アイリッシュ・ウルフハウンドの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

アイリッシュ・ウルフハウンドの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

犬種図鑑

2023年11月06日 公開

東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。

アイリッシュ・ウルフハウンドの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

アイリッシュ・ウルフハウンドの歴史やルーツ、英語名は?

犬種名 アイリッシュ・ウルフハウンド
英語名 Irish Wolfhound
原産国 アイルランド
分類 超大型犬
グループ 10G:視覚ハウンド

アイリッシュ・ウルフハウンド【英語:Irish Wolfhound】は、アイルランドが原産の超大型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、優れた視覚と走力で獲物を追跡捕獲する「10G:視覚ハウンド」に属します。


アイリッシュ・ウルフハウンドは、古くから大型獣やオオカミの猟で活躍してきた犬種で、アイルランドのオオカミを絶滅させたことがあるほど優れた猟犬でした。詳しい起源は不明ですが、15世紀にはアイルランド各地で家畜の群れをオオカミから守っていた記録が残っています。


アイルランドの気候に耐えるラフ・コートで、ディアハウンドの基礎となった犬でもあります。
1885年になってアイリッシュ・ウルフハウンドの犬種スタンダードが制定されてから、さらに体重や体高が大きくなり1950年にはAKC(アメリカ・ケネルクラブ)に公認されています。

アイリッシュ・ウルフハウンドのオスとメスの体高や体重は?

体高:オスは79cm以上、メスは71cm以上
体重:オスは54.5kg以上、メスは40.5kg以上


アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬に分類されます。
ジャパンケネルクラブではアイリッシュ・ウルフハウンドの体高はオス81~86cmが理想とされています。

アイリッシュ・ウルフハウンドの平均寿命は?

アイリッシュ・ウルフハウンドの平均寿命に関するデータはありませんが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳となっています。アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬なので、それより短い可能性があります。


犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。


犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。

アイリッシュ・ウルフハウンドの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?

アイリッシュ・ウルフハウンドの毛色や種類、被毛、外貌の特徴

ジャパンケネルクラブの犬種標準によると、アイリッシュ・ウルフハウンドの毛色はグレーやブリンドル、レッド、ブラック、ピュア・ホワイト、フォーン、その他ディアハウンドに見られる色なら何色でも許容されるとあります。


コートは粗くてかたく、眼の周囲と下顎にはワイヤー状のコートが生えています。


外貌は、何より世界一の大きさを誇る力強くて堂々とした体つきが特徴です。骨太の前肢はまっすぐ伸び、後ろ肢は筋肉が発達しています。頭部は長く、前頭骨が少し盛り上がり、小さい耳が高い位置について頸側に垂れています。尾は長くてカーブしています。

アイリッシュ・ウルフハウンドはどんな性格、習性?

アイリッシュ・ウルフハウンドは、おとなしく静かで、“ジェントル・ジャイアント”と呼ばれるほど、人や他の犬に対して寛容な性格です。「家庭では小羊のようで、獲物を追っているときにはライオンのようである」といわれています。


飼い主にはとても忠実で優しい犬種ですが、たまに興奮することがあるため子どもがいる家庭では注意が必要です。勇敢で走るのが速く、運動能力が高いのは猟犬由来の性質です。

アイリッシュ・ウルフハウンドを迎える際にかかる費用は?

犬を飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる一般的な費用について説明します。

タイミング 内訳 費用の目安
迎えるとき

ペットショップ、ブリーダー

※ブリーダーによる
飼い始めるとき 畜犬登録料 約3,000円
生活用品(クレートやケージなど) 約5~7万円
1年に1回かかる費用 狂犬病予防接種費 約3,500円
混合ワクチン接種費 約5,000~10,000円
毎月かかる費用 消耗品(フードやおやつなど) 約5,000~10,000円

飼い始める際にかかる費用

アイリッシュ・ウルフハウンドはペットショップでの販売は珍しく、専門のブリーダーや輸入、里親制度が主な入手方法です。ブリーダーから購入する際は時価となり価格は変動することがあります。また、常に子犬が産まれているとは限らないため、アイリッシュ・ウルフハウンドのブリーダーにあらかじめ相談したり、問い合わせたりしておくとよいでしょう。


他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。また、アイリッシュ・ウルフハウンドは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。


犬を飼い始める際の手続き

犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。


母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。


子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回すべて打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。


狂犬病予防接種は生後91日を過ぎたすべての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。


犬を飼い続けるために必要な費用

犬を養育するうえでの生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。


しかし体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてアイリッシュ・ウルフハウンドの場合は平均より高額になると考えておきましょう。


なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。


アイリッシュ・ウルフハウンドを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。


また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。アイリッシュ・ウルフハウンドは普段から散歩だけでなく、自由に走り回れる広い庭やドッグラン、ドッグスポーツができるドッグパークが近くにあると理想的です。


犬の生体代を除く初期費用としては、一般的には5~7万円程度ですが、アイリッシュ・ウルフハウンドは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より高くなる傾向にあります。


毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、アイリッシュ・ウルフハウンドは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。

マイクロチップの義務化

2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主のもとへ返すための重要な役目を果たします。


装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。


ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、アイリッシュ・ウルフハウンドを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。


迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。

迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。


そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策をとるのもおすすめです。

アイリッシュ・ウルフハウンドのしつけと社会化トレーニングのポイント

アイリッシュ・ウルフハウンドのしつけと社会化トレーニングのポイント

アイリッシュ・ウルフハウンドは、温和で飼い主に忠実な性質なのでトレーニングは難しくないでしょう。


とはいえ超大型犬に育ち、それなりの力もあるので、しっかりと飼い主が犬の興奮や力をコントロールできなくてはいけません。子犬の頃から毅然とした態度で一貫したトレーニングを行い、信頼関係をきちんと維持することが大切です。


また、子犬の頃からたくさんの人に会わせて多くの経験をさせることで、見知らぬことに対して過剰な警戒心を持たないよう社会性を育てていきましょう。

アイリッシュ・ウルフハウンドに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?

アイリッシュ・ウルフハウンドに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊び

✓散歩:1日1時間以上を2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ドッグスポーツなど


穏やかな性格ですが、猟犬由来のタフで活発な犬種です。ドッグランなどの広い場所を自由に走らせたり、ボール投げなどの猟欲を満たすような遊びを取り入れたりするとよいでしょう。


子犬期の成長が早く、生後6カ月で体重が40kg以上にもなるため、この時期に激しい運動をさせ過ぎると骨格に異常が出る場合があるため気を付けてください。

アイリッシュ・ウルフハウンドを飼うのに向いている人は?

アイリッシュ・ウルフハウンドを飼うのに向いている人

✓超大型犬のしつけをできる人
アイリッシュ・ウルフハウンドは体が大きい犬種なので、ちょっとしたことが事故につながることがあります。しっかりと犬の興奮をコントロールできるように訓練できなくてはいけないため、犬の飼育初心者には難しいでしょう。トレーニングは、プロの手を借りても徹底的に行いましょう。


✓力持ちで体力のある人
体重が40kg以上になる大きな体と力を制御できるくらい力持ちで、一緒に運動できる体力のある人が向いているでしょう。


✓広い部屋、庭がある家に住んでいる人
世界一大きな犬が家族と一緒にゆっくりとくつろげる広い部屋と、はしゃぎまわれるだけの広い庭があるとよいでしょう。大きな体のため、庭には高い塀や柵も必要です。

アイリッシュ・ウルフハウンドがかかりやすい病気と予防法は?

アイリッシュ・ウルフハウンドがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。


✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。


✓股関節形成不全
体の大きな犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な成長や肥満などにより誘発することがあるので、子犬の時期から体重管理を心がけましょう。


✓甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が減少して起こる病気で、元気消失や、脱毛やフケが増える皮膚症状、ふらつきや発作などの神経症状などさまざまな症状が現れます。幅広い年齢で発症し、有用な予防法はありません。甲状腺ホルモンを補充する治療を行います。

アイリッシュ・ウルフハウンドの日常のお手入れ

✓ブラッシング:2、3日に1回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:不要


換毛期には抜け毛が増えるため、こまめにブラッシングをしましょう。また被毛をかたくしたり被毛の色を濃く保ったりしたい場合は、アンダーコートを抜くプラッキングを行います。プラッキングはプロのトリマーにお願いするとよいでしょう。


ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。


歯みがきは毎日~3日に1回、耳掃除は1カ月に1、2回、外耳炎治療の場合は1週間に1、2回となることもあります。爪切りは1カ月に1回程度の頻度で行います。肛門腺絞りは必要のないことが多いですが、自分で出しづらい犬の場合、1カ月に1回程度がよいでしょう。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床などで滑りやすくなるためカットしてください。

アイリッシュ・ウルフハウンドとの生活で注意すべきことは?

✓関節に負担の少ない床材を選ぼう!
アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬で体重も重いため、足腰へかかる負担はできるだけ軽減したいところです。床で足が滑ると足首などの関節に負担がかかります。普段過ごす部屋の床は滑りにくい素材を選ぶか、マットなどを敷くとよいでしょう。


✓飼育スペースは十分な広さを確保!養育費も準備して
アイリッシュ・ウルフハウンドを含む超大型犬は、トイレも寝る場所も大きな体の分広さが必要になります。犬がゆっくりとくつろげる大きさのケージが必要です。さらに、食費やペットシーツ代などの消耗品や、医療費、ペットホテル費なども、小型犬、中型犬より高額になります。住居スペースや金銭的な負荷を考慮したうえで迎え入れるようにしましょう。


✓事故予防にトレーニングはしっかりと!
アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬のため、ちょっとしたことが事故につながってしまうことも考えておきましょう。頑丈なケージを用意したり、入ってほしくない場所には入れないように仕切りを設置したりするなどして事故を予防します。また力が強いので、人や動物に飛びついたりしないよう、日頃からのトレーニングも大切です。


✓肥満と激しい運動に注意
大きな体なので、肥満や激しい運動は膝や股関節、脊椎への負担が増してしまうので気を付けましょう。