえさん。
毎日のお散歩や一緒に眠ること、一緒に日向ぼっこをすること。何か特別なイベントはなくても、愛犬たちと毎日一緒に過ごす時間が何よりも幸せなんだとか。

さらには、3匹を迎えてから、家族が一層仲良くなったとも感じています。
というのも、『人間同士が喧嘩していると犬にとってもストレスになる』という情報を知ったななえさんが、愛犬の幸せを考え、これまでずっと家の雰囲気を気にかけてきたそうです。
3匹がくつろいでいる姿を見たり、撫でたりするだけで、「家族みんなが優しい気持ちになれているのを実感します」と話してくれました。
また、ななえさんは、愛犬を通して、トリミングの楽しさやそれを発信することで海外の人と交流できる楽しさを知りました。
『モフカット』は、誕生してから7年近くたった今も研究中とのこと。世界から注目される『モフカット』や他の2匹のカットは、それぞれの成長につれて、今後も進化を遂げていくかもしれません。

「カットも独特だとは思いますが、ぜひちろるの変な動きにも注目してもらいたいです。他の2匹にはない表情や仕草をするんですよね。いつも笑っちゃいます(笑)これからもちろるや愛犬たちの魅力を発信しながら、世界の皆さんと交流できたらうれしいです」