愛犬の命の危機!?見逃してはいけない病院に行くべきサイン5選【獣医師監修】

葛野莉奈(獣医師)

葛野莉奈(獣医師)

かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。

愛犬の命の危機!?見逃してはいけない病院に行くべきサイン5選【獣医師監修】
愛犬の命の危機!?見逃してはいけない病院に行くべきサイン5選【獣医師監修】

目次

  • ・ 犬のサインを見逃すべきでない理由とは?
  • ・ 病院に行くべきサイン1. 呼吸の異常
  • ・ 病院に行くべきサイン2. 酸素供給の異常
  • ・ 病院に行くべきサイン3. 貧血
  • ・ 病院に行くべきサイン4. 発作
  • ・ 病院に行くべきサイン5. 嘔吐
  • ・ 犬を健康に長生きさせるために飼い主ができることとは?

愛犬の様子がおかしいとき、どんなタイミングで病院に行けばいいのか迷いますよね。一見、軽い症状でも、なかには命に関わる病気のサインもあります。そこで今回は、見逃してはいけない病院に行くべきサイン5つを、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生に紹介していただきます。

犬のサインを見逃すべきでない理由とは?

「いつも完食するフードを残している」「散歩に行きたがらない」など、犬が発する不調のサインにはさまざまなものがあります。単に気まぐれであればいいのですが、そうでなかった場合に見落としてしまうと、症状が重くなることがあります。ここでは、犬の不調のサインを見逃すべきでない理由をご紹介します。

 

 

体調が悪いことを言葉で伝えることができない

犬は、体の不調を言葉で訴えることができません。目に見えない部分に異常や痛みがある場合、その表現は人間にはわかりづらいことが多いです。飼い主が気づかずに放っておくと、知らない間に悪化させてしまったり、痛みや違和感という負荷をずっと与え続けたりすることになってしまいます。

 

重病につながる可能性がある

体の内部に起こる異常の場合、飼い主が受診して検査をさせなければ、その症状にずっと気づかないことがほとんどです。いつの間にかに進行し、原因がわからないまま突然死などで死に至ってしまうこともあります。

 

治療の可能性が狭まる

早期発見・早期治療であれば、治療の選択肢が多数ある可能性は高いですが、進行の程度によってはできる治療が限られてしまいます。費用のかかる治療しか選択肢として残らず、治療を断念しなければならない状況に陥ってしまうこともあります。

 

その場合、何よりも飼い主が、病気を見つけられなかったこと、治療が遅れてしまったことに対して後悔の念を持つようになってしまうケースが多いです。悔いなく愛犬との生活を送るために、健康管理の一環として体調不良のサインを見逃さないことは大切です。

病院に行くべきサイン1. 呼吸の異常

 

「呼吸数が多い・呼吸が荒い」「一回の呼吸の際の胸の動きが大きい」「胸ではなくお腹が動いている」という呼吸の異常は病院に行くべきサインです。

 

考えられる病気や疾患

呼吸の異常は、肺や気管などの呼吸器の異常や、腹部の腫瘤や腹水などで腹部圧迫による呼吸困難などが起こっている可能性があります。長期間酸素を取り入れられないと死につながる可能性が高く、動物病院で酸素化や、呼吸がしづらい状況の改善などを早急に行う必要があります。異常が見られたらすぐに受診しましょう。緊急性は高いです。

病院に行くべきサイン2. 酸素供給の異常

「頻繁に舌の色が青くなる」「頻繁に失神して意識がなくなる」「運動を好まなくなる」「呼吸数が異常」という症状が見られた場合には、酸素供給に異常があるかもしれません。

 

考えられる病気や疾患

心疾患や呼吸器疾患による、酸素供給の異常の可能性があります。上記のような状態がずっと続いていたら、どんな場合でも受診すべき緊急度といえるでしょう。興奮時のみや、ある程度体に負荷がかかるような条件のときのみであれば、できるだけ早めに、次の異常が起こるまでに受診してください。

 

ただし、酸素供給異常の場合、死に直結してしまう可能性も高いです。心疾患は、呼吸器の異常と同様、その場で症状がおさまっても、また同じ状態になったとき、進行の度合いによっては死に至ることもあります。油断はせず、できるだけ早めに受診しましょう。

病院に行くべきサイン3. 貧血

 

「食欲がない」「元気がない」「歯茎など粘膜の色が蒼白になっている」という症状は貧血のサインです。

 

考えられる病気や疾患

何らかの原因による貧血の可能性があります。自分で自分の赤血球を壊してしまう自己免疫性の貧血や凝固不全、腹腔内の腫瘤の破裂、内臓損傷による出血など、考えられる貧血の原因はさまざまです。動物病院で原因を究明し、場合によっては輸血する必要があるでしょう。貧血の程度が著しくなると死に至る可能性もあるので、意識混濁や粘膜蒼白などいくつかの条件を満たす重度の貧血に至る前に気づいて受診することが理想的です。

病院に行くべきサイン4. 発作

「けいれん発作の頻発」「発作中に意識がなくなった」ときは病院に行くサインです。

 

考えられる病気や疾患

てんかんや脳神経系の異常の可能性があります。発作を繰り返すことで体力を消耗したり、さらなる脳神経系の異常へとつながったりする可能性もあります。意識障害と発作が併せて起こっている場合、すぐに動物病院へ連れて行くのは難しいと思います。その際は、まず近くにあるものをどかし、発作時に周りにあるものなどに無意識でぶつかり、二次的にけがをしてしまうことを防いであげてください。発作の状態を動画におさめる、そのときの状況をメモするなどして、受診時に状況をより細かく伝えられるよう備えておくとよいでしょう。

病院に行くべきサイン5. 嘔吐

 

「激しい嘔吐の繰り返し」や「食後すぐの吐出の繰り返し」

という嘔吐症状も病院に行くサインです。

 

考えられる病気や疾患

異物の誤食・腫瘤などによる通過障害や、繰り返す嘔吐を引き起こす重度の消化器疾患・吐出による誤嚥につながる可能性などがあり得ます。窒息の危険性だけでなく、栄養吸収ができないことによる体力の消耗もあるので、早急に受診して原因を解明する必要があります。

 

単発での嘔吐・吐出であれば、胃腸炎・食道炎などの可能性が高く、緊急性はあまりない状態です。受診により早く治癒する可能性も高いでしょう。しかし、激しい嘔吐や繰り返す吐出の場合、異物が消化管に詰まっていたり、腫瘤ができて通過障害が起きていたりするかもしれません。この場合は、最悪死に至る可能性もあるので、ただちに受診して検査を受けることをおすすめします。

犬を健康に長生きさせるために飼い主ができることとは?

 

愛犬に健康で長生きしてもらうために、飼い主は具体的にどういったことをすればいいのか見ていきましょう。

 

定期検診を受ける

病気の兆候がないからといって、定期検診の必要がないわけではありません。飼い犬の健康なときの平均値を知るためにも、若いころから検診を受けていると安心です。

 

加齢に伴って結果の数値は変化するので、検診を受けていると病気の予防のために生活で見直すべき点や、気を付けるべき点などがわかります。症状が現れる前に病気に気づけることも多いです。若いころは最低でも年に1回、中高齢になったら年に1〜2回の定期検診を受けることをおすすめします。

 

かかりつけの動物病院の休診日や、夜間診療を行う動物病院を調べておく

特に、持病を持っている子、シニアの子をもつ飼い主にはしておいてほしいことです。休診日はどのような対応(休診日用のダイヤルがある、提携する病院がある、など)をとってもらえるのか、夜間時も同様の対応をお願いできるのか、無理であればどこと提携しているのか、すすめてもらえる病院があるのか、予めお話しておくことはとても大切です。

 

 

日頃から健康チェックをする

日ごろの健康チェックとして、最低でも

・食欲の有無

・排泄の回数、状態のチェック

飲水量のチェック

・日ごろの行動パターン(睡眠時間や活発さはどの程度か)

などを把握できていると安心です。

 

全てを把握するのが難しければ、食欲と排泄だけでも日々チェックしましょう。体の異常に対して少しでも早く気付いてあげることが重要です。余裕があるときは、定期的に体重測定をしたり、寝ているときの呼吸の様子をチェックしたりしてみましょう。

 

まずは普段の様子がどのようなものなのか、そして一緒に暮らしている飼い主だからこそわかる、「今日はいつもと何かが違う」ということを感じ取ることが大切です。いつもと何がどう違うかということまでわかると、受診時、検査などをスムーズにできるでしょう。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家の コメント:

「愛犬の様子がちょっとおかしいな」と思ったら、病院に行くサインかもしれません。日頃から愛犬の様子をよく見て、異常があればすぐ気付けるようにしておきましょう。また、日頃から定期検診を受けたり予防接種をしたりしておくと、愛犬と長く健やかに過ごすことができます。


関連リンク

この記事に関連するキーワード