日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説【獣医師監修】

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説【獣医師監修】

雑学

2023年10月16日 更新 (2022年08月27日 公開)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説【獣医師監修】

そもそも日本犬とは?

日本犬とは、日本の在来犬種のことを指します。一説によると、犬は縄文時代には人間とともに生活し、狩猟犬として活躍、弥生時代には食用としても飼育されていた過去があるそうです。縄文犬と弥生犬の交雑によって現在の日本犬のもとが生まれたと言われています。ルーツについては日本犬、韓国犬、モンゴル犬の遺伝子が近縁とわかっており、アジア→韓国→日本へと渡ったことが指摘されているようです。

日本犬の種類は?

現在、下記の6犬種が日本犬として国の天然記念物に指定されています。これらの純粋な日本犬は「和犬(わけん)」とも呼ばれています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

日本犬①柴犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

柴犬は日本原産の土着犬として知られ、縄文時代には現在の柴犬の先祖が人間と一緒に暮らしていたと言われています。一時、絶滅危機に瀕しましたが、1936年に天然記念物に指定されてから種の保存に尽力され、現在国内飼育の日本犬種の8割を占めているとされています。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが39.5cm、メスが36.5cm、平均的な体重は9~12㎏ほどです。最近は豆柴、極小豆柴、小豆柴といった小型の柴犬も多く、小豆柴だと成犬でも2㎏前後と言われています。スタンダードな柴犬でも、6犬種の中では一番小さく、最もオオカミに近い犬種と言われています。平均寿命は12~15歳です。


外見の特徴

被毛はダブルコートで、毛色は赤、黒、胡麻(赤毛に混じって黒毛が生えている)、黒胡麻(黒色が強い胡麻)、赤胡麻(赤色が強い胡麻)といった種類があり、まれに白色の子が生まれることがあります。しっかりとした骨格、巻いた尾が特徴で、耳は立っています。


性格

とても賢くて、忠誠心が強い犬種です。飼い主には従順ですが、警戒心が強いので飼い主以外には懐きにくい傾向が見られます。オスよりもメスのほうがおとなしいようです。


飼い方のコツ

警戒心、自立心が強いため、テリトリーとなる場所を用意してあげるとよいでしょう。飼い主以外に対しては警戒心が強いため、トレーニングを通じてしっかり社会化を行う必要があります。頑固な気質ゆえにトレーニングは忍耐が必要になりますが、賢い頭脳を持っていますので、飲み込みは早いほうかもしれません。ストレスを感じやすいため、新しいことを始める時には焦らず徐々に進めていきましょう。

日本犬②紀州犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

紀州地方の山岳地帯が原産で、狩猟犬として繁殖されてきた歴史を持ちます。「那智犬」、「太地犬」、「熊野犬」、「奥吉野犬」など、その土地の名前で呼ばれていたこともあるそうですが、現在は紀州犬として1種類に統一されています。柴犬よりも2年早い1934年に国の天然記念物に指定されました。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが52cm、メスが49cm、体重は幅があり15~27㎏前後とさまざまです。平均寿命は13歳程度です。


外見の特徴

被毛はダブルコート、白、赤、胡麻の3種類があり、約95%が白色です。筋肉質でがっしりとした体型で、立ち耳、巻尾が特徴です。


性格

落ち着いた性格で忍耐強く、柴犬と同じように飼い主に忠実と言われています。日本犬全般に言えますが、警戒心が強く、飼い主以外には慣れにくい傾向にあります。柴犬同様、メスのほうが警戒心は強めです。


飼い方のコツ

警戒心が強いため、しっかりと信頼関係を築き、辛抱強くトレーニングを行うことが大切です。子犬の時の社会化期に、他の人や犬との触れ合いをもって経験を積んでいくことで、犬社会を勉強し、友好的になると考えられています。

日本犬③四国犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

高知県を中心に、四国山脈の山間部で暮らしていた犬種で、土佐犬としても有名です。ヤマイヌがルーツとも言われ、闘争心が強いためペット向きではないとされています。1937年に「土佐犬」という呼称で、国の天然記念物に指定されていましたが、土佐闘犬と混同してしまうことから「四国犬」と呼ばれるようになったそうです。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが52cm、メスが49cm、体重は幅があり15~27㎏前後。平均寿命は約14歳程度です。


外見の特徴

被毛はダブルコートで、胡麻、赤、黒褐色の3種類に分類されますが、胡麻が大半を占めています。立ち耳、巻尾の持ち主。柴犬に少し似ていますが、体格はひと回りほど大きく、筋肉質で引き締まった体型をしています。オオカミに似た野性味あふれる姿が特徴です。


性格

警戒心が強く、縄張り意識が強いため、番犬としての素質を持っています。オスはメスに比べて狩猟意欲が旺盛で、攻撃性が高い傾向があります。メスは比較的落ち着いている傾向があり、オスよりも飼いやすいとされています。


飼い方のコツ

忠誠心の高さと警戒心の強さから、飼い主以外に対しての問題行動が起こる可能性があります。きちんとしたトレーニング、社会化期のさまざまな経験が重要です。かなり運動量が多い犬種なので、ドッグランで走らせたり、ボールを追いかけさせたりして運動量を確保し、ストレスを溜めさせないようにしましょう。

日本犬④北海道犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

北海道の先住民族であるアイヌの人たちに猟犬として飼育されていた犬種です。縄文人が東北地方から北海道へ渡る際に同伴したマタギ犬がルーツとも言われており、1869年に「アイヌ犬」と命名されたのち、1937年に北海道犬として国の天然記念物に指定されています。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが48.5~51.5cm、メスが45.5~48.5cm、平均的な体重は20~30㎏程度です。平均寿命は13~15歳です。


外見の特徴

被毛はダブルコートで、胡麻、虎、赤、黒、黒褐色、白とバリエーションに富んだ毛色を持っています。柴犬に似た風貌ではあるものの、寒さに強く持久力があり、比較的原始的な姿に近いとされています。立ち耳、巻尾は他の日本犬と同じです。


性格

野性味が強く、怖いもの知らず。気性が荒く頑固な一面もありますが、辛抱強く飼い主に忠実なのは、他の日本犬と同様と言えるでしょう。オスのほうがエネルギッシュで攻撃性が高く、メスは自立心が強く頑固な傾向があります。


飼い方のコツ

他の日本犬と同じように、忠誠心、警戒心の強さから、小さい頃からのトレーニング、社会化期の過ごし方がポイントとなります。上級者向きの犬なので、犬の飼育経験がある人でないと難しいかもしれません。北海道という極寒の地が原産のため、暑い地域での飼育は厳しいと考えられます。運動量も必要とする犬種ですので、毎日しっかり運動時間を確保するよう心掛けてください。

日本犬⑤甲斐犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

約4000年前、東南アジア地方から狩猟民族と一緒に渡ってきたと言われています。山梨県の山岳地帯で狩猟犬として活躍し、猟犬としての性格、特性を色濃く受け継いでいるそうです。他の日本犬種よりもルーツが古いといわれており、紀元前までさかのぼると言われるほど。虎模様の被毛から別名「虎毛犬(とらげいぬ)」とも呼ばれ、1934年に国の天然記念物に指定されました。四肢がすっきりした鹿(しか)犬型、体型が少し丸めの猪(いのしし)犬型の2種類の体格に分かれていましたが、現在は鹿犬型のみが生息しており、猪犬型は絶滅したと言われているそうです。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが47~55cm、メスが44~52cm、平均的な体重は14~16㎏程度です。平均寿命は約14歳です。


外見の特徴

被毛はダブルコートで、黒虎、中虎、赤虎の3色の被毛に分かれます。つぶらな瞳と長めのマズル(犬の口周りの部分)、立ち耳、舌の斑が特徴。四肢はがっしりしていて、筋肉質な体型の持ち主です。尾は、日本犬の特徴でもある巻尾のほか、巻き具合が弱く背中につかない差し尾の個体もいます。


性格

日本犬特有の忠誠心と警戒心と、狩猟犬ならではの判断力、賢さを併せ持った犬種です。オスは気性が荒い傾向があり、メスはオスよりも落ち着いている傾向があります。


飼い方のコツ

上級者向けの犬種のため、犬の飼育に慣れている人でなければ難しいかもしれません。忠誠心、警戒心の強さは日本犬特有で、子犬からのトレーニング、社会化期の過ごし方がポイントとなります。

日本犬⑥秋田犬

日本犬は6種類だけ!それぞれの歴史と特徴を解説

歴史

忠犬ハチ公で有名な秋田犬は、日本犬の中でも唯一の大型犬です。奥羽山脈一帯でマタギ犬として熊の狩猟に使用されていた古代種「秋田マタギ犬」を祖先に持ちます。江戸時代までは大館地方のマタギが飼育していたことから、「大館犬」とも呼ばれていたそうです。江戸~明治時代、闘犬との混血が進められたことで純血種が激減した時期もありましたが、1931年に国の天然記念物に指定され、種の保存活動から絶滅を逃れたと言われています。


体高・体重、平均寿命

平均的な体高はオスが64~70cm、メスが58~64cm、平均的な体重はオスが39~60kg、メスが27~50㎏程度です。平均寿命は10~15歳です。


外見の特徴

被毛はダブルコートで、赤、白、虎、胡麻、斑、黒の6色が指定毛色とされており、このうち黒は日本には存在しない毛色だそうです。長毛の秋田犬は「ムク毛」と呼ばれるそうですが、こちらは正式な秋田犬とは認められていないようです。マタギ犬として活躍していただけに、体型はとてもがっちりとしており、長い脚、三角形の耳、巻尾を持ち、つぶらな瞳も特徴です。


性格

日本犬特有の忠誠心、警戒心を持ちつつも、日本犬の中では比較的穏やかで落ち着いた性格です。忠犬ハチ公でも知られているように、飼い主に対してとても愛情深い一面を持っています。オスは自立心が強く活発、少し神経質な一面を持ち合わせており、メスは比較的おとなしく、落ち着いているとされています。


飼い方のコツ

小さい頃からのトレーニング、社会化期の過ごし方が重要であるうえ、体が大きいため、コントロールできる力のある人でないと飼育は難しいかもしれません。体力もあるため、散歩時間をしっかりと取ってあげられることが、飼育上の重要ポイントです。

地犬とは?

日本犬のように日本の特定地域にのみ生息する犬を「地犬(じいぬ)」と呼びます。かつては、下記のように日本各地に地犬が生息していたようです。


  • 川上犬(かわかみいぬ) 長野県
  • 琉球犬(りゅうきゅういぬ) 沖縄県
  • 大東犬(だいとういぬ) 沖縄県
  • 薩摩犬(さつまいぬ) 鹿児島県
  • 十石犬(じっこくいぬ) 群馬県、長野県
  • 美濃柴犬(みのしばいぬ) 岐阜県
  • 山陰柴犬(さんいんしばいぬ) 鳥取県、島根県
  • 肥後狼犬(ひごろういぬ) 熊本県
  • 岩手犬(いわていぬ) 岩手県
  • 三河犬(みかわいぬ) 愛知県

各地で保存活動が行われたり、県の天然記念物に指定されたりしている地犬。残念ながら、既に絶滅してしまった種類も少なくありません。上記の中でも、岩手犬や三河犬は絶滅寸前と言われています。

他にもいる!日本が原産の犬

日本在来の犬種は6種類の日本犬だけですが、その他にも外来犬との交配により、新たに誕生した日本原産の犬種もいます。


日本原産の小型犬

狆(ちん)、日本テリア


日本原産の中型犬

日本スピッツ

日本原産の大型犬

土佐犬・土佐闘犬(とさいぬ・とさとうけん)、アメリカンアキタ(グレートジャパニーズドッグ)


強くたくましい印象の強い土佐犬は、交配されたブルドックやグレートデン、マスティフといった洋犬種の特徴が良く出ていますね。

日本犬が海外で人気の理由は?

日本犬保存会が、日本犬の本質を「悍威に富み良性にして素朴の感あり、感覚鋭敏、動作敏捷にして歩様軽快弾力あり」と表現したように、日本犬特有の飼い主への忠誠心の高さや度胸、誠実で素直な性格が、海外でも魅力的に映るようです。洋犬と比較して野性的な外見をしていること、表情が豊かであることが人気の理由なのではないかと思われます。