犬から見た人間ってどう見えるの?愛犬はなにを考えている?犬が見つめてくる理由を解説【獣医師監修】

林美彩(獣医師)

林美彩(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬から見た人間ってどう見えるの?愛犬はなにを考えている?犬が見つめてくる理由を解説【獣医師監修】
犬から見た人間ってどう見えるの?愛犬はなにを考えている?犬が見つめてくる理由を解説【獣医師監修】

目次

  • ・ 犬が人間を見つめてくる理由は?
  • ・ 犬の視力はどれくらい?
  • ・ 犬は人間のことをどう見ているの?
  • ・ 犬の表情によって感じていることが違う?
  • ・ 犬に目線をそらされてしまうときは?
  • ・ 飼い主の愛犬への無関心が与える問題点とは?

ともに生活しわが子のような存在となった愛犬とでも、当然のことながら言葉を交わすことはできません。気持ちを読み取って応えてあげたいけれど、愛犬がなにを求めているかを知るのはなかなか難しいものですよね。この記事では犬がどう感じているのか、また、飼い主をじっと見つめてくるときは何を考えているのかなどについて、chicoどうぶつ診療所 所長で獣医師の林美彩先生監修のもと解説していきます。

犬が人間を見つめてくる理由は?

愛らしい目で愛犬に見つめられるとつい、「なあに?どうしたの?」と話しかけたくなりますね。愛犬が飼い主をじっと見つめるとき、なにを考えているのでしょうか。

 

飼い主と目が合うとき、犬は何を感じている?

犬が相手を直視する場合は他の犬や動物を威嚇している場合が多いのですが、飼い主を見つめるときには心を通わせていると考えられます。

 

飼い主とコミュニケーションを図ろうとしている

犬はアイコンタクトでコミュニケーションを図る動物です。飼い主と愛犬は視線を合わせることで、双方で愛情ホルモンと言われるオキシトシンの分泌が高まるということもわかっています。愛犬と見つめ合う瞬間の幸せな気持ちを実証していますね。

 

愛情を表現して甘えている

穏やかな表情で見つめてくるときには、飼い主に対しての愛情や信頼を寄せている状態と言われています。

 

飼い主の行動を観察している

飼い主が何かをしているのをじっと見つめているのは、飼い主の行動を観察していると考えられます。「どこかへ連れて行ってくれるのかな?」「なにかくれるかな?」など
と期待しているのかもしれませんね。

 

何かを求めておねだりしている

目の輝きがいつもよりキラキラしていたり、上目遣い、首をかしげる、尻尾が小刻みに動いているなどのときには、さらに何かの要求・意味が込められていると考えられます。「おやつが欲しい」「遊んでほしい」「お散歩に行きたい」などを要求しているかもしれません。可能であれば愛犬のおねだりに応えてあげたいものですね。

緊張や不安、拒否の気持ちを示している

静かに見つめているのではなく、鼻や眉間にしわが寄っていたり、歯をむき出しにしているときには、緊張や不安を感じていると考えられます。

こういった感情が見られるときに、何かを無理強いすると飼い主を攻撃してしまうことがあります。こうした様子のときには、犬に余計なストレスを与えないようにしましょう。また、トイレ中に見つめてくる犬も場合には、排泄中は無防備な状態なので、周りを見張っていてほしいという気持ちから見つめてくるともいわれています。

 

見つめながら唸っている場合はどうしたらいい?

じっと見つめるだけでなく、唸るという行動が伴う場合には、敵意をむけていると考えられます。その際には、飼い主が目線を外して、敵意がないということを伝えるとよいでしょう。

犬の視力はどれくらい?

犬の視力は人間よりも弱く、人間でいうと0.20.3程度の視力しかありません。焦点を合わせる能力が低く、視界はぼやけて見えていると言われています。

 

ただし、犬は嗅覚と聴覚が非常に優れているため、視力が低くてもものを立体的に把握できます。そのため、優れた嗅覚と聴覚が視力を補うことで、同程度の視力を持つ人間よりも世界をはっきりと知覚できているのです。

 

できるだけ犬と目線を合わせて触れてあげたり、声をかけてあげることでより親密なコミュニケーションが取れるかもしれませんね。

犬は人間のことをどう見ているの?

犬はもともと群れで暮らす生き物ですので、一緒に暮らす飼い主に対しても仲間意識を持っています。

 

犬は飼い主にどんな感情を持っているの?

人間と犬との関係の歴史は1万年以上も前にさかのぼるといわれています。昔から飼い主と使役犬としての関係を超え、お互いになくてはならない存在として暮らしていたことを考えると、犬は飼い主を信頼し、心を許していると考えられます。

 

犬はそもそも人間のことが好き?

米国エモリー大学で行われた動物認知学者による実験では、犬をMRIに寝かせて身近な人や知らない人、そして、ほかの犬のニオイなどを嗅がせて神経の反応をみました。その結果、飼い主のニオイを嗅ぐと、犬の脳内で「尾状核(びじょうかく)」という神経をつかさどる部分の「報酬系」が活性化されることが分かりました。報酬系とは、ヒト・動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に「快」の感覚を与える神経系のことです。犬は飼い主の匂いや物音を何よりも優先させるということも分かっています。

 

犬は人間と気持ちを共有できる?

前述したエモリー大学の研究では、悲痛な音声、嬉しそうな音声に対しても聴覚皮質が反応していました。つまり、人と犬の間には昔から信頼関係で結ばれている歴史があるためか、嬉しさや悲しさを共有していることがわかります。

犬の表情によって感じていることが違う?

犬から見た人間ってどう見えるの?愛犬はなにを考えている?犬が見つめてくる理由を解説【獣医師監修】

見つめるときの様子によって、甘えやおねだりだけではなく、犬がストレスを感じている場合があると解説しました。愛犬の表情を読み取って、気持ちを汲み取ってあげられるといいですね。

 

目を細めていて穏やかな表情をしているとき

犬は動物の中でも人間と非常に密接に関わってきた歴史があります。その結果、長い年月をかけて表情筋が発達してきていることがわかっています。目を細めて穏やかな表情をしているように見えるときは、人間同様にリラックスして心地よい状態です。根底には飼い主への愛情や信頼を表現していると言えますね。

 

眠たそうな目で見つめてくるとき

愛犬が眠そうに見えることがありますよね。安心した状態でリラックスしていて、実際に眠いときに見られる様子です。

犬に目線をそらされてしまうときは?

つい可愛くて、愛犬やほかの犬をつい見つめてしまう人が多いでしょう。そんなときに、犬が目線をそらことがありあります。その理由としては以下のようなものが考えられます。

 

興奮を抑えている

冷静さを取り戻すために、目をそらすという行動をすることがあります。興奮をしているので、尻尾を振っていることが多い傾向にあります。

 

苦手なことに緊張している

犬は、病院に行く、トリミング・トレーニングなど、自分が苦手と思うことから避けたいときに、目線をそらすことがあります。そのときには、尻尾も下がっていることがあるので、目線と合わせてチェックするとよいでしょう。

 

ストレスから逃れるため

動物世界では、目を合わせるのは威嚇の意味合いが強い場合があり、目を合わせ続けることはストレスにもなります。目をそらせることによって、できる限りストレスを緩和しようとします。

 

叱られているとき

愛情はあっても、飼い主は愛犬を叱らないといけないこともあります。そんなときに愛犬が目をそらすのは、気持ちを落ち着かせるためや、飼い主に対して怒らないでほしいという気持ちになっていると考えられます。

 

敵対心がないことを示そうとしている

叱られているときもそうですが、飼い主に対して敵意がないという気持ちを表現するときに、目線を外すことがあります。

 

同じ高さにしゃがんで接した方がいい?

愛犬やほかの犬が緊張やストレスを感じている様子が見えたら、それは人間への恐怖心からきている可能性もあります。

自分より大きな動物が見下ろしてきたら恐怖を感じるかもしれないので、そんなときは、しゃがんで目線を同じ高さにして接することをおすすめします。

飼い主の愛犬への無関心が与える問題点とは?

犬から見た人間ってどう見えるの?愛犬はなにを考えている?犬が見つめてくる理由を解説【獣医師監修】

犬種にもよりますが、群れで生活する動物である犬は寂しがり屋さんです。大好きな飼い主から関心を向けられなくなったり、放っておかれたりすることは犬の心に大きな影響を及ぼします。

 

犬が飼い主の愛情を感じなくなる

犬は人間の気持ちを読み取って感じる事ができますので、無関心な状態が続くと寂しい思いが続き、そのうち期待も薄れて、飼い主への愛情も薄らいでしまいます。

 

信頼関係が壊れてしまう

飼い主の無関心が続くと、せっかく築きあげた信頼関係が破綻してしまうこともあります。

 

言うことを聞かなくなる、噛んだり吠えたりする

信頼関係が破綻してすることで、この人は守ってくれないので自分の身は自分で守らなければならないと感じるようになります。その結果、飼い主のいうことを聞かない、吠えたり噛んだりするという行動が見られることもあります。

 

犬にとって居心地の悪い居住環境になってしまう

飼い主の無関心から愛犬への配慮もなくなり、愛犬にとって居住スペースが居心地悪いものになってしまっている可能性があります。具体的には、足腰に負担がかかりやすい床材やレイアウトになっている、ケージの場所の近くにテレビなどの大きな音が出るようなものが置いてある、人の動線近くにベッドが置いてあるなどです。

 

危険な目に合う可能性が高くなる

上記同様、愛犬に対しての関心が薄れると、食べてはいけないようなものを犬が届くような場所に置いていたり、中毒を起こしてしまう観葉植物などを部屋に置くなど、犬にとって危険な空間を作り出してしまう可能性が考えられます。

専門家の コメント:

愛情深くて、飼い主の気持ちに応えてくれる子が多いのが犬の大きな魅力ですよね。愛犬にとって飼い主の存在は大きく、愛情をかけてくれることが、犬の心と体の健康に直結します。おうちに迎え入れ、家族となったならば、いつも心にかけて愛情を持って接してあげてくださいね。忙しいときや悩み多き日々にこそ、飼い主に思い出して欲しいことです。


関連リンク

この記事に関連するキーワード