毛のない犬は7種類!ヘアレスドッグの種類と特徴、飼う際の注意点について解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

毛のない犬は7種類!ヘアレスドッグの種類と特徴、飼う際の注意点について解説【獣医師監修】
毛のない犬は7種類!ヘアレスドッグの種類と特徴、飼う際の注意点について解説【獣医師監修】

目次

  • ・ 毛のない犬(ヘアレスドッグ)は世界で7種類
  • ・ 古代から愛されていたヘアレスドッグ
  • ・ 毛のない犬①チャイニーズ・クレステッドドッグ
  • ・ 毛のない犬②ショロイツクインツレ(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)
  • ・ 毛のない犬③アメリカン・ヘアレス・テリア
  • ・ 毛のない犬④ペルービアン・ヘアレス・ドッグ
  • ・ 毛のない犬⑤ヘアレス・カーラ(ボリビアン・ヘアレス・ドッグ)
  • ・ 毛のない犬⑥アルゼンティニアン・ヘアレス・ドッグ
  • ・ 毛のない犬⑦ペルービアン・インカ・オーキッド
  • ・ 毛のない犬を飼う際の注意点は?

犬の中には、体が被毛で覆われていない「ヘアレスドッグ」と呼ばれる犬がいます。ヘアレスドッグの外見の特徴や個性に魅力を感じる人もいるでしょう。今回は、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生に教えていただいた、世界でも珍しいヘアレスドッグの種類やルーツ、性格の特徴などをまとめて解説します。

毛のない犬(ヘアレスドッグ)は世界で7種類

ヘアレスドッグとは、その名前の通り被毛が全く生えていない、または頭部やしっぽなどの一部のみに被毛が生えている犬種のことです。被毛のない犬は世界でも珍しく、特定の遺伝子が突然変異を起こして無毛の個体が生まれたと考えられ、現存しているのは7種類ほどと言われています。本来、保温の役割を担う被毛がないために、もともとの体温が高めです。また、被毛がない分、皮膚がむき出しになりボディラインがはっきり見えるのも特徴です。

古代から愛されていたヘアレスドッグ

ヘアレスドッグの歴史は古く、食用や保温などのために珍重されていた時代もあったようです。もちろん、まだ動物愛護の思想などはない昔の時代のことです。そして、ヘアレスドッグのルーツのほとんどは、南米大陸やアフリカ大陸に起因しています。

 

古代エジプト人はヘアレスドッグに特別な力があると信じていた

「エジプシャン・ヘアレス・ドッグ」というエジプト原産のヘアレスドッグがいました。古代エジプト人は、毛が生えていないことが穢れ(けがれ)のなさの表れだとされ、ヘアレスドッグには痛みのもととなる悪霊を追い払う特別な力があると信じていたようです。そのほかにも、体温が高いヘアレスドッグを、暖をとるための湯たんぽがわりや患部にあてがうことで痛みを和らげるための温湿布のようにも重宝されました。痛みを和らげるという点もヘアレスドッグが特別な力を持つと信じられていた要因の1つと考えられます。このエジプシャン・ヘアレス・ドッグは、すでに絶滅したと言われ、第二次世界大戦の戦禍で絶滅したと考えられている説と、それ以前に絶滅していた説があるようです。

 

毛のない犬①チャイニーズ・クレステッドドッグ

チャイニーズ・クレステッドドッグ

ここからは、ヘアレスドッグの犬種ごとの特徴について解説します。まずは、チャイニーズ・クレステッドドッグのルーツや性格の特徴、飼い方などについて見ていきましょう。

 

ルーツ

13世紀頃、スペイン人の中南米上陸に伴い、アフリカ原産の被毛のない犬が中国に渡ったという説が有力です。

 

平均体高・体重

オスの体高は2833㎝、メスは2330㎝。体重はそれぞれ5.5㎏以下と定められています。

 

平均寿命

平均寿命は1315歳です。

 

外見

チャイニーズ・クレステッドドッグは、完全なヘアレスではなく、頭部と足先などに被毛を持つ犬種。全身に長毛が生えるタイプもおり、長毛タイプはパウダーパフと呼ばれます。

 

性格の特徴

感受性が強く繊細で、明るく深い愛情を持つと言われています。シャイな一面を持ち合わせますが、他犬とフレンドリーに遊ぶこともできます。

 

飼育の注意点

被毛がほとんどないので、寒さ対策や紫外線対策が必須です。皮脂の分泌が多い反面、洗いすぎによる乾燥にも注意が必要なので、飼い主は日ごろから皮膚の状態をチェックしてあげましょう。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

抜け毛が少なく、無駄に吠えたりする犬種ではないので、比較的飼育しやすい犬種といえます。ただし、皮膚トラブルを抱えやすいため、こまめなスキンケアが出来るかどうかがポイントとなります。

 

毛のない犬②ショロイツクインツレ(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)

ショロイツクインツレ(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)

ショロイツクインツレ(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)のルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

ルーツ

メキシコ原産で、3500年前には存在していたと言われ、ヘアレスドッグの中でも長い歴史を持つ犬種です。当時の原住民には「地の神の使い」とみなされ、特別な儀式の褒美として用いられる食用犬でした。やがて被毛がなくノミがつきにくいので船に同乗させ害獣駆除のために飼育され、実用犬として重宝されたのちに現代の愛玩犬になりました。

 

平均体高・体重

大きさはスタンダード・バラエティー、インターミディエイド・バラエティー、ミニチュア・バラエティーの3種類に分けられます。オスとメスでサイズに違いはありません。

 

スタンダード・バラエティーの平均体高は4660cm、平均体重は9~14kgです。

 

インターミディエイト・バラエティーの平均体高は3645cm、平均体重は4.5~9kgです。

 

ミニチュア・バラエティーの平均体高は2535cm、平均体重は5kgです。

 

 

平均寿命

平均寿命は1318年です。

 

外見

全身の被毛が完全にない、あるいは頭頂部と尻尾にわずかに被毛が生えているも場合があります。幅広い胸と長い四肢やしっぽを持つバランスのとれた体型と、スムースで柔らかい皮膚が特徴です。

 

性格の特徴

子犬の頃はやんちゃですが、成長とともに静かで落ち着いた性格になるようです。警戒心、用心深い一面から、番犬としてもふさわしいとされています。

 

飼育の注意点

皮膚病、関節疾患になりやすい傾向にあるので、皮膚のケアや体重管理は必須です。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

抜け毛が少なく、性格も朗らかですので、初心者にも比較的飼育しやすい犬種ですが、やはり皮膚トラブルを抱えやすいため、ケアが出来るかどうかがポイントとなります。

 

毛のない犬③アメリカン・ヘアレス・テリア

アメリカン・ヘアレス・テリア

アメリカン・ヘアレス・テリアのルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

原産国とルーツ

アメリカが原産の新しい犬種で、アメリカン・ラット・テリアをもとにして生み出された被毛がない犬種です。

 

平均体高・体重

平均体高は1845.7㎝、平均体重は2.512㎏です。小型犬から中型犬くらいまで、個体によって体格差が大きいです。

 

平均寿命

平均寿命は1416歳です。

 

外見

基本的には無毛ですが、中には毛のあるパウダータイプもいるようです。

 

性格の特徴

テリア犬種は荒っぽい性格の子が多いですが、アメリカン・ヘアレス・テリアは比較的穏やかで、友好的に振舞うことができる犬種です。好奇心が強く、穴掘りなどを好みます。

 

飼育の注意点

水が苦手なので、水辺などの水がある場所では危険がないよう監視しましょう。皮膚トラブルにも注意が必要です。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

気の強さからしつけ、トレーニングがしにくい一面も持っているので、根気よくしつけ、トレーニングができる人が良いでしょう。

 

毛のない犬④ペルービアン・ヘアレス・ドッグ

ペルービアン・ヘアレス・ドッグ

ペルービアン・ヘアレス・ドッグのルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

ルーツ

ペルー原産の犬種で、インカ帝国時代には既に存在していたという古い歴史を持ちます。

 

平均体高・体重

ペルービアン・ヘアレス・ドッグはその大きさによって小型、中型、大型に分類されます。

 

小型の平均体高は2540cm、平均体重は48kgほどです。

 

中型の平均体高は4050cm、平均体重は812kgほどです。

 

大型の平均体高は5065㎝、平均体重は1225㎏ほどです。

 

平均寿命

平均寿命は1112歳です。

 

外見

基本的に被毛はなく、生えているとしても頭頂部や尾などにわずかに生えるのみです。毛色はブラック、グレー、ダークブラウン、ブロンドなどさまざまです。皮膚のどこかにピンク色の班が見られる個体もいます。

 

性格の特徴

気品で快活、愛情深い反面、用心深く警戒心も強い一面を持ち合わせています。

 

飼育の注意点

皮膚が弱いため、皮膚ケアは必須です。また、被毛がないことによって体温調節が苦手で風邪をひきやすいので、温度管理も重要です。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

日本国内で飼育されている頭数が少なく情報収集等が難しいため、初心者の方には難しいかもしれません。

毛のない犬⑤ヘアレス・カーラ(ボリビアン・ヘアレス・ドッグ)

ヘアレス・カーラ(ボリビアン・ヘアレス・ドッグ)のルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

原産国とルーツ

ペルー原産のペルービアン・ヘアレス・ドッグに、ボリビア産の犬を掛け合わせて作られた犬種です。古代ヴァンカ族が食用として飼育していた歴史を持ち、ヴァンカ族がインカ帝国に敗れた後、戦利品として持ち帰られて貴族用ペットとして飼育。その後改良され、現在のようになったと言われています。犬種名のカーラ(Khala)とは、「裸」という意味です。

 

平均体高・体重

ヘアレス・カーラは外見の違いからメディオ(ポッタリータイプ)とグランデ(サイトハウンドタイプ)の2種類があります。それぞれのサイズは以下の通りです。

 

メディオ(ポッタリータイプ)の平均体高は3641㎝、平均体重は6.813.9㎏です。

 

グランデ(サイトハウンドタイプ)の平均体高は4351㎝、平均体重は813.5㎏です。

 

 

平均寿命

平均寿命は1014歳と言われています。

 

外見

基本的に全身無毛ですが、中には頭に白っぽい長毛が生える個体もいます。メディオもグランデでも足と首が長くすらりとした細身の体型で、立ち耳なのは共通していますが、グランデのほうが足が長めだそうです。

 

性格の特徴

飼い主や家族に忠実、愛情深さや知性も持ち合わせています。反面、警戒心も強い性格でもあります。

 

飼育の注意点

皮膚が弱いため、皮膚ケアは必須です。また、被毛がないため体温調節が苦手で風邪をひきやすいので、温度管理も重要です。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

皮膚のケアが行える方に向いています。また、警戒心が強いため、しつけやトレーニングができるかどうかがポイントです。

毛のない犬⑥アルゼンティニアン・ヘアレス・ドッグ

アルゼンティニアン・ヘアレス・ドッグのルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

ルーツ

アルゼンチンが原産で、ペルー原産のヘアレスドッグが元になった犬種です。現在は非常に希少で、アルゼンチン国内でもなかなか見ることが出来ず、絶滅の危機にあると言われています。

 

平均体高

平均体高は2545㎝ほどです。

 

外見

被毛はほとんどなく、頭部や足先、尾の先などに部分的に生えている場合があります。

 

性格の特徴

愛情深く忠実な反面、警戒心が強めです。

 

飼育の注意点

ほかのヘアレスドッグ同様、皮膚トラブルが起きやすいため、皮膚ケアが重要であると考えられます。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

飼育頭数が少ないので情報交換が難しい事、皮膚疾患を患いやすいことから、初心者向きではないと考えられます。

 

毛のない犬⑦ペルービアン・インカ・オーキッド

ペルービアン・インカ・オーキッド

ペルービアン・インカ・オーキッドのルーツや性格の特徴、飼い方などについて紹介します。

 

ルーツ

ペルー原産の犬種で、前述のペルービアン・ヘアレス・ドッグより肌の色が明るいタイプです。起源は定かではないものの、インカ帝国時代の前からペルー一帯で飼育されていたとされています。

 

平均体高・体重

体高は小型、中型、大型に分けられています。大きさ別に見ていきましょう。

 

小型の平均体高は2540cm、平均体重は48kgです。

 

中型の平均体高は4050cm、平均体重は812kgです。

 

大型の平均体高は5065㎝、平均体重は1225kgです。

 

平均寿命

平均寿命は1112歳です。

 

外見

基本的に無毛です。皮膚は無地の場合と、斑点が見られる場合があります。バランスのとれた体型でエレガントな雰囲気を備えています。

 

性格の特徴

愛情深く献身的、体力も活気もある犬種ですが、警戒心や臆病な一面も持ち合わせています。また、視力が優れたサイトハウンドの気質も持っています。

 

飼育の注意点

皮膚トラブルが起こりやすい他、運動量が必要なのでしっかりと散歩をさせたいです。ハウンド気質によって他の動物を獲物とみなしてしまうこともあるため、小動物と一緒に飼うことは控えましょう。トレーニングやしつけは必須です。

 

飼いやすさ(初心者向きかどうか)

十分な皮膚ケアや運動量を確保しなければならないこと、ハウンド気質を理解しなければならないこと、国内での飼育頭数が少なく情報交換が難しいことから、初心者には向いていないと考えられます。

 

毛のない犬を飼う際の注意点は?

被毛がないことが最大の特徴ですので、そこをしたうえでしっかりとケアしてあげられるかが飼育のポイントです。注意するべき点を確認しましょう。

 

紫外線や乾燥対策が必要

皮膚を守る被毛がないため、紫外線の影響による皮膚トラブルを起こしやすくいです。また、皮膚の分泌物が多めです。犬用の日焼け止めや定期的なシャンプー、保湿剤を塗るなどスキンケアが必要です。

 

防寒対策を行う

ヘアレスドッグは寒さが苦手なため、特に冬場は風邪をひきやすいです。犬用の服を着せてあげる、室温調整をするなど防寒には気をつけてあげましょう。

 

抜け毛が少ないため、アレルギーを持つ人に向いている

元々被毛がなく、生えていてもごくわずかなため、アレルゲンとなる被毛が飛び散りにくいです。アレルギーを持っている方は、ヘアレスドッグを検討するのもよいかもしれません。しかし、全ての方に当てはまるわけではないので、一度、専門家に相談することをおすすめします。

 

月に12回シャンプーをする

被毛がほとんど生えていないヘアレスドッグですが、皮膚の汚れや余計な皮脂を落とすために、犬用のシャンプーを使って体を洗ってあげましょう。月に12回の頻度が適切です。シャンプー後には、体を拭き、被毛が生えている部分があれば、その部分のみドライヤーをかけます。最後に保湿を忘れずに行いましょう。

専門家の コメント:

個性的な犬種といえば、一番に頭に浮かぶのがヘアレスドッグかもしれません。その独特の肌触りや、体温の高さに加え、特別な犬種を飼っているという面白みもありますよね。被毛がないため肌が刺激を受けやすくスキンケアには気を使いますし、温度管理にも配慮が必要ですが、その分愛着もひとしお。一緒に過ごすうちに特別な存在になるでしょう。


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