犬がお腹を見せる理由は服従心ではない?隠された心理を解説【獣医師監修】

犬がお腹を見せる理由は服従心ではない?隠された心理を解説【獣医師監修】

愛犬がお腹を見せて寝っ転がる仕草は、“服従”を意味しているという話を聞いたことはありませんか? 専門家によると、それは少し誤解があるようです。意外に知られていないこの行動の理由や飼い主の適切な対応について、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生監修の元、解説します。

監修/フリッツ吉川綾先生(獣医師、獣医学博士、日本獣医動物行動診療科認定医)

動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。東京都文京区なないろ動物病院(一般診療、行動診療)などに勤務。動物の心身の健康と、飼い主様のより幸せで充実したペットライフをサポートしている。そのほか、獣医動物行動学に関する研究、専門書の執筆、翻訳も。

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犬がお腹を見せる理由は?

犬がお腹を見せる理由
いわゆる「へそ天」と呼ばれる、仰向けになってお腹を見せる体勢。犬種や年齢、体型によってもその犬が一番楽な体勢は異なりますが、多くの場合、へそ天の体勢は快適でリラックスしている証拠だと言えます。

 

一定の条件が揃わないと、へそ天は見られません。一般的には寒さや痛みを感じているときなど、不快がある状態では見られない行動なので、愛犬がへそ天をしていたら心地よい環境を与えられていると思っていいでしょう。

 

家庭内で見られるへそ天の主な理由は下記です。

 

リラックスしている、安心している

不安や恐怖もなく、安心してくつろいでいるのでしょう。そっとしておいてあげて大丈夫です。

 

飼い主に甘えている

過去に、へそ天をしたら飼い主がお腹を撫でてくれたなどの学習をしている場合、飼い主にかまってほしくてお腹を見せている場合があります。

 

悪さをして反省している

犬は「敵意はありません」という意味で相手にお腹を見せることもあります。

犬がお腹を見せるのは服従のサインではない?

現在家庭で飼われている犬は、人との間に親子のような家族としての関係を築いています。なので、犬が家族に対して明確な上下関係をもっているとは言えません。ただ、「敵意がない」ということを表す場面はあります。例えば人同士でも「ごめん!」と謝ることがあるように、犬が何か悪いことをしたと自覚したり、失敗をごまかそうとしたりするときには相手に敵意がないことを示すでしょう。

 

イエイヌの祖先であるオオカミの習性から「犬がお腹を見せるのは服従のサイン」と考えられ、「人にお腹を見せないのは犬になめられているからであり、お腹を見せることを強要した方が良い」と言われることがあるかもしれません。しかし、人と生活する中で、へそ天はリラックスしている、飼い主に甘えているときにみられることがほとんどです。敵意がないことを示す場合であっても、これは、信頼関係のある家族に対して行う行動です。服従、つまり「飼い主が上、犬が下」という認識をさせるために、お腹を出すよう強要することは信頼関係を壊してしまうこともあります。

犬同士でお腹を見せるのはどんな意味があるの?

犬同士のレスリングで仰向けになってお腹を見せる体勢は、相手に追い込まれている、敵意のないことを表しているわけではなく、首を噛まれないように守る、自分が遊びとしての攻撃をしかけるぞという前触れだという報告 もあります。楽しい遊びの一貫としてみられることがあるでしょう。

 

ただし、双方が楽しんでいるレスリングの場合には、お互いが順番に追いかけあったり上下を交換します。片方の犬が一方的に相手を追いかけ上に乗り、もう片方の犬はお腹を出した姿勢のまま尻尾をお腹の方に引いたり、耳を後に倒して緊張している顔をしていたら、お腹を出している犬にとっては降参ポーズで怖がっているかもしれません。上に乗っている犬を呼び寄せて、離してあげましょう。

犬がお腹を見せないのにも理由がある?

犬がお腹を見せる理由何らかの不安や恐怖、不快、苦痛、痛みなどがあるときには、犬はお腹を見せません。ただし、飼い主との信頼関係があって、過去にお腹を撫でてもらって気持ちがいいことを学んだ犬は、「お腹を見せたら撫でてもらえる」と思って、多少の不快や苦痛、痛みがあっても、飼い主とのスキンシップのためにお腹を見せることがあるかもしれません。

犬がお腹を見せる体勢から病気がわかる?

身体的な苦痛が大きいとき、調子が悪いときは、体をこわばらせるかぐったりするかのどちらかです。痛みからお腹を出すことはないでしょう。しかし、前章の通り、飼い主に甘えるためにお腹を見せる犬もいます。軽度な痛みや不快があるときは、その不安を飼い主に表現するため、いつもよりも甘えん坊になってお腹を見せてくるという可能性も否定できません。

 

愛犬の生活環境が快適で安定しているか? お腹を見せてくるとき犬の体はこわばっていないか? お腹を見せること以外に行動の変化はあるか? 短期間で行動の変化が激しくないか? など、犬の様子を総合的に見て判断する必要があります。少しでも心配に感じたら、動物病院で身体検査を受けましょう。

 

また、頻繁に愛犬のお腹を撫でていると、皮膚病やしこりなどの異変に早く気づくことはできます。そういった意味では、へそ天は病気を早期に発見できる機会になると言えるでしょう。仰向けの体勢に慣れていれば、動物病院での超音波検査やX線検査などでのストレス軽減にもつながります。

犬がお腹を見せてきたら、飼い主はどう応えたらいい?

犬がお腹を見せる理由
愛犬がお腹を見せてきたとき、場合によって飼い主の理想的な対応も異なります。

 

愛犬がひとりでへそ天して寝ている場合

リラックスした環境を与えてあげられている証拠です。リラックスからくる行動なので、急に近寄ったり邪魔したりはせずに尊重してあげましょう。ただし、ソファなど家族と共有している場所を占領している場合は、呼び寄せてそこから離すのはOK。愛犬専用のリラックスできる場所作りをしてあげてくださいね。

 

飼い主にちょっかいを出してお腹を見せてきた場合

飼い主に近寄ってきて、肢で引っ掻いたり吠えたりして注目を得ようとしつこく要求した後で、お腹を見せてきた場合。飼い主の関心を得るためのアピールとしてへそ天をしている可能性があります。犬の一方的なしつこい要求に応えるのは、お互いが快適な信頼関係を築く上で望ましくないので、無視するのがベター。飼い主から呼び寄せて、お腹を撫であげるのは問題ありません。

 

静かに近くに寄り添いお腹をみせてきた場合

飼い主の隣で安心している、または穏やかな方法で甘えているときです。飼い主が「撫でてあげたい」と思って、犬とのコミュニケーションとして楽しみにしているならば、撫でてあげても大丈夫。この行動をもっと見せてほしいと思ったら、毎回撫でたり優しく声かけたりするなど、犬が気持ちよくなること、好きなことをしてあげて。ただし、飼い主が無理をして応えるのは望ましくないので、相手をしないときがあってもいいでしょう。

 

犬が何か悪いことをした後にお腹を見せてきた場合

悪さをした後にへそ天をしたら、犬は自分でも失敗したことを分かって反省しています。さらに怒りつけることは、飼い主との関係を悪化する可能性があるのでやめましょう。犬がした悪いことを振り返って、同じ失敗をしない、させないための環境作りやトレーニングに意識を向けてください。

 


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

 

(出典)

Down but not out: Supine postures as facilitators of play in domestic dogs(Behavioural Processes Volume 110, January 2015, Pages 88-95)

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S037663571400196X?via%3Dihub

専門家のコメント

犬がお腹を見せるへそ天は、平和の証です。しかし、怖がりな犬やまだ環境に慣れていない犬は、お腹を出すことに抵抗があるもの。そしてどんなに飼い主を好きで快適な環境にある犬でも、必ずしもへそ天をするとは限りません。愛犬がお腹を見せてくれないからと言って不安になることはないのです。無理やりお腹を見ようとするのは、築いてきた信頼関係にヒビが入りかねないのでやめましょう。


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