犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】

日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。

犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】

犬は、飼い主に撫でられるのが大好きですが、喜んでもらうためには、どのように撫でてあげると良いのでしょうか?犬によっては撫でられることにストレスを感じることもあるので、愛犬の状態や性格を汲んであげることも大切です。そこで今回は、犬を撫でるとどんなメリットがあるのか、犬が喜ぶ撫で方、ストレスを感じさせない撫で方・触り方のコツなどを動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に解説していただきました。

犬を撫でるメリットは?

犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】愛犬の体に触れて撫でてあげるのは、飼い主にとっても至福の時ですね。犬の立場からしても、人間に撫でてもらうことには以下のようなメリットがあります。

リラックス効果

撫でる人にも撫でられる犬にも、愛情ホルモンとも言われるオキシトシンというホルモンが分泌され、ストレスを緩和したり、互いの信頼関係が生まれたりするなどの効果があります。このオキシトシンの濃度は、人が絆のある犬を撫でた時、及び犬が絆のある人に撫でられた時に上がることが分かっています。さらには、犬と触れ合うことで、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少したという報告もあります。

病気や怪我の早期発見

撫でることで、愛犬の体のちょっとした変化にも気づくことができます。触れることで、肌の状態が悪くなっている、怪我をしている、などのトラブルを見つけることができるでしょう。また、触った時に緊張したり嫌がったりしたら、それは不快に思っている証拠。いつもと違う行動も、愛犬の異変に気づくチャンスになります。

犬が飼い主に撫でてもらいたいときにする行動は?

犬が飼い主に撫でて欲しいとせがむ行動を見せることがあります。朝起きて人恋しい時、留守番をして寂しかったときなどは甘えたい気持ちになるのでしょう。具体的にどんな行動をとるときに撫でて欲しいと感じているのでしょうか。

近寄ってくる

飼い主に注目して欲しい時や撫でて欲しい時には、自ら近づいて寄り添ってくることがあります。

膝の上に乗ってくる

小型犬であれば、膝の上に乗ってくることもあるでしょう。飼い主は膝に取ってきた愛犬を思わず撫でてしまったり、優しく声かけしたりすることが多いので、膝に乗ると撫でてもらえることを覚えるのでしょう。

前肢で引っかいたり、鼻で人の手や体を押したりする

近寄っても、飼い主が何かに夢中だったり、相手にしてくれなかったりするときには前肢で引っかくような仕草や鼻で押してきたりするなどの、一歩踏み込んだアピールをしてくることがあります。

お腹を出してみせる

お腹を出す仕草は、リラックスした状態で信頼の証です。飼い主の方も近くに来て、お腹を見せられると、可愛くて撫でてあげることが多いでしょう。お腹を見せると撫でてくれることを覚え、おねだりするようにこの行動をするようになります。

犬が撫でられたくないときとは?

甘えん坊の犬でも、構って欲しくないときがあります。特に、以下のような時は撫でるのはやめておきましょう。

食事中

食事をしているときに触られたり、ジロジロみられたりするのを嫌う犬は多いものです。大好きな食べ物を取られるのではないかと心配になったり、食べているのを邪魔されたりするのではないかと思うようです。同じように、おもちゃなどに夢中になっている時に近づいてきたり、撫でられたりするのを嫌う事もあります。

睡眠中やゆっくり休んでいる時

人間もそうですが、ゆっくり休んでいる時には邪魔されたくないものです。特に睡眠中に触ったり、急に起こされたりすると、攻撃をしてくる可能性があります。寝転がっている時や、眠っている時には、犬のリラックスタイムとしてそっとしておいてあげましょう。

見知らぬ人や信頼していない人に触られそうになった時

犬の性格にもよりますが、誰に撫でられても喜ぶわけではありません。相手に恐怖を感じている場合や、緊張した状況では触られるのを嫌がります。

犬が撫でられると嬉しい場所とは?

犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】犬が撫でられて嬉しい場所は、犬の性格や好み、体調によりそれぞれ違います。お気に入りの場所を撫でると、リラックスして、その場所を近づけてきたり、その場所を伸ばしたりと、気持ちよさそうな行動が見られます。愛犬の好みの場所を見つけてあげることをおすすめします。

 

一般的には、胸辺り、肩や首周辺、眉間から頭にかけて、耳の付け根、腰などを好む犬が多いように感じます。しかし、このような場所の全てが好きな犬もいれば、この中にも触られたくない場所がある犬もいます。ストレスのかかりにくい撫で方をしながら、愛犬が好む場所を見つけてあげてください。

犬が撫でられたくない場所とは?

人間にも言えることですが、体の中には特に過敏な場所があります。一般的に刺激を感じるのに関わる細胞が高密度にあり、それが神経と繋がっている部分は過敏になります。特に体のあちこちの先の方、肢の先、尾、肛門周辺、目や鼻、口周り、耳の中などは触られるのを嫌がることが多いです。

 

ただし、このような場所も、ケアや怪我や病気の治療などで触らなくてはいけないことが出てくるものです。ですから、触られても嫌ではないと思っておいて欲しいものですね。小さい頃から、犬が受け入れやすい方法で短い時間だけ触り、その後に褒めたり、おやつをあげたりして、触られることに馴らしておくことをおすすめします。もし、嫌がったり、威嚇したりするなどのストレスサインが見られた場合は触り続けてはいけません。

犬が撫でられたくないときに示す行動やサインは?

犬が撫でられるのを嫌がっているときには、体や顔を緊張させている、動かない、逆にウロウロ逃げ回る、耳を横や後にひく、口の周りを舐める、あくびをする、目をそらす、尾を下げる、などのストレスサインが見られます。このようなサインを見逃すと、唸ったり、咬もうとしたりするなどの攻撃行動に発展することもあります。

犬にストレスがかからないように撫でるにはどうすればいいの?

犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】愛犬を撫でたときにリラックスして体を近づけてきたり、撫でられている場所を伸ばしたりと嬉しそうな様子を見せてくれたら、飼い主としても嬉しいものですよね。愛犬に撫でられることを喜んでもらうために、以下のポイントを押さえておきましょう。

子犬の頃から撫でられることに慣れさせる

まずは、子犬期より、撫でられると気持ちがいいこと、どこを触られても嫌ではないことを学ばせておくことが大切です。社会化期をはじめとした子犬の時期は、いろいろな刺激を好意的に受け入れやすい時期。人に撫でられること、人にあちこち触られることに、良いイメージを持たせておくと、後の良いコミュニケーションに繋げやすいものです。

日頃から触られることに慣れさせる

子犬期を過ぎて、体を触られることを快適に受け入れられるようになると、病院やトリミングサロンなどで、不快感を持つことがありません。信頼関係のある家族が、体のあちこちを触ることに慣らしておいてあげることをオススメします。

犬の性格や行動を理解しながら撫でる

飼い主が愛犬を撫でる場合は、犬のストレス行動を見逃さないことが大切です。犬を我慢させて無理に撫でたり、長時間撫でたりすると、どんどん撫でられるのを嫌いになってしまいます。撫でる際には愛犬が気持ちよさそうにしているかどうかを必ず確認してくださいね。

姿勢を低くして穏やかに、優しく撫でる

特に怖がりの犬、過敏な犬、信頼関係のない犬と交流する時には、覆い被さる、抱え込むような仕草は避けてください。犬を緊張させないように気遣い、飼い主自身もリラックスした姿勢で、優しく穏やかに声をかけながら撫でてあげたいものです。

面でタッチすることを意識する

早い動きで力を入れて触られたり、指先だけで触れたりするのも不快に感じることが多いようです。まずは、長いストロークでゆっくり、手の全体を使って、面で触るように撫でるようにしましょう。また、長時間撫ですぎると嫌になってしまうこともあるので、しつこくせずに犬が快適そうにしている間にやめるようにしたいものです。犬が気持ちよさそうな行動が見られたら、撫でる速さや力加減を変えていくと良いでしょう。

犬の好みの場所から撫でてみる

はじめから犬の過敏な場所、苦手な場所を触り始めるのはオススメしません。まずは、犬が好むとわかっている場所、犬が受け入れやすい場所から触り始めるといいでしょう。足先や顔まわりなどの過敏な場所は、犬がリラックスして受け入れていることが分かってから触るようにしましょう。

毛並みに沿って撫でる

毛並みに逆らって撫でると、興奮させたり、不快にさせたりする可能性があるので、避けてください。毛並みに沿って撫でることを意識してあげてください。

初対面の人が犬を撫でるときに注意点

自宅に来客があった時や散歩中に知り合いに会った時などに急に撫でられて愛犬が驚いてしまった経験をしたことがあるかもしれません。また、知り合いが飼っている犬などに接する機会があったときは、可愛さのあまり、勝手に犬に触れるようなことは避けましょう。初めて接する犬の場合、以下のようなことに注意してみましょう。

犬の様子をよく観察する

犬が怖がっている、嫌がっている場合は、撫でるべきではありません。犬の行動を観察し、ストレス行動が見られたら、声をかけたり、近づいたり、撫でようとしたりしないほうがいいでしょう。

飼い主に許可を取る、飼い主と話をする

怖がっているように見えなくても、犬が苦手に感じる場所があるかもしれません。犬の性格や体調を把握している飼い主に、事前に許可を得てから撫でるようにしましょう。また、飼い主と好意的に交流している人には、犬も比較的リラックスして接することができます。犬を安心させるためにも、まずは、飼い主と話をしてから、犬に話しかけるようにしましょう。また、犬が1匹で庭にいたり、外に繋がれていたりする場合にはトラブルを避けるために近づかないようにするのが良いでしょう。

犬が近づいてくるのを待つ

真正面から見つめたり、高いところから覆い被さるように近づいたりするのはNGです。一定の距離を取って低い姿勢をとり、犬の方から近づいてくるのを待つようにしましょう。

犬の名前を呼んであげる

犬が受け入れているようであれば、犬の名前を呼ぶことで、親しみが伝わる事があります。

突然触ろうとしない

まずは、手をグーにして犬に匂いを嗅がせてあげましょう。犬が受け入れてくれるようでしたら、胸や体の横など、犬が視認できるところから優しく触るようにするといいでしょう。

犬種によって撫でられることが好きな子と苦手な子がいる?

犬によって性格の傾向がありますので、撫でられることを好む犬種とそうでない犬種がいます。ただし、あくまでも好みの傾向なので、犬の様子を参考に判断するといいでしょう。

撫でられることが好きな犬種

犬の中でも、コンパニオンドッグ、トイドッグなどと言われる、愛玩目的に改良された犬種は、撫でられるのを好む傾向があります。トイ・プードルチワワマルチーズなどの人気犬種は、ここに含まれます。ただし、それぞれの犬種、個体ごとに性格も好みも異なるので、基本的には反応を見ながら撫でるようにしましょう。

撫でられることが苦手な犬種

日本犬やハスキーなど原始的なグループに属す犬は、遺伝的にオオカミに近いとされます。自立心や警戒心が強い個体も多いので、いつも飼い主にくっついていたり、いつまでも撫でられていたりすることを好まないことも多いものです。ただし、苦手とはいえ、愛情を必要としない、撫でられることを好まないわけではありません。やはり、それぞれの性格を理解し、行動を見ながら撫でることが大切です。

撫でる以外に、犬が喜ぶこととは?

犬が喜ぶ撫で方・触り方は?ストレスを感じさせないコツを解説【獣医師監修】愛犬を幸せにするためには、まず愛犬の心理的身体的な欲求を十分満たすことが基本となります。動物園や水族館など野生の動物を飼育している場所で、飼育動物のストレスを軽減するための観点から考え出された、「環境エンリッチメント」という概念があります。「環境エンリッチメント」は「①空間採食社会感覚認知」の5つに分類することができます。これらの環境エンリッチメントを意識することで、犬の喜びや幸せにつながるでしょう。

空間エンリッチメント

動物種本来の生活空間に合わせるために、長時間の狭いケージでの飼育することは避けましょう。散歩やドッグランなどで体を動かし、社会的交流を行う機会を作る一方で、クレートやベッドなどの安心できるプライベート空間を与えると喜んでくれるでしょう。

採食エンリッチメント

本来の摂食行動に近づけることが望ましいです。普通に飼育していると苦労せずに食事を摂ることができるためついつい単調な食事となりがちです。そのために、知育玩具、ノーズワークマットなどを用いながら、自然界に近い形でおやつや食事を与えると達成感やストレスの解消になります。

社会エンリッチメント

犬が嫌がらなければ、人や他の動物との関わりの機会を設けるために散歩やドッグランなどで、積極的に他の人や犬と交流させましょう。褒めながら楽しくトレーニングを行ったり、おもちゃを使って遊ぶことで活発な社会行動を引き出すことができます。

感覚エンリッチメント

視覚・触覚・嗅覚などに刺激を与えることが望ましいので、撫でたり、マッサージしたりするなどスキンシップを図ります。散歩時間も十分確保し、舗装道路ばかりでなくさまざまな場所や道を通りながら、いろいろなものの匂いをかがせたり、触れたりする機会を作るといいでしょう。

認知エンリッチメント

犬にも考える機会を与えることが大切です。その機会を通して認知能力を発揮することで幸福感を得ることがあるようです。簡単なものからはじめて、複雑な知育玩具やより高度なトレーニングにも挑戦していくことをオススメします。

その他の犬の喜ぶこととは?

犬の喜ぶことに関しては、内容も方法も優先順位も、犬によってさまざまです。一般的には、食べ物やおもちゃで遊ぶこと、声をかけること、笑顔で見つめること、言葉で褒めること、などで犬は喜んでくれるものです。まずは、犬の行動を観察し、性格や好みを、把握してあげたいものです。

専門家のコメント

飼い主が愛犬を撫でるときには、愛犬がそれを歓迎してくれることを望んでいるはず。けれども、人はいつでも犬の好みに従ってあげられるわけではありません。そのため、犬に求められて撫で始めるのではなく、こちらから撫でることで、犬の幸せを満たしてあげるようにするのが望ましいです。犬を呼び寄せて、犬が好む方法で、長くなり過ぎない時間に撫でるようにしてあげてください。

監修/フリッツ吉川綾先生(獣医師、獣医学博士、日本獣医動物行動診療科認定医)

監修/フリッツ吉川綾先生(獣医師、獣医学博士、日本獣医動物行動診療科認定医)

動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表
東京都文京区なないろ動物病院所属
酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業、同大学院獣医学研究科修了
日本獣医動物行動研究会American Veterinary Society of Animal Behavior所属

日本、米国、英国にて行動診療やパピークラスを実施する、動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。東京都文京区なないろ動物病院にて一般臨床・行動診療、千葉県市川市苅谷動物病院グループ市川総合病院静岡県裾野市パル動物病院にて行動診療にあたる。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として、獣医臨床行動学の研究、執筆、翻訳を行うなど幅広く活躍。

監修者の他の記事一覧


関連リンク

この記事に関連するキーワード