
ここからは、ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気を見ていきましょう。
股関節形成不全
先天的に関節の形状が変化しているため、歩く際などに股関節に負荷がかかり、違和感や重度になると痛みを感じることがあります。できるだけ早期発見できるよう普段から観察してください。
腫瘍
レトリーバー系は悪性だけでなく良性の腫瘍もできやすいです。体表の腫瘍は普段のスキンシップの際、体内の腫瘍は半年〜1年に一度、血液検査や超音波検査などの診断を受けると早期発見につながります。
インスリノーマ
膵臓にできる腫瘍で、悪性度が高い疾患です。低血糖などの障害を起こすことがあり、血液検査や超音波検査などが必要となります。元気がない・痩せてきたなどの変化に気づいたらできるだけ早く受診してください。
リンパ腫
皮膚表面と内臓にできる場合があり、最近では低分化型と呼ばれる悪性度の低いリンパ腫も存在すると言われています。定期的なかかりつけの先生への受診や検査が早期発見につながるでしょう。
胃拡張・胃捻転
空気などで胃が拡張・捻転してしまう疾患です。命の危険につながる可能性の高い病気のため、嘔吐の頻発・おなかのハリや違和感で伏せた状態でいることが多い、などの症状があったらすぐの受診をおすすめします。
アトピー性皮膚炎
皮膚に強い痒みを生じる疾患です。アレルギー同様、免疫の状態の不安定さで起こる疾患ですが、明確なアレルゲンはありません。痒そう・赤みがある・脱毛があるなどの場合、速やかな受診をおすすめします。
眼瞼外反症
瞼が外側に反り返る異常です。下まぶたが外反することが多く、眼球が露出する頻度が高まり、角膜や結膜を傷つけることがあります。放置すると炎症が重度になるので、外観上の違和感があったら受診をしてください。
網膜剥離
網膜が剥離する病気です。痛みを伴い、視力の低下や失明などが起こることもあります。眼球の激しい充血・目を閉じたままにするなどの異常があったら受診をしましょう。眼科専門の動物病院の方がスムーズに進むことがあるので、紹介状を書いていただくかもしれません。
外耳炎
夏場などの湿度の高い時期に、感染性の外耳炎を起こす場合があります。また、アトピー性皮膚炎や脂漏症など、慢性的な皮膚の状態悪化で外耳炎を起こすケースもあります。
喉頭麻痺
喉頭と呼ばれる気管につながる軟骨の部分が麻痺を起こし、呼吸困難などを起こす病気です。呼吸がしづらくなるため、熱中症になりやすいなどのリスクも高まります。
巨大食道症
食道の筋肉が弛緩・拡張することで、食べたものを胃や腸へと送る運動機能が低下・消失する病気です。食事後、短時間のうちに内容物を吐き出す行動が見られることが多く、レントゲン検査を行うことが一般的です。
弁狭窄
血液の逆流を防ぐための弁が狭窄することで循環不全を起こします。重度になると心不全の進行・呼吸困難・腹水の貯留などが生じます。超音波やレントゲンでの検査後、内科的治療または外科的治療にて管理します。後者は専門性の高い手術のため、高度医療施設などで行う可能性が高いです。
甲状腺機能低下症
代謝に関するホルモン分泌の機能が低下する疾患です。脂質代謝や腸運動の異常、脱毛等を併発することもあります。眼をシパシパさせる・開けないなど異常を感じたらすぐに受診しましょう。失明する可能性もあります。
糖尿病
糖の代謝の異常が起こる病気です。重度になると、エネルギーを糖以外から作り出そうとし、通常の機能が為せなくなります。命の危険につながるので、食べているのに痩せていく、食欲の変化があるなどの違和感に気づいたら、かかりつけの先生に相談しましょう。
尿石症(シスチン)
シスチン結石という尿結石ができる疾患です。尿検査やエコーで確認できるケースが多いので、血尿・排尿時の異常に気づいたら、採尿して受診しましょう。療法食などで結石が解けるか試み、変化がなければ外科的に摘出する可能性が高いです。
膣炎
膣が感染を起こす疾患で、陰部からの排膿がある場合が多いです。排尿後に陰部を清潔にする・清潔でない場所に陰部を付着させないよう気を付けましょう。シニア犬や抵抗力が低い犬は発しやすく、避妊手術で子宮を除去していても、膣や残った子宮の断端部分で排膿する場合があります。
ナルコレプシー
珍しい神経疾患です。何らかの刺激により睡眠が誘発され、脱力発作が起こります。脳の受容体の異常であることが多いですが、治療は投薬でコントロールすることが一般的です。疑わしい発作があったら、まずその際の動画を撮影して受診すると、診察がスムーズに進む可能性が高いです。
監修/葛野莉奈先生(獣医師)
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