築60年以上の古民家で愛犬3匹と暮らす夫婦。DIYで見つけた、犬との楽しみ方

築60年以上の古民家で愛犬3匹と暮らす夫婦。DIYで見つけた、犬との楽しみ方

くらし

2023年10月13日 公開

愛犬3匹、はな(トイプードル)・マル・ふわり(ビションフリーゼ)と暮らす。大好きなモノづくりと写真のスキルを活かし、愛犬との生活の楽しみ方を提案している。

築60年以上の古民家で愛犬3匹と暮らす夫婦。DIYで見つけた、犬との楽しみ方

犬服の販売やワークショップを行うDIYerの奥野美鈴さん

「すべては勘違いから始まっています。私でもできちゃうんじゃない? って試したくなる性格なんです(笑)」

そう話すのは、愛犬3匹と暮らす、奥野美鈴さんです。

奥野さんは、大のDIY好き。20代は幼稚園教諭として勤務し、幼稚園で使う小物なども自分で手作りしていたそう。その後、離れのみかん小屋を1軒丸ごと改築したのをきっかけに、実家や祖母の家のリフォームも手掛けました。

「当時はまだ『DIY』って言葉もないような時代でしたが、今振り返るとあれがまさにDIYでした(笑)」

「自分の楽しみ」のためにものづくりに取り組んでいた奥野さん。しかしそれはやがて、犬服や犬アイテムなど、「犬と楽しめること」に変化していきました。

犬服の販売やワークショップを行うDIYerの奥野美鈴さん

今では、犬服販売以外にも、ワークショップや犬の着物・エプロン制作などと活動を広げています。築60年の平家も、自分でフルリフォーム。愛犬のための工夫が満載で、どこを切り取っても映えるカフェのようなお家が、テレビや雑誌などでも話題です。

築60年の古民家をリフォームして愛犬と暮らす奥野さん

そんな『愛犬と楽しむ』をモットーに暮らすDIYerの奥野さんに、DIYのきっかけや魅力、これまでの愛犬との歩みについてお話を伺いました。

趣味で作った「愛犬とのお揃い服」に反応が集まる

奥野さんは結婚を機に、実家の縫製工場で覚えた縫い方をレクチャーする、洋裁教室を始めました。

「しばらくして、『おうちがにぎやかになったらいいね』と夫とワンちゃんを迎えることに決めました」

奥野家の新しい家族の一員として、トイプードルのハナちゃんを、その1年半後にはビションフリーゼのマルちゃんを迎えました。予想通り、愛犬たちは夫婦二人での暮らしに潤いをもたらしてくれました。

トイプードルのハナちゃん(右)とビションフリーゼのマルちゃん(左)
トイプードルのハナちゃん(右)とビションフリーゼのマルちゃん(左)

そんな愛犬たちとのくらしの中で、奥野さんは「洋裁教室で発生する端切れ布で、犬とお揃いの服が作れるのでは?」と思いつきます。

早速、リネン生地でシャツなどを簡単に作り、ハナちゃんとお揃いの洋服を着てお散歩に行きました。すると、いつも以上に犬仲間から声をかけられたそうです。

趣味で作った「愛犬とのお揃い服」

「はじめは私だけが着せたいのかな、って思っていたんですが、周りの犬友の反応を見て、『こんなにも愛犬と一緒にオシャレを楽しみたいと考えている人がいるんだ!』 と実感しました」

愛犬に服を着せてみると家族みんなが笑顔に

「愛犬に服を着せてみると家族みんなが笑顔になります。また、その笑顔を見たハナもとても嬉しそうでした。こうしてお揃いの服を着るだけで、笑顔がどんどん広がっていくことに喜びを感じました」

やがて奥野さんは、犬服のインターネット販売に向けて準備を始めます。

犬服だけにこだわらない。愛犬とのくらしの幅広い楽しみ方を提案

2017年1月1日、「ワンワン」の日に、オンラインサイト『inun(アイヌーン)』をオープンしました。同年7月には産業省が主催する、大阪府のビジネスコンテストにも出場を果たします。

「服を作ることが得意で、犬服の制作ももちろん好きだったのですが、私のゴールは『服を売ること』ではありませんでした。コンテストでいろんな方からアドバイスをいただくうちに、いち愛犬家として、私は『犬×〇〇』の楽しみ方を広げていきたい、ってことに気づいたんです」

その後、奥野さんは着物の生地を売りたいという方と出会い、一緒に犬用着物も作り始めます。ワンちゃんでも着付けやすいマジックテープの着物です。

犬用着物を作成・販売

「とても綺麗な柄の布を見せていただき、犬の着物の構想が浮かびました。伝統的なつるし雛(びな)を作っている作家さんのチームと組むことになり、そういった方々の技術にもスポットを当たる機会を作れたらなと思ったんです」

奥野さんが犬のサイズに合わせた型紙を作り、地元の縫い子さんたちが本格的な着物を仕上げる、という形で200着ほど販売しました。現在では、振袖の犬用リメイクなども行っています。

振袖の犬用リメイク ママ振り

奥野さんのDIYは、そのあとも広がりを見せます。愛犬用エプロンやスヌード 、ティピーテントなど様々なアイテムのレクチャーをする、DIYワークショップの講師も3年ほどつとめました。

犬関連DIYのワークショップ講師を務める 奥野美鈴

「これまで私は家で、愛犬とペアで着られるような普段着を主に作ってきました。でも、成長とともに、うちの子たちはあまり服に袖を通したがらなくなりました。そこで、『服が苦手な子でも楽しめるもの』と考えて、犬の小物を作り始めたんです」

犬のエプロンのおかげで、コロナ禍でも人との繋がりを感じられた

コロナ禍での外出制限に伴って、一時は売れ行きが落ちてしまった犬服の販売。服=お出かけのものというイメージがあったからです。

しかし、そのタイミングで犬のエプロンや小物の販売を始めたことで、これまで以上に奥野さんが販売する犬アイテムに興味を持ってくださる方が増えました。

犬用エプロンを販売

「コロナ禍は人となかなか会えず、気持ちが塞がってしまいがちでしたよね。だからこそ、おうちで着るエプロンを広めたいと思いました。窮屈なおうち時間も、かわいらしいエプロンがあれば、愛犬と一緒に楽しく過ごせます」

それから、奥野さんは、期間限定でイラストレーターさんやコーヒーショップさんとコラボして愛犬が店長のお店屋さんごっこのセット『#ハナマルカフェプロジェクト』も販売しました。これさえあれば、いつでもお家でうちのこカフェがオープンできる、お得なキットです。

#ハナマルカフェプロジェクト コロナ 犬
カフェエプロンとA4似顔絵フレーム、マグカップ、ドリップ珈琲パックのセット

「お店やさんごっこって、子どもの頃ワクワクしましたよね。大人になっても愛犬と一緒に楽しむ機会になったらと思い、始めました」

『#ハナマルカフェプロジェクト』は1年間で130個以上売り上げ、飼い主さんたちから「うちではこんな風にして楽しんでいます!」などと様々なおうち時間の様子が届きました。

「コロナ禍は、人との繋がりが遠くなってしまう印象が強いですが、このエプロンのおかげで、私は人との繋がりがより感じられる期間になりました。制限も多く苦しい空気の中でも、楽しくいられたのは愛犬と愛犬の小物やエプロンのおかげです」

古民家もDIY! 家全体が、愛犬も映える撮影スポットに

愛犬と暮らす中で、インスタグラムを活用するようになり、写真を撮ることにもハマった奥野さん。起業の際には、商品をより魅力的に見せるために本格的なカメラの勉強もしました。

「外出が制限されていた時期は、写真を撮るのも家の中でしかできませんでした。そうなったときに、じゃあ家に撮影スポットを作ったらいいんじゃない? と、思ったんです。そのうち、自宅のどこが映り込んでも写真に映えたら、もっと楽しいかもって」

古民家もDIY! 家全体が、愛犬も映える撮影スポットに

奥野さんは、コロナ禍の「おうち時間」を使って、築60年の平屋を自らの手でリノベーションをしました。古さを生かした“昭和レトロ”がコンセプトになっています。

築60年の平屋を自らの手でリノベーション

少しずつ時間をつくっては、思いのままにDIYをした自宅。コロナの時期に改良を重ね、愛犬との楽しみ方を追求し、「自分の家が好き」だと再認識できたそうです。

愛犬と暮らすこだわりの自宅

押入れをぶち抜いて空間を作ったり、お風呂にタイルを貼ったり、キッチンを見せるカウンターにしたりと、オシャレな工夫が至るところに散りばめられています。

まるでカフェのような内装ですが、奥野さんが最も大切にしているのは愛犬と住むうえでの「安全性」です。床材の選び方や植物の配置にもこだわっています。

「床は、愛犬が滑りにくい素材を選んでいます。また、床に物を置かないように意識しています。グリーンの観葉植物などを置く時も、基本的には吊るすスタイルです。どうしても床に置かなければいけない大きな鉢の場合には、鉢カバーを作って、対策をしています。愛犬たちが怪我したり誤飲したりしないのが1番です」

自分のためから“愛犬のため”に軸が変わっていった

愛犬とのくらしが始まるまで、「自分の楽しみ」のためにDIYに取り組んでいた奥野さん。しかしそれはやがて、DIYの軸が「犬と楽しめること」へと変化していきました。

「生活に犬が加わったことで、価値観が変わったんです。SNSをフォローしてくださっている方には犬オーナーさんが多く、作った物に、共感や喜びのお声をいただけるようになりました。これまで自己満足でしかなかった自分のものづくりが、『誰かのためになる』って嬉しいですよね。すごく励みになります」

奥野さんご夫婦と愛犬トイプードルとビションフリーぜ

「DIYに失敗はない」人も犬も楽しむ、勘違いマインド

自宅の庭に、愛犬が店主の簡易カフェを設立

「私の座右の銘は『お手は宝』です。この言葉は、祖母の口癖だったんです。祖母は器用な人で、野菜などの農作物やお花、料理やおやつ、お裁縫、編み物、家具づくりまで。なんでも自分でやる人でした。そんな祖母の姿を見て育ったので、本当に『魔法の手』に思えました」

“手”さえあれば、なんでもできる。

縫製工場を営む両親のもとに生まれた奥野さんは、幼い頃はおばあちゃんと過ごす時間が多く、おばあちゃんの教えを存分に受け継ぎました。

おばあちゃんのところに行くと、幼い奥野さんと一緒に何か遊べるようにみかん箱など用意してくれていたのだとか。そのみかん箱を積み重ねたりして、遊んでいました。

「この経験があって、自然と『アイディア次第でなんでも楽しめる』という考えが身についたのかもしれません。おかげで何に対しても、それって私でもできちゃうんじゃない? って試してみたくなる性格になりました。すべてのものづくりは私の勘違いから始まっているんです(笑)」

DIYの秘訣は「勘違い」。自分でもできると思うこと。

「DIYって聞くといちから何かを生み出さないといけないと思ってしまいがち。でも、既製品にペンキを塗るとか、カラーボックスに蓋をつけてみるとか、簡単なこともDIYです。オリジナル感を出せたらよし! って感じで、自分を褒めてあげましょう(笑)。楽しく取り組んで、達成感を味わうことが大切です」

ペンキで塗った。
蓋をつけてみた。
椅子を組み立ててみる…お、いけるいける!
じゃあ下駄箱を作ってみよう!

こうして少しずつ成功体験を積み重ねてできたのが、今の奥野さんの自宅です。

愛犬と自宅をリノベーションする奥野さん

DIYに限らず、犬服づくりに関しても同じです。まずは既製品のリメイクからでも始められます。思い出の服や気に入ったデザインの服を愛犬用に切り抜くだけで、素敵に再活用できます。

奥野さんの愛犬3匹 ビションフリーゼとトイプードル
現在は、ふわりちゃんも迎え、愛犬3匹と暮らしている

今後はキャンピングカーに興味があるそう。

「ペット連れで旅行に行くと、宿も限られているし、何せうちは3匹もいるので……なかなか一緒に旅行に行けません。それなら、家を動かそう! と思ったんです(笑)」

奥野さんは、中古のキャンピングカーを購入し、また自分でリメイクしようと計画しています。

「最近では、小屋を撮影スタジオとして貸してほしいというお話もあります。たまたま犬服でスタートした事業でしたが、本当にこだわりはありません。その都度、時代やニーズによって、『愛犬と楽しめること』を軸に、やることも柔軟に変えていけたらいいなって考えています」

自宅の隣の小屋をリメイクしてフォトスタジオに
自宅の隣の小屋をリメイクしてフォトスタジオに