犬の咳の原因は?咳の種類や病院に連れて行くべき症状、対処法について解説【獣医師監修】

犬の咳の原因は?咳の種類や病院に連れて行くべき症状、対処法について解説【獣医師監修】

人間ほど頻繁ではありませんが、犬も「カハッ」「カッカッ」などの咳をすることがあります。すぐにおさまる生理的なものであれば問題ありませんが、なかなか咳が止まらない場合は、実は怖い病気が隠れている可能性もあるのです。今回はchicoどうぶつ診療所の所長である獣医師の林美彩先生に、犬が咳をする原因や治療法、対処法について解説していただきました。

犬が咳をするのはなぜ?

咳をする犬

犬が咳をする理由は大きく「生理的な理由」「事故」「病気」の3パターンに分類できます。私たち人間も飲み物が気管に入ってむせたり、風邪を引いたときに咳が出たりすることがありますが、犬も同じです。愛犬の様子をしっかりと見て、咳の原因を探ってあげることが大切です。

生理的な理由が原因の犬の咳とは?症状と予防法を解説

咳をする犬生理的な理由による咳は、さまざまな原因から起こります。


【生理的な咳】

・一過性の咳

乾いた咳が出る場合は、一過性である可能性が高いです。一過性の咳は、冷たい空気、リードを引っ張ったことによる喉の圧迫、空気の乾燥、興奮などが原因で起こります。

一過性のものなので、連続して起こらなければ様子見でよいでしょう。予防としては、リードを引っ張りすぎないようにする、部屋の乾燥に気をつける(湿度60%程度)、寒さが厳しいときは気温が少し高くなってから散歩に出る、興奮しやすい環境を避ける(他の犬が少ない時間帯に散歩に行くなど)などが挙げられます。

事故が原因の犬の咳とは?症状と予防法を解説

事故による咳は、実はとても危険なんです。事故が起きないよう、飼い主が気をつける必要があります。


【事故による咳】

・異物誤飲(食道内異物)

犬が異物誤飲すると、咳き込んだり、吐きそうになったりします。子犬や成犬でよく起こしがちです。詰まっているものを取りださなくてはいけないので、外科的処置が必要になってくるケースがほとんどでしょう。

気道が閉塞してしまうと呼吸困難に陥り、最悪の場合死に至るケースもあります。予防法としては、おもちゃなどを食べてしまわないよう、犬が遊んでいるときは目を離さないようにする、飲み込んではいけないようなものは犬が届く場所に置かないといったことが挙げられます。

病気が原因の犬の咳とは?症状や予防法、治療法を解説

咳をする犬病気が原因の咳の場合、犬のライフステージによって考えられる原因が異なります。子犬、成犬、老犬の年齢別に、主な病気をご紹介します。


【子犬の咳の原因となる主な病気】

・ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)

ケンネルコフはウイルスや細菌、マイコプラズマなどが原因となって起こる感染症です。咳、発熱、肺音の異常、鼻水、目ヤニ、苦しそうな呼吸、呼吸困難、食欲不振などを引き起こします。

治療は、抗生剤や抗炎症薬、吸入(ネブライザー)、気管支拡張剤、鎮咳薬などを用いて行われます。

細菌感染を予防することはできませんが、ウイルス性の場合は混合ワクチンで感染を予防することができます。混合ワクチン接種でウイルス予防をしておくことで、細菌との危険な混合感染の回避にも繋がります。



誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

嚥下がうまくできなかったり、勢いよく飲食をしたりして食物が気管に入り混むと、誤嚥性肺炎が怒ることがあります。誤嚥性肺炎になると、咳をしたり呼吸が苦しそうになったりします。犬がご飯をゆっくり食べられるような工夫(早食い防止の食器を使う、水を多く入れないなど)をすることが予防につながるでしょう。



【成犬の咳の原因となる主な病気】

 ・気管虚脱

気管虚脱は気管が変形し、体内で正常に空気が流れなくなる病気です。咳や苦しそうにするなどの症状が犬に見られます。気管の変形は、首輪を強く引っ張ることや、肥満、遺伝的要素などにより起こります。

気管虚脱の治療は、症状が経度の場合は内服薬、重度の場合には外科的処置が行われます。しかし、外科的処置を実施できる病院が限られるため、病院探しが必須です。また、気管虚脱になっている犬の40%は歯周病も発症しているとも言われ、日頃からの口腔内のケアは予防に重要です。さらに、首輪ではなく洋服型のハーネスを使うことで、気管の変形を防ぐことができるでしょう。



・心臓病

老犬に多い心臓病が原因の咳は、成犬でも咳の原因となります。



【老犬の咳の原因となる主な病気】

・心臓病

犬の心臓病の中でも「僧帽弁閉鎖不全症」が進行すると、咳を引き起こします。僧帽弁閉鎖不全症が原因の咳は成犬でも見られますが、一番起こりやすいのはシニア期です。

僧帽弁閉鎖不全症の原因は明確にはわかっていませんが、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁に「粘液腫瘍変性」という変化が起こることで僧帽弁が肥厚したり、脆くなったりすることで起きると考えられています。他には、腱索(けんさく)という僧帽弁に付随する部分が伸び、僧帽弁がうまく閉じないことによっても起こると言われています。

僧帽弁閉鎖不全症の治療は、内服薬により症状を緩和させる方法が一般的ですが、重度の場合には外科的処置を行うこともあります。ただし、外科的処置は実施できる病院が限られるので注意が必要です。原因が明確ではないので残念ながら予防法はありません。



・気管虚脱

成犬の小型犬で多く見られる気管虚脱による咳は、シニア犬の小型犬でも起こります。


・誤嚥性肺炎

幼犬で多い誤嚥性肺炎は、嚥下する力が弱まるシニア期にも起こりがちです。

咳を頻繁にしがちな犬種は?

フレンチ・ブルドッグ は咳をしがちフレンチ・ブルドッグパグなどの短頭種は、体の構造上、咳をしやすい傾向にあります。また、小型犬は「気管虚脱」という病気になりやすいため、結果として気管虚脱の症状である咳をしがちになります。

犬が咳をしているとき、病院に連れていくかどうか見極めるポイントは?

食欲のない犬犬が咳をしているとき、生理的なものなのか病気によるものなのかを見分けるのが難しいケースも多々あります。病院へ行くべきかどうかは、咳と同時に以下の症状があるかどうかが見極めのポイントになるでしょう。


発熱

咳と一緒に発熱があると、ウイルスや細菌などの感染症が疑われます。免疫がしっかり働いていない犬の場合には重篤化する可能性がありますので、なるべく早めに病院で診てもらいましょう。


食欲減少

緊急性が高いかどうかは、どの程度食欲が落ちているのか、どのくらいの期間食欲が落ちたままなのかにもよります。咳と同時に食欲が完全になければ、他の病気も関連している可能性が高いので、すぐに病院へ連れていくほうがよいでしょう。しかし、おやつなど好きなものは食べていたり、8割くらいの食欲が保てていたりする場合は、数日は様子見でとどめ、回復しなければ病院へ連れていくという方法でもよいと思います。


呼吸が荒くなる

咳と同時に呼吸が荒くなっているのは、緊急性が高い危険な症状です。すぐに病院で受診してください。


呼吸数が多い

通常と比較してどの程度多いのかにもよりますが、運動した後や興奮した直後であれば、生理的な現象の範囲内でしょう。しかし、このような行動をとっていないにもかかわらず開口呼吸(口を開けて呼吸すること)をしていたり、お腹の動きが激しいような呼吸をしていたりする場合には、すぐ病院で受診してください。


開口呼吸をしている

通常、犬は鼻呼吸をするため、開口呼吸をしているのは異常な状態です。「呼吸数が多い」の項目と重複しますが、運動後や興奮後であれば生理的な現象の範囲内なので、少し経って落ち着けば問題ありません。しかし、常に開口呼吸をしていたり、しばらくしても鼻呼吸に戻らなかったりするようであれば、病院で診てもらったほうが安心です。


チアノーゼを起こしている

咳と同時にチアノーゼ(舌や歯茎の色が紫になっている)を起こしているのは異常な状態ですので、すぐに病院で受診してください。


横になって休めない

犬が横になって休めないのは、横になることで肺が圧迫されてうまく呼吸ができないという、肺の異常のサインです。なるべく早く病院で受診してください。


ぐったりしている

運動直後以外にぐったりしている場合は緊急性が高い病気のケースが多いため、すぐに病院で受診してください。

犬が咳をしているときの対処法は?

病院に連絡犬が咳をしている際に、飼い主はどう対処すればいいでしょうか? 飼い主がとったほうがいい行動をご説明します。


咳の様子を観察し、症状を記録

病院受診時にも咳をするとは限らないので、普段どの程度の咳をしているのか、どんな咳なのかなどがわかる動画があると、診察がスムーズになります。


呼吸困難時は、すぐに病院に電話

犬が呼吸困難になったときは、すぐに病院に電話して、どんな状況で起きてしまったのかを簡潔に伝えましょう。


移動時の注意点

犬を移動させる場合は興奮させないようにすることが大切です。犬の呼吸器と胸を押さえないようにして抱きかかえてあげてください。


異物誤飲時は獣医師の指示を仰ぐ

異物誤飲してしまった場合、異物を無理に取り出そうとするとさらに症状を悪化させてしまうことがあります。自己判断で取り出さないようにし、病院からの指示を仰いでください。

日頃からできる犬の咳の予防法は?

部屋の湿度を保つ病気に関してはそれぞれの項目で記載した予防法が有効ですが、日頃から自宅でできる予防法もあります。


普段から自宅でできる犬の咳の予防法

普段から部屋の湿度を60%程度に保つことで、犬の咳を予防できます。乾燥から咳に繋がっている場合は特に有効でしょう。また、散歩の際は首輪ではなくハーネス型にすることも、気管の負担を軽減し、咳の予防になります。

犬の咳の注意点は?

一口に「咳」といっても、一過性の咳から命にかかわる重篤な病気の咳まで、さまざまな原因があります。咳を軽視せず、いつごろから咳き込むようになったかなどのメモを取っておくことが、病気の早期発見にも繋がるでしょう。

 


第3稿:2021年1月28日更新
第2稿:2020年10月9日更新
初稿:2020年5月11日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

犬が咳をする理由は、生理的な現象から怖い病気が潜んでいるケースまでさまざまです。少しでも犬の様子がおかしいと思ったら放置せず、かかりつけの病院ですぐに相談すると安心でしょう。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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