フラットコーテッド・レトリーバーの性格や特徴は?飼い方のコツとかかりやすい病気について解説【獣医師監修】

フラットコーテッド・レトリーバーの性格や特徴は?飼い方のコツとかかりやすい病気について解説【獣医師監修】

犬種図鑑

2023年02月22日 更新 (2022年07月21日 公開)

バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。

フラットコーテッド・レトリーバーの性格や特徴は?飼い方のコツとかかりやすい病気について解説【獣医師監修】

フラットコーテッド・レトリーバーの歴史やルーツは?

フラットコーテッド・レトリーバーは、イギリスが原産のレトリーバー犬種。祖先犬については諸説あり、小型のニューファンドランドまたはチェサピーク・ベイ・レトリバーとする説や、ラブラドールまたはカーリーコーテッド・レトリバーとする説があります。

 

1800年代に鳥猟が盛んだったイギリスで、ハンターが撃ち落とした獲物を回収する目的で作出されました。鳥を傷つけずにやさしく咥えて持って来られるソフトマウス、水はじきの良い被毛、ハンターの指示を正確に実行する優れた訓練能力を持つ鳥猟犬です。第二次世界大戦後、一時は絶滅の危機に瀕しましたが、熱心な愛好家により繁殖が行われ、現在は人気の犬種として復活しました。

フラットコーテッド・レトリーバーの平均的な体高、体重は?

フラットコーテッド・レトリーバーの平均的な体高と体重

フラットコーテッド・レトリーバーの平均的な体高と体重は次のとおりです。

 

体高

平均的な体高は、オス約5961.5 cm、メス約56.559 cmです。

 

体重

平均的な体重は、オス約27~36 kg、メス約25~32 kgです。

フラットコーテッド・レトリーバーの平均寿命は?

フラットコーテッド・レトリーバーの平均寿命は810歳程度。ラブラドール・レトリーバーなど他のレトリーバー犬種と比べるとやや短い寿命と言えます。これまで確認されている最高齢は14歳という記録があるようです。

フラットコーテッド・レトリーバーの毛色の種類や被毛の特徴は?

フラットコーテッド・レトリーバーの被毛にはどのような特徴があるのでしょうか?

 

毛色の種類

フラットコーテッド・レトリーバーの毛色は、単色のブラック、単色のレバー(濃い赤褐色)の2色に限られています。その他の毛色は認められていません。

 

被毛の特徴

名前に入っている通り、被毛は「フラットコート」と呼ばれる平滑毛で、艶のある長めのストレート。中には多少、ウェーブがかかる犬もいます。上毛と下毛の二層構造からなるダブルコートで、四肢と尻尾に豊かな飾り毛があるエレガントな見た目です。

 

換毛期の抜け毛はそれなりに多く、換毛期には毎日、それ以外の時期は週に1回程度のブラッシングが必要です。

フラットコーテッド・レトリーバーの外見や吠え声の特徴は?

フラットコーテッド・レトリーバーの外見や吠え声の特徴も確認していきましょう。

 

外見

滑らかで艶のある美しい被毛を持ち、他のレトリーバー犬種に比べると細身ですが、筋肉質で均整の取れた体つきをしています。スマートで美しい容姿です。

 

吠え声

獣医師としての個人的な印象としては、フラットコーテッド・レトリーバーは、やたらと吠えることはなく、他のレトリーバー犬と同様に、必要な時に短く「ワン!」と低めの声で吠えます。

フラットコーテッド・レトリーバーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?

フラットコーテッド・レトリーバーの性格には次のような特徴があります。

 

明るくて愛嬌があり社交的

しっぽを勢いよくブンブン振り、嬉しさを全身で表現する明るい性格。フレンドリーで「永遠の子犬」と呼ばれるほど天真爛漫です。

 

高い学習能力を持つ

優秀な鳥猟犬であることから賢く従順です。訓練やトレーニングを得意とし、高い学習能力を持っています。

 

愛情深い

人に対しても愛情深く、好意的に接します。

 

エネルギッシュ

作業意欲が高く、アクティブでエネルギッシュな一面もあります。

 

オスとメスの性格の違い

オスとメスの差は一般的に犬に見られる性差と同様、オスはより活発でエネルギッシュ、メスは比較的穏やかです。

 

フラットコーテッド・レトリーバーを飼うのに向いている人は?

フラットコーテッド・レトリーバーの子犬

フラットコーテッド・レトリーバーを飼うのに向き・不向きはあるのでしょうか。どんな人が飼育に向いているのかを見ていきましょう。

 

体力がある人

力が強くアクティブな大型犬種のため、力が強い人、体力がある人の方が飼うのに向いています。

 

金銭面の負担をクリアできる人

体が大きい分、フード代が小型犬よりも高くなり、医療費も高額になりやすい傾向があります。飼育にかかる金銭的負担をクリアできるかどうか、事前にしっかりと確認しておきましょう。

 

広い飼育スペースを確保できる人

狭い場所に閉じ込めて飼うことには適していないため、飼育するのに十分な広い敷地があることも、飼う上での条件となります。

 

フラットコーテッド・レトリーバーは初心者向きの犬?

人に対しては好意的に接する穏やかな性格ではありますが、運動欲求や作業欲求が高く、体も大きいため、誰にでも簡単に飼える犬種ではありません。初心者にはやや難しいと言えるでしょう。

フラットコーテッド・レトリーバーを飼ううえで気をつけることは?

フラットコーテッド・レトリーバーを飼う際は、特に次の点に気をつけましょう。

 

暑さ対策

暑さや寒さに比較的強いとされる犬種ですが、日本の夏は高温多湿で全身が被毛に覆われた犬には辛い環境です。室内の温度が高くなる時は冷房をつけ、外気温が高い時間帯の散歩は避けるようにしてください。

 

滑りにくい床にする

フラットコーテッド・レトリーバーに限ったことではありませんが、加齢で筋肉量が落ちると滑りやすい床の上で体を安定させるのが難しくなります。床は滑りにくい材質のものにすると安全です。

 

ハウストレーニングを行う

甘えん坊で人と一緒にいることをこよなく愛する犬種なので、ひとりにされることは苦手です。分離不安にならないよう、日常的に飼い主がいなくても安心できる環境を作りましょう。ハウスが大好きになるとお留守番の間も安心して過ごすことができるので、ハウストレーニングをしておくことをおすすめします。

フラットコーテッド・レトリーバーのしつけを始める時期やのしつけポイントは?

フラットコーテッド・レトリーバーのしつけ

ここからは、フラットコーテッド・レトリーバーのしつけをする際のポイントを解説します。

 

しつけを始める時期

フラットコーテッド・レトリーバーのしつけは、お家に迎えたらなるべく早く始めましょう。物覚えがよくトレーニングが好きな犬種なので、子犬の時期から訓練を開始するとよく覚えてくれます。

 

また、アクティブな性質なので社会化の訓練は必須です。なるべく早く社会化を始められるよう、ワクチン接種が終わる前でも抱っこして散歩に連れ出してください。散歩の際は、愛犬の好物を持って行きましょう。散歩先で家族以外の人、犬や猫などの動物、車やバイクの音などに触れさせながら、大好きな食べ物を食べさせてあげると、外の環境や外的な刺激に対して良い印象を持たせることができます。

 

しつけのポイント

しつけのポイントはテンションを上げすぎないこと、落ち着いている状態を褒めてあげることです。興奮するとテンションが上がりすぎて制御が効かなくなるので、落ち着いている時にしっかり褒めてその状態が良いことだと教えましょう。

 

フラットコーテッド・レトリーバーの食事の注意点は?

健康な体づくりのためには、食事の与え方にも配慮が必要です。フラットコーテッド・レトリーバーの食事は、「総合栄養食」と書かれたドッグフードを与えてください。フードの量は、袋に記載された表示に従います。体重を定期的に測り、体を触ってBCS(ボディコンディションスコア)をチェックし、食事の量を調節するとよいでしょう。子犬の間は成長に合わせて134回、成犬になってからは12回に分けて与えます。

フラットコーテッド・レトリーバーがかかりやすい病気は?

愛犬に健康に長生きしてもらうためにも、フラットコーテッド・レトリーバーがかかりやすい病気についても知っておきましょう。

 

股関節形成不全

股関節形成不全は、股関節に形態的な異常が現れることで、痛みや歩行異常が起きる病気です。発育期の栄養バランスや遺伝的要因などが発症に関与していると言われています。進行すると横座りをする、腰を振って歩くなどの症状が現れます。軽度であれば体重管理や痛み止めなどの内科治療を行いますが、重度になると外科手術が必要となります。

 

膝蓋骨脱臼

「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう状態のことです。遺伝的な要因の他、ケガや事故による外傷が原因となることもあります。脱臼の程度や骨の変形の度合いによって症状には幅があり、軽度の場合は無症状ですが、重度になると歩くことが困難になるケースも見られます。治療法は痛み止めやレーザー治療などの保存療法、手術による外科療法など、ステージに応じて選択されます。

 

進行性網膜萎縮症

眼球の奥にある網膜が変性し、視力が徐々に低下する遺伝性の疾患です。初期段階では視力の低下に伴い、ものにぶつかりやすくなる、動きが鈍くなるなどの異常が現れ、進行すると完全に失明してしまいます。瞳孔が開いた状態になるため、黒目がちでキラキラと輝く、一見すると「ビー玉」のような瞳になるのが特徴的です。決定的な治療法はありませんが、徐々に進行していく疾患なので、目が見えにくくても生活しやすい環境を整えてあげることが大切です。

 

てんかん

繰り返される全身性の発作を特徴とする脳疾患で、脳神経の一時的な興奮によって起こります。症状は、全身性のけいれんや意識障害、体の一部分のみの発作など、脳の興奮が起きた場所によって異なります。発作の時間は23分程度であることが多く、軽度であれば、その後は何事もなかったように過ごします。重度になると1日のうちに何度も発作が起きたり、数分以上にわたり発作が続いたりすることもあります。てんかんの診断には精密検査が必要で、他に該当する病気がないかを調べる「除外診断」という方法を用います。てんかんと診断されたら発作の頻度に応じて投薬治療を行うか、ごく軽い発作であれば無治療で経過を観察することもあります。

 

糖尿病

糖尿病は、血糖値を調節するインスリンの作用不足によって血糖値が高くなる病気です。高血糖になると、尿に糖が排出されるため「糖尿病」と呼ばれます。食事から消化吸収された糖が細胞に取り込まれず、血液中にとどまることで血糖値が高くなります。進行すると食べているのに痩せてくる、水をよく飲むといった症状が現れ、重度になると命に関わることもあります。肥満にならないよう食事の管理をしっかりと行い、適度な運動を心がけることが予防につながります。

 

悪性腫瘍

フラットコーテッド・レトリーバーは、他の犬種と比べて、悪性腫瘍を発症しやすいとされています。悪性腫瘍とは「がん」のことで、がんの特徴は転移や再発があることです。がんの症状はその種類や発生した場所、ステージ、転移の有無などにより異なります。

 

フラットコーテッド・レトリーバーに特徴的ながんとしては、組織球肉腫というものがあります。組織球と呼ばれる免疫に関わる細胞のがんで、非常に悪性度が高く急速に全身に転移します。発症の原因としては遺伝の関与が示唆されており、有効な予防法は残念ながらありません。食欲の低下や体重の減少などの体調の変化が見られたら、動物病院を受診するようにしましょう。

 

遺伝的疾患

ここまでご紹介してきたように、フラットコーテッド・レトリーバーは、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼、悪性腫瘍など遺伝的疾患が比較的多い犬種です。親犬の遺伝的要素を受け継ぐので、親犬の遺伝子検査が行われていることが望ましいと言えます。

フラットコーテッド・レトリーバーを散歩させる際に気をつけることは?

フラットコーテッド・レトリーバーには、どのような散歩が向いているのでしょうか。散歩の際に気をつけるべきポイントも確認しておきましょう。

 

時間/頻度

運動量の多い犬種のため、12回、1時間以上の散歩に連れて行ってください。アクティブに動くことが必要なので、ただ歩くだけでなく、思いっきり走ったり、泳いだりできるとなお良いでしょう。

 

気をつけた方がよいこと

興奮しやすく、引っ張られると制御が難しくなります。日頃から飼い主と歩調を合わせて歩くトレーニングをしておくと良いでしょう。難しい場合は早めにドッグトレーナーなどの専門家に相談してください。

 

フラットコーテッド・レトリーバーにおすすめの遊びは?

走るフラットコーテッド・レトリーバー

フラットコーテッド・レトリーバーには、次のような遊びがおすすめです。

 

ドッグスポーツ、アジリティ

アクティブでエネルギッシュ、作業意欲や運動欲求が高いフラットコーテッド・レトリーバーには、運動神経を生かせるドッグスポーツやアジリティの他、水泳などのウォータースポーツもおすすめです。ぜひ愛犬と一緒にスポーツを楽しんでください。

 

レトリーブ遊び

ボールやフリスビーを投げて持ってこさせるレトリーブ遊びは、猟犬としての特性を十分発揮できるおすすめの遊びです。

 

ノーズワーク

嗅覚を使って隠したフードやおやつを探させるフードサーチなど、犬種ならではの本能を刺激する遊びも、楽しんで取り組めるので向いています。

フラットコーテッド・レトリーバーの日常のお手入れで気をつけることは?

フラットコーテッド・レトリーバーを飼う上で重要なのが日常のお手入れです。お手入れの際、気をつけるべきポイントを知っておきましょう。

 

換毛期の抜け毛のケア

フラットコーテッド・レトリーバーは、換毛期の抜け毛が比較的多いので、毎日ブラッシングをしてください。それ以外の時期でも、毛玉や毛のもつれが発生することがあるので、こまめなブラッシングが必要です。

 

定期的なシャンプー

被毛を清潔に保つため、定期的にシャンプーを行ってください。通常は、月に12回程度で構いません。絡まりやすいので、先にブラッシングをしてから濡らすようにしましょう。


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