2023年09月13日 更新 (2023年08月28日 公開)

毛をカットして整えるだけじゃない。犬の「トリミング」の必要性
シャンプーやトリミング、爪切りや耳掃除など、愛犬の体を清潔に保ち、病気やケガの予防にも欠かせないお手入れ。
犬種にもよりますが、自宅で行うのはなかなか大変なので「行きつけのトリミングサロンでプロのトリマーにお任せしている」という方も多いのではないでしょうか。

トリミングは、犬の見栄えを良くするための毛のカット行為だと思われる方もいるかもしれません。しかし実際には、見栄えだけでなくノミ・マダニの寄生や皮膚病、けがを防ぐために欠かせない健康管理としての側面もあります。
特に毛の長い犬種はカットを怠ると、口や肛門の周りの毛に汚れが付いて雑菌が発生しやすくなったり、目の周りの毛が伸びすぎて視界を遮り、結膜炎など目のトラブルの原因になってしまうこともあるので、定期的なトリミングが欠かせません。

また、トリミング中は犬の体をくまなく触るため犬の体の異変に気付きやすく、トリミングが病気発見のきっかけになることもあります。その意味で、飼い主さんにとってトリマーは愛犬の健康を守るパートナーの一人と言っても過言ではありません。
では、高い技術を持ち、かつ愛犬と相性の良いトリマーと出会うには、どうすればいいのでしょうか。
その悩みを解消してくれるサービスとして注目を集めているのが、急成長中の自宅出張専門トリミングサービス『ホームトリマー』です。

具体的にどのようなサービスが受けられ、愛犬にどんなメリットがあるのでしょうか。創業者で現社長を務める山瀬穂高さんにお話を伺いました。
トリマーの業界の課題。高い離職率がサービス品質の向上を阻害?
山瀬さんが自宅出張専門トリミングサービス「ホームトリマー」を設立したのは2021年秋のこと。
「実は、私はこれまで一度も犬を飼ったことがないんです。もちろん、犬は大好きなんですが、好きだからビジネスにしたというわけではありません」という山瀬さん。
起業のきっかけは、「トリマーを取り巻く就労環境に疑問を抱いたから」だといいます。

当時、人材関連の事業を手掛ける企業で働いていた山瀬さん。あるとき業務の一環としてトリマーに話を聞く機会がありました。
「もちろんトリマーの存在は知っていて、犬好きな方が楽しく働いている印象を持っていました。でも、彼女から聞いた話は想像とはまったく違うものだったんです」
そこでいろいろな人に話を聞くなどして、トリマーの就労環境について調べてみたところ、次のような問題点に気付いたといいます。
- 一般的にトリマーは給与が低く、ベテランでも年収250万円前後。
- 生活苦から他の仕事に転職してしまうケースが多い
- 働き方に柔軟性がなく、基本的に1.サロン勤務、もしくは2.開業の2択である
- サロン勤務は子育てや介護と両立が難しく、離職してしまうケースが多い
- サロンでの人間関係に悩んで辞めてしまうケースも多い
- 開業には高額な設備投資や家賃がかかり、経済的なリスクが大きい
「せっかく『大好きな犬に関わる仕事がしたい』という志をもって資格を取り、技術を磨いているのに、トリマーの努力や情熱が十分に評価されていないんです。この現状を知り、単純にすごくもったいないなと感じました」
トリマーの就労環境が悪ければ、高品質なサービスを維持することが難しくなります。それは飼い主さんや犬にとっても大きな損失になります。
だからこそ、トリマーさんが安心して働き続けられる体制を作れば、トリマーさんも飼い主さんも、そして犬たちももっとハッピーになるんじゃないか、と山瀬さんは考えました。
飼い主の希望と、トリマーのキャリア継続が叶ったスタイル「自宅出張」
さらに山瀬さんがヒアリングを進めると、飼い主さん側に次のような問題意識があることがわかりました。
- シニア犬や疾患のある犬はサロンに施術を断られるケースが多い
- 相性の良いトリマーが見つけられない
- 技術の高いトリマーに人気が集中してしまい、予約が取りづらい
- 仕事が忙しくてサロンに連れて行く時間がない
- サロンの料金が高くて続けられない
山瀬さんは「仕事を続けたいトリマー」と「良いトリマーに出会いたいと願う飼い主さん」を橋渡しする仕組みを模索しました。
そこで、辿り着いたのが、トリマーが飼い主さんの自宅に出向いて施術する「自宅出張」というスタイルでした。自宅なら、サロンに行けないシニア犬や疾病のある犬、サロンにいくと緊張してしまう臆病な性格の犬も安心して施術を受けられます。

飼い主さんもサロンに犬を連れて行く時間や手間を省くことができますし、個室で施術が行われるサロンと違って、目の前で施術の様子が見られるので安心感もあります。

料金設定が低め(総額約5,000円〜8,000円)であることも、飼い主さんにとってのメリットです。他のサロンと比べて自宅出張は、店舗や設備を整備・維持する必要がないため、低い料金での運営が可能となっています。
一方のトリマーにとっても、自宅出張スタイルで働くことには大きなメリットがあるといいます。
「まずは、離職の原因として最も多いと言われている『サロン内での人間関係』に悩まずに済むことが大きいと思います。また、予約が入ったときのみ稼働すれば良いので、子育てや介護でキャリアを中断したくない人、副業でトリマーをしたい人にも最適な働き方です。店舗や設備投資が不要なのでフリーランスのトリマーとして独立したい人にも向いています」
『ホームトリマー』では、飼い主さんから受け取る報酬の70〜80%をトリマーに還元し、サロン勤務よりも時間単価が高くなるよう配慮してます。
愛犬の健康と安全を第一に。厳しい採用基準と教育で高品質なサービスを提供
2021年秋、トリマーも飼い主も、そして犬も幸せにするサービスとして、まずは首都圏を対象地域にスタートした『ホームトリマー』。
サービス開始直後はコロナ禍だったこともあって、「外出する必要がなく、かつ人との接触を最小限にできる低リスクなトリミングサービス」として注目を集めました。
その後も「高品質なサービスが比較的リーズナブルに自宅で受けられる」「シニア犬でも年齢に関係なく施術してもらえる」と口コミで評判を呼び、予約件数が順調に増加。2023年8月現在、計64名のトリマーが在籍し、首都圏や関西など計8エリアで自宅訪問のトリミングサービスを提供しています。
現在提供しているコースは2つ。
1.トリミングコース(施術内容:全身カット、シャンプー、爪切り、耳掃除、足裏カット、肛門腺絞り、足回りカット)
2.シャンプーコース(トリミングコースの施術内容から全身カットを除いたコース)
いずれのコースも犬種ごとに基本料金が設定されており、必要に応じてオプションメニュー(歯磨きやお顔カットなど)を受けることができます。
【ホームトリマーサービス利用までの流れ】
- HP上のフォームから見積もりを取る
↓ - 見積額を確認後、仮予約
↓ - 日程や施術内容をトリマーとメールで相談・すり合わせ
↓ - 日程決定・料金のお支払い
↓ - 訪問・施術
見積りで事前に料金を確認・納得した上で申し込める、施術内容を事前に担当トリマーと相談できる、などの配慮があり、初めての人でも抵抗なく使いやすい体制になっています。

初回は飼い主さんからトリマーを指名することはできず、運営サイドが相性の良さそうなトリマーを選定した上で紹介するシステムを採用しているのも、ミスマッチによる犬や飼い主さんへのストレスを最小限にとどめるためだといいます。
「当たり前のことではありますが、一番大切にしていることは愛犬の健康と安全です」という山瀬さん。
そのためにトリマーの採用には細心の注意を払っており、厳しい採用基準を設けています。原則として10年以上のキャリアがあるトリマーを採用し、10年に満たないトリマーの場合は研修等で技術を見極めたうえでトリマー歴10年以上と同じレベルの技術があることが確認できた方のみを採用しています。
確かな技術で安心・安全なサービスを提供することで飼い主さんと犬に喜ばれることが、トリマーのモチベーションにもなる……という好循環を生み、さらなるサービス品質の底上げにつなげていきたいと考えているそう。
飼い主・愛犬・トリマー。自宅だからこそ生まれる信頼関係
実際に利用した人からは「シニア犬でも施術してもらえて、嬉しかった」「目の前でカットする様子が見られて安心。愛犬も自宅なのでリラックスしていた」と好評で、リピート率は70%を超えています。

「何度もリピート利用していただいたシニア犬の飼い主さんから愛犬が亡くなった旨の連絡があり、『ホームトリマーさんのおかげで最後まできれいな姿のまま見送ることができて感謝しています。ありがとう』という嬉しい言葉をいただいたこともあります」
ご自宅という極めてプライベートな空間で同じ時間を過ごすことで、トリマーと飼い主さんとの間に信頼関係が生まれやすいのもこのサービスの特徴なのかもしれません。
そのせいか、最近では普段のケアや医療、トレーニングなどトリミング以外の質問を受けるケースも増えているそうです。

「本来、トリマーは飼い主さんにとって愛犬の健康管理のパートナーといえる存在です。正しい知識やノウハウを飼い主さんに伝えて、必要な医療やケアへの橋渡しができるよう、内部研修にこれまで以上に注力していきます。そして次のステップとして、予防・医療などを含めた総合的なペットケアや、飼い主に対する各種サービスの展開に力を入れ、飼い主さんと愛犬のQOLの向上にしっかり貢献していきたいと考えています」
ペットの高齢化が進む中、ホームトリマーの需要は、今後ますます増えていきそうです。
今はサロンでトリミングを受けている愛犬も、加齢や病気、ケガなどが原因でサロンに行くことが難しくなる可能性は大いにあります。どんな状況でも必要なケアを愛犬に受けさせてあげるための選択肢の一つとして、「自宅出張トリミング」を覚えておきたいものです。