イングリッシュ・セターの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

イングリッシュ・セターの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

犬種図鑑

2023年10月16日 更新 (2023年05月20日 公開)

博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う

イングリッシュ・セターの性格や特徴は?飼い方のコツや寿命などについて解説【獣医師監修】

イングリッシュ・セターの歴史やルーツ、英語名は?

犬種名 イングリッシュ・セター
英語名 English Setter
原産国 イギリス
分類 大型犬
グループ 7G:ポインター・セター

イングリッシュ・セター【英語:English Setter】は、イギリスが原産の大型犬です。

ジャパンケネルクラブの犬種分類では、獲物を探し出して、その位置を静かに示す猟犬「7G:ポインター・セター」に属します。


イングリッシュ・セターの起源は15世紀頃、祖先はスパニッシュ・ポインター、ウォーター・スパニエル、スプリンガー・スパニエルなどだと考えられています。銃猟の普及とともに発展した犬種で、1825年頃からエドワード・ラベラック卿によって穏やかな気質のセターの作出がなされました。


イギリスでは鳥猟に欠かせない存在で、セター種の中でも機敏で勇敢な性質から「天性の猟犬」といわれる特に人気のある犬種です。セターの名称は、獲物を前にしゃがみこむこと(セッティング)から。日本には明治時代初頭にやってきました。

イングリッシュ・セターのオスとメスの体高や体重は?

体高:オスは65~68cm前後、メスは61~65cm前後
体重:オスは30~36kg、メスは20~25kg


イングリッシュ・セターは大型犬に分類されます。

イングリッシュ・セターの平均寿命は?

イングリッシュ・セターの平均寿命は12歳~13歳とされており、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬全般の平均寿命は11.5歳となっています。


犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。


犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。

イングリッシュ・セターの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?

イングリッシュ・セターの毛色や種類、被毛、外貌の特徴

ジャパンケネルクラブの犬種標準によると、イングリッシュ・セターの毛色は、ブラック&ホワイト(ブルー・ベルトン)、オレンジ&ホワイト(オレンジ・ベルトン)、レモン&ホワイト(レモン・ベルトン)、レバー&ホワイト(レバー・ベルトン)またはトライカラーでブルー・ベルトン&タンまたはレバー・ベルトン&タンとされています。これらの色はボディに大きな斑(パッチ)があってはならず、全体的にフレックト(ベルトン)であるのが好ましいとされています。


絹のように滑らかな手触りの長いコートがボディを覆い、ほっそりとした頭部、飾り毛に覆われた垂れ耳とふさふさの長い尾が特徴で、貴族的な優雅で品のある雰囲気を醸しています。

イングリッシュ・セターはどんな性格、習性?

イングリッシュ・セターは、感覚が鋭敏で狩猟欲も強い活動的な犬種です。
性格は大人しく、飼い主や家族には愛情深く甘えん坊です。見知らぬ人には距離を置く慎重さがあります。

イングリッシュ・セターを迎える際にかかる費用は?

イングリッシュ・セターを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。

タイミング 内訳 費用の目安
迎えるとき

ペットショップ、ブリーダー

約20~30万円
飼い始めるとき 畜犬登録料 約3,000円
生活用品(クレートやケージなど) 約5~7万円
1年に1回かかる費用 狂犬病予防接種費 約3,500円
混合ワクチン接種費 約5,000~10,000円
毎月かかる費用 消耗品(フードやおやつなど) 約5,000~10,000円

犬を飼い始める際にかかる費用

イングリッシュ・セターをペットショップから迎える際の価格の目安は、約20~30万円です。月齢や血統などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。


また、イングリッシュ・セターは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。


犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。


母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。


子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回すべて打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。


狂犬病予防接種は生後91日を過ぎたすべての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。


犬を飼い続けるために必要な費用

犬を養育するうえでの生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。


体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてイングリッシュ・セターの場合は平均より高額になると考えておきましょう。


なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。


イングリッシュ・セターを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。


また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。イングリッシュ・セターは鳥猟のパートナーとして活躍してきたため、運動量が非常に多い犬種です。一緒に遊べるドッグパークや、自由に走り回れるドッグランが近くにあると理想的です。


犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度ですが、イングリッシュ・セターは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より高くなる傾向にあります。


毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、イングリッシュ・セターは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。

マイクロチップ装着の義務化

2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主のもとへ返すための重要な役目を果たします。


装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。


ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、イングリッシュ・セターを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。


迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。


そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策をとるのもおすすめです。

イングリッシュ・セターのしつけと社会化トレーニングのポイント

イングリッシュ・セターのしつけと社会化トレーニングのポイント

イングリッシュ・セターは、飼い主に従順で勤勉なので、トレーニングは難しくないでしょう。


しかし、大人しい性格ですが身体が大きく育つ犬種なので、飛びつき癖や噛み癖があると将来的に事故につながる恐れがあります。子犬の頃から適切なトレーニングをしっかり行って、犬が興奮してもコントロールできるようにしておくことが重要です。


また成犬になると、シルクのような美しい被毛はこまめなお手入れが欠かせなくなります。将来的にブラッシングがストレスにならないように、子犬の頃からブラシやコームに慣れさせておくようにしましょう。

イングリッシュ・セターに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?

イングリッシュ・セターに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊び

✓散歩:1時間程度を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び: ドッグスポーツ


野山を一日中走り回って仕事をしてきた犬種なので、スタミナ豊富で活発な犬種なので、歩くだけの散歩では満足しないでしょう。ドッグランで走らせたり、ボールで遊んだりするなど、体力消費をするような運動でストレスを溜め込まないようにします。


また運動能力も作業意欲も高く、さらに人間との共同作業が好きなので、ドッグスポーツなど飼い主と一緒に楽しむのもおすすめです。体力だけでなく、頭を使うような宝物探しのようなゲームもおすすめです。

イングリッシュ・セターを飼うのに向いている人は?

イングリッシュ・セターを飼うのに向いている人

✓十分な運動をさせてあげられる環境
イングリッシュ・セターはスタミナ豊富で運動欲が強い犬種です。散歩だけでは満足しないので、散歩中は小走りを交え、ボール遊び、ドッグスポーツなど毎日十分な運動をさせてあげられる人がよいでしょう。また、飼い主と過ごすことも大好きです。日常的に野山へ出かけて一緒に楽しめる人がよいでしょう。


✓毎日のお手入れができる人
イングリッシュ・セターの美しい被毛には、毎日のお手入れが欠かせません。散歩から帰宅したら入念にお手入れをしましょう。ブラシも種類やサイズ、硬さが選べるので、愛犬にあったブラシをいくつか揃えておきましょう。


✓しつけをきちんとできる人
体が大きい犬種なので、ちょっとしたことが事故につながることがあります。しっかりと犬の興奮をコントロールできるようにトレーニングしなくてはいけません。

イングリッシュ・セターがかかりやすい病気と予防法は?

イングリッシュ・セターがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。


✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。


✓先天性聴覚障害
イングリッシュ・セターは遺伝的に生まれつき聴覚障害が起きやすいといわれています。トレーニングがなかなかできない、寝ているときに大きな音がしても目を覚まさないといった行動が見られたらすぐに動物病院に連れていきましょう。聴覚以外のアイコンタクトやボディランゲージといった他の手段でコミュニケーションをとります。


✓進行性網膜萎縮症
網膜に異常が起きて視力が低下する遺伝性の疾患です。治療法は現在のところなく、補助的治療で発症を遅らせたり、目の変性を抑えたりする目的で点眼薬やビタミン剤の投与が行われることもあります。夕方、夜間に動くものに反応しない、鈍い、においを嗅ぎながら歩くといった行動が見られたら動物病院に行きましょう。


✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。


✓股関節形成不全
大型犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な肥満が病気を助長することがあるので、体重管理を心がけましょう。

イングリッシュ・セターの日常のお手入れ

✓ブラッシング:毎日
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:不要


イングリッシュ・セターの美しい被毛は、毎日のお手入れで保ちましょう。やわらかい毛のブラシでブラッシングし、特にもつれや毛玉のできやすい箇所は金属製のコームでやさしくほぐします。


ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。


歯みがきは毎日~2日に1回、耳掃除や爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床などで滑りやすくなるためカットしてください。

イングリッシュ・セターとの生活で注意すべきことは?

✓小動物との同居に注意
狩猟本能があるため、動くものを突発的に追いかけてしまう性質があります。ハムスターや小鳥などの小動物、赤ちゃんとの同居には注意が必要です。


✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。


✓運動不足に注意!
膨大な運動量が必要な犬種です。運動不足は、問題行動の引き金になるだけでなく、肥満の原因にもなります。さらに作業欲(狩猟欲)も強い犬種なので、毎日のアクティビティには、体力だけでなく知力も消費するような遊びを取り入れるとよいでしょう。


✓飼育スペースは十分な広さを確保!飼育費も準備して
イングリッシュ・セターを含む大型犬は、トイレも寝る場所も大きな体の分広さが必要になります。犬がゆっくりとくつろげる大きさのケージが必要です。さらに、食費やペットシーツ代などの消耗品や、医療費、ペットホテル費なども、小型犬、中型犬より高額になります。住居スペースや金銭的な負荷を考慮したうえで迎え入れるようにしましょう。