大型犬を飼うとなると、飼い主とその家庭にとってもそれなりの心構えが必要になるでしょう。大型犬を飼育する際の注意点を確認し、飼育が可能かどうかよく検討してみましょう。
運動量を確保する
大型犬にとって、運動量の確保は欠かせません。しかし、一方で大型犬は1歳9か月くらいまで骨格が成長期にあるため、この時期までは自発的に運動をする程度にとどめましょう。運動強度の強いエクササイズや運動の強要は、骨格の成長に悪影響を及ぼす可能性が生じるためです。また、運動させる地面はやわらかい芝やクッション材などのほうが骨格に衝撃を与えないので好ましいでしょう。万が一、成長板が骨折して損傷を受けると、骨の成長が阻害され、骨の短縮や関節の角度変形などの障害が起こることがあるので、要注意です。
広いスペースを確保する
大型犬と小型犬の最大の違いは、子犬期の1、2年ではっきりします。大型犬はこの時期に急速に成長するため、サイズの変化に驚くこともあるでしょう。また、不意に人や物にぶつかり、物を倒したりして、自分でその音に驚くことも。そのため、家具はなるべく置かないか、生活動線の周囲に余裕を持ったスペースを確保できるといいでしょう。
なお、大型犬は小型犬よりも体格と精神の成熟が遅いですが、3歳頃にようやく成熟すると小型犬よりも穏やかで静かになることがよくあります。屋内では静かに穏やかに過ごし、散歩など屋外で活発に動くような習慣づけができれば、屋内に広い運動スペースは不要でしょう。
しっかりとしつけする
性別や年齢、犬種に関係なく、どんな犬も家庭内での基本的なルールを守るように、基本の号令などの訓練する必要があります。ただし、大型犬の場合、悪い行動が起こった時の被害が大きいため、特に飼い主が動きをコントロールするための訓練は重要です。大型犬のしつけや社会化、精神的な充実には特に気を配り、退屈したりマナーが悪くなったりしないよう気をつけましょう。
すべりやすい床を避ける
大型犬の子犬は四肢の関節がやわらかく、遊んでいる最中に転がったり体をひねったりすることがよくあります。その際に床をすべったり、身体を打ちつけたりしてしまうと、骨の成長板を傷つける可能性があるでしょう。すべりやすい床材は避ける、カーペットを敷くなどの工夫が必要です。
胃捻転に気をつける
胃拡張捻転症候群は命に関わる疾患のため、注意が必要です。ボルゾイ、グレート・デンなどの、胸が深くウエストの細い体格の大型犬によく見られます。初期段階では、胃拡張または胃が膨張する程度が多いですが、症状が胃捻転症に進行すると大変危険です。この場合、緊急手術が必要になるでしょう。また、予防する手術をあらかじめ受けておくということもできます。
フードは大型犬専用のものを選びましょう。特に、一般犬種用の総合栄養食と大型犬成長期用(パピー)フードでは、カロリーとカルシウムの含有量が違います。大型犬成長期用フードは、一般的にカルシウムが低く、ローカロリーのため、肥満リスクを軽減することができるでしょう。
避妊去勢の時期に気をつける
大型犬のいくつかの犬種は、去勢によって関節やがんの疾病発生率が高まることが示されているため、去勢の時期については慎重に検討したほうが良いでしょう。
特に、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパードは、生後6か月より前に去勢手術を受けると、関節疾患の発生率が2~4倍です。また、ボーダーコリー、ゴールデン・レトリーバー、ロットワイラーは11か月以降の手術が推奨されています。さらに、23か月以降に推奨されているのはバーニーズ・マウンテン・ドッグ、ボクサー、ジャーマン・シェパード、アイリッシュウルフハウンド、スタンダード・プードル。また、ドーベルマン・ピンシェルは去勢しないことを推奨されています。愛犬の去勢手術については時期も含め、かかりつけ医とよく相談しましょう。
監修/茂木千恵先生(獣医師)
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