【獣医師監修】犬の白内障の症状とは?原因と治療法、病院に行くタイミングや予防法について解説

【獣医師監修】犬の白内障の症状とは?原因と治療法、病院に行くタイミングや予防法について解説

私たち人間にとっては身近な病気として知られている「白内障」ですが、実は犬も発症することがあります。人間では高齢者に発症しやすいイメージがあるかもしれませんが、犬の場合は、比較的若いうちから発症したり遺伝により発症する場合もあります。進行すると失明する危険性もあるため注意が必要です。そこで今回は、chicoどうぶつ診療所所長の林美彩先生に教えてもらった、犬が白内障になったときの対処法や治療法、日頃の生活で気を付けるべき点などについて解説していきます。

そもそも犬の白内障とは?

犬の白内障とは、眼の中にある水晶体(ピント調節を担うカメラのレンズのような部分)がたんぱく質の変性によって白濁する病気です。光を通さなくなることで視力が低下し、症状が進行すると失明に至る恐れもあります。

犬が白内障になる原因とは?

犬の白内障は、「原発性白内障」と「後天性白内障」の2つに大別されます。種類ごとに原因についてご説明します。

原発性白内障

原発性白内障は遺伝的な原因により発症します。生まれつき症状が現れている場合や、比較的若い年齢で発見されることが多いのが特徴です。

後天性白内障

後天性白内障には様々な原因があります。加齢による水晶体の衰えが原因になるほか、網膜症などの眼の病気、外傷、中毒、酸化ストレスなどの影響も挙げられます。また、気を付けなければならないのが糖尿病です。

糖尿病を患っていると、糖代謝の影響で発生する物質が水晶体の中に残り、浸透圧の関係で水晶体の中に水分が入ってくることで、たんぱく質が変性し、白内障につながりやすいと考えられています。さらに、糖尿病の持病がある犬は、白内障の症状の進行が加速することもあるため、併発した場合は早期に対処することが大切です。

犬種や年齢によって白内障になりやすくなる?

犬が座る

遺伝性の白内障は、トイ・プードルアメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬、キャバリア、マルチーズ、シーズーといった犬種で比較的多く発症が認められています。犬は6歳未満という若年で発症するケースもあり、若年性の場合は一気に重症化してしまうこともあるので注意が必要です。

また、加齢による水晶体の衰えや酸化ストレスが原因となることもあるため、老犬(シニア犬)の場合は、日頃から眼の中の様子や日常の行動に変化がないか気を配っておくとよいでしょう。

犬の白内障の症状とは?

白内障の進行度合いは、初期ではほとんど症状は見られませんが、徐々に眼の白濁が広がり、視力低下など症状が現れます。症状ごとにご説明します。

視力の低下

眼の白濁が広がると視力低下が現れます。視力が低下し、視野が曇っていくと、物の輪郭を識別しづらくなっていきます。壁や柱、家の中の障害物など、今までぶつからなかった物にぶつかる、段差などに頻繁につまずく、壁伝いに歩くようになる、ボール遊びをしなくなるなどといった変化が見られたら、白内障のサインかもしれません。

また、今まで気にしなかったような物音に反応するなど、視覚以外の感覚が過敏になることもあります。これも視力の低下により、他の感覚で補おうとしているために見られる反応です。

ストレスなどから不安症状も

視力の低下などによりストレス症状を発症させることもあります。眼が見えなくなることの不安から、性格が攻撃的になったり、食欲不振になることもあります。

その他の症状

症状が進行していくと、水晶体起因性ぶどう膜炎や水晶体脱臼、緑内障になることもあり、痛みを伴う眼疾患を併発するケースも見られます。目を掻くような仕草をしたり、ストレスから食欲不振などの不安症状を発症することもあり、何か異変を感じたら動物病院を受診することをおすすめします。

犬の白内障と間違えやすい症状はあるの?

見上げる犬

白内障と似た症状として「核硬化症」という病気があります。老化によって水晶体の中央部が白く濁っていく症状で外見上の特徴は白内障と似ていますが、核硬化症の場合は、光を通すことができるので、炎症や視力の低下を引き起こすことはありません。治療の必要はありませんが、白濁の原因が白内障なのか核硬化症なのかを素人が判断することは難しいため、医師の判断を仰ぐとよいでしょう。

犬が白内障になった場合、合併症はあるの?

白内障が進行していくと様々な合併症を引き起こすリスクが伴います。特に多いのは、水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU)です。これは、水晶体のたんぱく質が溶け、水晶体を包んでいる水晶体嚢というカプセルのようなものから漏れ出てくることが原因で発症します。更に重度のものとしては、緑内障や水晶体脱臼などがあります。激しい眼の痛みや角膜の炎症、充血などの眼疾患を併発することもあります。

犬が白内障になった場合、動物病院へ行くべきタイミングは?

抱かれる犬

白内障の症状が進行してしまうと、根本的な治療が難しくなっていきます。合併症を引き起こすリスクも高まり、視力を失うことにもなりかねないので、できるだけ早期に発見し対処していくことが大切です。

犬の眼が白く濁って見えるときは白内障が疑われます。また、白内障のサインは、物にぶつかる、つまずく、壁伝いに歩くようになる、ボール遊びをしなくなるなど、日頃の行動にも表れます。眼が見えない不安から小さな物音にも神経質になったり、攻撃的な態度をとったりするケースもあり、初期の段階ではこうした行動が夜や、周囲が暗いときに起こりやすくなります。犬の普段の行動で少しでも違和感のある変化に気づいたら、先延ばしにはせず、少しでも早く動物病院を受診してください。

犬が白内障になった場合の治療法は?

犬の白内障の治療法として、内科療法と外科療法があります。種類ごとにご説明します。

内科療法

初期段階の犬の白内障は、点眼薬を使った内科療法で進行を抑えることができます。ただし、症状の進行を遅らせる効果は期待できるものの、完治させることはできません。

外科療法

症状が進行し視力低下などの視覚障害が現れた場合は、根本的に治療する方法として外科療法が選択されます。具体的には、白濁した水晶体を取り除き、眼内レンズに取り換える手術を行うことになります。人間の白内障は日帰り手術が可能ですが、犬の場合は全身麻酔をして手術をすることになるため、数日から1週間ほど入院が必要になると考えておくとよいでしょう。

なお、早期に発見できれば手術によって視力回復の見込みがありますが、症状が進行していると治療できないこともあります。まずは、眼科専門の動物病院を受診し、手術ができるかどうかを確認するようにしましょう。

犬が白内障になった場合、散歩はどうするの?

犬が行きたがるのであれば、散歩を控える必要は特にありません。白内障によって視力が低下している場合は、交通量が多い場所は避けたほうがよいでしょう。広い公園で運動をさせたり、できるだけ障害物の少ないコースを選んで歩くと安心です。物にぶつかったり、つまずいて転んだりしないように、飼い主さんがしっかり誘導してあげるようにしましょう。

犬が白内障になった場合、食事はどうするの?

犬と食事

日々の食事によって白内障の症状を改善させることは難しいものの、白内障の原因のひとつとされている酸化ストレスのケアとして、日頃の食事の見直しは有効です。酸化ストレスは、健康な細胞が酸化することでガン化したり、免疫細胞にダメージが加わり、老化の進行を早めることから、白内障以外にも多くの疾患と関わりがあると言われています。酸化ストレスから犬を守るためには、抗酸化作用のある食材やサプリメントを摂取させることを心がけるとよいでしょう。

おすすめの食材は、ビタミンCが豊富なじゃがいも・さつまいも、かんきつ類、ビタミンEが多く含まれるかぼちゃ、枝豆といった食材です。また、野菜果物(トマト・かぼちゃなど)に含まれるフィトケミカル、鮭や鯛などに含まれる赤い色素のアスタキサンチン、亜鉛などのミネラルも抗酸化作用のある栄養素として知られています。

栄養バランスを考えた食事作りは難易度が高いという方は、こうした栄養素を手軽に摂取できるドッグフードサプリメントも販売されているのでぜひ活用してみてください。

犬が白内障になった場合、普段の生活で気をつけることは?

リビングと犬

犬が白内障になると視力が低下するので、その点を考慮し普段の生活も気をつけてあげなければいけません。注意すべき点を解説します。

部屋のレイアウトを変更しない

室内で飼っている場合は、部屋のレイアウトや物の配置を変更しないことが重要です。犬は、視力が弱まっても、慣れ親しんだ場所であれば記憶に従ってある程度行動することができます。犬が白内障になり、物にぶつからないように配置を変えると、眼が見えにくい状況ではかえって混乱し、ぶつけたり、転んだりする危険性があります。ただし、犬が何度もぶつかるような場所に置いてある物は動かしたり、犬の目の高さに物を置かないようにするといった配慮は必要です。

犬に触る前に声をかけよう

犬の視力の低下に伴い聴覚や触覚など他の感覚が鋭くなるので、犬の体に触る前に必ず声をかけたり、犬の鼻の近くに飼い主さんの手を持っていってにおいをかがせるなどして、安心させてあげるとよいでしょう。目が見えないことは犬にとって大きなストレスとなるため、不安から攻撃的な行動をとることもあります。いきなり触るのではなく、ワンクッション入れることで、ストレスの緩和や不安の解消、寂しさ軽減にもつながります。

犬の白内障の予防法は?

犬の白内障には様々な要因があり、遺伝性や老化、外傷など未然に防ぐという観点では対応策をとれないものが多いのが現実です。

確実な予防法ではないですが、後天性白内障では、紫外線を長時間浴びることで発症のリスクが高まるとも言われているため、紫外線量の多い昼過ぎに長時間散歩させないようにしましょう。

また、体づくりの基礎となる日頃の食事の与え方も重要です。様々な栄養素の中でも、ビタミンCが不足すると水晶体の衰えが加速し、白内障の発症確率が高まるため、不足しがちな場合は意識的にサプリメントを与えるなど、栄養バランスに気を配ることも予防につながります。


第2稿:2020年11月20日更新
初稿:2020年10月11日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

犬の白内障に対処する上で最も大切なことは、できるだけ早く発症に気づいてあげることです。眼の濁りに気づいたり、犬の日頃の行動に異変を感じたら、たとえ小さな違和感であっても、まずは動物病院を受診することをおすすめします。年に1回は健康診断を受け、眼の検査をしてもらうとさらに安心です。神経質になりすぎる必要はありませんが、犬の病気のサインを見逃さないためにも、日々のコミュニケーションを通して愛犬の行動パターンや習性を気に留めておくとよいでしょう。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。


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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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